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29 バイト追加 、 2022年9月22日 (木) 08:14
'''ウカノミタマ'''は、日本神話に登場する女神。『古事記』では'''宇迦之御魂神'''(うかのみたまのかみ)、『日本書紀』では'''倉稲魂命'''(うかのみたまのみこと)と表記する。名前の「宇迦」は'''穀物'''・食物の意味で、穀物の神である。また「宇迦」は「ウケ」(食物)の古形で、特に稲霊を表し、「御」は「神秘・神聖」、「魂」は「霊」で、名義は「稲に宿る神秘な霊」と考えられる<ref>新潮日本古典集成『古事記』</ref>。記紀ともに性別が明確にわかるような記述はないが、古くから女神とされてきた<ref name=mituhasi>三橋健「女人形稲荷神像の系譜」『神道及び神道史』55・56号、国学院大学神道史学会、2000年。</ref><ref>中村陽・監修『稲荷大神』戎光祥出版、平成21年、67頁。</ref>。
伏見稲荷大社の主祭神であり<ref name=inada>稲田智宏「稲荷大神五柱とは何か」『稲荷大神』戎光祥出版、平成21年。</ref>、稲荷神(お稲荷さん)として広く信仰されている。ただし、稲荷主神としてウカノミタマの名前が文献に登場するのは'''室町時代以降'''のことである(後述)。伊勢神宮ではそれより早くから、'''[[御稲御倉|御倉神]]'''(みくらのかみ)として祀られた。
== 史料における記載 ==
室町時代に神祇次官・吉田兼倶が著した『神名帳頭註』の伏見稲荷の条では、「本社。ウカノミタマ神なり。この神はスサノオの娘なり。母はオオイチヒメなり。ウカノミタマ神は百穀を播きし神なり。故に稲荷と名づくか。イザナギの御娘にこの名これ有り。」と記される。
また、同じく神祇次官の[[吉田兼右]]が著したといわれる『二十二社註式』の伏見稲荷の条では、「中社。ウカノミタマ命。この神は百穀を播きし神なり。一名をトヨウケヒメ命という。[[大和国]]の[[廣瀬大社|広瀬大明神]]、伊勢の外宮とは同体の神なり。[[比売神|ヒメ大明神]]と名づく。」と記されている。また、同じく神祇次官の吉田兼右が著したといわれる『二十二社註式』の伏見稲荷の条では、「中社。ウカノミタマ命。この神は百穀を播きし神なり。一名をトヨウケヒメ命という。大和国の広瀬大明神、伊勢の外宮とは同体の神なり。ヒメ大明神と名づく。」と記されている。
平安・鎌倉時代の文献に登場する稲荷神は女神であるが<ref name=mituhasi/>、神名についての記述はなく、室町時代になり稲荷主神としてウカノミタマの名が登場する<ref>松前健・編『稲荷明神』筑摩書房、1988年、7頁。</ref>。最古の稲荷縁起は『山城国風土記』逸文に記されるが、この伝承によると稲荷神は稲の神であるため、いつしか同じく稲の神格を持つウカノミタマのことと認識されるようになったのだろうといわれる<ref name=inada/>。
=== 伏見稲荷社記 ===
[[江戸時代]]になると、伏見稲荷の[[神職]]などによって諸々の由緒記(『水台記』ほか)が著されるが、その多くが稲荷三神江戸時代になると、伏見稲荷の神職などによって諸々の由緒記(『水台記』ほか)が著されるが、その多くが稲荷三神<ref group="注">伏見稲荷の上社・中社・下社の神の総称。</ref>の主神をウカノミタマとしている(天倉稲魂命、若倉稲姫魂命、と表記される場合もある<ref>山折哲雄・編『稲荷信仰事典』戎光祥出版、1999年、34頁。</ref>)。本来は稲荷山の上・中・下の三社のうち、中社に鎮座するとされていたが、江戸後期から下社とする記述が増え、現在もそのようになっている。
これに対し、他の2神の神名は文献によって異同があり、現在の形(ウカノミタマ、[[サタヒコ]]、[[オオミヤノメ]])に決まるのは[[明治]]になってからであるこれに対し、他の2神の神名は文献によって異同があり、現在の形(ウカノミタマ、サタヒコ、オオミヤノメ)に決まるのは明治になってからである<ref>『官幣大社稲荷神社明細図書』に基づく。</ref>。
なお、[[真言宗]]総本山・[[東寺]]の[[縁起]]に登場する、稲束を担いだ翁の稲荷明神がウカノミタマと呼ばれることもあるが、近世以降の付会であるなお、真言宗総本山・東寺の縁起に登場する、稲束を担いだ翁の稲荷明神がウカノミタマと呼ばれることもあるが、近世以降の付会である<ref>『稲荷大明神利現記』([[元禄]]年間・成立)など。『稲荷大明神利現記』(元禄年間・成立)など。</ref>。中世の東寺縁起では、この翁の稲荷神に固有の神名はなく、鎮座場所も稲荷山の上社である<ref>『稲荷大明神流記』(『稲荷大明神流記』(南北朝初期・成立)など。</ref>。高野山伝来の『稲荷五所大事聞書』では、この翁の稲荷神の名は「'''太多羅持男'''<ref>[[南北朝時代 (日本)|南北朝ダイダラボッチ]]初期・成立)など。との関連はあるのか?</ref>。[[高野山]]伝来の『稲荷五所大事聞書』では、この翁の稲荷神の名は「太多羅持男」としている。」としている。
