イアムベー

提供: Bellis Wiki3
2023年1月16日 (月) 09:01時点におけるBellis (トーク | 投稿記録)による版
ナビゲーションに移動 検索に移動

イアムベー(Ἰάμβη, Iambē)は、ギリシア神話の女性である。トラキアの出身で、牧神パーンエーコーの娘[1][2][3]エレウシースの王家に仕える老女で[4]、娘コレーを失ったデーメーテール女神を笑顔にさせたと伝えられている[4][5]イアンベー、長母音を省略してイアムベイアンベとも表記される。

神話

『ホメーロス風讃歌』「デーメーテール讃歌」によると、デーメーテールはハーデースに連れ去られた娘コレーを探して地上を放浪した。悲しみに胸を痛めながらエレウシースを訪れたとき女神は老婆のようであった[6]ケレオス王の館に招かれた女神は王妃メタネイラ(Metanira)の席に座すことを勧められたが、目を伏せて黙ったまま座ろうとしなかった。そこでイアムベーが機転を利かせて、女神の前に椅子を置き、銀のように白い羊の毛皮を掛けると、女神は椅子に腰を下ろした。しかし、誰とも言葉を交わそうとせず、食事をしようともしなかった。そこでイアムベーは積極的に女神に話しかけ、繰り返し冗談を言った。すると女神はついに微笑み、そのかたくなな心を和ませることができた。その後、デーメーテールは勧められたぶどう酒を飲むことができないと言って断り、代わりにキュケオーンを飲んだ[7]

アポロドーロスは女たちがテスモポリア祭(Thesmophoria)で嘲罵をよくするのはイアムベーの故事にちなんでいると語っている[4]。『オルペウス讃歌』ではイアムベーと同じ役回りを演じる女性の名前はバウボー(Baubo)であり、自らの女性器を見せることで女神を笑わせたと語られている。したがって『ホメーロス風讃歌』でイアムベーがデーメーテールを笑わせるために冗談を言ったというのは控えめな表現であり、冗談の内容も猥雑なものであったと考えられる[8]

この物語はエレウシースの秘儀の起源譚となっている。秘儀では入信者は白い羊の毛皮が掛けられた椅子に座り[9]、デーメーテールが食事に手を付けなかったように断食し、キュケオーンを飲むことになっていた[10]。また一説によると古代ギリシアの抒情詩の1つイアムボスはイアムベーに由来するとも言われる[8]

参考文献

関連項目

参照

  1. 『大語源辞典(Etymologicum Magnum)』。
  2. 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.46b。
  3. Pierre Grimal 1986, p.224.
  4. 4.0 4.1 4.2 アポロドーロス、1巻5・1。
  5. 「デーメーテール讃歌」202行-204行。
  6. 「デーメーテール讃歌」101行。
  7. 「デーメーテール讃歌」190行-209行。
  8. 8.0 8.1 沓掛訳注、62。
  9. 沓掛訳注、60。
  10. 沓掛訳注、61。