差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
8,270 バイト追加 、 2022年10月27日 (木) 08:38
ページの作成:「'''アクタイオーン'''('''Ἀκταίων''', Aktaiōn, Actaeon)は、ギリシア神話の登場人物である。長母音を省略して'''アクタイオン'…」
'''アクタイオーン'''('''Ἀκταίων''', Aktaiōn, Actaeon)は、ギリシア神話の登場人物である。長母音を省略して'''アクタイオン'''とも表記される。父は'''[[アポローン]]'''の子[[アリスタイオス]]、母はテーバイの王[[カドモス]]の娘[[アウトノエー]]とされている<ref name=Ap_3_4_4>アポロドーロス、3巻4・4。</ref><ref name=Hy_180>ヒュギーヌス、180話。</ref><ref name=Hy_181>ヒュギーヌス、181話。</ref>。

アクタイオーンが女神[[アルテミス]]に対する不敬のために罰せられた物語は主にエウリーピデース『バッコスの信女』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス、ヒュギーヌスなどで触れられており、特にオウィディウス『変身物語』の物語が有名である。

== 神話 ==
アクタイオーンは[[ケンタウロス]]の[[ケイローン]]に育てられ、[[狩猟]]の術を授けられた<ref name=Ap_3_4_4 />。一説には狩猟を教わったのは実父からであったともいう。

あるときアクタイオーンは[[キタイローン山]]のガルガピアの谷間で<ref name=Ov_Me_3 /><ref name=Hy_181 />、狩り仲間とともに<ref name=Ov_Me_3>オウィディウス『変身物語』3巻。</ref>、自分の手で育てた<ref name=Eu_Ba>エウリーピデース『バッコスの信女たち』。</ref>50匹の[[猟犬]]を率いて狩りに興じていた<ref name=Ap_3_4_4 />。アクタイオーンは狩りの成果が良かったので一時狩りを休止し<ref name=Ov_Me_3 />、猟犬を休ませるために泉を探して歩いた<ref name=Hy_181 />。

ところがガルガピアの谷間はアルテミスに捧げられた聖域であり、ちょうど谷の一番奥まった場所にある[[洞窟]]に湧き出している泉{{Refnest|group="注釈"|ヒュギーヌスによれば泉の名前はパルテニオスの泉<ref name=Hy_181 />。}}で狩りに疲れたアルテミスが従者たちとともに水浴びをしていた。そうとも知らずにアクタイオーンは洞窟に入っていき<ref name=Ov_Me_3 />、アルテミスの[[入浴]]中の裸体を誤って目撃してしまった<ref name=Ov_Me_3 /><ref name=Ap_3_4_4 /><ref name=Hy_181 />。このため女神の逆鱗に触れ、女神の裸を見たと言いふらすことが出来ないように[[シカ|鹿]]の姿に変えられ<ref name=Ov_Me_3 /><ref name=Hy_181 />、さらに彼の猟犬たちを狂わせ<ref name=Ap_3_4_4 />、アクタイオーンにけしかけた<ref name=Hy_181 />。アクタイオーンは水面に映った自分の姿に驚いたが、口から出てくるのはうめき声だった。アクタイオーンはテーバイの王宮に帰るべきか、森の中に隠れているべきか迷ったあげく、猟犬たちに見つかり食い殺された<ref name=Ov_Me_3 />。

===死の異説===
オウィディウスによればアクタイオーンの死は運命のいたずらであって、アクタイオーンに非はなかったとしているが<ref name=Ov_Me_3 />、ヒュギーヌスはアルテミスの裸体を目撃した時に犯そうとしたためとしている<ref name=Hy_180 />。

しかし別の説ではアクタイオーンが自らの狩猟の腕を誇って女神を軽んじたためであり<ref name=Eu_Ba />、さらに別の説では叔母の[[セメレー]]と結婚しようとして[[ゼウス]]と争ったため<ref>[[アクーシラーオス]]断片(アポロドーロス、3巻4・4による引用)。</ref><ref name=St_fr_Pa_9_2_3>[[ステーシコロス]]断片(パウサニアス、9巻2・3による引用)。</ref>、アルテミスはアクタイオーンに鹿の毛皮を被せて猟犬たちに襲わせたという<ref name=St_fr_Pa_9_2_3 />。

