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21世紀初期には欧米由来の食文化のグローバル化が進展し、宗教的理由から牛肉食がタブーとされている地域を除いては、牛肉食文化の世界的拡散が顕著である。特に商業畜産的要因から、現代の畜産・肥育・流通現場においては世界各地で細分化された名称が用いられる傾向がある。
== 宗教 宗教・文化・雄牛 ==人間に身近で、印象的な角を持つ大型家畜である牛は、世界各地で信仰対象や動物に関連する様々な民俗・文化のテーマになってきた。人間に身近で、印象的な角を持つ大型家畜である牛は、世界各地で信仰対象や動物に関連する様々な民俗・文化のテーマになってきた。農耕を助ける貴重な労働力である牛を殺して神に供える犠牲獣とし、そこから転じて牛そのものを神聖な生き物として崇敬することは、古代より永くに亘って広範な地域で続けられてきた信仰である。
古代エジプト人は[[オシリス]]、[[ハトホル]]信仰を通して雄牛(ハピ、ギリシャ名ではアピス)を聖牛として崇め、第一王朝時代(紀元前2900年ごろ)には「ハピの走り」と呼ばれる行事が行われていた<ref name="Fagan">ブライアン・フェイガン『人類と家畜の世界史』東郷えりか訳 河出書房新社 2016年、ISBN 9784309253398 pp.120-125.</ref>。創造神[[プタハ]]の化身としてアピス牛信仰は古代エジプトに根を下ろし、ラムセス2世の時代にはアピス牛のための地下墳墓セラペウムが建設された<ref name="Fagan"/>。聖牛の特徴とされる全身が黒く、額に白い菱形の模様を持つウシが生まれると生涯神殿で手厚い世話を受け、死んだ時には国中が喪に服した。一方、普通のウシは食肉や労働力として利用されていたことが壁画などから分かっている。= 中国 ===ロッパ族
主にインドで信仰されているヒンドゥー教では牛(特に[[コブウシ]])を神聖視している([[スイギュウ]]はそうではない)。このためインドは牛の飼育頭数は多いものの、牛肉食を忌避する国民が多い。インドでは従来も州により、牛肉の扱いを規制していた。2017年5月26日にはインド連邦政府が、食肉処理を目的とした家畜市場における牛の売買を禁止する法令を出した。これに対して、イスラム教徒や世俗主義者から「食事の選択権に対する侵害」として反対運動や訴訟が起き大地の母が三匹の神牛を生んだ。長男は'''火神牛'''、次男は'''鉄神牛'''、三男は'''土神牛'''で、お互いに争った。ある時火神牛が鉄神牛を飲み込んだ。鉄神牛が死んだ後その毛は草木に変化し、骨は石や山脈に、血液は河に、内臓は動物や昆虫になった<ref>[https://wwweastasian.sankeilivedoor.comblog/articlearchives/201705301946161.html 牛(1) 創世神牛]、神話伝説その他、eastasian、00-E73SSIK34RO5HARHJ6NWQQ5LKU/, インド政府、「牛の幸福のため」牛肉規制 家畜市場での肉牛売買禁止、一部の州やイスラム教徒は反発, 産経新聞ニュース, 2017年5月30日</ref>、インド最高裁判所は7月11日に法令差し止めを決めた<ref>https://www.sankei.com/article/2017071103-01(最終閲覧日:22-GMXZBG6PGJPHTBSFA2RYF273SE/, 牛売買禁止令を差し止め インド最高裁 モディ政権に打撃, 産経新聞ニュース, 2017年7月11日</ref>。インドでは牛肉を売ったり、食べたりしたと思われた人が殺害される事件も起きている<ref>https://www.sankei.com/article/2017070610-3OWBECV5DJNXBN3ZPO2QD6EZ4Q/, インドで「牛肉殺人」多発 モディ首相「誰も牛の名のもとに人を殺してはならない」, 産経新聞ニュース, 2017年7月6日11)</ref>。
