=== 去勢 ===
雄牛を去勢しないで肥育した場合、キメが粗くて硬く、消費者に好まれない牛肉に仕上がる。また去勢しない雄牛を牛舎内で群飼すると、牛同士の闘争が激しくなり、ケガが発生しやすく肉質の低下にもつながる。こういった理由から、肉用に飼育されるオスは一般的に去勢される<ref name=":1" />。去勢の方法は、陰嚢を切開して、精索と血管を何度か捻りながら、引いてちぎる観血去勢法、皮膚の上からバルザックやゴムリングを用いて挫滅、壊死させる無血去勢法が一般的で、特別な場合を除いて、麻酔は行われない。日本も加盟するOIEの肉用牛の動物福祉規約<ref>https://www.oie.int/en/what-we-do/standards/codes-and-manuals/terrestrial-code-online-access/?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_beef_catthe.htm, CHAPTER 7.9. ANIMAL WELFARE AND BEEF CATTLE PRODUCTION SYSTEMS, 20220107</ref>には3ヶ月齢より前に実施することが推奨されているが、日本の肉牛の90.9%は3ヵ月以上で去勢されている<ref name=":1" />。観血去勢では術中や術後の消毒不足や敷料等が傷口に入ることで化膿や肉芽腫の形成等が見られることがある<ref>千葉 暁子, 森山 友恵, 飯野 君枝, 山岸 則夫, 2020, 観血去勢後の手術部位感染により陰嚢膿瘍を形成した黒毛和種去勢牛の3 例, 産業動物臨床医学雑誌, volume11, issue2, pages82-86, 日本家畜臨床学会, 大動物臨床研究会, doi:10.4190/jjlac.11.82</ref>。
== 病気 ==
=== 舌遊び ===
舌を口の外へ長く出したり左右に動かしたり、丸めたり、さらには柵や空の飼槽などを舐める動作を持続的に行うことを指す。粗飼料の不足、繋留、単飼(1頭のみで飼育する)などの行動抑制が要因とされており、そのストレスから逃れるためにこの行動が発現する。舌遊び行動中は心拍数が低下することが認められている。また生産サイクルをあげるために、産まれてすぐに母牛から離されることも舌遊びの要因とされている。「子牛は自然哺乳の場合1時間に6000回母牛の乳頭を吸うといわれている。その半分は単なるおしゃぶりにすぎないが、子牛の精神の安定に大きな意味をもつ。子牛は母牛の乳頭に吸い付きたいという強い欲求を持っているが、それが満たされないため、子牛は乳頭に似たものに向かっていく。成牛になっても満たされなかった欲求が葛藤行動として「舌遊び」にあらわれる」<ref> 中洞正 『黒い牛乳』 幻冬舎メディアコンサルティング、2009年7月。<sup>(''要ページ番号、2018-12-15'')</sup></ref>。実態調査では、種付け用黒毛和牛の雄牛の100%、同ホルスタイン種の雄牛の6%、食肉用に肥育されている去勢黒毛和牛の雄牛の76%、黒毛和牛の雌牛の89%、ホルスタイン種の17%で舌遊び行動が認められたとある<ref>東北大学大学院農学研究科 佐藤衆介教授らによる調査。(''要ページ番号、2018-12-15'')</ref>。
=== 失明 ===
霜降り肉を作るためには、筋肉繊維の中へ脂肪を交雑させる、という通常ではない状態を作り出さなければならない。そのため、脂肪細胞の増殖を抑える働きのあるビタミンAの給与制限が行われる。ビタミンAが欠乏すると、牛に様々な病気を引き起こす。ビタミンA欠乏が慢性的に続くと、光の情報を視神経に伝えるロドプシンという物質が機能しなくなり、重度になると、瞳孔が開いていき、失明に至る<ref>http://www.nosai-yamanashi.or.jp/jigyo/hiiku_kyuyo.html, 肥育牛のビタミンA適正給与について, https://web.archive.org/web/20110901090228/http://www.nosai-yamanashi.or.jp/jigyo/hiiku_kyuyo.html, 2011-09-01, 2018-12-15, 山梨県農業共済組合</ref>為、ビタミンA欠乏の徴候が表れた場合カロテンを含んだ飼料やビタミン剤の投与でこれを補う必要がある。
=== 中毒 ===
稀なケースであるが、牧場内に広葉樹がありドングリが採餌できる環境にあると、ドングリの成分であるポリフェノールを過剰摂取してしまい中毒死することがある<ref>[http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/agriculture/1-0358378.html ドングリ食べ過ぎで牛が集団死 オホーツクで3年前] 北海道新聞どうしんweb(2017年1月16日)2017年1月24日閲覧</ref>。
== 利用 ==