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また、ギリシャの文献にもマリスに関する記述が複数残されている<ref>Payne, 2019, p244</ref>。彼女の名前はギリシャ語で表記されていることから、ギリシャの作家はリュキア語やルウィ語ではなく、リュディア語の資料からマリスについて学んだと推測される<ref>Payne, Sasseville, 2016, p77</ref>。しかし、ギリシャの作家達がどの程度、マリスのことを知っていたかは、まだ不明である<ref>Rutherford, 2017, p81</ref>。イアン・ラザフォードは、マリスの例をサンダースのクババの例と比較した<ref>sfn, Rutherford, 2020, p329</ref>。クババも前2千年以降もある程度の関連性を保ちながら、ギリシャ語のテキストで参照され続けた女神であるためである<ref>Rutherford, 2017, p=81</ref>。
レスボス島の文献には、マリス(ΜǶλις)が機織りをしている姿が描かれており、アニック・ペインによれば、これは女神がギリシャ人にも崇拝されていたことを示しているかもしれないとのことである<ref>Payne, 2019, p242</ref>。ラザフォードは、この記述がアナトリアの伝統を反映しているとすれば、マリスとアテーナーの間に頻繁に交わされる同一視の背後にある理由かもしれないと指摘する一方で、既存の同一視に依拠したギリシャ人の発明である可能性もあるとみている<ref>Rutherford, 2020, p329</ref>。同時に、アラクネーの神話は、リディアのハイパエパで織女神の争いが起こったとするオヴィッド以前の資料には記録されていないので、もしマリスが織女神であるという仮説が受け入れられるなら、もともとはリディアの神話である可能性があると暫定的に推測している。同時に、アラクネーの神話は、リディアのハイパエパで織女神の争いが起こったとするオイディウス以前の資料には記録されていないので、もしマリスが織女神であるという仮説が受け入れられるなら、もともとはリディアの神話である可能性があると暫定的に推測している<ref>Rutherford, 2020, pp329-220</ref>。パイネは、入手可能な証拠の分析において、エフェソスで発見されたリディア人の頭飾りをつけた織工の置物も、織女神としてのマリスに対するギリシャ人の崇拝の証拠かもしれないと指摘している。パイネは、入手可能な証拠の分析において、エフェソスで発見されたリュディア人の頭飾りをつけた織工の置物も、織女神としてのマリスに対するギリシャ人の崇拝の証拠かもしれないと指摘している<ref>Payne, 2019, p242</ref>。ギリシャ語とリディア語を話すギリシャ初期の詩人ヒッポナクスは、マリス(Μαλὶς)に宛てた短い祈りの言葉を残している。
<blockquote>
テオクリトスの『''イディール''(Idylls)』には、マリス(Μαλίς)という名の水のニンフが登場する<ref>Payne, 2019, p242</ref>。ユニカ、ニケイア<ref>Serangeli, 2015, p378</ref>という2人のニンフとともにプロポンティス島のキオスに住み、ハイラスを誘拐した張本人である<ref>Rutherford, 2020, p330</ref>。イアン・ラザフォードは、マリスが川の精であるという見解は、マリヤの本来の役割である川の女神と一致しているように見えると述べている<ref>Rutherford, 2020, p331</ref>。ソポクレスは『ピロクテテス』の中で、スペルケイオス川のマリアデス(Μαλιάδες)という似た名前の複数のニンフに<ref>Payne, 2019, p242</ref>ついて言及している<ref>Serangeli, 2015, p379</ref>。しかし、ラザフォードによれば、彼らは単数形のマリスとは関係がない可能性が高く、代わりにギリシャのマリスと関係があると考えるべきであるという<ref>Rutherford, 2020, p330</ref>。
ギリシャの別の伝承では、マリスはリディアと関係しながらも、この地域の神話上の女王であるギリシャの別の伝承では、マリスはリュディアと関係しながらも、この地域の神話上の女王である[[オムパレー]]の奴隷としか見なされていない<ref>Haas, 2015, p411</ref><ref>Rutherford, 2020, p330</ref><ref group="私注">おそらくオムパレーとマリヤは「同じもの」であるだろう。</ref>。このような見解は、ビザンティウムとヘラニコスのステファヌスの著作に見出すことができる<ref>Payne, 2019, p242</ref>。このことは、女神マリスが、ギリシャの英雄と同一視されるアナトリアの神サンダスと並んで崇拝されていた伝統を反映しているのかもしれない。このことは、女神マリスが、ギリシャの英雄と同一視されるアナトリアの神サンダス(Sandas)と並んで崇拝されていた伝統を反映しているのかもしれない<ref>Rutherford, 2017, p91</ref>。しかし、この解釈を支持する確かな証拠はなく、前2千年紀の既知のテキストにも、両者を関連づけるものはない<ref>Watkins, 2007, p123</ref>。
紀元1世紀の『聖テクラの生涯と奇跡』にサンダスと並んで登場するダマリスという神名をマリスと結びつける試みがなされているが、信憑性はなく、このテキストにある「サンダスとダマリスの都市」は、イサウリアのダリサンドスの再解釈であるかもしれない紀元1世紀の『聖テクラの生涯と奇跡』にサンダスと並んで登場するダマリス<ref>ダマリス(Damalis、古代ギリシャ語:Δάμαλις)は、「雌牛」を意味するギリシャ語の女性名である。(Wikipedia:[https://en.wikipedia.org/wiki/Damalis Damalis](最終閲覧日:22-12-02))</ref>という神名をマリスと結びつける試みがなされているが、信憑性はなく、このテキストにある「サンダスとダマリスの都市」は、イサウリアのダリサンドスの再解釈であるかもしれない<ref>Rutherford, 2017, p91</ref>。 == 私的解説 ==マリヤの比較的新しい年代の姿はギリシャ神話やローマの属州であったリュキアを通して伝えられているが、元々カネシュ(キリキア寄り)で祀られていた女神であれば、メソポタミアやフルリあるいはルウィに関係した女神だったのではないだろうか。[[オムパレー]]とは[[カムルセパ]]女神のことではないか、と考える。 おそらくマリヤは[[サンダス]]の妻、あるいは母女神と考えられており、天候神としての性質も有していたのではないか。その連続から「'''雲を織る女神'''」と考えられていた可能性があるように思う。  また、「自らの庭園を有して、それを支配する女神」というのは、「王権神授」とも関連を有してたようである。「庭園を持つ女神」とは、ギリシア神話のヘーラー、シュメール神話の[[イナンナ]]、中国神話の[[西王母]]などである。
