自ら焼死したのちに蘇るという伝説は、エジプト神話をルーツとしながらもギリシア・ローマの著述家によって作られたものである<ref name="松平p189" />。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿がコインやモザイク画にあしらわれるようになった<ref name="ビーダーマンp362" />。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスは'''キリストの復活を象徴するもの'''となった<ref name="アランp46" /><ref name="ビーダーマンp362" />。『フィシオロゴス』では、創造主を崇めることもないこの鳥さえ死から蘇るならば神を崇める我々が復活しないはずがない、といった内容の文言が書かれた<ref name="ビーダーマンp362" />。キリスト教徒はこの鳥を再生のシンボルとみなした<ref name="松平p189" />。10世紀成立の『エクセター写本』に収録された<ref name="松平p189" />、8世紀に作られた詩<ref name="水野p56">水野知昭, 不死鳥の歌なんか聞こえない : 海のかなたの楽園と古ゲルマンの選民思想, https://hdl.handle.net/10091/667 , 人文科学論集 文化コミュニケーション学科編 , 信州大学人文学部 , 2003-03-14 , 37 , 45-70p , naid:110004625076 , ISSN:13422790 , 2022-03-20 , p.56 より</ref>「フェニックス (古英語詩)(The Phoenix (Old English poem))」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている<ref group="注釈">この古英語詩は、4世紀のローマの著述家のルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス(240年頃 - 320年頃)<!--松平 (2005) p.189の「テクタンティウス(245-315)」と同一人物か?-->による詩「不死鳥についての歌」(de Ave Phoenice) に基づいている。</ref><ref name="松平p189" /><ref name="水野p56" /><ref name="松平p189" />。こうしたこともあって、こんにちに至るまで、不死鳥=フェニックスのイメージが多くの人々に受け入れられている<ref name="松平p189" />。
フェニックスは中世や近世の旅行記にもたびたび登場している<ref name="松平p189" />。[[ジョン・マンデヴィル]]による『[[東方旅行記|マンデヴィルの旅行記]]』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること。ジョン・マンデヴィルによる『マンデヴィルの旅行記』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること<ref>{{Cite journal|和書|author=大沼由布 |title=, 『マンデヴィルの旅行記』と「装置」としての語り手 |url=, https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013273 |journal=, 同志社大学英語英文学研究 |publisher=, 同志社大学人文学会 |year=, 2013 |month=, mar |issue=, 91 |pages=, 1-18 |p, naid=:110009614600 |, doi=:10.14988/pa.2017.0000013273 |, issn=:0286-1291|accessdate=, 2020-09-14 }}</ref>や、[[クジャク|孔雀]]のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されているや、孔雀のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されている<ref name="松平p189" />。また中世の{{仮リンク|聖務日課祈祷書|en|Breviary}}や『[[動物寓意譚|動物寓話集]]』でもしばしば言及された。また中世の聖務日課祈祷書(Breviary)や『動物寓話集』でもしばしば言及された<ref name="ローズp359" />。
[[錬金術]]においては「[[賢者の石]]」を象徴するものだとされた錬金術においては「賢者の石」を象徴するものだとされた<ref name="松平p189" />。すなわち、[[第一質料]](マテリア・プリマ)が消失し賢者の石として再生される様子がフェニックスになぞらえられた。すなわち、第一質料(マテリア・プリマ)が消失し賢者の石として再生される様子がフェニックスになぞらえられた<ref name="ビーダーマンp362" />。
フェニックスの起源については、アジアに生息する[[キンケイ|錦鶏鳥]]だとする説もあるフェニックスの起源については、アジアに生息する錦鶏鳥だとする説もある<ref name="松平p189" />。
== 悪魔としてのフェニックス ==
