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ただし、実際には白黒2色のコクマルガラスや暗褐色に白斑のホシガラス等もおり、必ずしも全身が真っ黒のものだけではない。
 
== 神話・伝承 ==
太陽の使いや神の使いという神話や伝承が世界各地にある。元は違う色だったカラスの羽毛が、何らかの原因で真っ黒になってしまった、という伝承が世界各地にある。
 
視力が高い、見分ける知能もあるということから「炯眼」「慧眼」とされ、神話や伝承において斥候や走駆や密偵や偵察の役目を持つ位置付けで描かれることが多い。
 
=== 日本 ===
==== 伝承・俗信 ====
古来、カラスは霊魂を運ぶ霊鳥とされていた。「烏鳴きが悪いと人が死ぬ」という伝承があり、カラスが騒いだり異様な声で鳴くとその近所に死人があると信じられた<ref name="nazogaku">岩井宏實『日本の伝統を読み解く:暮らしの謎学』(青春出版社、2003年、ISBN 4413040686)63-64頁</ref>。また、[[カキノキ|柿]]を収穫する時、翌年カラスが柿の木に宿る霊魂を連れて帰ってくると考えられ、カラスのために最後の実を残す風習があった<ref name="nazogaku" />。
 
「月夜烏は火に祟る」と言われ、夜のカラスの鳴き声が火災の前兆とされる俗信もあった<ref name="nazogaku" />。
 
八巻正治は自著『聖書とハンディキャップ』(一粒社、1991年)224頁で「ご承知のようにカラスを漢字では『烏』と書きますが、これをよく見ると「鳥」という字と少し異なります(横路が一本足りません)。つまりやや飛躍して考えるならば、カラスは鳥の中でも低くとらえられている存在でもあるともいえるのです。」と主張しているが、「烏」の成り立ちについては、全身が黒いカラスの目はカモフラージュされ見えづらいため、象形文字である「鳥」から目の部分を表す一本の横線を取ったというのが通説である。
 
==== 信仰 ====
カラスは古来、吉兆を示す鳥であった。日本神話の神武東征で、熊野に上陸して大和国へ向かう神武天皇を三本足の「[[八咫烏]](やたがらす)」が松明を掲げ導いたと伝わる。日本サッカー協会のシンボルマークはこの八咫烏である。
 
この言い伝えから、[[八咫烏]]やカラスは家紋としても利用されており、有名なところでは熊野の雑賀党鈴木氏が存在する。カラスは熊野三山の御使いでもある。熊野神社などから出す牛王宝印(ごおうほういん=熊野牛王符)は、本来は神札であり、中世~近世には起請文を起こす用紙ともされたが、その紙面では、カラスの群れが奇妙な文字を形作っている。これを使った起請を破ると、熊野でカラスが3羽死に、その人には天罰が下るという。「誓紙書くたび三羽づつ、熊野で烏が死んだげな」という小唄もある。
 
[長野県の北信地方に伝わる「烏踊り」といわれる民謡と踊りがあり、足さばきにおいて九種類の型を繰り返すことから、修験者である山伏が唱えた呪法である九字切り(九字護身法)を手ではなく足で行ったとされる。このことと、山岳信仰を起源に持つ修験道では、「カラスは神の使い」とされてきたことと合わせて、この烏踊りは山岳信仰に基づく烏に対する信仰と修験者の踊りが、民謡になっていったと考えられている。
 
容貌がカラスに似た[[天狗]]については「[[烏天狗]]」を参照。
 
==== カラスの色 ====
また神話・伝説上では通常、生物学的に知られているカラスとは色違い・特徴違いのカラスが存在する。それらは、吉祥と霊格の高い順に[[八咫烏]]、[[赤烏]]、[[青烏]]、[[蒼烏]]と[[白烏]]が同等とされている。
 
民話の一つには次のようなものがある。「カラスは元々白い鳥だったが、フクロウの染物屋に綺麗な色に塗り替えを頼んだところ、黒地に金や銀で模様を描けば上品で美しく仕上がると考えたフクロウはいきなりカラスの全身を真っ黒に塗ってしまい、怒ったカラスに追い掛け回され、今ではカラスが飛ばない夜にしか表に出られなくなった。カラスはいまだにガアガアと抗議の声を上げている」というものがある。別に伝わる民話では「欲張りなカラスの注文に応じて様々な模様を重ね塗りしていくうちに、ついに真っ黒になってしまった」というものもある。
 
