『ギルガメシュ叙事詩』([http://etcsl.orinst.ox.ac.uk/section1/tr1814.htm%201.8.1.4 ETCSL 1.8.1.4])<ref>Kramer, 1961, page30</ref>の前文にある「イナンナとフルップの木」の神話は、まだ権力が安定していない若いイナンナを中心にしている<ref>Wolkstein, Kramer, 1983, page141</ref><ref>Pryke, 2017, pages153–154</ref>。物語はクレイマーが[[ヤナギ]]かもしれないと同定した、ユーフラテス川の岸辺に生えるフルップの木<ref>Kramer, 1961, page33</ref><ref>Kramer, 1961, page33</ref>から始まる<ref>Fontenrose, 1980, page172</ref>。イナンナはこの木をウルクの自分の庭に移し、成長したら王座に造りかえるつもりだった<ref>Kramer, 1961, page33</ref><ref>Fontenrose, 1980, page172</ref>。木は成長し成熟するが、「魅力を知らない」蛇、[[アンズー]]鳥、そしてユダヤ伝承のリリスの前身であるシュメール人のリリトゥ(シュメール語でキ・シキル・リル・ラ・ケ)<ref>CDLI Tablet P346140, https://cdli.ucla.edu/search/archival_view.php?ObjectID=P346140, cdli.ucla.edu</ref>が木の中に住みつき、イナンナは悲しみで泣くことになる<ref>Kramer, 1961, page33</ref><ref>Fontenrose, 1980, page172</ref>。この物語では、彼女の兄として描かれている英雄ギルガメシュが現れ、大蛇を倒し、[[アンズー]]鳥とリリトゥを追い出している<ref>Kramer, 1961, pages33–34</ref><ref>Fontenrose, 1980, page172</ref>。ギルガメシュの仲間はこの木を切り倒し、その木を彫ってベッドと玉座を作り、イナンナに渡す<ref>Wolkstein, Kramer, 1983, page140</ref><ref>Fontenrose, 1980, page172</ref>。イナンナはピックとミック(それぞれ太鼓と太鼓台と思われるが、正確な特定は不明<ref>Kramer, 1961, page34</ref>)を作り、ギルガメッシュにその英雄的行為の報酬として渡す<ref>Wolkstein, Kramer, 1983, page9</ref><ref>Fontenrose, 1980, page172</ref><ref group="私注">メソポタミア神話での「'''木を切り倒す'''」エピソードと「'''女神の庭園'''」の物語である。イナンナがギルガメシュに与えた呪具は「邪気祓い」の道具だったかもしれない、と考える。日月蝕の際に道具を叩いて音を立て、天の邪気を払う習慣はモンゴル等にみられるように思う。([[射日神話]]、参照のこと)</ref>。
シュメールの「イナンナとウトゥ」讃歌には、イナンナが性の女神になるまでの経緯を描いた起源神話がある<ref>Leick, 1998, page91</ref>。讃美歌の冒頭で、イナンナは性について何も知らないので<ref>Leick, 1998, page91</ref>、兄のウトゥに頼んでクア(シュメールの冥界)に連れて行ってもらい<ref>Leick, 1998, page91</ref>、そこに生えている木の実を食べて<ref>Leick, 1998, page91</ref>、性の秘密をすべて明らかにしてもらう<ref>Leick, 1998, page91</ref>。ウトゥはそれに応じ、イナンナはクアでその実を味わい、知識を得る<ref>Leick, 1998, page91</ref>。