{{出典の明記|section=1|date=2015年11月15日 (日) 12:30 (UTC)}}[[ヨーハン・ヴァイヤー]]の著した『[[悪魔の偽王国]]』や、作者不明の[[グリモワール]]『[[レメゲトン]]』の第1部「[[ゴエティア]]」には、鳥のフェニックスのような姿で現れるというフェニックスという名の悪魔が記載されている。「ゴエティア」では[[ソロモン]]王が使役したといわれる72悪魔の一角を担う序列37番の大いなる[[侯爵]]とされる。[[アレイスター・クロウリー]]の出版した『ゴエティア』では「ヨーハン・ヴァイヤーの著した『悪魔の偽王国』や、作者不明のグリモワール『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」には、鳥のフェニックスのような姿で現れるというフェニックスという名の悪魔が記載されている。「ゴエティア」ではソロモン王が使役したといわれる72悪魔の一角を担う序列37番の大いなる侯爵とされる。アレイスター・クロウリーの出版した『ゴエティア』では「'''[[:en:Phenex|Phenex]](フェネクス)Phene(フェネクス)'''」 の綴りになっている<ref>{{Cite book |author=S.L. MacGregor Mathers and Aleister Crowley |origyear=, 1904 |url=, http://www.sacred-texts.com/grim/lks/index.htm |title=, The Lesser Key of Solomon |language=, 英語 |accessdate=, 2013-08-10}}</ref>。不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある。。不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある<sup>(要出典、15-11-15)</sup>。
詩作に優れており、話す言葉も自然に詩になるが、人間の姿を取った時は、耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声で喋るという。
== 現代におけるフェニックス ==
[[ファイル:Phoenix fire plaque, Pickering - geograph.org.uk - 1772783.jpg|thumb|200px|right|建物が火災保険に加入していることを示す標章 ([[:en:Fire insurance mark|Fire insurance mark]]) に描かれたフェニックス]]
[[ファイル:Phoenix Fireworks at Nagaoka Festival 2011.JPG|thumb|200px|right|復興祈願花火フェニックス(2011年8月撮影)]]
こんにちでもフェニックスの意匠は家屋の紋章、特に[[火災保険]]に関連する建物の紋章にあしらわれている<ref name="ローズp359" />。
また、大災害などからの復興事業などに、何度もよみがえる不死鳥にあやかって「フェニックス」という名称をつけることがある。以下に日本での事例を挙げる。
* 新潟県[[長岡市]]の[[市町村章|市章]]は「長」の字と不死鳥を併せたものを図案化した形となっており、市内の多数の公共施設にフェニックスの名称が取り入れられている<!--(「[[フェニックス大手]]([[長岡市役所]]の一部機能などが入所)」「[[新潟県立長岡屋内総合プール|フェニックスプール]]」「[[フェニックス大橋]]」など)--><ref>{{Cite web |url=http://www.city.nagaoka.niigata.jp/syoukai/ |title=市の紹介 |publisher=長岡市 |accessdate=2013-06-04 }}</ref>。これは、[[1868年|慶応4年]]の[[戊辰戦争]]([[北越戦争]])・[[1945年|昭和20年]]の[[第二次世界大戦]]([[長岡空襲]])の二度の戦禍から不撓不屈の精神で復興し、地方中核都市として限りなく発展するという願いを込めたものである{{要出典|date=2015年11月15日 (日) 12:30 (UTC)}}。また近年では、平成16年の一年間に3度も発生した自然災害([[新潟県中越地震]]・[[平成16年7月新潟・福島豪雨|7・13水害]]・[[豪雪]])からの復興の願いを込めた「復興祈願花火フェニックス」が毎年[[8月2日]]・[[8月3日|3日]]に開催される[[長岡まつり]]で打ち上げられている<ref>{{Cite web |url=http://phoenix-hanabi.jp/pc/ |title=新潟県長岡市 復興と感謝のシンボル【復興祈願花火フェニックス】 |publisher=長岡まつり協議会 フェニックス部会 事務局 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。この花火は、[[噴火]]による被害を受けた[[三宅島]]<ref>{{Cite news |url=http://www.47news.jp/CN/200607/CN2006073001003582.html |title=三宅島に「復興」の花火 長岡がプレゼント |newspaper=共同ニュース |publisher=47NEWS |date=2006-07-30 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>や[[東日本大震災]]の被災地である宮城県[[石巻市]]<ref>{{Cite web |url=http://www.city.nagaoka.niigata.jp/shityo/kaiken/file/20110523-1-0.pdf |title=「石巻川開き祭り」で震災復興祈願花火「フェニックス」を打ち上げ!被災地へ勇気と希望を届けます。 |work=記者会見資料 |publisher=長岡市観光課・長岡まつり協議会 |format=PDF |date=2011-05-23 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>などでも打ち上げられた。