=== 中国 ===
日本を含む、中華文明圏とその周辺国に伝わる「[[三足烏]]」は、中国の「日烏」が起源である。中国では古来、太陽にはカラス、月には[[ウサギ]]または[[ヒキガエル科|ヒキガエル]]が棲むとされてそれぞれの象徴となった。月日のことを「烏兎(うと)」と呼ぶ用例等にこれが現れている。足が3本あるのは、中国では奇数は陽、偶数は陰とされるので、太陽の象徴であるカラスが2本足では表象にずれが生じるからである。このカラスの外形の起源に付いては、黄土の土煙を通して観察された[[太陽黒点]]から来ているのではないかとする説がある。清朝においては、太祖がカラスに命を救われた逸話に基づき、神聖な動物として尊重された。
 
=== イギリス ===
イギリスでは、[[アーサー王]]が魔法をかけられてワタリガラス(大ガラス)に姿を変えられたと伝えられる。このことから、ワタリガラスを傷付けることは、アーサー王(さらには英国王室)に対する反逆とも言われ、不吉なことを招くとされている。また、ロンドン塔においては、ロンドン大火の際に大量に繁殖したワタリガラスが時の権力者に保護され、ワタリガラスとロンドン塔は現在に至るまで密接な関係にある。なお、J.R.R.トルーキンの『ホビットの冒険』作中に、ワタリガラス(原文は Raven。訳書によってはオオガラス)の一族が登場するが、これも英国王室に少なからぬ関係を持つワタリガラスを尊重しての登場だと言われている。ただし、『指輪物語』にも登場するクレバインと呼ばれる大鴉たちは、むしろ邪悪の陣営の走狗としての役どころである。
 
=== ケルト神話 ===
ケルト神話に登場する女神(戦いの神)[[モリガン]]、[[マッハ (ケルト神話)|ヴァハ]]、[[バズヴ]]([[ネヴァン]])は、戦場にワタリガラスの姿となって現れる。もしくは、肩にカラスが留まっている姿で描写されたり、バズヴがカラスの化身であると伝承されたりしている。神といっても清廉や崇高な印象ではなく、戦場に殺戮と死をもたらす存在として描かれることが多い。
 
=== 北欧神話 ===
北欧神話では、主神であり、戦争と死を司る神、[[オーディン]]の斥候として、2羽のワタリガラス[[フギンとムニン|「'''フギン'''(=思考)と'''ムニン'''(=記憶)」]]が登場する。このワタリガラスは世界中を飛び回り、オーディンに様々な情報を伝えているとされる。
 
=== 東欧 ===
* [http://bellis.sakura.ne.jp/k/tegalog.cgi?postid=119 紡錘むすめ]:コミ共和国。大からすが伝令的な役割を果たし、主人公を勝利に導く。からすが伝令の場合は人間に言葉が通じず失敗する<ref>ソヴィエト諸民族民話集、エム・ブラートフ編、未来社、1955、p28-29</ref>。
 
=== ギリシア神話 ===
ギリシア神話では太陽神[[アポローン]]に仕えていた。色は白銀(白・銀とも)で美しい声を持ち、人の言葉も話すことができる非常に賢い鳥だったとされる。しかし、ある時にカラスは、天界のアポロンと離れて地上で暮らす妻[[コローニス|コロニス]]が、人間の男である[[イスキュス]]と親しくしている(見間違いとも)とアポロンに密告(虚偽の報告とも)をした。アポロンは嫉妬して怒り、天界から弓で矢を放ち、コロニスを射抜いてしまった。死ぬ間際に「あなたの子を身ごもっている」と告げたコロニスの言葉に、我に返ったアポロンは後悔し、きっかけ(密告した・虚偽の報告をした)を作ったカラスに行き場の無い怒りをぶつけ、その美しい羽の色と美声と人語を奪った。カラスは天界を追放され、喪に服すかのように羽は漆黒に変わり、声も潰れて、言葉を話すどころか、醜い鳴き声を発することしかできなくなった。
 
