という理由がまず挙げられるように思う。もしかしたら、近親相姦で子を成したというタブーに対する神の怒りを裂けるためにそうしたのかもしれない。あるいはフェニキア人らしく、アドニースの死と引き換えに、他の家族の安寧を願ったのかもしれない。
そして、他の理由としては、やはりエンリルとニンリル的な話になってしまうのだが、キュニラースは何らかの理由ですでに死んでいるか、あるいはイノシシの姿に変えられてしまって人間ではないので、蘇るか、あるいは人間の姿に戻るために、人型の生け贄を一人必要としていたのではないだろうか。アドニースは、元々キュニラースが生まれ変わるために冥界か、それに近い環境で作った子供であって、チャンヤン神話のチャンヤンが蛾王の生まれ変わりのような状態なのと同じ存在だったと考える。
そこに「'''植物神の再生を促す人身御供'''」という要素が加わったので、アド-ニスは自らが祭主となることなく、'''人身御供となる'''方向に進むことになったのではないだろうか。本物語の場合、植物神の再生を促す祭りを主催するのはアプロディーテーとペルセポネーである。
== 参考文献 ==