* 福井県[[福井市]]は、市民憲章の名前が「不死鳥のねがい」であり<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/fukuisi/prezen/kensyou/citizen_charter.html |title=憲章・都市宣言 |publisher=福井市 |quote=''エジプトの伝説上の霊鳥フェニックスのことで、形はワシに似て赤や金の翼を持っており、死期が来ると、みずから燃える火中に入って焼かれ、その灰の中から再生すると言われています。...再び三たび立ち上がった福井市民の努力は、まさに不死鳥(フェニックス)の姿にも似て...'' |date=2015-07-09 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>、コミュニケーションマークも不死鳥をかたどっている<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/sisei/plan/sonota/p008318.html |title=コミュニケーションマーク |publisher=福井市 |date=2010-03-26 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。これは福井市が[[1945年]]([[昭和]]20年)からの3年間で3回壊滅([[福井空襲]]・[[福井地震]]・[[九頭竜川]]の[[堤防]]の[[決壊]])したがそのたびに復興したことに基づいている<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/kyoiku/gakusyu/skensyou/p004646.html |title=不死鳥のねがい(福井市市民憲章)の誕生 |publisher=福井市 |date=2014-02-03 |accessdate=2014-11-22 }}</ref>。
[[ファイル:JMSDF DDH-181 Hyuga Logo SH-60J.jpg|thumb|right|200px|海上自衛隊の[[対潜哨戒機#哨戒ヘリコプター|哨戒ヘリコプター]]・[[SH-60J (航空機)|SH-60J]]の機体に描かれたひゅうがのロゴマーク]]
* 1995年1月に[[阪神・淡路大震災]]で大被害を受けた兵庫県では、1995年度からの「阪神・淡路震災復興計画」に「ひょうごフェニックス計画」の愛称を冠すると同時に、主人公の「火の鳥」がフェニックスと同一視された<!--「未来編」で-->という設定の漫画『[[火の鳥 (漫画)|火の鳥]]』([[手塚治虫]]作)をシンボルマークに採用している<ref>{{Cite web |url=http://tezukaosamu.net/jp/productions/social_contribution.html |title=社会貢献 |publisher=[[手塚プロダクション]] |accessdate=2015-11-15 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.hemri21.jp/phoenix/01.pdf |title=第一章 阪神・淡路震災復興計画 |work=「翔べフェニックス」 |publisher=[[人と防災未来センター|公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構]] |page=38 |format=PDF |quote=''..,この復興計画の愛称を、フェニックス計画とし、シンボルキャラクターとして火の鳥「フェニックス」を提唱した。フェニックスとは、エジプトの神話にでてくる霊鳥。五、六百年ごとに一度、自ら香木を積み重ねて火をつけて焼死し、その灰の中から再び幼鳥となって現れる不死鳥である。...手塚治虫さんの「火の鳥」の題名で知られている作品の中の空想の鳥。'' |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。また、兵庫県の[[防災]]システムにも「フェニックス」の名が冠されている<ref>例:{{Cite web |url=http://web.pref.hyogo.jp/pa21/pa17_000000059.html |title=フェニックス防災システム |work=まちづくり・防災 |publisher=兵庫県 |date=2012-04-01 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。