;異説
異説として、アポロンの走駆や密偵、または水くみの仰せをつかったカラスが、地上で道草をしてしまい、地上の状況の報告または水くみが遅れ、「嘘をついて言い訳をした」または「コロニスとイスキュスの密会をでっち上げた」というものもあり、水くみについては、仕えたカラスの死後、天上に星座としてかたどったとしながらも、コップ座がちょうどからす座のくちばしに届かない微妙な位置にあることから、水くみの異説を裏付けるものとして捉えられている。
 
=== エジプト ===
古代エジプトでは太陽の鳥とされた。
 
=== 中東 ===
メソポタミアを中心に旧約聖書『創世記』5章から10章でも伝わる世界を襲った大洪水の後に、『創世記』8章7節において、炯眼から偵察として初めて外に放たれた動物である。洪水後、船から放され、水がひいたことを知らせた。旧約聖書ではカラスに次いで鳩が放たれた。
 
預言者エリヤがアハブ王から逃れていた間、主の遣いであるカラスの持ってくるパンと肉によって養われていた(『列王記』上17章2-6節)。
 
=== 北米先住民 ===
トリンギット族(クリンギット)とトリンギット亜族(チルカット族・ツィムシアン族・ハイダ族)に伝わるカラスは、創世に関わるものが複数あり、代表的なものとしては、「ワタリガラスが森を作り、人を始めとした生き物が住み着いたが、あるときに寒波が襲い、生き物は死に絶えそうになった。一計を案じたワタリガラスは、[[ワシ]]に太陽まで飛んで行ってそのかけらを持ち帰ってほしいと頼んだ。ワシは承諾し、身を焦がしながらも火を持ち帰り、大地の様々な所に火を灯した。それが、生きとし生けるものの魂となった」というものがあり、この伝承の影響からかハイダ族は、カラス族とワシ族の2部族に分かれている。
 
その他のバリエーションとしては、人々が暗闇の中で何も持たず暮らしているのを不憫に思ったワタリガラスが、「二枚貝の暗闇の中から誘い出す」「神が隠した太陽を神の娘の子供としてカラス自身が娘に受胎して神の孫となって神に頼んで太陽を開放する」「天上界(空の家という表現)へ変装して忍び込み星と月と日を盗み出し、人々に開放する」といった各話に、「人々に暮らしや家を与える、作り方などを教える」といったものが付加される形で創世の神話がなっている。
 
== イメージ ==
知能が高い面が狡猾(こうかつ)な印象を与えたり、食性の一面である腐肉食や黒い羽毛が死を連想させたりすることから、様々な物語における悪魔や魔女の使い(使い魔)や化身のように、悪や不吉の象徴として描かれることが多い。その逆に、上記のような神話・伝説にあるように、古来から世界各地で「太陽の使い」や「神の使い」として崇められて生き物でもある。これは古代の世界各地において、朝日や夕日など太陽に向かって飛んでいるように見えるカラスの姿(近年では太陽の位置と体内時計で帰巣する姿であるという研究がある)を目にした当時の人々が、この性質を太陽と結びつけた結果神聖視されるようになったという説がある。
 
また、古代には鳥葬の風習がかつてあった地域も世界には存在し、猛禽類やカラスなど肉食性の鳥類が天国へ魂を運ぶ、死の穢(けが)れを祓(はら)ってくれる、あるいは神の御使いであるなどの理由で神聖視されたという説もある。
 
日本では、カラスの実際の羽色は、「烏の濡羽色(からすのぬればいろ)」という表現もある通り、深みのあるつややかな濃紫色である烏の濡羽色は、黒く青みのあるつややかな色の名前で、特に女性の美しい黒髪の形容に使われることが多く、濡烏(ぬれがらす)、烏羽(からすば)、烏羽色ともいう。
 
