差分

『新撰姓氏録』では'''櫛玉命'''、'''天櫛玉命'''の名で登場し、高御魂命（高魂命）の子とされる。の名で登場し、[[高御産巣日神|高御魂命]]（高魂命）の子とされる。

『先代旧事本紀』天神本紀では'''天櫛玉命'''の名で登場し、[[饒速日命]]の防衛（ふせぎまもり）として随伴して天降った三十二人のうちの一柱とされ、の防衛（ふせぎまもり）として随伴して天降った三十二人のうちの一柱とされ、鴨県主らの祖とされる。* [[賀茂県主氏神産巣日神|鴨県主神皇産霊尊]]らの祖とされる。　→　天神玉命　→　'''天櫛玉命'''　→　鴨建角身命（八咫烏）　→　鴨建玉依彦命・玉依姫命*: 鴨県主の祖には、[[高御産巣日神]]と[[神産巣日神]]の系統が主にあるようである<ref>[https://doutaku.saloon.jp/kodainonazo/kamokeifu.html カモ系図考察]（最終閲覧日：25-01-18）</ref>。 '''櫛玉命'''は[[廣瀬大社|広瀬大社]]の社伝では饒速日命のことを指す。

『伊勢国風土記』逸文によれば、伊勢津彦神は[[大和]]の[[神武天皇]]によって派遣された[[天日別命]]に国土を渡すよう要求されたが、長く先住していたことを理由に断っていた。しかし、最終的に天日別命が攻勢の準備を整えると、これを恐れた伊勢津彦神は東方へ避退する旨を天日別命に伝えた。すると天日別命に「伊勢を去ることをどのように証明するのか」と問われたため、伊勢津彦神は「強風を起こしながら波に乗って東方へ去って行く」ことを誓い、夜の内に東方へと去って行った。のちに天皇の[[詔|詔り]]によって国津神の神名を取って、[[伊勢国]]としたと記述される。なお後世の加筆で、追われた後、別の地の神社で祀られたことや[[信濃国]]に鎮座したことが記述される『伊勢国風土記』逸文によれば、伊勢津彦神は大和の神武天皇によって派遣された天日別命に国土を渡すよう要求されたが、長く先住していたことを理由に断っていた。しかし、最終的に天日別命が攻勢の準備を整えると、これを恐れた伊勢津彦神は東方へ避退する旨を天日別命に伝えた。すると天日別命に「伊勢を去ることをどのように証明するのか」と問われたため、伊勢津彦神は「強風を起こしながら波に乗って東方へ去って行く」ことを誓い、'''夜の内'''に東方へと去って行った。のちに天皇の詔りによって国津神の神名を取って、伊勢国としたと記述される。なお後世の加筆で、追われた後、別の地の神社で祀られたことや'''信濃国に鎮座した'''ことが記述される<ref>秋本吉郎「二巻　風土記」『[[日本古典文学大系]]』[[岩波書店]]、1958年。秋本吉郎「二巻　風土記」『日本古典文学大系』岩波書店、1958年。</ref>。逸文の一説では、別の地名由来が記述されている（後述の[[#系譜]]を参照）。。逸文の一説では、別の地名由来が記述されている。

逸文内一説の記述によれば、'''出雲神'''の子である'''出雲建子命'''の別名が伊勢都彦命（伊勢津彦神）であり、またの名を天櫛玉命（櫛玉命）というと記しており、「[[伊勢#地名|伊勢]]」の由来についても、国号由来とは異なる記述が成されている。の別名が伊勢都彦命（伊勢津彦神）であり、またの名を天櫛玉命（櫛玉命）というと記しており、「伊勢」の由来についても、国号由来とは異なる記述が成されている。

それによれば、命は[[伊賀国]][[穴石神社 (伊賀市)|穴石神社]]（現[[三重県]][[阿山郡]]）に石をもって[[城#日本|城]]（き）を造っていたが、それによれば、命は伊賀国穴石神社（現三重県阿山郡）に石をもって城（き）を造っていたが、'''阿倍志彦の神'''（あへしひこ-。『[[延喜式神名帳]]』内の伊賀国[[阿倍郡]]の。『延喜式神名帳』内の伊賀国阿倍郡の'''[[大彦命|敢国神]]'''（あへのくにつかみ。[[敢国神社]]の[[祭神]]。[[伊賀国の式内社一覧]]も参照。）と見られる（あへのくにつかみ。敢国神社の祭神。伊賀国の式内社一覧も参照。）と見られる<!-- 『風土記 日本古典文学大系』脚注参考 -->）が城を奪いに来るも、勝てずして帰ったため、それに（石城（いしき、いわき）の音が訛って<!-- 同日本古典文学大系の脚注参考 -->）由来して「伊勢」という名が生まれたと記す。

