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古代の初期におけるヘーラーの重要性は、ヘーラーに敬意を表して行われた大規模な建築プロジェクトによって証明されている。ヘーラー信仰の中心地であるサモスのヘライオンとアルゴスのヘライオンにあるヘーラー神殿は、紀元前8世紀に建てられたギリシャ最古の記念碑的な神殿である<ref>O'Brien, Joan V., Joan V. O'Brien, The Transformation of Hera: A Study of Ritual, Hero, and the Goddess in the Iliad, https://books.google.com/books?id=a77yKM26GfYC&pg=PA26, 1993, Rowman & Littlefield, isbn:978-0-8476-7808-2, page26</ref>。
 
ヘーラーはサモス島で誕生したと考えられており、サモス島は古くからヘーラー信仰の中心地となっていた。また一説にサモス島におけるゼウスとヘーラーの結婚式の夜は三百年の間続いたという<ref>ロバート・グレーヴス『ギリシア神話 上巻』紀伊国屋書店、1973年、12章b。</ref>。
 
元来は、アルゴス、ミュケーナイ、スパルタ等のペロポネーソス半島一帯に確固たる宗教的基盤を持っており、かつてアカイア人に信仰された地母神であったとされ、北方からの征服者との和合をゼウスとの結婚で象徴させたと考えられる<ref name="F" />。
 
二神の不和は、両者の崇拝者が敵対関係にあったことの名残とも考えられている<ref name="F" />。
 
アルゴスの神殿にあるヘーラー像はカッコウのとまった玉杖と柘榴を持っていた<ref>パウサニアス、2巻17・4。</ref>。
=== 重要性 ===
=== ゼウスとの結婚 ===
ゼウスと結婚するにあたって、以下のエピソードが有名である。掟の女神[[テミス]]と結婚していたゼウスは、ヘーラーの美しさに恋に落ち、[[カッコウ]]に化けてヘーラーに近付き犯そうとした。しかし、ヘーラーは抵抗を続け、決してゼウスに身体を許さなかった。ヘーラーは交わることの条件として結婚を提示した。ヘーラーに魅了されていたゼウスは仕方なくテミスと離婚すると、ヘーラーと結婚した。また、ゼウスとヘーラーの関係は結婚前から久しく続いており、キタイローン山で交わっていたともいわれる<ref name="F" />。
 
ある時ヘーラーはゼウスと争った後にオリュンポスから離れキタイローン山に隠れた<ref name="J">高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』233,242頁。</ref>。ゼウスはヘーラーを誘い出すため、花嫁衣装で着飾った大きな女性の木偶人形を造り、新しく結婚すると言って同山中を通行した<ref name="J" />。それを聞いたヘーラーが飛び出して新しいゼウスの妃の衣装をむしり取ると、木像であることに気付いて和解した<ref name="J" /><ref group="私注">ヘーラーにも「隠れる女神」の性質があることが分かる。</ref>。
 