ねぐらに帰る行動の時に鳴くことも多く、この行動が深く印象付けられてきたことから、帰る(帰郷・帰宅)や夕暮れを想像させ、伝統的にそういった比喩や例えがある。
== 種類 ==
茨城県の一部地域では、太平洋戦争が終わったあたりから、カラスの胸肉を生食(刺身)してきた経緯がら存続しており、特産品に推す声もある<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG3G4FZGG3GUTIL01H.html “カラス食べる文化守れ「軟らかく甘み」特産品に 茨城”]朝日新聞デジタル(2014年4月5日)2015年1月21日閲覧</ref>。『山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記』では、作者が実際に狩猟を行ったカラスを食用としている。焼き鳥なども試したが、硬いのでカレーライスなどの煮込み料理に合うと評価している。ただ、同僚のマサムネからは不評だった。
 
== 神話・伝承 ==
太陽の使いや神の使いという神話や伝承が世界各地にある。元は違う色だったカラスの羽毛が、何らかの原因で真っ黒になってしまった、という伝承が世界各地にある。
 
視力が高い、見分ける知能もあるということから「炯眼」「慧眼」とされ、神話や伝承において斥候や走駆や密偵や偵察の役目を持つ位置付けで描かれることが多い。
 
=== 日本 ===
==== 伝承・俗信 ====
古来、カラスは霊魂を運ぶ霊鳥とされていた。「烏鳴きが悪いと人が死ぬ」という伝承があり、カラスが騒いだり異様な声で鳴くとその近所に死人があると信じられた<ref name="nazogaku">岩井宏實『日本の伝統を読み解く:暮らしの謎学』(青春出版社、2003年、ISBN 4413040686)63-64頁</ref>。また、[[カキノキ|柿]]を収穫する時、翌年カラスが柿の木に宿る霊魂を連れて帰ってくると考えられ、カラスのために最後の実を残す風習があった<ref name="nazogaku" />。
 
「月夜烏は火に祟る」と言われ、夜のカラスの鳴き声が火災の前兆とされる俗信もあった<ref name="nazogaku" />。
 
八巻正治は自著『聖書とハンディキャップ』(一粒社、1991年)224頁で「ご承知のようにカラスを漢字では『烏』と書きますが、これをよく見ると「鳥」という字と少し異なります(横路が一本足りません)。つまりやや飛躍して考えるならば、カラスは鳥の中でも低くとらえられている存在でもあるともいえるのです。」と主張しているが、「烏」の成り立ちについては、全身が黒いカラスの目はカモフラージュされ見えづらいため、象形文字である「鳥」から目の部分を表す一本の横線を取ったというのが通説である。
 
==== 信仰 ====
カラスは古来、吉兆を示す鳥であった。日本神話の神武東征で、熊野に上陸して大和国へ向かう神武天皇を三本足の「[[八咫烏]](やたがらす)」が松明を掲げ導いたと伝わる。日本サッカー協会のシンボルマークはこの八咫烏である。
 
この言い伝えから、[[八咫烏]]やカラスは家紋としても利用されており、有名なところでは熊野の雑賀党鈴木氏が存在する。カラスは熊野三山の御使いでもある。熊野神社などから出す牛王宝印(ごおうほういん=熊野牛王符)は、本来は神札であり、中世~近世には起請文を起こす用紙ともされたが、その紙面では、カラスの群れが奇妙な文字を形作っている。これを使った起請を破ると、熊野でカラスが3羽死に、その人には天罰が下るという。「誓紙書くたび三羽づつ、熊野で烏が死んだげな」という小唄もある。
 
[長野県の北信地方に伝わる「烏踊り」といわれる民謡と踊りがあり、足さばきにおいて九種類の型を繰り返すことから、修験者である山伏が唱えた呪法である九字切り(九字護身法)を手ではなく足で行ったとされる。このことと、山岳信仰を起源に持つ修験道では、「カラスは神の使い」とされてきたことと合わせて、この烏踊りは山岳信仰に基づく烏に対する信仰と修験者の踊りが、民謡になっていったと考えられている。
 
容貌がカラスに似た[[天狗]]については「[[烏天狗]]」を参照。
 
==== カラスの色 ====
また神話・伝説上では通常、生物学的に知られているカラスとは色違い・特徴違いのカラスが存在する。それらは、吉祥と霊格の高い順に[[八咫烏]]、[[赤烏]]、[[青烏]]、[[蒼烏]]と[[白烏]]が同等とされている。
 
