巨人 (伝説の生物)

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巨人(きょじん、英 ジャイアントgiant)、ジャイガント(gigant))は、様々な神話や伝説、ファンタジーに登場する伝説の生物の一種で、長身・巨体の神や人間あるいは人型の生物、亜人間のことである。

英語のジャイアント・ジャイアンツは、ギリシア神話のギガース(ギガンテス)に由来する。また、ティーターン(タイタン)など、神である場合は巨神と書く事もある。

概要

媒体によってそれぞれである。知能が低く乱暴で、人を食べたりすることになっている場合が多いが、賢く友好的だったり、超古代の生き残りになっていることもある。多くの巨人は古い時代の神の信仰が残ったものともいわれている。北欧神話の巨人についても同様の仮説が19世紀末アクセル・オルリックによって提示されたが、ジョルジュ・デュメジルは「ゲルマニアにおいてもカフカスにおいてもまたヨーロッパのいかなる所であれ、『巨人崇拝』なるものはけっして存在しなかった」(『デュメジル・コレクション4』p. 150)[1]としてこれを否定している。

アジアでは神婚譚の一種として、

  • 周王朝の先祖の后稷(こうしょく)[2]の母親は野原で巨人の足跡を踏んで妊娠した[3]
  • 西北にある華胥(かしょ)国の娘が雷沢(らいたく)の地で大きな足跡を踏み、その時に宿した子が伏羲であったとされる。五行では東方・春・木徳をつかさどる[4]雷沢にあった大きな足跡は、何者によるものかは明確にされていないが、雷神または天帝のものではないかとの学説がある[5]

というものがある。

北欧神話には

  • ** ゲフィオンというアース神族の女神が、巨人との間に子ども(牛)を生んで、島を作った。

という話がある。

多くの人類学者やスミソニアンなどの博物館は巨人の存在を動物などの骨の見間違いであると積極的に否定しているが、科学者の中には巨人が実際に存在した と主張する者もいる。彼らはノアの方舟伝説が実在した洪水から来ているように、ゴリアテなどの神話も巨人から由来しているのではないかと考えている。 事実、巨人の骨と見られる2~3m近くの骨が見つかったという写真、新聞等の記録は残っているがその全ての骨は行方不明または消失しており、またその骨が巨人の骨であるという証拠も残されていない。 ただし骨が見つかった記録のあるパケット洞窟(アメリカ)の様に大きな人の歯のような骨が実際に見つかっている例はある。

巨人の例

  • ギリシア神話
    • ガイアの子供たち
      • ヘカトンケイル族(ヘカトンケイレス)- 五十頭百手の巨人。
      • キュクロープス族(英 サイクロプス)- 単眼の巨人。
      • ティーターン神族(巨神族、英 タイタン) - ゼウスの前の時代の神。
        • アトラース - 両腕と頭で天の蒼穹を支える。
        • プロメーテウス - 天界の火を盗んで人類に与えた。
      • ギガース族(ギガンテス)- 不死に近い巨人。
    • アルビオン - 海神ポセイドーンと正妻アムピトリーテーの間に生まれた巨人。
  • メソポタミア神話
    • フンババ - レバノン杉を守る森の番人。邪眼の持ち主。ギルガメシュとエンキドゥに倒される。
  • ヒッタイト神話
    • ウルリクムミ - 岩の巨人。神々の王位の座を追われたクマルビが、復讐のために、岩との間にもうけた子供である。
  • 旧約聖書
    • サムエル記には巨人の子孫というペリシテ人が4人登場する。
      • ゴリアテ(ゴライアス) - ペリシテ人の巨人兵士。巨人の子孫とされる。
      • 巨人の子孫たち - ゴリアテと共にダビデに倒されたペリシテの巨人。イシビベノブ、シパイ、多指症の人物(本名不詳)。
    • ネフィリム - 『創世記』や偽典『ヨベル書』などに伝わる巨人と訳される名前。『エノク書』などでグリゴリと人間の娘の間から生まれた巨人と同一視される。
  • 北欧神話
    • 原初の巨人(ユミル) - オーディンに倒され、世界の基となった。
    • 霜の巨人(ヨートゥン)
    • 山の巨人
  • リトー - 『ブリタニア列王史』などアーサー王の伝説に登場する巨人。
  • ツニート - イヌイット(エスキモー)の言い伝えで、心優しい巨人。
  • 中国
    • 盤古 - 中国神話に登場する、世界の基となった巨人。
    • 長人 - 長人国に棲むという巨人。
  • 日本の伝承
    • ダイダラボッチ(ダイタボウ、ダイランボウ) - 日本各地の伝説に登場する巨人。
    • 東北のわら人 - 東北地方から関東地方に伝わる大男。カシマ様、ショウキ様、オニオウ様などとも呼ばれる。
    • 弥五郎どん - 南九州に伝わる大男。
    • カタンナーバ - 沖縄県伊江島に伝わる大男。
    • アマンチュ - 沖縄県佐敷町に伝わる身の丈3メートルもの天人。
    • 八束水臣津野命 - 国引き神話。
  • モンゴルの神話
    • マンザシリ - 原初の巨人。
  • 台湾の伝説
    • アリカガイ - アミ族の伝説に登場する巨人。
    • ハルス - アタヤル族の伝説に登場する巨人。巨根を持ち、洪水の際には橋の代わりになる。[6]
  • インドの神話・伝説
    • プルシャ - 原人プルシャの身体から太陽や月、神々や人間など世界の全てが生まれた。
    • クンバカルナ - ヒンドゥー教の叙事詩『ラーマーヤナ』に登場する悪魔軍団の切り札となった巨人。6ヶ月たっぷり眠ることで、1日だけ不死身の体となり、半日でラーマが率いたサル軍団の4分の1を食い殺した(ハヌマーンを気絶させる戦闘力を誇るも首をはねられた)。
  • ネイティブ・アメリカンの伝承
    • ナルムクツェ - クーテネイ族(Ktunaxa)の伝承に登場する巨人。

