洪水神話・中国
ミャオ族のものを中心にした中国の・女媧型神話洪水神話が興味深いので、起源が古いと思う順に並べてみたい。
日本
じじ穴とばば穴
下諏訪町の上水道池付近にじじ穴とばば穴と呼ばれる古墳がある。むかし、火の雨が降ったとき、この二つの穴に逃げ込んだ人だけが助かったという。今の下諏訪の人々は、この二つの穴に逃げ込んだ人たちの子孫だといわれている(信州の民話伝説集成南信編p44)。
中国
バロン・ダロン神話
昔、天を支えて大地に立つアペ・コペンという男がいた。男は雷と兄弟分で、雷が良く遊びに来ていた。雷は鶏肉が嫌いだったが、アペ・コペンはいたずらでこっそり鶏肉を食べさせた。怒った雷はアペ・コペンを切り裂くことにした。襲ってきた雷をアペ・コペンは捕まえたが、バロン(娘)とダロン(息子)が開放してしまう。
雷は逃げる時にアペに見つかりそうになり、枯木の幹の中に隠れる。そして何とか逃げおおせる。アペは丸木舟を作って洪水に備えた。
洪水が起きると父の乗った船は水に浮き、南天門(天国の入り口)に流れ着いた。そこに日月樹が生えていたので、アペは丸木舟を降り、この木を昇って天におしかけることにした。雷はひとまずアペを歓待することとして、もてなしている間に太陽を十二出し、日月樹を枯らしてしまうことにした。そうしたらアペはもう地上に戻れないので、その間にアペを殺す方法を考えるつもりなのだ。雷の真意に気がついたアペは雷に殴りかかった。雷が逃げたので、天上では雷とアペの追いかけっこが始まり、雷は天のあちこちで鳴るようになった。アペが暴れたので、地上には山や川や海ができた。
兄妹は雷を助けた時にもらった種を植えており、そこから生えた巨大なカボチャの中に避難して助かった。兄妹を残して人類は滅亡した。
妹は人類を増やすために結婚しようと兄を説得した。兄は近親結婚を行ったら雷の怒りを買うのではないか、と恐れたが、天にいるアペが結婚を許した。雷はアペに追い回され、もう子供達に罰を与える力は残っていなかったのだ。アペは息子に「石臼のような子が生まれたら切り刻んで四方にまくように。」と言った。
結婚後、妻は石臼のような子を一つ産み落とした。石片をあちこちにまくと人間になった。落下した場所の名をとって彼らの名とした。最後の一切れは薬草になった。ミャオ人は兄妹をしのんで秋におまつりをし、子供のいない夫婦は先祖のバロンとダロンに子宝を願うようになった。[1]。
伏羲・女媧神話(ヤオ族神話)
一般的に考えられているあらすじ。
伏羲・女媧の父が雷公をとじこめていたが、兄妹であった子供たちがそれを解放してしまう。父は鉄船を作って洪水に備えた。洪水が起きると父の乗った船は水に浮き、天に届いた。父が天門を叩くと、天神はこれを恐れ、水神に水を引かせるよう命じた。水があっという間に引いたので、鉄船は天から転げ落ちた。父親は鉄船と共に粉々になって死んだ。兄妹は雷公を助けた時にもらった種を植えており、そこから生えた巨大なヒョウタンの中に避難して助かった。兄妹を残して人類は滅亡したが、二人は仲良く暮らしていた。
その頃は天門がいつも開いていたので、兄妹は天梯を昇ったり下りたりして天庭に遊びに行っていた。二人が大人になると兄は妹と結婚しようと考えた。二人は大木の周りを回って追いかけっこをし、兄が妹に追いついたら結婚することにした。妹は素早くて捕まえることができなかったが、兄は計略を使って妹を捕まえ結婚した。
結婚後、妻は肉の塊を一つ産み落とした。夫婦は奇妙に思い、肉の塊を切り刻んで天庭に持って行こうとした。途中で強風により紙の包みが敗れ、切り刻んだ肉片があちこちに飛び散り、大地に落下するといずれも人間になった。落下した場所の名をとって彼らの名とした。こうして人類はよみがえった[2]。
チャンヤン神話
種の家は天上にあった。東方にいたゲルー(Ghed lul、土地神)の天上の家で、フーファン(Fux Fang、大地)が生み育てたが、ニュウシャン(Niu Xang、婆神)が種の家を焼いてしまった。その時、「古代の書」も燃えてしまい、古い三つの儀礼などが分からなくなった。しかし、種が東から川を辿ってやってきた。
シャンリャン(Xang Liang、女神)が西方の土地で、犂や鍬を使って水牛のシィウニュウ(Hxub Niux)と田畑を耕した。農作業に使った道具は様々な生き物などに変化した。シィウニュウは大岩に変じた。シャンリャンは木々を植え、池のそばにも植えて魚を育てた。
木々の中から巨大な楓香樹が現れた。楓香樹の下には様々な動物が集まったが、彼らは魚を食べてしまった。シャンリャンは楓香樹が魚を食べてしまったと避難した。楓香樹は盗賊の棲家とされて伐られてしまった。伐採時に出た鋸屑、木屑、樹芯(蝶々)、芽(蛾)、瘤(木菟、ghob web sx、猫頭鷹)、葉(燕、鷹)、梢はさまざまなものに変化した[私注 1]。
楓香樹の樹芯には蝶のメイバンメイリュウがあった。蛾の王がつついて開けた。蝶々は生まれて三日目でバンシャン(Bang Xang女神)のとこへ行き、育てられた。彼女は水泡と恋愛して12個の卵を産んだ。ジーウィー鳥が三年半、卵を温めて孵した。はじめに人類の始祖であるチャンヤン(Janged Yangb姜央)は生まれた。その後、雷公、龍、虎、蛇、象が生まれた。彼らのへその尾もさまざまなものに変化した。悪い卵は1年かけて老いた雌豚を食べる魔物のグーワンとなった。別の残りの卵は供犠用の祭椀となった。
チャンヤンと雷公は兄弟だが相続で争い、雷公は自分が得た土地に納得しなかった。そこで天に上って雹と雨を降らせてチャンヤンを溺れさせようと考える。チャンヤンは水田を耕そうとするが、牡の水牛を持っていなかったため、雷公から水牛を借りた。耕作が終わるとチャンヤンは水牛を殺して祖先を祀り、祖霊祭で水牛を食べてしまった。雷公は怒り、洪水を起こす、と言ったのだが、三日の猶予をもらえたので、チャンヤンはその間にヒョウタンを育てた。雷公が洪水を起こし、チャンヤンはヒョウタンに乗って逃れた。生き残ったのはチャンヤンとその妹のニャンニ(Niang Ni)だけだった。チャンヤンは竹の助言を得て、妹のニャン二を説得して結婚した。二つの臼を別々の山から転がして二つが一緒になったら結婚するなどの難題を乗り越えたのだ。二人の間に肉塊が生まれたので、それを切り刻み九つの肥桶に入れて九つの山に撒いた。すると肉片から人間が大勢生まれた。しかし、彼らはまだ言葉が話せなかった。そこで土地公を天井に派遣して秘策を得た。松明を点して山を焼き竹を燃やすと弾けて音がする。それを真似て人々は言葉を話し始めた。人々は一緒に住み、七人の爺さんは牛殺しの刀を、七人の婆さんは紡車を管理して暮らすことになった。[3]。
関連項目
私的注釈
- ↑ 最初の楓香樹は、まるで盤古のようだと感じる。