虫による害は、不幸な死をとげてしまった人の怨霊と考える御霊信仰<ref name="Britannica-御霊信仰">https://kotobank.jp/word/御霊信仰-66557, 御霊信仰, 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』, コトバンク, 2017-12-18 </ref>に関係した<ref name="Britannica-虫送り" />、「'''害のあるものを外に追い出す'''」呪いの一つである。神社で行われる紙の形代<ref group="私注">虫神の依り代となるといえようか。</ref>に穢れを移す<ref name="Britannica-形代">https://kotobank.jp/word/%E5%BD%A2%E4%BB%A3-44940, 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』, コトバンク, 2017-12-18 </ref>風習との共通性が見られる。
春から夏にかけての頃(おもに初夏)、夜間[[たいまつ]]を焚いて行う。また、[[藁人形]]を作って[[悪霊]]にかたどり、害虫をくくりつけて、[[鉦]]や[[太鼓]]を叩きながら行列して村境に行き、川などに流すことが行われる地域もある。地域によっては[[七夕]]行事と関連をもって行われる。春から夏にかけての頃(おもに初夏)、夜間たいまつを焚いて行う。また、藁人形を作って'''悪霊にかたどり'''、害虫をくくりつけて、鉦や太鼓を叩きながら行列して村境に行き、川などに流すことが行われる地域もある。地域によっては七夕行事と関連をもって行われる。
かつては全国各地に数多く見られたが、[[農薬]]が普及するに連れて害虫の脅威が低減したことに加え、[[過疎化]]、[[少子高齢化]]、[[米価]]の下落などによる[[農業]]の衰退と、その結果としての担い手不足も大きく影響し、次第に行わない地域が多くなっていったかつては全国各地に数多く見られたが、農薬が普及するに連れて害虫の脅威が低減したことに加え、過疎化、少子高齢化、米価の下落などによる農業の衰退と、その結果としての担い手不足も大きく影響し、次第に行わない地域が多くなっていった<ref name="Daido2017" />。火事の危険などを理由に取り止めた地域もある。現在行われているものも、原形を留めるものは少ないといわれている<ref name="Daido2017" />。農業と地域社会に深く関わる伝統行事であるため、その保存には農業および地域社会の活性化と維持が不可欠で、大きな課題となっている<ref name="Daido2017" />。
==実盛について==
『[[平家物語]]』でも知られる[[平安時代]]末期の[[平氏]][[武将]]・[[斎藤実盛]](斎藤別当実盛)は、[[篠原の戦い]]のさなか、乗っていた馬が田の稲株につまずいて倒れたところを[[源氏]]方の敵兵に付け込まれ、討ち取られてしまったため、その恨みゆえに稲虫(稲につく害虫)と化して稲を食い荒らすようになったという[[伝承|言い伝え]]が古くから存在した『平家物語』でも知られる平安時代末期の平氏武将・斎藤実盛(斎藤別当実盛)は、篠原の戦いのさなか、乗っていた馬が田の稲株につまずいて倒れたところを源氏方の敵兵に付け込まれ、討ち取られてしまったため、'''その恨みゆえに稲虫(稲につく害虫)と化して稲を食い荒らすようになった'''という言い伝えが古くから存在した<ref>{{Cite book |和書 |author=山田野理夫|authorlink=山田野理夫 |title=, 怪談の世界 |date=, 1978 |publisher=[[, 時事通信社]] |page=99 }}, p99</ref><ref name="Daido2017">{{Wayback |url=http://www.dydo-matsuri.com/archive/2017/kaneko/ |title=, 次代へ送る太鼓囃子 〜鹿子原の虫送り踊り〜 |work=[[, ダイドーグループ 日本の祭り|, ダイドードリンコスペシャル 日本の祭り]](公式ウェブサイト) |publisher=[[日本の祭り(公式ウェブサイト), ダイドードリンコ]] |date=, 20180526185908|accessdate=, 2018-05-26 }}, ダイドードリンコスペシャル 日本の祭り</ref>。そのため、稲虫(特に[[ウンカ]])は「実盛虫(さねもりむし)」(''cf.'' [[wikt:さねもりむし|wikt]]) とも呼ばれ、主として[[西日本]]では、実盛の[[霊魂|霊]]を鎮めて稲虫を退散させるという由来を伝え。そのため、稲虫(特にウンカ)は「実盛虫(さねもりむし)」とも呼ばれ、主として西日本では、実盛の霊を鎮めて稲虫を退散させるという由来を伝え<ref name="Daido2017" />、この種の「虫送り」を指して、'''実盛送り'''(さねもりおくり)または'''実盛祭'''(さねもりまつり)と呼んでいる<ref>『角川俳句大歳時記』「夏」</ref><ref name="大辞泉-実盛送り">{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/実盛送り-511554 |title=, 実盛送り |work=『デジタル[[大辞泉]]』 |publisher=, 『デジタル大辞泉』, コトバンク |accessdate=, 2017-12-18 }}</ref>。また、砕けた表現として'''実盛さん'''('''さねもりさん''')<ref name="長野市-犬石" />とも呼ばれる。
