うりこひめとあまのじゃく

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うりこひめとあまのじゃくは、日本の説話の1つ。

瓜から生まれた瓜子姫が主人公の日本民話。 桃太郎のように、植物から生まれた人物が活躍する民話の一つである。日本全国に広く分布しており、話の展開が地方によって異なる。 また、主人公の名前も瓜子姫のほか、「瓜姫(うりひめ)」「瓜子織姫(うりこおりひめ)」「瓜姫子(うりひめこ)」などとなる場合もある[1]

昔話の要約

ウリから産まれた瓜子姫は、おじいさんとおばあさんにたいそう大事に育てられる。

機織りが上手で、綺麗な声で歌を歌いながら機を織るのが日課。

おじいさんとおばあさんが町に買い物にでている間に天邪鬼にだまされて、連れ去られてしまう。

話の詳細は地方によって様々であり、東日本では姫が死んでしまうという結末になっているものが多い[2]。言葉巧みに柿の木に上らされ墜落死するという筋のものや、ただ殺されるのみならず剥いだ生皮を天邪鬼がかぶり、着物を着て姫に成りすまし老夫婦に姫の肉を料理して食わせるといった陰惨な話も伝えられる。西日本では対照的に、木から吊るされたり降りられなくなっているだけで死んではおらず、助けられるという話になっていることが多い[2]。天邪鬼の目的も単なるいたずらから、姫に成り代わり輿入れを図るなど様々である。

姫に成りすました天邪鬼が輿入れしようとするのを、木に吊るされた姫(あるいは殺された姫の骨から化生した小鳥)が告発するという内容になっているものもあり[1]、「三つのオレンジ(シトロン)」などに代表される花嫁入れ替わり型の民話の一形態とも考えられる[1]

天邪鬼は物語の最後において往々にして殺される。その際にソバ畑や粟畑を馬で引き回したり、あるいは死体を捨てたために、それらの植物の茎が天邪鬼の血で赤く染まったとする由来譚になっていることが多い。これはハイヌウェレ型神話の名残をとどめているともされる[1]。各地方で音は違うものの、瓜子姫が歌う機織りの歌や、天邪鬼と瓜子姫のやりとりをリズミカルな声を出して伝えるタイプの民話である。

瓜子姫と天邪鬼・まとめ

私見

「瓜子姫と天邪鬼」は、二つの物語が組み合わされたものだと思う。

  1. 天から降りてきた上位の女神(仙女)が織物(あるいは産業)を人々に教える物語。(=瓜子姫、柿の木(鳥))女神が罰(ダメージ)を受ける、という付加がつく。
  2. 下位の女神が冥界神と婚姻して(すなわち死んで)植物の母になる物語。(=天邪鬼、茅)

である。

  1. 1は「奈具神社由来譚」型である。理由は定かでないが、上位の女神も罰を受けて、ダメージを生じる。物語によっては、瓜子姫の死に繋がる。古事記の中では織女の死に起因する「天照大神の岩戸隠れ」に相当する。織女の死は、直接天照大神には関わらないはずだが、天照大神もダメージを受けて隠れてしまう。
  2. 1の「女神が罰を受ける」という要素が2にも入り込んで、天邪鬼の死も罰である、という理由付けがなされる。「ペルセポネー」型といえる。古事記の中では「大宜津比売の死」に相当する。


古事記では天照大神の岩戸隠れと大宜津比売の死は、直接は関連しないように書かれているが、この2つが組み合わさって民間伝承化したものが、「瓜子姫と天邪鬼」だと考える。物語の中で明らかな「冥界神」は登場しない。類話であるハイヌウェレでも確たる「冥界神」は登場せず、登場するのはギリシア神話である。ただし、結婚に関連する物語であることは、物語の中でも示唆されている。西欧に流布している「三つのオレンジ(シトロン)」系の物語でも、

  • 結婚との関連は示唆されるが、はっきりとした冥界神は登場しない。

ので、日本に物語が入ってくる前から、「岩戸隠れ」型、「ペルセポネー(あるいはハイヌウェレ)」型、「瓜子姫」型の3種類の型に物語は分かれていたものと思われる。更に古い物語の起源としては

太陽が射落とされて2つに分かれ、1つが月に変化した(死んだ)。

という台湾的な「射日神話」と関連していると考える。二つに分かれてしまった結果、「太陽(=瓜子姫)」として残った方もダメージを受けたり、一時的に隠れたり、時に死んだりする。「月(=天邪鬼)」の方は必ず死ぬ、となるのだと思う。

民話一覧

出典・脚注

参照

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 藤井倫明『瓜子姫の死と生 原初から現代まで』三弥井書店,2018年9月
  2. 2.0 2.1 桜澤麻伊、『世界でいちばん怖い 血ぬられた日本の童話』、ぶんか社