古代においては「浦島子」が、'''亀に身をやつした異郷の姫'''に出会い、夫婦になる縁といわれ、異郷にいざなわれる展開である<ref>下澤, 1980, p30</ref><ref>大内, 2002, p21-22</ref>。"神女のおしかけ女房的な話"などと形容される<ref>下澤, 1980, p30</ref>。異郷で3年暮らして望郷の念にかられるが、陸の世界に戻ると300年がたっており、開けるなと禁じられた箱を開けると体が消滅してしまうというのは、ほぼ近代版どおりである<ref>大内, 2002, p21-22</ref><ref>下澤, 1980, p33、34</ref>。
名称は時代によってことなり、異郷は蓬山・常世(→竜宮城)、人物は浦島子(→浦島)、亀比女(→乙姫)、箱は玉匣(→玉手箱)のように変遷する{{sfnp|<ref>下澤|, 1980|pp=30, p30-34}}{{sfnp|</ref><ref>大内|, 2002|pp=21, p21-22}}</ref>。
亀を漁師の浦島が助けてやるという発端は、中世(御伽草紙)にくわわるが、亀はすなわち竜宮の姫のままであり、自分が救われた理由で夫婦になる{{sfnp|<ref>下澤|, 1980|pp=30, p30-34}}{{sfnp|</ref><ref>大内|, 2002|pp=21, p21-22}}</ref>。動物報恩譚の様相をとるともされる{{sfnp|<ref>下澤|, 1980|p=31}}{{sfnp|, p31</ref><ref>大内|, 2002|p=22}}, p22</ref>。
古代・中世とも浦島と姫は船で異郷にたどりつく{{sfnp|下澤|1980|pp=32-33}}。しかし江戸時代、浦島が亀の上に乗って竜宮に行き来するのが図像化される。その嚆矢は17世紀末([[元禄時代]])頃とも{{Refn|group="注"|name="urashima-ride"}}18世紀半ばともされる{{Refn|18世紀半ばの説が、阪口保『浦島説話の研究』、新元社、1955年にみえる{{sfnp|下澤|1980|loc=p.33, 注20}}。}}。亀に乗る浦島図は、多くの草双紙などに描かれようになったが{{sfnp|林|2019}}、相変わらず竜宮が波上に描かれるのも一般的であった{{Refn|{{harvp|林|2001}}。厳密には一般的な定番というより、亀の上に立って乗る図がみられるなかで{{sfnp|林|2001|pp=41-43}}、多くは竜宮が波の上に浮かぶように描かれる、とする{{sfnp|林|2001|p=44}}。<!--が、まわりくどくなるのでおおまかに述べた。-->}}。明治の赤本絵本(1880年代)や<ref name="akahon-text"/>[[月岡芳年]]の「漫画」(1886年)では、海上の楼閣に見えるが、詳述がない{{Refn|name="yoshitoshi-manga1886"|{{citation|和書|last=月岡 |first=芳年 |author-link=月岡芳年 |title=浦嶋之子歸國従龍宮城之圖 |series=芳年漫画 |publisher=小林鉄次郎 |date=1886}}<ref name="yoshitoshi-manga1886-scripps"/>(2枚刷り。立命館大学蔵は左葉のみである。)}}。