民話の一つには次のようなものがある。「カラスは元々白い鳥だったが、フクロウの染物屋に綺麗な色に塗り替えを頼んだところ、黒地に金や銀で模様を描けば上品で美しく仕上がると考えたフクロウはいきなりカラスの全身を真っ黒に塗ってしまい、怒ったカラスに追い掛け回され、今ではカラスが飛ばない夜にしか表に出られなくなった。カラスはいまだにガアガアと抗議の声を上げている」というものがある。別に伝わる民話では「欲張りなカラスの注文に応じて様々な模様を重ね塗りしていくうちに、ついに真っ黒になってしまった」というものもある。
 
=== 中国 ===
日本を含む、中華文明圏とその周辺国に伝わる「[[三足烏]]」は、中国の「日烏」が起源である。中国では古来、太陽にはカラス、月には[[ウサギ]]または[[ヒキガエル科|ヒキガエル]]が棲むとされてそれぞれの象徴となった。月日のことを「烏兎(うと)」と呼ぶ用例等にこれが現れている。足が3本あるのは、中国では奇数は陽、偶数は陰とされるので、太陽の象徴であるカラスが2本足では表象にずれが生じるからである。このカラスの外形の起源に付いては、黄土の土煙を通して観察された[[太陽黒点]]から来ているのではないかとする説がある。清朝においては、太祖がカラスに命を救われた逸話に基づき、神聖な動物として尊重された。
 
=== イギリス ===
イギリスでは、[[アーサー王]]が魔法をかけられてワタリガラス(大ガラス)に姿を変えられたと伝えられる。このことから、ワタリガラスを傷付けることは、アーサー王(さらには英国王室)に対する反逆とも言われ、不吉なことを招くとされている。また、ロンドン塔においては、ロンドン大火の際に大量に繁殖したワタリガラスが時の権力者に保護され、ワタリガラスとロンドン塔は現在に至るまで密接な関係にある。なお、J.R.R.トルーキンの『ホビットの冒険』作中に、ワタリガラス(原文は Raven。訳書によってはオオガラス)の一族が登場するが、これも英国王室に少なからぬ関係を持つワタリガラスを尊重しての登場だと言われている。ただし、『指輪物語』にも登場するクレバインと呼ばれる大鴉たちは、むしろ邪悪の陣営の走狗としての役どころである。
 
=== ケルト神話 ===
ケルト神話に登場する女神(戦いの神)[[モリガン]]、[[マッハ (ケルト神話)|ヴァハ]]、[[バズヴ]]([[ネヴァン]])は、戦場にワタリガラスの姿となって現れる。もしくは、肩にカラスが留まっている姿で描写されたり、バズヴがカラスの化身であると伝承されたりしている。神といっても清廉や崇高な印象ではなく、戦場に殺戮と死をもたらす存在として描かれることが多い。
 
=== 北欧神話 ===
北欧神話では、主神であり、戦争と死を司る神、[[オーディン]]の斥候として、2羽のワタリガラス[[フギンとムニン|「'''フギン'''(=思考)と'''ムニン'''(=記憶)」]]が登場する。このワタリガラスは世界中を飛び回り、オーディンに様々な情報を伝えているとされる。
 
=== ギリシア神話 ===
ギリシア神話では太陽神[[アポローン]]に仕えていた。色は白銀(白・銀とも)で美しい声を持ち、人の言葉も話すことができる非常に賢い鳥だったとされる。しかし、ある時にカラスは、天界のアポロンと離れて地上で暮らす妻[[コローニス|コロニス]]が、人間の男である[[イスキュス]]と親しくしている(見間違いとも)とアポロンに密告(虚偽の報告とも)をした。アポロンは嫉妬して怒り、天界から弓で矢を放ち、コロニスを射抜いてしまった。死ぬ間際に「あなたの子を身ごもっている」と告げたコロニスの言葉に、我に返ったアポロンは後悔し、きっかけ(密告した・虚偽の報告をした)を作ったカラスに行き場の無い怒りをぶつけ、その美しい羽の色と美声と人語を奪った。カラスは天界を追放され、喪に服すかのように羽は漆黒に変わり、声も潰れて、言葉を話すどころか、醜い鳴き声を発することしかできなくなった。
 