ヘーラーは母性よりも結婚と出産の女神であり、その神話の多くは兄ゼウスとの結婚を中心に展開されている。ヘーラーは彼に魅了され、ゼウスを誘惑する。ゼウスはヘーラーを騙し、他の女神や人間の女性との間に多くの子供をもうける。ヘーラーはゼウスの子供とその母親に対して激しい嫉妬と執念を抱き、ゼウスはヘーラーを脅し、暴力を振るう、等である<ref>Burkert, Walter, Greek religion, 1985, Harvard University Press, Cambridge, Mass. , isbn:0674362810, pages131–135</ref>。
シケリアのディオドロスによると、ヘーラークレースの母アルクメネーがゼウスが寝た最後の女性で、ヘーラークレースの誕生後、ゼウスは人間を生むことをやめたとされている<ref>Diodorus Siculus, ''Bibliotheca historica|Library of History'' [https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Diodorus_Siculus/4B*.html#p391 4.14.4]</ref>。
=== ヘーラークレース 嫉妬 ===オリュンポス十二神の中でも情報収集能力に優れた描写が多く、ゼウスの浮気を迅速に察知するなど高い監視能力を発揮する。ギリシア神話に登場する男神は総じて女好きであり、ゼウスはその代表格である。そのため、結婚の守護神でもあるヘーラーは嫉妬心が深くゼウスの愛人([[セメレー]]、[[レートー]]、[[カリストー]]、[[ラミアー]]、[[アイギーナ]]とヘーラーに仕える女神官・[[イーオー]]など)やその間に生まれた子供([[ディオニューソス]]、[[ヘーラクレース]]など)に復讐する<ref name="G" />。自分の子孫にも容赦の無い一面も持ち、ゼウスの愛人になった曾孫[[セメレー]]に人間が直視すると致命的な危険があるゼウスの真の姿を見たがるように仕向ける、[[ヘーラクレース]]に惚れ込んで黄金の帯を譲る約束をした孫の[[ヒッポリュテー]]の部下を煽動してヘーラクレース一行を襲わせ、最終的には潔白を示すために無抵抗のまま弁明を試みるヒッポリュテーをヘーラクレースに殺させる、と両人に悲惨な最期を遂げさせている。しかし、浮気な夫とは対照的に、ヘーラー自身は貞淑である<ref name="G" />。 気が強く、ゼウスの浮気を手助けした[[エーコー]]、ディオニューソスを育てた[[イーノー]]と[[アタマース]]、ヘーラーの容色の美しさを競った[[シーデー]]と[[ゲラナ]]、ヘーラーと意見を違えた[[テイレシアース]]などを罰している。 [[ポセイドーン]]、[[アテーナー]]、[[アポローン]]と共にゼウスに対して反乱を起こしたこともあり、その際[[ゼウス]]はヘーラーを懲らし、天上から吊るし上げている。また、ヘーラクレースの船隊がトロイアから帰る途中、[[ヒュプノス]]にゼウスを眠らせ、嵐を送ってヘーラクレースの船をコース島に漂着させた<ref name="J" />。その後、目覚めた[[ゼウス]]はヘーラーをオリュンポスから宙吊りにした<ref name="J" /><ref group="私注">ヘーラーにも「吊される神」の性質があることが分かる。</ref>。 最も特殊な異伝は、『ホメーロス風讃歌』の中の「アポローン讃歌」であろう。ゼウスが知恵の女神アテーナーをひとりで生み出したことや、彼女の産んだヘーパイストスがアテーナーに見劣りすることに腹を立て、[[ティーターン]]神族の助けを借りて単性で[[テューポーン]]を産んだとされる<ref>『ホメーロス風讃歌』第3歌「アポローン讃歌」304-354。</ref>。 === ヘーラークレースと天の川 ===ヘーラーの母乳は飲んだ人間の肉体を不死身に変える力があり、ヘーラクレースもこれを飲んだために乳児時代から驚異的な怪力を発揮できた。また、この時にヘーラクレースの母乳を吸う力があまりにも強かったため、ヘーラーはヘーラクレースを突き飛ばし、その際に飛び散ったヘーラーの母乳が[[天の川]]になった。なお、ヘーラクレースはヘーラーの子ではないが、「ヘーラーの栄光」という意味の名を持つ<ref name="G" />。ヘーラクレースが神の座に着く時、ヘーラーは娘のヘーベーを妻に与えた。 
ヘーラーはヘーラークレースの継母であり、敵である。 ヘーラークレースという名前は「ヘーラーの栄光」を意味する。 ホメロスの『イーリアス』では、アルクメネーがヘーラークレースを産もうとしたとき、ゼウスがすべての神々に「その日、ゼウス自身による子供が生まれ、周囲の者を支配するだろう。」と告げたとされる。ヘーラーはゼウスにその旨の誓約を求めた後、オリンポスからアルゴスに降り立ち、ステネロス(ペルセウスの息子)の妻にわずか7ヶ月でエウリュステウスを産ませ、同時にアルクメネーにヘーラークレースを産ませないようにしたのである。その結果、ゼウスの誓いが果たされ、ヘーラークレースではなくエウリュステウスが支配者として選ばれたのである<ref name="Hom. Il. 19.95"/>。パウサニアスの記述では、ヘーラーはアルクメネがヘラクレスを産むのを邪魔するために魔女(テーベ人たちは魔女と呼んでいた)を送り込んでいる。魔女たちは出産を阻止することに成功するが、ティレシアスの娘ヒストリスが魔女たちを欺く策略を思いつく。ヒストリスはガランシスと同じく、アルクメネーが子供を産んだと告げ、魔女たちは騙されて立ち去り、アルクメネーが出産するのを許した<ref name="Paus. 9.11.3">Pausanias, ''Description of Greece'' [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text?doc=Paus.+9.11.3 9.11.3]</ref>。
=== ''イーリアス'' ===
自分の美しさを認めないという理由で[[パリス]]を恨んでいるため、トロイアを滅ぼすことに執心しておりトロイア戦争では[[アテーナー]]と組んでギリシア側に味方する<ref name="G" />。ギリシア側の英雄たちを助けて戦いながらアテーナーと力を合わせ、敵対した[[アプロディーテー]]の情人であり自らの息子でもある、戦いを司る神・アレースを撃退する<ref>ホメーロス『イーリアス』5巻。</ref>。また、ギリシア軍の劣勢に気をもむヘーラーはアプロディーテーの宝帯(装着するとあらゆる神や人の心を征服することが出来る)を借りて、トロイア軍を助けたゼウスを魅了し、暫くトロイア戦争のことを忘れさせようとした<ref>ホメーロス『イーリアス』14巻。</ref>。腕っぷしも強く、トロイア軍を支援した[[アルテミス]]を素手で打ちのめす逸話もある<ref name="G" /><ref>ホメーロス『イーリアス』21巻。</ref>。
 
