ヘーシオドスはテューポーンとゼウスの戦いの激しさを詳しく描いている。テューポーンの進撃に対し、ゼウスが雷鳴を轟かせると、大地はおろかタルタロスまで鳴動し、足元のオリュムポスは揺れた。ゼウスの雷とテューポーンの火炎、両者が発する熱で大地は炎上し、天と海は煮えたぎった。さらに両者の戦いによって大地は激しく振動し、冥府を支配するハーデースも、タルタロスに落とされたティーターンたちも恐怖したという。
しかしゼウスの雷霆の一撃がテューポーンの100の頭を焼き尽くすと、テューポーンはよろめいて大地に倒れ込み、身体は炎に包まれた。この炎の熱気は[[ヘーパイストス]]が熔かした鉄のように大地をことごとく熔解させ、そのままテューポーンをタルタロスへ放り込んだしかしゼウスの雷霆の一撃がテューポーンの100の頭を焼き尽くすと、テューポーンはよろめいて大地に倒れ込み、身体は炎に包まれた。この炎の熱気はヘーパイストスが熔かした鉄のように大地をことごとく熔解させ、そのままテューポーンをタルタロスへ放り込んだ<ref>ヘーシオドス、840行-868行。</ref>。
=== アポロドーロス(ビブリオテーケー) ===
対してアポロドーロスはテューポーンとゼウスの戦いの全貌を次のように語っている。テューポーンはオリュムポスに戦いを挑み、天空に向けて突進した。迫りくるテューポーンを見た神々は恐怖を感じ、動物に姿を変えて[[エジプト]]に逃げてしまったという{{Sfnp|対してアポロドーロスはテューポーンとゼウスの戦いの全貌を次のように語っている。テューポーンはオリュムポスに戦いを挑み、天空に向けて突進した。迫りくるテューポーンを見た神々は恐怖を感じ、動物に姿を変えてエジプトに逃げてしまったという<ref>アポロドーロス・高津|, 1953|loc=, 第1巻 6・3}}</ref>。それゆえ、エジプトの神々は動物の姿をしているともいわれる。
これに対し、ゼウスは雷霆や[[ダイヤモンド|金剛]]の鎌を用いて応戦した。ゼウスは離れた場所からは雷霆を投じてテューポーンを撃ち、接近すると金剛の鎌で切りつけた。激闘の末、[[シリア]]の{{仮リンク|カシオス山|en|Jebel Aqra}}へ追いつめられたテューポーンはそこで反撃に転じ、ゼウスを締め上げて金剛の鎌と雷霆を取り上げ、手足の腱を切り落としたうえ、[[デルポイ]]近くの[[コーリュキオン洞窟]]これに対し、ゼウスは雷霆や金剛の鎌を用いて応戦した。ゼウスは離れた場所からは雷霆を投じてテューポーンを撃ち、接近すると金剛の鎌で切りつけた。激闘の末、シリアのカシオス山(Jebel Aqra)へ追いつめられたテューポーンはそこで反撃に転じ、'''ゼウスを締め上げて金剛の鎌と雷霆を取り上げ、手足の腱を切り落としたうえ、デルポイ近くのコーリュキオン洞窟<ref group="注">コーリュキオン洞窟({{lang-grc-short|Κωρύκιον ἄντρον}}〈Kōrykion antron;コーリュキオン・アントロン〉、[[:en:Corycian Cave]])コーリュキオン洞窟((Κωρύκιον ἄντρον)〈Kōrykion antron;コーリュキオン・アントロン〉、Corycian Cave)</ref> に閉じ込めてしまう。そしてテューポーンはゼウスの腱を熊の皮に隠し、番人として半獣の竜女[[デルピュネー]]を置き、自分は傷の治療のために母ガイアの下へ向かった。に閉じ込めてしまう'''。そしてテューポーンはゼウスの腱を熊の皮に隠し、番人として半獣の竜女デルピュネーを置き、自分は傷の治療のために母ガイアの下へ向かった。
ゼウスが囚われたことを知った[[ヘルメース]]と[[パーン]]はゼウスの救出に向かい、デルピュネーを騙して手足の腱を盗み出し、ゼウスを治療した。力を取り戻したゼウスは再びテューポーンと壮絶な戦いを繰り広げ、深手を負わせて追い詰める。テューポーンはゼウスに勝つために運命の女神[[モイラ (ギリシア神話)|モイラ]]たちを脅し、どんな願いも叶うという「勝利の果実」を手に入れたが、その実を食べた途端、テューポーンは力を失ってしまった。実は女神たちがテューポーンに与えたのは、決して望みが叶うことはないという「無常の果実」であった。ゼウスが囚われたことを知ったヘルメースとパーンはゼウスの救出に向かい、デルピュネーを騙して手足の腱を盗み出し、ゼウスを治療した。力を取り戻したゼウスは再びテューポーンと壮絶な戦いを繰り広げ、深手を負わせて追い詰める。テューポーンはゼウスに勝つために運命の女神モイラたちを脅し、どんな願いも叶うという「勝利の果実」を手に入れたが、その実を食べた途端、テューポーンは力を失ってしまった。実は女神たちがテューポーンに与えたのは、決して望みが叶うことはないという「無常の果実」であった。
敗走を続けたテューポーンは[[トラーキア]]で[[バルカン山脈|ハイモス山]](バルカン山脈)を持ち上げてゼウスに投げつけようとしたが、ゼウスは雷霆でハイモス山を撃ったので逆にテューポーンを押しつぶし、山にテューポーンの血がほとばしった。最後は[[シチリア|シケリア島]]まで追い詰められ、[[エトナ火山]]の下敷きにされた。以来、テューポーンがエトナ山の重圧を逃れようともがくたび、噴火が起こるという{{Sfnp|アポロドーロス・高津|1953|loc=第1巻 6・3}}。ゼウスはヘーパイストスにテューポーンの監視を命じ、ヘーパイストスはテューポーンの首に[[金床]]を置き、鍛冶の仕事をしているという{{Sfnp|アントーニーヌス・安村|2006|loc=第28話}}。ただし、シケリア島に封印されているのは[[エンケラドス]]とする説もある。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|<references group="注"}}/>
=== 出典 ===
{{Reflist|2|
[[Category:ユミル系]]
[[Category:肩蛇系]]
[[Category:水性動物系]]
[[Category:蛇]]