日本でも牛(丑)は十二支の鳥獣に入っているほか、* [[牛頭天王盤古]]のような神や、:盤牛王と牛に例えられることがある。* [[牛鬼炎帝神農|炎帝]]など妖怪のモチーフになっている。また、身近にいる巨大な哺乳類であることから、その種の中で大きい体格を持つ生き物の和名に用いられることがある(ウシエビ、ウシガエル、ウシアブなど)。:'''人身牛首'''の姿をしていた、とされる。* [[蚩尤]]:人の身体に'''牛の頭'''と鳥の蹄を持つなどとされる。
== 上位の神のトーテム = エジプト ===牛は各地で上位の神のトーテム、特に男神のトーテムとして現されるように思う。古代エジプト人は[[オシリス]]、[[ハトホル]]信仰を通して'''雄牛'''([[ハピ]](水神)、ギリシャ名ではアピス)を'''聖牛'''として崇め、第一王朝時代(紀元前2900年ごろ)には「ハピの走り」と呼ばれる行事が行われていた<ref name="Fagan">ブライアン・フェイガン『人類と家畜の世界史』東郷えりか訳 河出書房新社 2016年、ISBN 9784309253398 pp.120-125.</ref>。創造神[[プタハ]]の化身としてアピス牛信仰は古代エジプトに根を下ろし、ラムセス2世の時代にはアピス牛のための地下墳墓セラペウムが建設された<ref name="Fagan"/>。聖牛の特徴とされる全身が黒く、額に白い菱形の模様を持つウシが生まれると生涯神殿で手厚い世話を受け、死んだ時には国中が喪に服した。一方、普通のウシは食肉や労働力として利用されていたことが壁画などから分かっている。
== 倒される神のトーテム = インド ===牛は各地で倒される神のトーテムとしても現されるように思う。また、その結果、冥界神のトーテムとされることもある。インダス文明でも牛が神聖視されていた可能性がある。主にヒンドゥー教では牛(特に[[コブウシ]])を神聖視している([[スイギュウ]]はそうではない)。牛は敬われ、食のタブーとして肉食されることはない。
ムガル帝国時代より続くヒンドゥー教の祭事「ゲーイ・ガウーリ」(ディーワーリーの期間中に行われる祭事の一つ)など、過激な伝統行事も世界にはある<!--<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=4_JAMsbfgt8 Diwali Cattle Stampede | Bizarre Diwali Tradition] - YouTube, [https://news.nicovideo.jp/watch/nw4180919 【ドドドドド】インドで地面に寝そべって牛に踏まれまくる儀式が行われ今年も普通に怪我人続出!] - ニコニコニュース</ref>|※表示できる出典が無いので、実際の映像を収めた動画を裏書きで示しておきます。-->。 === スペイン ===興奮した牛の群れにあえて追われるスペインなどラテン文化圏の祭事「エンシエロ」がある。 == 紋章 =日本 ===日本の東北地方では牛をべこと呼ぶ。牛の鳴き声(べー)に、「こ」をつけたことによる。地方によっては「べご」「べごっこ」とも呼ぶ。 柳田國男によれば、日本語では牡牛が「ことひ」、牝牛が「おなめ」であった。また、九州の一部ではシシすなわち食肉とされていたらしく、「タジシ(田鹿)」と呼ばれていた<ref>柳田國男『定本 柳田國男集』第1巻 筑摩書房 258頁</ref>。 牛(丑)は十二支の鳥獣に入っているほか、[[牛頭天王]]のような神や、[[牛鬼]]など妖怪のモチーフになっている。また、身近にいる巨大な哺乳類であることから、その種の中で大きい体格を持つ生き物の和名に用いられることがある(ウシエビ、ウシガエル、ウシアブなど)。 == 宗教・文化・雌牛 ==牛が紋章に描かれることは一般的である。* [[モリガン]]:ケルト神話の女神。モリガンはクー・フーリンに傷を負わせられるが、モリガンが差し出したミルクをクー・フーリンが飲むと、彼女の傷は癒えた。
== 慣用句 ==
* 「鶏口となるも牛後となるなかれ(牛の尾より鶏の口、鶏口牛後)」 - 大集団の下っ端になるより小集団でも指導者になれということ。人の下に甘んじるのを戒める、もしくは、小さなことで満足するを否とする言葉。
* 「牛なし、帽子ばっかり(all hat and no cattle)」ファッションでカウボーイの帽子をかぶっていても、牛は持っていない。見かけだおし、格好だけの人のこと。テキサス州の慣用表現。
 