== 参考文献 ==
* Görke Susanne, Hurrian and Luwian Elements in the Kizzuwatna Religious Texts, Altorientalische Forschungen, Walter de Gruyter GmbH, volume49, issue1, 2022, issn:2196-6761, doi:10.1515/aofo-2022-0011, pages148–157
* Haas Volkert, Geschichte der hethitischen Religion, Brill, Handbook of Oriental Studies. Section 1: The Near and Middle East, 2015, 1994, isbn:978-90-04-29394-6, https://books.google.com/books?id=EOh5DwAAQBAJ, 2022-11-19
*{{cite book|last=Hutter|first=Manfred|editor-last=, Melchert|editor-first=Craig|title=, The Luwians|chapter=, Aspects of Luwian Religion|series=, Handbook of Oriental Studies. Section 1 The Near and Middle East|volume=68|publisher=, volume68, Brill|publication-place=, Leiden|date=, 2003|, isbn=:90-474-0214-6|, oclc=:995012566}}*{{cite book|last=Payne|first=Annick|title=, Religious Convergence in the Ancient Mediterranean|chapter=, Native Religious Traditions from a Lydian Perspective|chapter-url=, https://www.academia.edu/36815060|publisher=, Lockwood Press|year=, 2019|, doi=:10.2307/j.ctvd1c9d4.17}}*{{cite journal|last1=Payne|first1=Annick|last2=, Sasseville|first2=David|title=, Die lydische Athene: eine neue Edition von LW 40|journal=, Historische Sprachforschung/Historical Linguistics|publisher=, Vandenhoeck & Ruprecht (GmbH & Co. KG)|volume=129|year=, volume129, 2016|language=de|, issn=:09353518|, jstor=:44113343|pages=66–82|url=, pages66–82, http://www.jstor.org/stable/44113343|access-date=, 2022-11-20}}*{{cite book|last=Raimond|first=Eric A.|editor-last=, Tuplin|editor-first=Christopher|title=, Persian Responses: Political and Cultural Interaction with(in) the Achaemenid Empire|chapter=, Hellenization and Lycian Cults During the Achaemenid Period|chapter-url=, https://www.academia.edu/22281060|year=, 2007|publisher=, The Classical Press of Wales|, doi=:10.2307/j.ctvvnb3j.12}}
* Rutherford Ian, Hittitology today: Studies on Hittite and Neo-Hittite Anatolia in Honor of Emmanuel Laroche's 100th Birthday, Sandas in Translation, https://www.academia.edu/33685793, 2017, isbn:978-2-36245-083-9, oclc:1286359422
* Rutherford, Ian, D'Alessio Giovan Battista, Il potere della parola: studi di lettaratura greca per Maria Cannatà Fera, Athene, Maliya and the Carpenter, https://www.academia.edu/48848414, Edizioni dell'Orso, Alessandria, 2020, isbn:978-88-3613-069-6, oclc:1204268990
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:まりや}}
[[Category:ヒッタイト神話]]
[[Category:ルウィ神話]]
[[Category:葡萄]]
[[Category:都市神]]
[[Category:家庭守護神]]
[[Category:王権神授神]]

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