この実盛という語は、田植えの行事「サノボリ」(早のぼり)が転訛という説もある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.hokkaido-np.co.jp/article/700846 |title=, <卓上四季>虫送り:北海道新聞 どうしん電子版 |access-date=, 2022-07-02 |website=, 北海道新聞 どうしん電子版 |language=ja}}</ref>。 == 季語 ==[[日本語]]「'''虫送'''/'''虫送り'''(むしおくり)<ref>[[weblio]]季語・季題辞典「虫送」「虫送り」</ref>」は、[[夏]]の[[季語]](晩夏の季語)である<ref name="Kigosai-虫送り">{{Cite web|和書|url=http://kigosai.sub.jp/kigo500f/367.html |title=虫送り |work=きごさい歳時記(公式ウェブサイト) |publisher=季語と歳時記の会 |accessdate=2018-05-27 }}</ref>。分類は行事<ref>weblio季語・季題辞典「虫追い」</ref><ref group="*">季語の分類では「人が行う事柄」を「行事」「人事」「生活」などという語で表す。[[歳時記]]等によって名称が異なる。</ref>。 虫送/虫送りの子季語<ref group="*">同様の事象を表す複数の季語があるとき、その中で最も重要な季語とそれ以外の季語の関係を親と子に譬えて「親季語」「子季語」という。なお、子季語を「傍題」ともいうが、本来、傍題は「季題」の対義語であって「季語」とは対義関係にない。</ref>としては、'''虫流し'''(むしながし。虫送の別名)<ref>weblio季語・季題辞典「虫流し」</ref>、'''実盛送り'''(さねもりおくり。虫送の行事。虫送の近畿・中国・四国・九州での呼称)<ref>weblio季語・季題辞典「実盛送り」</ref>、'''田虫送り'''(たむしおくり。[[田]]における虫送)、'''稲虫送'''/'''稲虫送り'''(いなむしおくり。虫送の別名)<ref>weblio季語・季題辞典「稲虫送」</ref>、'''虫追'''/'''虫追い'''(むしおい。虫送の別名)<ref group="*">weblio季語・季題辞典は、「虫追い」を夏の季語としながら「虫追」を秋の季語としていて、混乱しているようにもとれる。</ref>、'''[[虫供養]]'''(むしくよう。耕作するなかで殺した虫の霊を慰める[[供養]])<ref>weblio季語・季題辞典「虫供養」</ref>、'''実盛祭'''(さねもりまつり。実盛送りの別名)<ref>weblio季語・季題辞典「実盛祭」</ref>がある<ref name="Kigosai-虫送り" />。 また、'''秋の虫送り'''は、[[秋]]の季語(仲秋の季語)である<ref name="Kigosai-秋の虫送り">{{Cite web|和書|url=http://kigosai.sub.jp/kigo500e/098.html |title=秋の虫送り |work=きごさい歳時記(公式ウェブサイト) |publisher=季語と歳時記の会 |accessdate=2018-05-27 }}</ref>。分類は行事<ref>weblio季語・季題辞典「秋の虫送り」</ref>。 関連季語として、'''田畑虫送'''(たはたむしおくり。秋の季語。分類は行事。[[田畑]]における虫送)<ref>weblio季語・季題辞典「田畑虫送」</ref>、'''稲虫'''(いなむし。秋の季語。分類は動物。稲を食害する虫)、'''実盛虫'''(さねもりむし。秋の季語。分類は動物。[[斎藤実盛]]の[[怨霊]]が[[害虫]]と化したものと信じられた、稲を食害する虫。現代科学的解釈では[[ウンカ]]に属する淡黄色または黄白色の[[昆虫]]を指す)<ref>weblio季語・季題辞典「実盛虫」</ref>がある。 {{Quotation|* 例句1 : {{Ruby|猶|なほ}}も{{Ruby|田|た}}に {{Ruby|[[ホタル|蛍]]|ほたる}}はのこせ {{Ruby|虫|むし}}おくり 也有([[横井也有]])『垤集』〔[[江戸時代|江戸]]中期〕* 例句2 : {{Ruby|[[松明]]|たいまつ}}の{{Ruby|火|ひ}}に {{Ruby|一天|いつてん}}{{Ruby|暗|くら}}し {{Ruby|虫送|むしおくり}} 祐昌『発句題叢』* 例句3 : {{Ruby|火|ひ}}や{{Ruby|[[鉦]]|かね}}や {{Ruby|[[遠里小野]]|とほさとをの}}の {{Ruby|虫送|むしおくり}} 子規([[正岡子規]])『俳句稿』秋の部〔[[1898年]]([[明治]]31年)の作〕<ref name="松山子規館">{{Cite web|和書|url=http://www.haiku-matsuyama.jp/joto/384/ |title=火や鉦や遠里小野の虫送 |work=公式ウェブサイト |publisher=[[松山市立子規記念博物館]] |accessdate=2018-06-01 }}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.iyokannet.jp/ginkou/spot/detail/kuhi_id/322 |title=火や鉦や遠里小野の虫送 正岡子規 - 愛媛の句碑めぐり575 |work=吟行ナビえひめ(公式ウェブサイト) |publisher= |accessdate=2018-06-01 }}</ref>:::* [[愛媛県]][[松山市]]平井町1520の{{Ruby|千福寺|せんぷくじ}}に句碑がある。* 例句4 : {{Ruby|[[狩野川]]|かのがわ}}に {{Ruby|沿|そ}}うてのぼるや {{Ruby|虫送|むしおくり}} 虚子([[高浜虚子]])〔明治後期~[[昭和]]前期〕}}
== 歴史 ==