;異説
異説として、アポロンの走駆や密偵、または水くみの仰せをつかったカラスが、地上で道草をしてしまい、地上の状況の報告または水くみが遅れ、「嘘をついて言い訳をした」または「コロニスとイスキュスの密会をでっち上げた」というものもあり、水くみについては、仕えたカラスの死後、天上に星座としてかたどったとしながらも、コップ座がちょうどからす座のくちばしに届かない微妙な位置にあることから、水くみの異説を裏付けるものとして捉えられている。
 
=== エジプト ===
古代エジプトでは太陽の鳥とされた。
 
=== 中東 ===
メソポタミアを中心に旧約聖書『創世記』5章から10章でも伝わる世界を襲った大洪水の後に、『創世記』8章7節において、炯眼から偵察として初めて外に放たれた動物である。洪水後、船から放され、水がひいたことを知らせた。旧約聖書ではカラスに次いで鳩が放たれた。
 
預言者エリヤがアハブ王から逃れていた間、主の遣いであるカラスの持ってくるパンと肉によって養われていた(『列王記』上17章2-6節)。
 
=== 北米先住民 ===
[[トリンギット]]族(クリンギット)とトリンギット亜族([[チルカット]]族・[[ツィムシアン]]族・[[ハイダ族]])に伝わるカラスは、創世に関わるものが複数あり、代表的なものとしては、「ワタリガラスが森を作り、人を始めとした生き物が住み着いたが、あるときに寒波が襲い、生き物は死に絶えそうになった。一計を案じたワタリガラスは、[[ワシ]]に太陽まで飛んで行ってそのかけらを持ち帰ってほしいと頼んだ。ワシは承諾し、身を焦がしながらも火を持ち帰り、大地の様々な所に火を灯した。それが、生きとし生けるものの魂となった」というものがあり、この伝承の影響からかハイダ族は、カラス族とワシ族の2部族に分かれている。
 
その他のバリエーションとしては、人々が暗闇の中で何も持たず暮らしているのを不憫に思ったワタリガラスが、「[[二枚貝]]の暗闇の中から誘い出す」「神が隠した太陽を神の娘の子供としてカラス自身が娘に受胎して神の孫となって神に頼んで太陽を開放する」「天上界(空の家という表現)へ変装して忍び込み星と月と日を盗み出し、人々に開放する」といった各話に、「人々に暮らしや家を与える、作り方などを教える」といったものが付加される形で創世の神話がなっている。
 
== イメージ ==
知能が高い面が狡猾(こうかつ)な印象を与えたり、食性の一面である[[腐肉食]]や黒い羽毛が死を連想させたりすることから、様々な物語における[[悪魔]]や[[魔女]]の使い([[使い魔]])や[[化身]]のように、悪や不吉の象徴として描かれることが多い。その逆に、上記のような神話・伝説にあるように、古来から世界各地で「太陽の使い」や「神の使い」として崇められて生き物でもある。これは古代の世界各地において、朝日や夕日など太陽に向かって飛んでいるように見えるカラスの姿(近年では太陽の位置と[[体内時計]]で帰巣する姿であるという研究がある)を目にした当時の人々が、この性質を太陽と結びつけた結果神聖視されるようになったという説がある。
 
また、古代には[[鳥葬]]の風習がかつてあった地域も世界には存在し、猛禽類やカラスなど肉食性の鳥類が天国へ魂を運ぶ、死の穢(けが)れを祓(はら)ってくれる、あるいは神の御使いであるなどの理由で神聖視されたという説もある。
 
日本では、カラスの実際の羽色は、「烏の濡羽色(からすのぬればいろ)」という表現もある通り、深みのあるつややかな濃紫色である烏の濡羽色は、黒く青みのあるつややかな色の名前で、特に女性の美しい黒髪の形容に使われることが多く、[[濡烏]](ぬれがらす)、烏羽(からすば)、烏羽色ともいう。
 
