鳴女

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鳴女ナキメは、日本神話に登場する雉の女神。天若日子に射殺される。

私的解説

この雉は天照大御神の遣いであり、雌なので、天照大御神から別れた「下位の女神」といえる。この物語の場合、雉と矢は関連するのだが、天若日子の弓矢は天照大御神ではなく、高御産巣日神から与えられたもので、高御産巣日神の象徴といえる[私注 1]高御産巣日神は「木の神」であり、植物神であるので、彼から作り出された特別な弓矢特別な武器(王権の象徴)とみなされたと考える。この場合

高御産巣日神=植物神=弓矢

である。高御産巣日神は天上世界に座す正規(和魂)ともいうべき植物神で、世界全体の秩序を守る性質の強い神といえる(地上を征服することが秩序なのか? という疑問はあるが、それは「地上が元々天照大御神のものである」という一応の秩序の理論で正当化されている。)
一方、天照大御神と対立し、根拠もなく織女を殺害したりするいわば「荒魂」の植物神といえば須佐之男命である。そのため、高御産巣日神須佐之男命は「同一の神」の和魂と荒魂といえると考える。

高御産巣日神(和魂)=須佐之男命(荒魂)

である。鳴女を射た天若日子天照大御神と対立した存在といえる。ということは、天若日子須佐之男命の別の姿であり、天照大御神の命令に従わず対立する存在といえないだろうか。ここで、天の岩戸神話と同様、「須佐之男命天若日子)が天照大御神の化身を殺し、その結果須佐之男命も罰を受けて死に等しい結末となる」という粗筋のモチーフが繰り返される。鳴女の物語では、天照大御神にどのようなダメージが与えられたのか、その対応はどうなったのか、またダメージはなかったのか等の記載はない。

天照大御神の化身を射殺した天若日子高御産巣日神による還矢によって死ぬ。この点は中国神話の羿が太陽の化身である烏を射落とした結果、最終的に罰を受ける話と共通のモチーフである。天若日子の葬儀の場で、天若日子に大変よく似ている阿遅鉏高日子根神が登場する。

私的注釈

  1. 日本神話では「丹塗りの矢」のように男神が矢で表される物語も多い。