=== 性別による名称 ===
* 牡の牛(牡牛、雄牛)
: 牡(オス)の牛。日本語では、'''牡牛'''/'''雄牛'''(おうし、おすうし、古訓:『をうじ』とも)<ref name="kb_おうし">https://kotobank.jp/word/牡牛・雄牛-216949, 牡牛・雄牛 おうし, コトバンク, 小学館『精選版 日本国語大辞典』、三省堂『大辞林』第3版, 2019-08-04</ref>、'''牡牛'''(ぼぎゅう)(おうし)という。「雄牛(ゆうぎゅう)」という読みも考えられるが、用例は確認できず、しかし'''種雄牛'''(しゅゆうぎゅう、雄の種牛<sup>〈しゅぎゅう、たねうし〉</sup>)<ref name="kb_種雄牛">https://kotobank.jp/word/種雄牛, 種雄牛, コトバンク, 小学館『デジタル[大辞泉』, 2019-08-05</ref>という語形に限ってはよく用いられている。古語としては「'''男牛'''(おうし、古訓:をうじ、をうじ)」もあるものの、現代語として見ることは無い。
: 英語では、"'''bull'''"、"'''ox'''"、方言で "nowt"という。
: ラテン語では "'''taurus'''"(タウルス)といい、"'''bos'''"と同じく性別の問わない「牛」の意もある。
* 牝の牛(牝牛|雌牛)
: 牝(メス)の牛。日本語では、'''牝牛'''/'''雌牛'''(めうし、めすうし、古訓:めうじ、をなめ、をんなめ(ヒンギュウ、うなめ等)<ref name="kb_めうし">https://kotobank.jp/word/牝牛・雌牛-395640, 牝牛・雌牛 めうし , コトバンク, 小学館『精選版 日本国語大辞典』、三省堂『大辞林』第3版, 2019-08-04 </ref><ref name="kb_ヒンギュウ">https://kotobank.jp/word/牝牛-614563, 牝牛 ヒンギュウ, コトバンク, 小学館『デジタル大辞泉』、ほか , 2019-08-04</ref>、'''牝牛'''(ひんぎゅう、ヒンギュウ)という。「雌牛(しぎゅう)」という読みも考えられるが、用例は確認できず、雄と違って'''種雌牛'''も「しゅしぎゅう」ではなく「たねめすうし」と訓読みする<ref name="kb_種雌牛">https://kotobank.jp/word/種雌牛, 種雌牛, コトバンク, 小学館『デジタル大辞泉』, 2019-08-05</ref>。古語としては「'''女牛'''<ref name="kb_種牛_日国辞">https://kotobank.jp/word/種牛-528061, 種牛 シュギュウ, コトバンク, 小学館『精選版 日本国語大辞典』, 2019-08-05</ref>」「'''牸牛'''(めうし)」の表記もあるものの、現代語として見ることは無い。
: 英語では'''cow'''、ラテン語では "'''vacca'''"という。
 
