トゥワレはラビエを月に変化させたり、アメタと類似した性質を持つ。よってアメタを「上位トゥワレ」とする。一般のヴェマーレ族の男性はマロ祭りに参加し、普通に同族の女性と子孫を残すことができるが、トゥワレやアメタのように何かを別のものに変化させる能力は持たない。そのため一般のヴェマーレ族の男性を「下位トゥワレ」と呼ぶ。アメタが下位トゥワレ達のリーダーとしての性質も有していれば、アメタは「ヴェマーレ族の王」と呼ぶことも可能かもしれないが、彼らの社会構造と階級制度はそこまでは発展していないのかもしれない。
純粋に近い母系社会では、男性はよその家に通って子供を作るが、生まれた子供は「母親の家の者」であって、アメタからは'''他人'''になる。そもそもアメタの恋人である女性が同時期に複数の男性と交際していれば、生まれてきた子供の生物学的な父親がアメタであると誰に分かるだろうか。だから、アメタがイノシシと交わって生まれたココヤシや、ココヤシと交わって生まれたハイヌウェレは、アメタから見れば'''他人'''のはずである。アメタにとっての'''家族'''はアメタと同じ「バナナ」の家に生まれ、「バナナの女性達」が生んだ子供達なのである。母系社会には「父親」というものが存在しないので、「アメタの家族」としての「子供達」の生物学的な父親がイノシシであろうが、ココヤシであろうが、彼らはバナナの母親から生まれた子供達には発言権を持たない。だから逆に発言権を持つトゥワレやアメタは「バナナ」であって、女性や子供達からは、兄弟とか叔父とか大叔父、といった立場になる。必ずしも生物学的な父親であるとは限らなくなる。
ただし、ヴェマーレ族は既に家族としての「父親」が発生している「父系社会」なので、父親は父親で、子供達に権利がある社会といえる。男性を中心とした家系図で「バナナ」が定義されるのであれば、ハイヌウェレは「アメタの娘」ということで「バナナ」の仲間になれる。要は、ハイヌウェレがヴェマーレ族の一員になれるかどうかは、彼らの社会がどのくらい父系となっているか、による。父系化が進めばハイヌウェレは「バナナ」の一員だけれども、母系のままだとハイヌウェレは「ココヤシ」であって、バナナの仲間にはなれない。
を祭りで殺した「人々」とは、「'''太陽神トゥワレ'''」の化身であって、一人一人が神官でもあるし、東洋で有名な「'''現人神'''」である、ともいえる。よって一般の人々のことを「<span style="color:orange">'''下位トゥワレ'''</span>」と呼ぶことにする。彼らは一人では完全なトゥワレになれず、集団でこそトゥワレに近い存在になって、トゥワレの役割の一部をこなせる、といえる。「<span style="color:orange">'''下位トゥワレ'''</span>」の役割は、祭祀(葬式や'''踊り''')を状況に応じて行い、トゥワレに生贄を捧げること、である。でも、それだけで何かが起こるわけではない。その点をまず、ハイヌウェレとラビエの神話を比較しながら考察したい<ref>「'''踊り'''」というものが上位の神に働きかける祭祀であり、芸能でもある点には注意したい。何故なら、日本には'''摩多羅'''という須佐之男と同一視された神がいるのだが、この神は「'''芸能の神'''」とされたからである。エジプト神話のベスかよ、って古代エジプトに詳しい人は突っ込んでやって下さい。</ref>。
ハイヌウェレとラビエの物語を比較すると、まず物語の構成がハイヌウェレの方が複雑で、イモ類(月)が発生する前に、<span style="color:brown">'''アメタが狩ることで豚からココヤシが発生する物語とアメタの血を媒介としてハイヌウェレが発生する物語の2つ'''</span>が挿入されていることが分かる。アメタは豚を狩って、それを神に捧げることでココヤシを得た、か、あるいはそのように'''豚をココヤシに変化させる能力'''を神から授かった、といえる。あるいは、生まれながらに授かっているが故に、アメタは一般的な<span style="color:orange">'''下位トゥワレ'''</span>ではなく、特別な「<span style="color:red">'''上位トゥワレ'''</span>」である、ともいえる。その姿は、かぐや姫を大切に育てたが故に、竹取の翁が'''竹を切っただけで黄金を得る能力'''を授かったのと似ている。娘のハイヌウェレが亡くなった時に、アメタはその非道をムルア・サテネに訴えているのだから、'''アメタが仕えている神、とは「ムルア・サテネ」のことである'''、と暗喩されているといえる。このように母なる女神に忠実に仕えているアメタを特に「<span style="color:red">'''上位忠臣トゥワレ'''</span>」と呼ぶこととする。