ヘーラーは『イーリアス』において重要な役割を担っており、叙事詩全体を通していくつかの本に登場する。ヘーラーはパリスが「アプロディーテこそ最も美しい女神」と判断したことからトロイア軍を憎み、戦争中はギリシア軍を支持した。 叙事詩の中で、ヘーラーはトロイア軍を妨害する試みを何度も行っている。1巻と2巻では、ヘラはトロイアを滅ぼさなければならないと宣言している。ヘーラーはアテーナーにアカイア人の戦闘を助けるように説得し、アテーナーは彼らのために戦争に干渉することに同意する<ref name="Iliad">Homer, The Iliad, https://archive.org/details/theiliad02199gut</ref>。
==== 金羊毛皮 ====
[[アルゴナウタイ]]の物語では、自分を冒涜した[[ペリアース]]を罰するためアルゴナウタイを庇護してその冒険を助けている。
 
ヘーラーはペリアスを憎んでいた。ペリアスが継祖母のシデロをヘーラーの神殿の中で殺したからである。その後、彼女はイアーソーンとメーデイアにペリアスを殺すように説得した。金羊毛皮は、イアーソーンが母親を解放するために必要なアイテムだった。
* Hera Farnese - ヘラの頭の彫刻
* Heraea Games - オリンピアの競技場]開催された最初の公認(記録)された女性の競技会である。
 
== 私的考察 ==
ヘーラーの名前の語源は、兔子(Tùzǐ)であって、ゲルマン神話の[[エオステレ]]と同語源と考える。ヘーラーは単独で子供を生んだりして、かつては母系の女神であったと思われる性質を残している。ヘーラーの男性形ともいえるヘーラークレースとの不仲と確執の設定が興味深い。
== 参考文献 ==
* Wikipedia:ヘーラー(最終閲覧日:23-01-06)
** アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁(訳)、岩波書店、1953年。ISBN 978-4003211014。
** パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人(訳)、龍溪書舎、1991年。ISBN 978-4844783336。
** ヘーシオドス『神統記』廣川洋一(訳)、岩波書店、1984年。ISBN 978-4003210710。
** ホメーロス『ホメーロスの諸神讃歌』沓掛良彦(訳)、ちくま学芸文庫、2004年。ISBN 978-4480088697。
** フェリックス・ギラン『ギリシア神話』中島健(訳)、青土社、1991年。ISBN 978-4791751440。
** マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』木宮直仁(訳)、大修館書店、1988年。ISBN 978-4469012217。
** 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。ISBN 978-4000800136。
* Wikipedia:[https://en.wikipedia.org/wiki/Hera Hera](最終閲覧日:23-01-23)
** Apollodorus, ''Apollodorus, The Library, with an English Translation by Sir James George Frazer, F.B.A., F.R.S. in 2 Volumes.'' Cambridge, MA, Harvard University Press; London, William Heinemann Ltd. 1921. [https://www.perseus.tufts.edu/hopper/text;jsessionid=C431BA809CA4DEA22A15DA9C666F3400?doc=Perseus%3atext%3a1999.01.0022%3atext%3dLibrary Online version at the Perseus Digital Library].
* [http://www.theoi.com/Olympios/Hera.html Theoi Project, Hera] Hera in classical literature and Greek art
* [https://web.archive.org/web/20121128121229/http://www.wbenjamin.org/nc/heraion.html The Heraion at Samos]
 