なお、牡、牝はウマにも用いられる特殊な字である。
 
=== 年齢による名称 ===
日本語における年齢を基準とした呼び分けは牛においても一般的用法と変わりなく、つまり、人間や他の動植物と同じく[年少:幼牛─若牛─成牛─老牛:年長]という呼び分けがあるが、体系的に用いられるわけではない。一方、畜養・医療・加工・流通・管理・研究等々諸分野の専門用語として、通用語と全く異なる語が用いられていることもある。また、親牛・仔牛という本来は親と子の関係を表していた名称は、一般・専門ともによく用いられる。
 
* 未成熟な牛(未成熟牛)
: 成熟していない牛全般は、'''未成熟牛'''をいう。生まれたての牛も成熟間近の牛も該当する。
* 幼い牛(幼牛、仔牛、子牛)
: '''幼牛'''(ようぎゅう)。成熟に程遠い年齢の未成熟牛、あるいは未成熟牛全般をいう。専門的には、生後およそ120日以内から360日以内までの牛を指すことが多い。先述のとおり、子供(※動物に当てる用字としては『仔』であるが、常用漢字の縛りの下では『子』で代用する)の牛という意味から発した'''仔牛'''/'''子牛'''(こうし)は、幼牛より定義の緩い語ながらむしろ多く用いられる。英語では"'''calf'''"が同義といえ、日本語でもこれが外来語化した「'''カーフ'''」がある。なお、これらの語は未成熟牛もしくは幼牛の生体を指し、屠殺後の食品とは別義である。
: 肉牛の場合、この段階から業者が品質を高めて始めることになるため、ベーシックな状態の牛という意味合いで'''素牛'''(もとうし)、育て上げる牛という意味で'''育成牛'''(いくせいぎゅう)という<ref name="1SN_肉牛">肉牛の仕事, https://www.sangyo.net/contents/industry/beef_cattle.html, 株式会社 Life Lab, 第一次産業ネット(公式ウェブサイト), 2019-08-04</ref>。素牛は繁殖用育成と肥育(出荷するために肉質を高めつつ肉量を増やす飼育)のいずれかに回すことになり<ref name="畜産ZOO鑑_素牛">素牛(もとうし)の選び方, http://zookan.lin.gr.jp/kototen/nikuusi/n222_4.htm, 地域畜産総合支援体制整備事業、および、JRA(日本中央競馬会)の特別振興資金による助成事業, 畜産ZOO鑑(公式ウェブサイト), 2019-08-04</ref>、行く末が決まり次第、それぞれに'''繁殖素牛'''・'''肥育素牛'''(ひいく-)という。
: 子牛肉:その肉は'''仔牛肉'''/'''子牛肉'''といい、英語では"'''veal'''"(ヴィール)、フランス語では"'''veau'''"(ヴォー)と呼ばれる。外来語形は少なくとも料理や栄養学などの分野で定着している。柔らかい食感が好まれ、さまざまな料理の食材として用いられる。特にフランス料理においては、その肉のブイヨン(出汁)がフォン・ド・ヴォーとして重用される。松阪牛等の高級和牛では「処女牛」という言い方がなされ、希少性が強調される場合がある。
: 仔牛の革:生後6か月以内の仔牛の皮革(原皮となめし革)は<ref name="kb_カーフスキン_Brit">https://kotobank.jp/word/カーフスキン, カーフスキン, コトバンク, 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』 , 2019-08-04 </ref><ref name="kb_カーフレザー">https://kotobank.jp/word/カーフレザー, カーフレザー, コトバンク, 小学館『デジタル大辞泉』, 2019-08-04</ref>、「カーフ」の名で呼ばれるほか<ref name="kb_カーフ">https://kotobank.jp/word/カーフ, カーフ, コトバンク, 三省堂『大辞林』第3版、ほか, 2019-08-04</ref>、その原皮を「'''カーフスキン''' (calfskin)」、その皮革を一般に「'''カーフレザー''' (calf leather)」と呼び、前者は原義を離れて「仔牛の革」の意でも用いられる<ref name="kb_カーフスキン_林">https://kotobank.jp/word/カーフスキン, カーフスキン , コトバンク, 三省堂『大辞林』第3版, 2019-08-04</ref>。後者は牛革の中でも最高級とされ、よく馴染むしなやかさが特徴で、鞄・手帳・財布・靴など多様な革製品に好んで用いられる。
* 若い牛
: '''若牛'''(わかうし)。成熟が近い未成熟牛をいう。ただしあくまで古来の日本語において通用する語であって、各専門分野の用語としては、確認し得る限り、「仔牛(幼牛)」の段階を過ぎた牛は「成牛」である。
* 成熟した牛
: '''成牛'''(せいぎゅう)という。
* 老いた牛
: '''老牛'''(ろうぎゅう)という。現代都市文明社会においては、年老いて利用価値が低下した牛は、市場価値が極めて低く、ほぼ全ての老齢個体は'''廃用牛'''(はいようぎゅう)として処分される。例えば乳牛は、自然界では到底あり得ない頻度で生涯に亘って搾乳され続けるため、採算が取れないほど乳の出が悪くなった頃には、体が極度に不健康な状態になっている。
 
