==== サテネとアメタの怒りの意味 ====
これまでの考察からココヤシを母に持つハイヌウェレは母系社会の概念では「ヴェマーレ族(バナナ)ではない」ということになる。彼女が一般のヴェマーレ族の祭りに、他の女性達と同じ立場で参加を求めることは父親のアメタがヴェマーレ族であることによるので、ムルア・サテネやアメタがハイヌウェレをヴェマーレ族である、とみなしていたのなら、それは'''父系'''の考え方といえる。'''母系'''の思想を持つ一般のヴェマーレ族には、ハイヌウェレは単なる芋に過ぎないので、他の女性達と同じ立場、同じ権利を求めるとは「図々しい」ということになる。同じヴェマーレ族の中でも、上位に位置するムルア・サテネ、アメタと、下位の一般のヴェマーレ族との間、すなわち彼らの社会階級の間でどれだけ'''父系'''を尊重するかで差が生じていることが分かる。を尊重するかで差が生じていることが分かる。ハイヌウェレの死に対して、サテネとアメタが怒りを示しているのだから、少なくともこの二者の間では、ハイヌウェレをヴェマーレ族の娘として扱う、という取り決めがあったと思われる。それが一般の人々に周知されなかったので、人々はハイヌウェレを芋として扱った。周知されていなければ、彼女が残酷に扱われることはサテネやアメタにはあらかじめ予想ができたのではないだろうか、ということになる。ということは、ハイヌウェレは意図的にサテネとアメタによって「死ぬ運命の祭祀」に追いやられたのではないだろうか、とそのような疑問が沸く。しかし、そうであればハイヌウェレが死んでもサテネとアメタが怒る理由はない。そうなることは分かっていたからである。 ==== 罰を受ける人々と女性 ====
==== まとめ ====