== 系譜 ==
『古事記』において[[須佐之男命]]と[[神大市比売]]との間に生まれた子で、兄に[[大年神]]がいる。『古事記』において須佐之男命と神大市比売との間に生まれた子で、兄に大年神がいる。
『日本書紀』においては[[伊弉諾尊]]と[[伊弉冉尊]]の間の子とし、食物の神を生もうという明確な意思によって誕生する。『日本書紀』においては伊弉諾尊と伊弉冉尊の間の子とし、食物の神を生もうという明確な意思によって誕生する。
『[[諏訪氏系図]]』において[[建御名方神]]と[[八坂刀売神]]との子である[[八杵命]]の子とされるが、別の資料では[[倉稲主神]]としており、八杵命の子である倉稲玉神が記紀の宇迦之御魂神と同一神であるかは不明である。『諏訪氏系図』において建御名方神と八坂刀売神との子である八杵命の子とされるが、別の資料では倉稲主神としており、八杵命の子である倉稲玉神が記紀の宇迦之御魂神と同一神であるかは不明である。
== 祀る神社 ==
ウカノミタマは、現在は穀物の神としてだけでなく、農業の神、商工業の神としても信仰されている。[[伏見稲荷大社]]([[京都市]])、[[笠間稲荷神社]]([[茨城県]])、[[祐徳稲荷神社]]([[佐賀県]])などの全国の稲荷神社で祀られているほか、ビルやデパートの屋上、工場の敷地内などにも、屋敷神として稲荷神を祀る社が設けられている(例えば、日本橋[[三越]]デパート屋上の[[三囲神社]]などがある)。稲荷神社以外でウカノミタマを祀る神社としては、以下のような例がある。ウカノミタマは、現在は穀物の神としてだけでなく、農業の神、商工業の神としても信仰されている。伏見稲荷大社(京都市)、笠間稲荷神社(茨城県)、祐徳稲荷神社(佐賀県)などの全国の稲荷神社で祀られているほか、ビルやデパートの屋上、工場の敷地内などにも、屋敷神として稲荷神を祀る社が設けられている(例えば、日本橋三越デパート屋上の三囲神社などがある)。稲荷神社以外でウカノミタマを祀る神社としては、以下のような例がある。
; [[小津神社]]([[滋賀県]][[守山市]]) 小津神社(滋賀県守山市) : 平安時代に制作された、ウカノミタマの[[神像]]([[重要文化財]])を祀る。垂髪(たれがみ)の女神の座像で、片膝を立て、手に[[如意宝珠|宝珠]]を持つ。木製で像高50cm。ウカノミタマを主祭神とするが、稲荷神社ではない。平安時代に制作された、ウカノミタマの神像(重要文化財)を祀る。垂髪(たれがみ)の女神の座像で、片膝を立て、手に宝珠を持つ。木製で像高50cm。ウカノミタマを主祭神とするが、稲荷神社ではない。; [[小俣神社]]([[三重県]][[伊勢市]])小俣神社(三重県伊勢市): 伊勢外宮の境外[[摂社]]。神道五部書の『御鎮座本紀』では、トヨウケ大神に随行してきた「ウカノミタマ稲女神」を祀ると記される。地元では、稲女(いなめ)さん・稲嘗(いなべ)さん、とも呼ばれる。伊勢外宮の境外摂社。神道五部書の『御鎮座本紀』では、'''トヨウケ大神に随行してきた「ウカノミタマ稲女神」'''を祀ると記される。地元では、稲女(いなめ)さん・稲嘗(いなべ)さん、とも呼ばれる。; [[志等美神社|上社]](三重県伊勢市)上社(三重県伊勢市): [[合祀]]により、4座の宇迦之御魂神を祀る合祀により、4座の宇迦之御魂神を祀る<ref>宇治山田市役所 編『宇治山田市史 下巻』宇治山田市役所、昭和4年3月5日、1690p.(948ページより)</ref>。; [[葭原神社]](三重県伊勢市)葭原神社(三重県伊勢市): 皇大神宮の別宮[[月読宮]]の境内[[末社]]。皇大神宮の別宮月読宮の境内末社。
; 愛宕神社(福岡県福岡市西区)
※稲荷神として祀られる場合は、'''[[稲荷神]]'''・'''[[稲荷神社]]'''を参照。
== 関連項目 ==
* [[サタヒコ]]
* [[オオミヤノメ]]
* [[天之日矛]]
 
== 参考文献 ==
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%AB%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%BF%E3%83%9E ウカノミタマ](最終閲覧日:22-05-26)
== 注釈 ==
[[category:日本神話]]
[[Category:穀物神]]
[[Category:ウケ]]
[[category:女神]]

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