===死後===
アクタイオーンの死後、彼の猟犬たちは主人を探してケイローンの洞窟までやって来たが、ケイローンはアクタイオーンそっくりの銅像を作って猟犬たちを慰めた<ref name=Ap_3_4_4 />。アクタイオーンの死の現場はのちに[[ペンテウス]]の死の現場となり<ref name=Eu_Ba />、両親はアクタイオーンをはじめとする数々の不幸に悲嘆してテーバイを去った。母アウトノエーは[[メガラ|メガラー]]地方のエリネイアに移住し<ref>パウサニアス、1巻44・5。</ref>、父アリスタイオスはギリシア人を率いて[[サルディニア島]]に移住した<ref>パウサニアス、10巻17・3。</ref>。

アクタイオーンは死後に[[亡霊]]と化し、[[オルコメノス]]を苦しめたという話も残っている。オルコメノスの住人が亡霊を鎮める方法を[[デルポイ]]に伺うと、アクタイオーンの[[遺品]]を見つけて地中に埋め、さらにアクタイオーンの像を作り、鉄の鎖で岩に縛り付けるように命じた。この像は[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]の時代にも残っていて、毎年、英雄として祀られたという<ref>パウサニアス、9巻38・5。</ref>。

===プラタイアの伝承===
パウサニアスによると、キタイローン近くの[[プラタイア]]にはアクタイオーンが狩りに疲れたときにベッド代わりにして眠ったとされる岩があり、'''アクタイオーンの寝床'''と呼ばれていた。またアルテミスの水浴びを目撃したとされる泉もあった<ref>パウサニアス、9巻2・3。</ref>。

しかしアクタイオーンにとってキタイローンは狩りに興じた土地というだけでなく、この土地の興隆に関わった英雄でもあったらしい。[[プルタルコス]]によるとアクタイオーンは、アンドロクラテース、[[レウコーン]]、[[ペイサンドロス (ギリシア神話)|ペイサンドロス]]、ダモクラテース、ピュプシオン、[[ポリュエイドス]]とともに[[プラタイア]]を興した7人の英雄の1人であり、[[ペルシア戦争]]の[[プラタイアの戦い]]の際に、ギリシア軍は[[デルポイ]]の神託に従って[[ゼウス]]、[[キタイローン]]の[[ヘーラー]]、[[パーン]]、スフラギディオンの[[ニュムペー]]に誓約を立て、アクタイオーンら7人の英雄に犠牲を捧げて戦い、勝利したと伝えられる<ref>プルタルコス「[[アリステイデース]]伝」11。</ref>。

== 脚注 ==
===注釈===
{{reflist|group="注釈"}}
===脚注===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年)
* 『ギリシア悲劇IV [[エウリピデス]](下)』、[[ちくま文庫]](1986年)
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
* 『[[プルタルコス]]英雄伝(上)』[[村川堅太郎]]訳、ちくま文庫(1987年)
* [[イヴ・ボンヌフォワ]]編『世界神話大事典』[[金光仁三郎]]訳、[[大修館書店]](2001年) ISBN 978-4-469-01265-1
* ルネ・マルタン編『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』[[松村一男]]訳、[[原書房]](1998年)ISBN 978-4-562-02963-1
* マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル著『ギリシア・ローマ神話事典』[[西田実]]他訳、大修館書店(1988年) ISBN 978-4-469-01221-7
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、[[岩波書店]](1960年) ISBN 978-4-000-80013-6

== 関連項目 ==
* [[ディアナとアクタイオン]]
* [[アリスタイオス]]
* [[キタイローン]]
* [[アルテミス]]
* [[プラタイア]]
* [[セメレー]]
* [[蚩尤]]:中国神話でアクタイオーンに相当する神。
* [[ケートゥ]]:インド神話でアクタイオーンに相当する神。

{{ギリシア神話}}
{{DEFAULTSORT:あくたいおん}}
[[Category:ギリシア神話]]
[[Category:犬]]
[[Category:狼]]

案内メニュー