'''白犬'''(しろいぬ)とは犬戎族人の祖であり、黄帝の子孫と言われる。(しろいぬ、Bái gǒu)とは犬戎族の祖であり、黄帝の子孫と言われる。
== 山海経 ==
山海経の大荒北経に、
<blockquote>大荒の中に山あり、名は融父山、順水がここに入る。人あり、名は犬戎。'''黄帝'''は'''苗龍'''を生み、苗龍は'''融吾'''を生む。融吾は弄明を生み、弄明は'''白犬'''を生む。白犬に牝と牡あり<ref>両性具有のこと。</ref>、これが犬戎である。肉食す。赤い獣がいる、馬の状で首なし、名は戎の宣王の屍(戎宣王屍)という<ref group="私注">犬戎は首のない馬のような屍を神とする、とのことで「'''鬼信仰'''」である。彼らの神は首がなく、「死後の[[蚩尤]]」のようである。ただし、牛ではなくて馬である。日本神話では[[須佐之男命]]は馬としても牛としても現される。</ref>。(山海経、高馬三良訳、1994、平凡社ライブラリー、平凡社、p171)</blockquote>
山海経の大荒北経に、”大荒中に融父山という名の山があり、順水はこの山を流れ込んだ。犬戎という名の人がいた。黄帝は苗龍を生み、苗龍は融吾を生み、融吾は弄明を生み、弄明は白犬を生んだ。この白犬は両性であり、犬戎族人となり、肉類を食物とした。形状は普通の馬で頭は無く名を戎宣王屍と言った。”とあります。== 私的考察 ==白犬は、現存している中国神話では特に天体とは関連せず、特定の人々の先祖といった「トーテム獣」としての性質が強い。ただし、インド神話の[[ラーフ]]のように「白」で現される妖怪(彗星や流星の化身)がいるため、元は白犬にも「白くて日食(あるいはそれに類するもの)を起こすもの」という伝承があったのではないか。黒い犬は[[羿]]の猟犬とされるため、対になってる[[白犬]]も[[羿]]([[黄帝]])に所属するとなれば、人に近い性質の伝承を持つようになって「[[黄帝]]の子孫」とされるようになっても不思議ではないと思う。犬戎の神が死後の[[蚩尤]]を思わせる「首のない神(どちらかといえばインド神話の[[ケートゥ]]に相当する)」であることは、白犬が炎帝に関する存在であることも示している。すなわち、白犬は黄帝と炎帝の両方に関連する存在といえ、黄帝と炎帝の「'''どちらの子孫でもある'''」といえそうである。
== 天狗食日 ==古来、中国では日食は「天狗が太陽を食べる」ことで起こると考えられていた。日食が起きると、人々は太鼓や爆竹を叩いて犬を追い払う。日本にはごく稀であるが、「狗天伯」という白犬を思わせる水に関連した神がいる。
伝説によると、后羿が民のために9つの太陽を撃ち落としたとき、王母娘娘([[西王母]])は褒美に霊薬を与えたが、后羿の妻である[[嫦娥]]はそれを食べて一人で天に昇ってしまったという。門の外から后羿の猟犬・黒耳が吠えながら家の中に飛び込み、残りの霊薬を舐めてから上空の[[嫦娥]]の後を追った。[[嫦娥]]は黒耳の吠える声を聞くと、あわてて月に飛び込んだ。そして、髪を逆立て、体を大きくした黒耳は、[[嫦娥]]に飛びかかり、月を飲み込んだ。 月が黒い犬に飲み込まれたことを知った[[玉皇大帝]]と王母娘娘([[西王母]])は、天兵に命じて犬を捕らえさせた。黒い犬が捕まった時、王母娘娘([[西王母]])は后羿の猟犬と認め、南天の門を守る天狗にした。黒耳は役目を得ると、月と[[嫦娥]]を吐き出し、それ以来、月に住むようになった。白犬が両性具有であるのは、女性と男性を合成した霊獣であるからではないか、と思う。
== 関連項目 ==
* [[天狗(中国)|天狗]]
** [[黒耳]]:羿の飼い犬。月食を起こす。
* [[禍斗]]:火神、雷神に仕える神犬。炎を吐き火事を起こす不吉な黒犬。
* [[オェンガス]]:子音的に白犬と関連があるか?
== 私的注釈 ==
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{{DEFAULTSORT:しろいぬ}}
[[Category:狼]]
[[Category:犬]]
[[Category:両性具有]]
[[Category:星神]]