ねぐらに帰る行動の時に鳴くことも多く、この行動が深く印象付けられてきたことから、帰る(帰郷・帰宅)や夕暮れを想像させ、伝統的にそういった比喩や例えがある。
== 慣用句・常套句・名文句 ==
[[File:Corbeau branche Kyo.jpg|thumb|right|130px| [[円山応挙]]『からす』]]烏を用いた[[慣用句]]などには次のようなものがある。烏を用いた慣用句などには次のようなものがある。
* 烏の行水(すぐに風呂から上がってしまうこと)
* 烏の足跡(目じりのしわが足跡のように見えることから)
* 烏の髪(黒髪のこと)
* 烏の鳴かぬ日はあっても(この後に続けて毎日何かが行われる様子を書く強調表現)
* [[濡烏]]・烏の濡れ羽色(しっとりと濡れたような黒色。黒髪を指す場合が多い)濡烏・烏の濡れ羽色(しっとりと濡れたような黒色。黒髪を指す場合が多い)
* 闇夜に烏(見分けがつかないことの例え)
* [[三羽烏]](さんばがらす、三人組のたとえ)三羽烏(さんばがらす、三人組のたとえ)
* 烏合の衆(統制の取れていない集団をさす言葉)
*「カラスが鳴くから、帰ーろうっ」(男子)/「カラスが鳴くから帰りましょ」(女子) - 夕方になって子供たちが遊びを仕舞にし、「みんな家に帰ろうよ」という時の合図のように使われる。
* 「ねぐらへ帰る烏が二羽、三羽」(アナウンサーである[[松内則三]]が、[[1929年]]([[昭和]]4年)秋の[[東京六大学野球]][[早慶戦]]3回戦の実況の際、夕暮れの[[神宮球場]]の情景をラジオで伝え、これがレコード化されたため著名になった文句「ねぐらへ帰る烏が二羽、三羽」(アナウンサーである松内則三が、1929年(昭和4年)秋の東京六大学野球早慶戦3回戦の実況の際、夕暮れの神宮球場の情景をラジオで伝え、これがレコード化されたため著名になった文句<ref name=matsui>[[松井高志]]編「松井高志編「[http://wageiidiom.cocolog-nifty.com/baseball/cat5099259/index.html 野球“きまり文句”小辞典]」 [[ココログ]](2005年12月8日)ココログ(2005年12月8日)</ref>)* 烏を食べる(英語で屈辱を耐える、恥を忍ぶの意<ref>21世紀研究会『食の世界地図』([[文藝春秋]])226頁21世紀研究会『食の世界地図』(文藝春秋)226頁</ref>)* 月夜烏(秋の[[季語]]。夜にうかれて騒ぐカラスから転じて夜遊びする人を指す月夜烏(秋の季語。夜にうかれて騒ぐカラスから転じて夜遊びする人を指す<ref>{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/%E6%9C%88%E5%A4%9C%E7%83%8F-571272 |title=, 月夜烏 |work=デジタル[[大辞泉]] |publisher=[[, デジタル大辞泉, コトバンク]] |accessdate=, 2015-10-04 }}</ref>)
== カラスに関係した飛行機 ==
* [[二宮忠八]]は、カラスが翼を広げて滑空する姿から、この翼の原理を応用すれば空を飛ぶ機械が作れると発想。[[1891年]]([[明治]]24年)にゴム動力模型[[飛行機]]「カラス号」の初飛行を成功させた。二宮忠八は、カラスが翼を広げて滑空する姿から、この翼の原理を応用すれば空を飛ぶ機械が作れると発想。1891年(明治24年)にゴム動力模型飛行機「カラス号」の初飛行を成功させた。* [[アメリカ空軍]]の[[電子戦機]][[EFアメリカ空軍の電子戦機EF-111]]のニックネームはレイヴン(大鴉、ワタリガラス)である。111のニックネームはレイヴン(大鴉、ワタリガラス)である。* [[スターフライヤー]]の[[エアバスA320]]も機体のほぼ全体が黒色のため「カラス」と言われることがある。スターフライヤーのエアバスA320も機体のほぼ全体が黒色のため「カラス」と言われることがある。
== カラスが重要な位置づけで登場する作品 ==
[[File:The Crow and the Pitcher - Project Gutenberg etext 19994.jpg|thumb|『[[カラスと水差し]]』]]
 