巨人的神々(巨人とはいえないもの)

  • エジプト神話
    • ホルスの目 - 太陽と月は、ハヤブサの姿あるいは頭部を持つ天空神ホルスの両目(「ホルスの目」)だと考えられてきた。やがて二つの目は区別され、左目(「ウアジェト(ウジャト)の目」)は月の象徴、右目(「ラーの目」)は太陽の象徴とされた。
  • メソポタミア(バビロニア)神話
    • ティアマト - その死体は二つに引き裂かれてそれぞれが天と地に、乳房は山に(そのそばに泉が作られ)、その眼からはチグリス川とユーフラテス川の二大河川が生じ、母なる神ティアマトは、世界の基となった。
  • ペルシャ神話
    • ミスラ - 中世の神学では特に司法神としての性格が強調され、千の耳と万の目を以て世界を監視するとされる。また、死後の裁判を司る。
  • インド神話
    • ヴァルナ - 契約の履行を監視する神。

世界樹と巨人についての私見

フンババ、ウルリクンミ、プロメーテウスについて。

メソポタミア神話のフンババとはHumbaba (フンババ、𒄷𒌝𒁀𒁀 アッシリア)、あるいはHuwawa (フワワ、𒄷𒉿𒉿 シュメール)と書く。くさび形文字の「お約束」として、右から左に読んでも良いので、ババフンあるいはワワフと読んでも良いというか、そのように読んだ可能性もある。その場合、子音としては「B(B)-(K)M」という順の名前になる。ヒッタイト神話のウルリクンミの子音は「B-KM」であり、ギリシャ神話のプロメーテウスは「B-(K) M」という子音の並びになるので、ウルリクンミとプロメーテウスは、フンババを右から読んだ名前で、起源は「同じ巨人」であることが示唆される。

プロメーテウスは人類に火をもたらした、と言われており、「天界の火」と言えば太陽のことである。頭上に太陽を抱き(プロメーテウス)、聖なる木の化身であり(フンババ)、その根元に岩(地球)がある(ウルリクンミ)とすれば、これを「世界樹」と言わずして、何というのか。フンババ、ウルリクンミ、プロメーテウスは、「世界樹」の特徴の一部分を特に取り上げてその性質としているだけで、本来は「同じもの」であった、といえる。プロメーテウスの兄弟であるアトラースは「世界を支える神」であり、これもプロメーテウスという世界樹の性質の一部を分けたものといえる。

また、世界各地には巨人の死体から世界が作られた、という伝承が多く、「世界を形作り、支えているのは世界樹という巨人である」という神話的あるいは宗教的概念が広くあったのではないか、と思われる。

固有名詞のない巨人が登場する民話・伝説など

いわゆる「怪物退治」譚では、巨人は龍(竜)と並んで、良く倒されるもののようである。台湾の巨人は蛇のように長い男根を有しているし、龍(竜)もまた巨人の一部分の姿とはいえないだろうか。

参考文献

元にしているのはWikipediaの記事ですが、少し物足りない感があったので、巨人の種類をいくつか追加してあります。

参照

  1. 管理人はこの説には必ずしも賛成ではない。デュメジルがどのような意図でこのように述べているのかは不明だが、巨人とは「世界樹」の別の姿であり、「世界樹」で有名な北欧神話はヨーロッパの神話だと思うからである。デュメジルの意識の中では、北欧はヨーロッパではないのかもしれないが??
  2. 『山海経』には、中国南部にある食物神・后稷の墓の周りには、穀物が自然に生じているとの記述がある。后稷は「農業の神」でもある。
  3. 加地伸行、『孔子』 角川ソフィア文庫 2016年 ISBN 978-4-04-400045-5 p.38.
  4. 袁珂 著、鈴木博 訳『中国の神話伝説』上、青土社、1993年 116-124頁
  5. 出石誠彦 『支那神話伝説の研究』 中央公論社 1943年 147-148頁
  6. 台湾原住民文学選5 神々の物語、紙村徹編、草風館、2006年、270-272p