ほか、[[海上自衛隊]]のヘリコプター搭載[[護衛艦]][[ひゅうが (護衛艦)|ひゅうが]]は、艦名の由来となった宮崎県における[[県木]][[カナリーヤシ|フェニックス(カナリーヤシ)]]にちなみ、不死鳥フェニックスをあしらった意匠を艦および搭載ヘリコプターの[[エンブレム]]として採用している<ref>{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20130622010026/http://www.mod.go.jp/msdf/ccf1/1ed/hyuga/ |work=海上自衛隊第1護衛隊群 |title=第1護衛隊【ひゅうが】 |publisher=防衛省・自衛隊 |accessdate=2016-06-19 }}</ref>。
== フェニックスに類似した幻獣 ==
中世アラビアでは炎の中に生きる伝説の動物[[四大精霊#サラマンダー|サラマンダー]]とフェニックスが混同され中世アラビアでは炎の中に生きる伝説の動物サラマンダーとフェニックスが混同され<ref name="ローズp359" />、サラマンダーが鳥となったものがフェニックスだとされていたという<ref>{{Cite book |和書 |author=ヘイズ中村 |year=, 2014 |title=, ヴィジュアル版 天使と悪魔の事典|pages=, p. 147 |publisher=[[, 学研パブリッシング]] |, isbn=:4054060188}}</ref>。
[[中国]]の伝説にある[[鳳凰]]はフェニックスに似た存在だと考えられ中国の伝説にある鳳凰はフェニックスに似た存在だと考えられ<ref>[[#ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)|ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)]]</ref>、混同されることも多い([[鳳凰#フェニックスとの関係]]を参照)。なお、星座のPhoenixが[[ほうおう座]]と訳されるがこれは東西で訳語的に対応するものという意味で、誤認に基づいたものではない。、混同されることも多い。なお、星座のPhoenixがほうおう座と訳されるがこれは東西で訳語的に対応するものという意味で、誤認に基づいたものではない。
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
<references group="注釈"/>
=== 出典 ===
* Wikipedia;[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9 フェニックス]
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |last=Wikipedia;[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9 フェニックス](最終閲覧日:22-04-03)** アラン |first=, トニー |others=, 上原ゆうこ訳 |title=, 世界幻想動物百科 ヴィジュアル版 |publisher=[[, 原書房]] |date=, 2009-11 |origyear=, 2008 |, isbn=:978-4-562-04530-3 |chapter=, フェニックス |pages=, pp. 46-47 |ref=アラン,上原訳 (2009) }}* {{Cite book |和書 |last=* ビーダーマン |first=, ハンス |others=[[藤代幸一]]監訳、[[宮本絢子]]他訳 |title=, 藤代幸一監訳、宮本絢子他訳 , 図説世界シンボル事典 |publisher=[[, 八坂書房]] |date=, 2000-11 |, isbn=:978-4-89694-463-1 |chapter=, フェニックス |pages=, pp. 362-363 |ref=ビーダーマン,藤代ら訳 (2000) }}* {{Cite book |和書 |author=* 松平俊久 |others=[[蔵持不三也]]監修 |title=, 蔵持不三也監修 , 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典 |publisher=, 原書房 |date=, 2005-03 |chapter=, フェニクス |pages=, pp. 186-190 |, isbn=:978-4-562-03870-1 |ref=松平 (2005) }}* {{Cite book |和書 |last=* ローズ |first=, キャロル |others=[[松村一男]]監訳 |title=, 松村一男監訳 , 世界の怪物・神獣事典 |publisher=, 原書房 |date=, 2004-12-07 |chapter=, フェニックス |, isbn=:978-4-562-03850-3 |pages=, pp. 358-359 |ref=ローズ,松村訳 (2004) }}** [https://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/yousei/190812/20190812039.html 亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅 - フェニックス(エジプト・ギリシャ・ペルーほか) 大阪日日新聞記事(2019年8月12日掲載)](リンク切れ:22-04-03)
== 関連項目 ==
[[Category:ギリシア神話]]
[[Category:ローマ神話]]
[[Category:キリスト教神話ローマ教神話]]
[[Category:鳥]]
[[Category:霊鳥]]
[[Category:太陽鳥]]