海南島などでは、8月15日(中秋節)の晩に少女たちが水をはった器の中に針を入れて嫦娥(月娘)に自分の運命の吉凶を示してもらう、という習俗があった。針がすっかり沈んでしまって少しも浮かばないと運命は凶であるという<ref>[[香坂順一]] 『南支那民俗誌 海南島篇』 [[台湾総督府]]外事部 1944年 74頁</ref>。
==== 竹取説話 ====
今昔物語集 巻第31、第33「竹取の翁女児を見付けて養ふ語」
「竹取物語」の類話である。「竹取物語」が本話の直接の出典ではない、というのが現在の通説とのこと。
粗筋は、「竹取の翁が竹藪で女児を見付けて、育てたところ、三ヶ月で成長し、成人となった。翁が竹を取りに行くと、今度は竹の中に黄金を見付けた。そこで翁は大金持ちになった。女児は成長すると非常に美しくなり求婚者が殺到した。娘は「空に鳴る雷」「優曇華の花」「打たぬのに鳴る鼓」を求婚者達に求めたが、誰も持ってくることはできなかった。そのうち、評判を聞きつけた天皇が直接求婚に来て、女の美しさを素晴らしいと思った。天皇は女に求婚したが、女は「私は人ではありません。空から迎えが来ます。」と述べて、迎えと一緒に天に帰ってしまった。」というものである。
創作物である「竹取物語」では女主人公は「月の都」に帰ることになっており、別れの手向けに、天皇に「不死の薬」を贈っている。すなわち、「竹取物語」の方が、民間伝承よりも「嫦娥的」な要素を含んでいる、といえる。おそらく、中国の伝承に詳しい者が、民間流布の「竹取説話」に嫦娥の伝説を取り入れて作り上げたものが「竹取物語」と思われる。
本来の「竹取説話」は、「小さ子」的な女神に親切にしてくれる翁夫妻に対する報恩譚に、女主人公が直接求婚者達に難題を出す「難題婿」の要素と、鶴女房的な「見るな」の禁忌譚の要素を組み込んだ物語だろうと思われる。
平安時代の高貴な女性はめったに人前に姿を表すものではないので通常は見ることができないものだし、鶴女房のように人間のふりをしていたのかもしれない。しかし、天皇にその正体を見破られてしまった(天皇には直接会わないわけにいかないからである)ので、鶴女房のように魔法が解けて、本来あるべき場所に戻らざるを得なかった、というのが本来の物語だったではないか、と考える。本来の説話もかなり創作的なものだったか。
== 参考文献 ==