== 神話 ==
=== 結婚 ===
ゼウスと結婚するにあたって、以下のエピソードが有名である。掟の女神[[テミス]]と結婚していたゼウスは、ヘーラーの美しさに恋に落ち、[[カッコウ]]に化けてヘーラーに近付き犯そうとした。しかし、ヘーラーは抵抗を続け、決してゼウスに身体を許さなかった。ヘーラーは交わることの条件として結婚を提示した。ヘーラーに魅了されていたゼウスは仕方なくテミスと離婚すると、ヘーラーと結婚した。また、ゼウスとヘーラーの関係は結婚前から久しく続いており、キタイローン山で交わっていたともいわれる<ref name="F" />。
 
ある時ヘーラーはゼウスと争った後にオリュンポスから離れキタイローン山に隠れた<ref name="J">高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』233,242頁。</ref>。ゼウスはヘーラーを誘い出すため、花嫁衣装で着飾った大きな女性の木偶人形を造り、新しく結婚すると言って同山中を通行した<ref name="J" />。それを聞いたヘーラーが飛び出して新しいゼウスの妃の衣装をむしり取ると、木像であることに気付いて和解した<ref name="J" /><ref group="私注">ヘーラーにも「隠れる女神」の性質があることが分かる。</ref>。
 
=== 嫉妬 ===
オリュンポス十二神の中でも情報収集能力に優れた描写が多く、ゼウスの浮気を迅速に察知するなど高い監視能力を発揮する。ギリシア神話に登場する男神は総じて女好きであり、ゼウスはその代表格である。そのため、結婚の守護神でもあるヘーラーは嫉妬心が深くゼウスの愛人([[セメレー]]、[[レートー]]、[[カリストー]]、[[ラミアー]]、[[アイギーナ]]とヘーラーに仕える女神官・[[イーオー]]など)やその間に生まれた子供([[ディオニューソス]]、[[ヘーラクレース]]など)に復讐する<ref name="G" />。自分の子孫にも容赦の無い一面も持ち、ゼウスの愛人になった曾孫[[セメレー]]に人間が直視すると致命的な危険があるゼウスの真の姿を見たがるように仕向ける、[[ヘーラクレース]]に惚れ込んで黄金の帯を譲る約束をした孫の[[ヒッポリュテー]]の部下を煽動してヘーラクレース一行を襲わせ、最終的には潔白を示すために無抵抗のまま弁明を試みるヒッポリュテーをヘーラクレースに殺させる、と両人に悲惨な最期を遂げさせている。しかし、浮気な夫とは対照的に、ヘーラー自身は貞淑である<ref name="G" />。
 
気が強く、ゼウスの浮気を手助けした[[エーコー]]、ディオニューソスを育てた[[イーノー]]と[[アタマース]]、ヘーラーの容色の美しさを競った[[シーデー]]と[[ゲラナ]]、ヘーラーと意見を違えた[[テイレシアース]]などを罰している。
 
[[ポセイドーン]]、[[アテーナー]]、[[アポローン]]と共にゼウスに対して反乱を起こしたこともあり、その際[[ゼウス]]はヘーラーを懲らし、天上から吊るし上げている。また、ヘーラクレースの船隊がトロイアから帰る途中、[[ヒュプノス]]にゼウスを眠らせ、嵐を送ってヘーラクレースの船をコース島に漂着させた<ref name="J" />。その後、目覚めた[[ゼウス]]はヘーラーをオリュンポスから宙吊りにした<ref name="J" /><ref group="私注">ヘーラーにも「吊される神」の性質があることが分かる。</ref>。
 