=== 飼育条件による名称 ===
畜産業界ないし肥育業界、ないし牛肉産品を流通・販売する業界などにおいては、さらに多様に表現されている。
 
* '''畜牛'''(ちくぎゅう、英:''cattle'')
: 畜産用途に肥育されるウシ全般のこと。家畜牛。
* '''去勢牛'''[きょせいぎゅう]
: 人工的に去勢されたウシのこと。食肉を目的として肥育されるにあたっては、雌雄とも去勢されることが多い。荷車牽引などの用務牛用途を目的として牡牛を用いる場合にも、精神的な荒さや発情を削ぐために去勢されるケースがよく見られる。英語では特にオスの去勢牛を"ox"、メスを"steer"と呼んで区別する。
* '''乳牛'''(にゅうぎゅう、英:''dairy cattle'')
: 搾乳目的で飼育されるウシのこと。
* '''未経産牛'''(みけいさんぎゅう、英:|''heifer'')
: 妊娠ないし出産を経験していない牝牛のこと。乳牛用途・肉牛用途ともに高価で取引される。
* '''経産牛'''(けいさんぎゅう、英:''delivered cow'')
: すでに出産経験のある牝牛のこと。肉牛として出荷する場合には、未経産牛に比較して安価で取引される。
 
=== 日本語の方言・民俗 ===
日本の東北地方では牛をべこと呼ぶ。牛の鳴き声(べー)に、「こ」をつけたことによる。地方によっては「べご」「べごっこ」とも呼ぶ。
 
柳田國男によれば、日本語では牡牛が「ことひ」、牝牛が「おなめ」であった。また、九州の一部ではシシすなわち食肉とされていたらしく、「タジシ(田鹿)」と呼ばれていた<ref>柳田國男『定本 柳田國男集』第1巻 筑摩書房 258頁</ref>。
 
== 形質 ==
ウシは'''反芻動物'''である。反芻動物とは'''反芻'''(はんすう)する動物のことであるが、そもそも「反芻」とは、一度呑み下して消化器系に送り込んだ食物を口の中に戻して咀嚼し直し、再び呑み込むことをいう。このような食物摂取の方法を取ることで栄養の吸収効率を格段に上げる方向へ進化し、その有利性から生態系の中で大成功を収めて世界中に拡散した動物群が、反芻動物であった。多様に見えて、その実、単系統群である。そのような反芻動物の中でも、ウシが属するウシ科はとりわけ進化の度合いが深まった分類群(タクソン)の一つであり、ウシの仲間(※少し範囲を広げてウシ族と言ってもよい)は勢力的にも代表格と言える。彼らは、ヒトに飼われて殖えたのも確かではあるが、もともと自然の状態で生態上(種数と生物量の両面で)の大勢力であった。反芻動物の進化がウシ科のレベルまで深まる以前に勢力を誇っていたのはウマに代表される奇蹄類であり、ウシ科は栄養吸収効率の大きな差を活かして奇蹄類を隅に押しやり分布を広めた。そのことは地質学的知見で証明可能である。家畜としても比較されることの多いウシとウマであるが、同じ質と量の餌を与えた場合、栄養面で報いが大きいのは間違いなくウシであるということもできる。
 
反芻動物の具える胃を「'''反芻胃'''(はんすうい)」といい、[[マメジカ]]のような原始的な種を除き、ウシを含むほとんどの反芻動物が4つの胃を具える。ただし実際には、胃液を分泌する本来の意味での胃は第4胃の「'''皺胃'''(しゅうい)・ギアラ」のみであり<ref name="kb_ウシ_Nipp">https://kotobank.jp/word/ウシ, ウシ, コトバンク, 小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』, 2019-08-04</ref>、それより口腔に近い「前胃(ぜんい)」と総称される消化器系、第1胃「'''瘤胃'''(りゅうい)・ミノ」・第2胃「'''蜂巣胃'''(ほうそうい)・ハチノス」・第3胃「'''重弁胃'''(じゅうべんい)・センマイ」は食道が変化したものである。ここを共生微生物の住まう植物繊維発酵槽に変えることで、反芻は極めて効果的な消化吸収システムになった。ウシの場合、この前胃に、草の繊維(セルロースなど)を分解(化学分解)する細菌類(バクテリア)および繊毛虫類(インフゾリア)を始めとする微生物を大量に常在させ、繊維を吸収可能な状態に変えさせ、収穫するようにそれを吸収するという方法で草を"食べている"。前胃の微生物を総じて胃内常在微生物叢などというが、ウシはこれら微生物の殖えすぎた分も動物性蛋白質として消化・吸収し、栄養に変えている。
 
