蚊屋島神社
蚊屋島神社(かやしまじんじゃ)は鳥取県西伯郡日吉津村日吉津にある神社。
鳥取県西部を流れる日野川の下流にひらけた箕蚊屋平野の中央部に鎮座し、現在の日吉津村よりも広い地域に及ぶ蚊屋庄29か村の産土神(うぶすながみ)である。蚊屋の「島」というように、わずかな微高地を示す場所に位置している。日野川は歴史を通じて幾度も氾濫(はんらん)を起こして流路を変えており、蚊屋島神社もその被害に幾度もあっている[1]。
概要
社名は、近世には日吉津大神宮(ひえづだいじんぐう)、伊勢宮(いせぐう)、天照皇太神宮(てんしょうこうだいじんぐう)などと呼ばれ、近世の棟札(むなふだ)には天照皇太神宮と記されている。明治初年に蚊屋島神社と改称され、現在にいたる。創立年代は不詳ですが、社領証文によって天文14年(1545)以前であると伝えられている。
歴史
『出雲国風土記』には「浅山社」と記され、神祇官に所属しているとある。延喜式神名帳には「朝山神社」と記されている。
天和3年(1683年)の『出雲風土記鈔』には「神朝山宇比多伎大明神」、享保2年(1717年)の『雲陽誌』には「雲井瀧明神」と記されている。
『出雲国風土記』に記載の神門郡朝山郷の山々、すなわち宇比多伎山・稲積山・陰山・稲山・桙山・冠山(俗に「朝山六神山」と呼ばれる)は、同書において大神の衣装、食、住、武器に見立てられており、先述した宇比多伎山は「大神の御屋なり」とされ、その周辺に大神の衣食武器などが配置されている。瀧音能之(『風土記から見る日本列島の古代史』平凡社〈平凡社新書 883〉、2018年、38-42頁)は、朝山郷を大神の生活空間、すなわち天の下造らしし大神の神殿が造られた鎮座地といってもよいように思われると述べ、オオクニヌシが現社地(出雲大社)に祀られる以前、まだ出雲の西部の神に限定されていた時代の信仰圏の中心は、実は朝山郷にあったのではないか、と説いている。
境内社
- 星宮社(皇之命)
- 舟子神社(猿田彦命)
- 杉尾神社(豊受姫命)
- 朝山十九社(八百萬神)
祭礼
例祭日は4月10日である。旧暦10月1日~10日には神在祭が行われ、ここに集まった神々は11日に出雲大社に向かうという[1]。
私的考察
祭神は「雲井瀧明神」とあり、境内内に星宮社(皇之命)があることから、星女神であり、かつ水神だったのではないか、と推察する。神戸川の上流に肥長比売を祀る富能加神社があるが、富能加比売命を祀るのは星神社であって、富能加比売命と肥長比売は星女神と考えられる。おそらく、富能加比売命、肥長比売、眞玉著玉之邑日女命は同じ星女神であって「眞玉」とは星のことなのではないだろうか。
この女神が特定の星や星座に比定できるのか、漠然と「星」を指すのかは判然としない。「雲井瀧」という名からは「天の川」が連想されるように思う。一方「朝」ということを強調すれば「明けの明星」でも良いように思うからである。
境内内に星宮社があることからも、星神信仰があったことが分かる。「皇之命」とは夫の大国主命のことなのではないだろうか。
参考文献
- 蚊屋島神社について、日吉津村HP
関連項目
- 阿陀加夜努志多伎吉比売:娘神とされる。