本居宣長は『古事記伝』で伊勢津彦神は'''建御名方神'''の別名であるとし、神武天皇の時代とする記述は後世の誤伝であるとする説を唱えている。これは天津神に反抗するも勝てず東国へ逃亡する姿が似ていることから来る説である。一方、伴信友は『倭姫命世記考』で、伊勢津彦神はもともと出雲神で伊勢を支配しており、建御名方神は一旦伊勢津彦神を頼って伊勢に逃れ、その後に信濃に去っため、伊勢津彦神もその後に信濃に逃げたとする説を唱えている。ここでは建御名方神と伊勢津彦神を別神としている。 また、宝賀寿男は、伊勢津彦に関する記述<ref>宝賀寿男は「伊勢を去る際、大風を起こし光輝いて日の如くあったという記述は、鍛冶に際して風を活用し日神信仰を持っていたことをうかがわせる」とした。</ref>から、建御名方神とは本来は別神であり、神武天皇の東征によって故国を追われたことから混同されたものと独自の説を示した。同説では、その他別名（櫛玉命）や世代関係（神武一世代前）など諸要素からも伊勢津彦神こそ'''[[本居宣長邇芸速日命]]は『[[古事記伝]]』で伊勢津彦神は'''建御名方神と同神とされ、東国へ逃亡したのは実際は伊勢津彦神の子に当たる'''神狭命'''の別名であるとし、神武天皇の時代とする記述は後世の誤伝であるとする説を唱えている。これはとした<ref>宝賀寿男「[http://wwr2.ucom.ne.jp/hetoyc15/keijiban/isetuhiko1.htm 伊勢津彦と建御名方命との関係]」への返信、『古樹紀之房間、掲示板・応答板』、2006年。</ref><ref>宝賀寿男「長髄彦と磯城県主の系譜」『三輪氏―大物主神の祭祀者 (古代氏族の研究)』青垣出版、2015年。</ref>。 == 私的考察 ==伊勢津彦は信濃国に去った、と言われているので建御名方命の神話との類似性から、全国的な観点からは、建御名方命のこととして良いと考える。奈良県の[[廣瀬大社|広瀬大社]]では櫛玉命（伊勢津彦）を饒速日命のこととしている。とすれば、建御名方命とは[[天津神邇芸速日命|饒速日命]]に反抗するも勝てず東国へ逃亡する姿が似ていることから来る説である。一方、の別名であって、物部氏の祖としての[[伴信友邇芸速日命|饒速日命]]は『倭姫命世記考』で、伊勢津彦神はもともと出雲神で伊勢を支配しており、建御名方神は一旦伊勢津彦神を頼って伊勢に逃れ、その後に信濃に去っため、伊勢津彦神もその後に信濃に逃げたとする説を唱えている。ここでは建御名方神と伊勢津彦神を別神としている。を、出雲よりの神として現したものといえるのではないだろうか。

また、宝賀寿男は、伊勢津彦に関する記述{{efn諏訪大社下社周辺と岡谷市鉢伏山には「犬神信仰」があったと管理人は考えている。また、この場合の犬神は名前の一つに「疾風（[[速飄神|宝賀寿男は「伊勢を去る際、大風を起こし光輝いて日の如くあったという記述は、鍛冶に際して風を活用し日神信仰を持っていたことをうかがわせる」とした。}}から、建御名方神とは本来は別神であり、神武天皇の東征によって故国を追われたことから混同されたものと独自の説を示した。同説では、その他別名（櫛玉命）や世代関係（神武一世代前）など諸要素からも伊勢津彦神こそ'''速飄]]・はやち）」とあり、風神も兼ねていると考える。鉢伏山を源流とする横河川の隣にある出早雄小萩神社は、鉢伏山信仰に関連すると思われ、建御名方命の子神とされる[[出早雄命]]と[[意岐萩神]]を祀る。この2神が犬神とすれば、対になる神々であって、奈良県の櫛玉命（風神・水神）と[[邇芸速日命志那都比古神]]（風神・火神）に相当するのではないだろうか。出雲国風土記に「'''と同神とされ、東国へ逃亡したのは実際は伊勢津彦神の子に当たる伊農波夜'''」とあるように、* 伊勢津彦（天櫛玉命・饒速日命）・[[神狭命出早雄命]]が「風神・水神」* [[志那都比古神]]・[[意岐萩神]]が「風神・火神」に相当すると考える。個人的には、全国的な広い観点では、伊勢津彦（天櫛玉命・饒速日命）と建御名方命は「同じ神」として良いが、長野県という狭い範囲で見た場合には、伊勢津彦（天櫛玉命・饒速日命）は'''とした<ref>[[宝賀寿男出早雄命]]「'''に相当し、父とされる建御名方命は、[http://wwr2.ucom.ne.jp/hetoyc15/keijiban/isetuhiko1.htm 伊勢津彦と建御名方命との関係[高野御子神]」への返信、『古樹紀之房間、掲示板・応答板』、2006年。</ref><ref>宝賀寿男「長髄彦と磯城県主の系譜」『三輪氏―大物主神の祭祀者 (古代氏族の研究)』青垣出版、2015年。</ref>。{{See|建御名方神}}]のように2頭の犬の主人、あるいは父神とする方が妥当と考える。

* '''[[伊豆毛神社風間神社]]（[[長野県]][[長野市]]）現在は祀られていないが、諸説ある祭神の一つ'''（長野県長野市風間）：推定* 都美恵神社（三重県伊賀市柘植町） === 天櫛玉命 ===* [[風間神社]]（長野県長野市風間）日置神社（長野県長野市信州新町日原西字宮脇）* [[都美恵神社]]（[[三重県]][[伊賀市]][[柘植町]]）日置神社（兵庫県豊岡市日高町日置字高谷）：式内社：但馬國氣多郡、日置神社

* Wikipedia：[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E5%8B%A2%E6%B4%A5%E5%BD%A6 伊勢津彦]（最終閲覧日：25-01-17）**秋本吉郎 校注 『風土記 日本古典文学大系』（[日本古典文学大系』（岩波書店、1958年）* [岩波書店]https://genbu.net/saijin/isetu.htm 伊勢都比古命]、1958年）、玄松子（最終閲覧日：25-01-17）

* [[伊勢国造廣瀬大社]]* [[堅田神社速飄神]]（* [[志那都比古神]]* [[皇大神宮狗天伯社]]摂社）