メリュジーヌは、泉の妖精プレッシナとスコットランドのオルバニー(アールバニー)王エリナスの子<ref group="注釈">松平の説明によれば、妖精の[[モーガン・ル・フェイ|モルガン]]の妹・プリジーヌ([[アーサー王]]とは父親の異なる兄妹の関係となる)の子で、のアルバニア王エリナスとの間に生まれた姫</ref><ref name="松平2005b_p222" />。である。母親の出産時に、禁忌とされていた妖精の出産を父親である領主が見てしまったために、メリュジーヌと2人の妹、メリオールとプラティナは妖精の国に戻されてしまった。成長したメリュジーヌと妹達は復讐心を募らせ、結託して父親をイングランドのノーサンブリアのある洞窟に幽閉した<ref group="注釈">異説では母親を陥れようとした<sup>''(要出典, 2015-11-10)''</sup>。</ref>。ところが母親は夫を愛するがゆえに、メリュジーヌと妹達に、週に1日だけ腰から下が蛇の姿となるという呪いをかけた<ref name="ローズp431" /><ref name="松平2005b_p222" />。さらに、もし変身した姿を誰かに見られた場合には、永久に下半身が蛇で翼を持った姿のままとなってしまう<ref name="ローズp431" /><ref group="注釈">別のヴァリアントでは、メリュジーヌはもともと泉を掌る妖精とアールバニーの領主の間に生まれた姫君であった。人間の男の愛を得れば呪いが解けると聞かされて、メリュジーヌは領主に近づいたのであった。</ref>。従って、メリュジーヌが誰かと愛を育むには、その1日に彼女の姿を見ないという約束を果たせる者と出会わねばならなかった。
[[ポワトゥー]]伯のレイモンポワトゥー伯のレイモン<ref name="ローズp431" />(またはフォレ伯の子レモンダン<ref name="松平2005b_p221">[[#松平 (2005b)|松平 (2005b)]], p. 221.</ref>)は、おじを誤って殺したことから家族の元を離れていたが、ある日メリュジーヌと会って恋に落ち、メリュジーヌも「土曜日に自分の姿を決して見ないこと」という誓約を交わした上で結婚する。彼女は夫に富をもたらし、10人の子供を儲けた。また、彼女の助力もあってレイモン(レモンダン)はリュジニャン城を建て、町も築くことができた)は、'''おじを誤って殺したことから家族の元を離れていた'''が、ある日メリュジーヌと会って恋に落ち、メリュジーヌも「土曜日に自分の姿を決して見ないこと」という誓約を交わした上で結婚する。彼女は夫に富をもたらし、10人の子供を儲けた。また、彼女の助力もあってレイモン(レモンダン)はリュジニャン城を建て、町も築くことができた<ref name="松平2005b_p221" />。ところが夫は悪意のこもった噂を耳にすると<ref name="アランp209">[[#アラン,上原訳 (2009)|アラン,上原訳 (2009)]], p. 209.</ref>、つい誓約を破り、沐浴中のメリュジーヌの正体を見てしまった{{refnest|<ref group="注釈"|>神話類型として、[[[[禁忌|見るなのタブー]]が見受けられる]]が見受けられる。</ref><ref name="蔵持p10" />。}}。部屋に1人閉じこもっていた彼女の姿は上半身こそ人間だったが、下半身は巨大な[[ヘビ|蛇]]。。部屋に1人閉じこもっていた彼女の姿は上半身こそ人間だったが、下半身は巨大な蛇<ref name="松平2005b_p222">[[#松平 (2005b)|松平 (2005b)]], p. 222.</ref>(あるいは[[魚類|魚]](あるいは魚<ref name="アランp209" />)になっていたのだった。)になっていたのだった<ref group="私注">レイモンは目上の身内を殺しており、[[啓型神]]の性質を持っているように思う。</ref>。
誓約を破られたため、メリュジーヌは竜の姿になって城を飛び出していった<ref name="ローズp431" /><ref name="松平2005b_p222" />。しかしまだ小さい子供がいたことから、授乳のために一時城に戻ったほか、城の城主や子孫の誰かが亡くなる直前にも戻ったという<ref name="松平2005b_p222" />。そのため、城主らの死が近づくと、城壁の上に幽霊のようにメリュジーヌが姿を現しては泣き悲しむ様子が見られたという。メリュジーヌの子供達の多くは化け物の性質を持っていたものの、問題なく生まれた2人の子供の血統からは、後のフランス君主が立ったという<ref name="ローズp431" />。リュジニャン城は後に取り壊され、現在は存在しない<ref name="アランp209" />。
{{Gallery
|title=『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』に描かれたメリュジーヌ
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|ファイル:Limbourg brothers - Les très riches heures du Duc de Berry - Mars (March) - WGA13020.jpg|<small>『[[ベリー公のいとも豪華なる時祷書]]』に描かれたリュジニャン城。右上に飛ぶ竜が、「リュジニャンの母(メール・リュジニャン)」とも呼ばれるメリュジーヌである<ref>[[#松平 (2005a)|松平 (2005a)]], pp. 45-46.</ref>{{refnest|group="注釈"|Mélusine(メリュジーヌ)の名は、Mère(母)とLusignan(リュジニャン)の合成語だと考えられている<ref name="蔵持p10">[[#蔵持 (2005)|蔵持 (2005)]], p. 10.</ref>。}}。</small>
|ファイル:Les Très Riches Heures du duc de Berry mars dragon.jpg|<small>リュジニャン城と竜(左の画像の一部を拡大)。</small>
}}
別のヴァリアントでは、メリュジーヌは[[ブルターニュ]]伯(あるいはポワトゥー伯)の下に美女の姿で現れて求婚し、妻となって後は彼を助けたが、「日曜日に必ず[[沐浴]]するので、決して覗かないこと」という誓約を夫に破られ、正体を明かされる。夫は、メリュジーヌが人間でないことを知ってからも妻とし続けたが、2人の間に生まれた気性の荒い異形の息子達が町で[[殺人]]を犯したと聞いて激昂し、息子達の性格上の欠陥の原因を彼女の正体のせいだとして、「化け物女」と罵倒したため、自尊心を傷つけられた彼女は正体を現し、[[教会]]の塔を打ち壊して川に飛び込んで行方をくらましたという。その後、彼女は[[水妖]]の一員となった。紋章などに用いられている尾が2つあるマーメイドは彼女の姿であるとされている。
== 息子たち ==
[[ファイル:Gotfrid magni dentis.jpg|thumb|200px|大牙のジョフロワ]]
クードレットの記述による。