=== 文学 ===
* [[イソップ寓話]] - いくつかの話に登場する。知能の高さや、全身が黒い見た目などを題材としている。* 『[[シートン動物記]]』 『シートン動物記』 - シルバー・スポット(銀の星)と呼ばれる、賢い老ガラスのリーダーが登場する話がある。* 『バーナビー・ラッジ』 - [[ディケンズ]]の半推理・半歴史長編。人間の言葉を真似るカラスが登場。ディケンズの半推理・半歴史長編。人間の言葉を真似るカラスが登場。* 『ぼくのくろう』 - [[畑正憲]]の[[ノンフィクション]]。小学校の[[国語 (教科)|国語]]の[[教科書]]に採用された。畑正憲のノンフィクション。小学校の国語の教科書に採用された。* 『[[大鴉]]』 『大鴉』 - [[エドガー・アラン・ポー]]の[[物語詩]]。愛する女性を亡くした男の部屋にカラスが舞い込み エドガー・アラン・ポーの物語詩。愛する女性を亡くした男の部屋にカラスが舞い込み “Nevermore”(もう2度とない)という鳴き声を繰り返すという内容。
=== 漫画・映画 ===
* 『[[ザ・クロウ]]』『[[クロウ『ザ・クロウ』『クロウ/飛翔伝説]]』飛翔伝説』* 『夜叉鴉』 - [[荻野真]]によるアクション漫画。荻野真によるアクション漫画。* 『恐怖のくちばし』 - [[古賀新一]]による[[怪奇漫画]]。古賀新一による怪奇漫画。
=== 歌曲 ===
* 『[[夕焼小焼]]』 『夕焼小焼』 - [[中村雨紅]]の詩。[[草川信]]作曲の[[童謡]]。中村雨紅の詩。草川信作曲の童謡。* 『[[七つの子]]』 『七つの子』 - [[野口雨情]]の詩。[[本居長世]]作曲の童謡。子を思う親の心情を山に帰るカラスに託して歌う。野口雨情の詩。本居長世作曲の童謡。子を思う親の心情を山に帰るカラスに託して歌う。* 『[[冬の旅]]』 『冬の旅』 - [[フランツ・シューベルト]]作曲の歌曲集。第15曲に「からす」のタイトルが与えられ、主人公の頭上を飛ぶ不吉な鳥について歌われる。フランツ・シューベルト作曲の歌曲集。第15曲に「からす」のタイトルが与えられ、主人公の頭上を飛ぶ不吉な鳥について歌われる。* 『鴉』 - 清水重道の詩。氷の上を飄々(ひょうひょう)と歩く大ガラスを印象的に歌う。[[信時潔]]は歌曲集『沙羅』の中でこれをとりあげ、[[狂言]]を思わせる曲を付けた。清水重道の詩。氷の上を飄々(ひょうひょう)と歩く大ガラスを印象的に歌う。信時潔は歌曲集『沙羅』の中でこれをとりあげ、狂言を思わせる曲を付けた。
== 脚注 ==
== 外部リンク ==
* [http://www.wbsj.org/nature/kyozon/karasu/index.html カラス~都市におけるカラス問題~] - [[日本野鳥の会]]サイト内日本野鳥の会サイト内* [https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs5-1b/index.html 自治体担当者のためのカラス対策マニュアル] - [[環境省]]* [https://www.city.otaru.lg.jp/simin/anzen/seikatuanzen/dobutu_musi/crow_knowledge.html 知っておこう カラスの基礎知識] - 北海道[[小樽市]]北海道小樽市* {{Wayback|url=, http://homepage3.nifty.com/shibalabo/crow/index.htm |title=, カラス研究室 |date=, 20020326152840}}*[https://www.happano.org/players-in-sable カラスを題材にした物語]-「黒衣のエンターテイナー」([[アメリカ合衆国]]の野生動物観察家・作家ウィリアム・ロング著)「黒衣のエンターテイナー」(アメリカ合衆国の野生動物観察家・作家ウィリアム・ロング著)
== 参照 ==
{{DEFAULTSORT:からす}}
[[Category:烏|*]]
[[Category:類烏|*]]
[[Category:鳥]]
[[Category:東欧神話]]

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