ニホンオオカミの標本は、頭骨はある程度残っているが、剥製や全身骨格の標本が極めて少なく、日本国内では数点しか知られていない。日本国外では、鷲家口で捕獲された個体の仮剥製と頭骨が、ロンドン自然史博物館に保管されている<ref>http://piclib.nhm.ac.uk/results.asp?image=011282, Canis lupus hodophilax, Japanese wolf, Natural History Museum Picture Library, https://web.archive.org/web/20160305202329/http://piclib.nhm.ac.uk/results.asp?image=011282, 2016-03-05, The Trustees of the Natural History Museum, London, 2019-05-06</ref>。また、シーボルトが長崎の出島で飼育していたニホンオオカミの剥製1体が、オランダ国立自然史博物館に保存されている。
日本では[[関東地方|関東]]・[[中部地方]]において[[秩父市|秩父]]の[[三峯神社]]や[[奥多摩]]の[[武蔵御嶽神社]]でオオカミを[[眷属]]として祀っており、山間部を中心とした狼信仰が存在する{{efn2|日本では関東・中部地方において秩父の三峯神社や奥多摩の武蔵御嶽神社でオオカミを眷属として祀っており、山間部を中心とした狼信仰が存在する<ref>ただし'''[[ヤマイヌ]]'''と呼んだ上でのニホンオオカミ以外のイヌ科動物との混同、未分類のままの崇拝も見られる。}}。オオカミを「大神」と当て字で表記していた地域も多い。日本各地に残る</ref>。オオカミを「'''大神'''」と当て字で表記していた地域も多い。日本各地に残る[[送り犬]]の伝承はニホンオオカミの習性を人間が都合の良く解釈したという説がある。
眷属としてのオオカミの[[ご利益]]は山間部においては五穀豊穣や獣害よけ、都市部においては火難・盗賊よけなどで、19世紀以降には[[憑依|憑き物]]落としの霊験も出現する。眷属信仰は[[江戸時代]]中期に成立し、[[幕末]]には[[1858年]]([[安政]]5年)に[[コレラ]]が大流行し、コレラは[[外国人]]により持ち込まれた悪病であると考えられ、憑き物落としの霊験を求め眷属信仰は興隆した。そのため憑き物落としの呪具として用いられる狼遺骸の需要が高まり、また同時期に流行した[[狂犬病]]や[[ジステンパー]]の拡大によって狼の獣害も発生し、眷属としてのオオカミのご利益は山間部においては五穀豊穣や獣害よけ、都市部においては火難・盗賊よけなどで、19世紀以降には憑き物落としの霊験も出現する。眷属信仰は江戸時代中期に成立し、幕末には1858年(安政5年)にコレラが大流行し、コレラは外国人により持ち込まれた悪病であると考えられ、憑き物落としの霊験を求め眷属信仰は興隆した。そのため憑き物落としの呪具として用いられる狼遺骸の需要が高まり、また同時期に流行した狂犬病やジステンパーの拡大によって狼の獣害も発生し、'''明治以降、家畜を襲う[[害獣]]として懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除などの複合的な原因によって絶滅したと思われている。明治以降、家畜を襲う害獣として懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除などの複合的な原因によって絶滅したと思われている。'''
一方、[[北海道]]および[[樺太]]・[[千島列島|千島]]に生息した大型の亜種は、[[エゾオオカミ]] ({{snamei|Canis lupus hattai}}) と呼ばれている。大きさは[[シェパード]]ほどで、褐色の毛色だったとされている。[[アイヌ]]ではエゾオオカミを「狩りをする神(オンルプシカムイ)」「ウォーと吠える神(ウォセカムイ)」など地域によって様々な呼び名があるが、雅語としての「大きな口の神(ホロケウ[[カムイ]])」は北海道全域で通じた。伝承では英雄を助ける、主人公を騙して夫にしようとする、いたずら好きなど様々な性格で語られるが、カムイのオオカミは白い毛を持つとされる<ref>[http://www.ainu-museum.or.jp/siror/book/detail.php?page=book&book_id=A0269 オオカミ、エゾオオカミ、狼] - アイヌと自然デジタル図鑑</ref>。明治以降、入植者により毛皮や肉目的の狩猟で獲物の[[エゾシカ]]が一時激減し、入植者が連れてきた牛馬などの家畜を襲って害獣とされ、懸賞金まで懸けられた徹底的な駆除により数が激減し、ジステンパーなどの飼い犬の病気の影響や[[1879年]](明治12年)の大雪による[[エゾシカ大量死]]が重なった結果、'''[[1900年]](明治33年)頃に絶滅したと見られる。'''
=== 題材とした作品など ===
[[File:Little Red Riding Hood Meeting the Wolf.jpg|200px|thumb|right|赤頭巾とオオカミ]]
* オオカミが登場する童話には、『[[三匹の子豚]]』、[[グリム童話]]の『[[狼と七匹の子山羊]]』『[[赤ずきん]]』、[[イソップ寓話]]の『[[嘘をつく子供]]』、米国の昔話『オオカミになった弟』などがある。[[悪いオオカミ]]も参照。
* 日本の[[アニメーション]]や漫画、絵本にもキーパーソンとしてオオカミはしばしば登場する。『[[狼少年ケン]]』のオオカミ一族、『[[もののけ姫]]』のモロ(山犬の神)、『[[チリンの鈴]]』のウォー(仇を育てた狼)など育て親のイメージの役割と『[[ドン・チャック物語]]』のラッパ狼、『[[名探偵ホームズ]]』のモリアーティ教授など悪役のイメージのものが多い。