=== アドニースの死 ===
アドニースは狩の最中にアレースが化けたイノシシに襲われて死ぬ。本物語では、イノシシはアドニースが生まれた際にも登場する。このイノシシも'''キュニラース'''の別の姿といえないだろうか。なぜキュニラースは息子を産ませ、そして殺してしまうのだろう。彼の故郷がフェニキアなのであれば、幼児供犠がすぐに思い浮かぶところなのでアドニースは狩の最中にアレースが化けたイノシシに襲われて死ぬ。女神たちだけでアドニースの力を制御できなくなったのであれば、アレースの力でアドニースを強制的に冥界に送り返すしかなくなったのだろう。この物語でのアレースは、疫神と戦う[[黄帝型神]]である。
* なにがしかの豊穣や安寧を得るために、神に子供を捧げた。 という理由がまず挙げられるように思う。もしかしたら、近親相姦で子を成したというタブーに対する神の怒りを裂けるためにそうしたのかもしれない。あるいはフェニキア人らしく、アドニースの死と引き換えに、他の家族の安寧を願ったのかもしれない。 そして、他の理由としては、やはりエンリルとニンリル的な話になってしまうのだが、キュニラースは何らかの理由ですでに死んでいるか、あるいはイノシシの姿に変えられてしまって人間ではないので、蘇るか、あるいは人間の姿に戻るために、人型の生け贄を一人必要としていたのではないだろうか。アドニースは、元々キュニラースが生まれ変わるために冥界か、それに近い環境で作った子供であって、チャンヤン神話のチャンヤンが蛾王の生まれ変わりのような状態なのと同じ存在だったと考える。アドニースの「死」の象徴であるアネモネは、有毒植物で、古代エジプトでは「'''病気の印'''」と考えられていたとのことだ。まさに疫神であるアドニースの死後の姿に相応しい花なのではないだろうか。草花を育てて、盛夏にあえてこれを枯死させてしまうのは、'''花が象徴している疫神を冥界に追い払う'''という、'''厄払いの儀式の一種'''なのではないだろうか。
でも、=== まとめ ===物語の前半、ミュラーとキニュラースの禁忌婚からアドニースの誕生までは、キニュラースの生まれ変わり譚であると考える。後半部分のアドニースの成長から死の部分までは、疫神払いの物語である。アドニースの園の祭祀は、日本でいうところの「夏越の祓」の本来の「穢れを払う」という意味に近いものと類似しているのではないだろうか。(現在の日本の「夏越の祓」は疫神である[[祝融型神須佐之男命]]であるキュニラースの生まれ変わりのアドニースもやはり[[祝融型神]]なので、おそらくアプロディーテーに「疫神」として力を抑えられ封印されて冥界に預けられたのではないだろうか。疫神は抑えてコントロールする必要があるからだ。そして、預かった方のペルセポネーも、できるだけアドニースを冥界にとどめようとしておくのではないだろうか。しかし、成長したアドニースは地上での生活を望み、冥界を出て行ってしまう。そしてアドニースが「狩りをする」とは、「疫病をはやらせて人々の命を狩る」ということなのではないだろうか。女神達だけでアドニースを抑えきれなくなれば、アーレースがこれを倒してまた冥界に封印するのだ。に「自分だけは病を免れさせてください」とお願いするものだから、むしろ自分勝手な'''鬼信仰'''といえる気がするのだが。)
アドニースの「死」の象徴であるアネモネは、有毒植物で、古代エジプトでは「'''病気の印'''」と考えられていたとのことだ。まさに疫神であるアドニースの死後の姿に相応しい花なのではないだろうか。草花を育てて、盛夏にあえてこれを枯死させてしまうのは、'''花が象徴している疫神を冥界に追い払う'''という、'''厄払いの儀式の一種'''なのではないだろうか。アドニースの神話は、[[ミャオ族]]の伝承では[[チャンヤン]]の神話に類似している部分があるのだが、名前はむしろ[[ダロン]]に近い名なのではないか、と考える。
== 参考文献 ==
== 関連項目 ==
* [[チャンヤン]]:アドニースの物語の前半部分は[[チャンヤン]]の誕生譚と類似している。
== 脚注 ==
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[[Category:ギリシア神話]]
[[Category:祝融型神]]
[[Category:風神]]
[[Category:人身御供]]
[[Category:陰]]