最も特殊な異伝は、『ホメーロス風讃歌』の中の「アポローン讃歌」であろう。ゼウスが知恵の女神アテーナーをひとりで生み出したことや、彼女の産んだヘーパイストスがアテーナーに見劣りすることに腹を立て、[[ティーターン]]神族の助けを借りて単性で[[テューポーン]]を産んだとされる<ref>『ホメーロス風讃歌』第3歌「アポローン讃歌」304-354。</ref>。
 
=== アルゴナウタイ ===
[[アルゴナウタイ]]の物語では、自分を冒涜した[[ペリアース]]を罰するためアルゴナウタイを庇護してその冒険を助けている。
 
=== 天の川 ===
ヘーラーの母乳は飲んだ人間の肉体を不死身に変える力があり、ヘーラクレースもこれを飲んだために乳児時代から驚異的な怪力を発揮できた。また、この時にヘーラクレースの母乳を吸う力があまりにも強かったため、ヘーラーはヘーラクレースを突き飛ばし、その際に飛び散ったヘーラーの母乳が[[天の川]]になった。なお、ヘーラクレースはヘーラーの子ではないが、「ヘーラーの栄光」という意味の名を持つ<ref name="G" />。ヘーラクレースが神の座に着く時、ヘーラーは娘のヘーベーを妻に与えた。
 
=== イーリアス ===
自分の美しさを認めないという理由で[[パリス]]を恨んでいるため、トロイアを滅ぼすことに執心しておりトロイア戦争では[[アテーナー]]と組んでギリシア側に味方する<ref name="G" />。ギリシア側の英雄たちを助けて戦いながらアテーナーと力を合わせ、敵対した[[アプロディーテー]]の情人であり自らの息子でもある、戦いを司る神・アレースを撃退する<ref>ホメーロス『イーリアス』5巻。</ref>。また、ギリシア軍の劣勢に気をもむヘーラーはアプロディーテーの宝帯(装着するとあらゆる神や人の心を征服することが出来る)を借りて、トロイア軍を助けたゼウスを魅了し、暫くトロイア戦争のことを忘れさせようとした<ref>ホメーロス『イーリアス』14巻。</ref>。腕っぷしも強く、トロイア軍を支援した[[アルテミス]]を素手で打ちのめす逸話もある<ref name="G" /><ref>ホメーロス『イーリアス』21巻。</ref>。
 
== 信仰 ==
ヘーラーはサモス島で誕生したと考えられており、サモス島は古くからヘーラー信仰の中心地となっていた。また一説にサモス島におけるゼウスとヘーラーの結婚式の夜は三百年の間続いたという<ref>ロバート・グレーヴス『ギリシア神話 上巻』紀伊国屋書店、1973年、12章b。</ref>。
 
元来は、アルゴス、ミュケーナイ、スパルタ等のペロポネーソス半島一帯に確固たる宗教的基盤を持っており、かつてアカイア人に信仰された地母神であったとされ、北方からの征服者との和合をゼウスとの結婚で象徴させたと考えられる<ref name="F" />。
 
二神の不和は、両者の崇拝者が敵対関係にあったことの名残とも考えられている<ref name="F" />。
 
アルゴスの神殿にあるヘーラー像はカッコウのとまった玉杖と柘榴を持っていた<ref>パウサニアス、2巻17・4。</ref>。
 
== 参考文献 ==
* Wikipedia:ヘーラー(最終閲覧日:23-01-06)
** アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁(訳)、岩波書店、1953年。ISBN 978-4003211014。
** パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人(訳)、龍溪書舎、1991年。ISBN 978-4844783336。
** ヘーシオドス『神統記』廣川洋一(訳)、岩波書店、1984年。ISBN 978-4003210710。
** ホメーロス『ホメーロスの諸神讃歌』沓掛良彦(訳)、ちくま学芸文庫、2004年。ISBN 978-4480088697。
** フェリックス・ギラン『ギリシア神話』中島健(訳)、青土社、1991年。ISBN 978-4791751440。
** マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』木宮直仁(訳)、大修館書店、1988年。ISBN 978-4469012217。
** 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。ISBN 978-4000800136。
== 関連項目 ==

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