ウシの味蕾は25,000個で味蕾が5000個のヒトの5倍を有する。ウシは毒物で反芻胃の微生物が死なないように味覚で食べる草をより分けている<ref>齋藤忠夫「チーズの科学」p180、Blue Backs、2016年11月15日 ISBN2:978-4-06-257993-3</ref>。
 
ウシの歯は、牡牛の場合は上顎に12本、下顎に20本で、上顎の切歯(前歯)は無い。そのため、草を食べる時には長い舌で巻き取って口に運ぶ。
 
鼻には、個体ごとに異なる鼻紋があり、個体の識別に利用される。
== 家畜としてのウシ ==
=== 娯楽 ===
牛を娯楽に利用する文化は、世界を見渡せば散見される。牛同士を闘わせるのは、アジアの一部の国・地域(日本、朝鮮、オマーンなど)における伝統的娯楽で、これを'''闘牛'''(とうぎゅう)という。暴れ牛と剣士を闘わせるのは、西ゴート王国に始まり、イベリア半島を中心に伝統的に行われてきたブラッドスポーツの一種で、これも日本語では'''闘牛'''という。暴れ牛と闘う剣士を'''闘牛士'''というが、対等の闘いではなく、絶対的有利な立場にある剣士が華麗な身のこなしと殺しを披露する見世物である。18世紀ごろのイギリスでは、牡牛と[[イヌ|犬]]を闘わせる見世物として「'''牛いじめ'''('''ブルベイティング'''、英:bullbaiting)」が流行し、牡牛(ブル)と闘うよう品種改良された犬、すなわち「ブルドッグ」が、現在のブルドッグの原形として登場した。このブラッドスポーツは残酷だとして1835年に禁止され、姿を消している。危険な暴れ牛や暴れ馬の背に乗ってみせるのは、北アメリカで発祥した'''ロデオ'''で、競技化しており、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、および、南アメリカの幾つかの国で盛んに興行が打たれている。
 
=== 信仰 ===
農耕を助ける貴重な労働力である牛を殺して神に供える犠牲獣とし、そこから転じて牛そのものを神聖な生き物として崇敬することは、古代より永くに亘って広範な地域で続けられてきた信仰である。現在の例として、インドの特にヒンドゥー教徒の間で牛が神聖な生き物として敬われ、食のタブーとして肉食されることの無いことは、よく知られている。インダス文明でも牛が神聖視されていた可能性があり、インド社会における係る概念の永続性は驚くべきものがある。また、興奮した牛の群れにあえて追われるスペインなどラテン文化圏の祭事「エンシエロ」、聖なる牛の群れに踏まれることでその年の幸運を得ようとするムガル帝国時代より続くヒンドゥー教の祭事「ゲーイ・ガウーリ」(ディーワーリーの期間中に行われる祭事の一つ)など、過激な伝統行事も世界にはある<!--<ref>[https://www.youtube.com/watch?v=4_JAMsbfgt8 Diwali Cattle Stampede | Bizarre Diwali Tradition] - YouTube, [https://news.nicovideo.jp/watch/nw4180919 【ドドドドド】インドで地面に寝そべって牛に踏まれまくる儀式が行われ今年も普通に怪我人続出!] - ニコニコニュース</ref>|※表示できる出典が無いので、実際の映像を収めた動画を裏書きで示しておきます。-->。
<!--
牛が釘などを食べた場合、胃を保護するため、磁石を呑み込ませておくこともあるという。|※この節に記載すべき内容ではない。-->
 
== 肉牛の一生 ==
家畜としての牛は、主に肉牛と乳牛に分けられる。(ヨーロッパに多い乳肉兼用種というのもある)<ref>http://www.tochigi-vet.or.jp/other/sangyou/sangyou_09.html, 世界の牛の種類, 栃木県獣医師会, 2016-06-25</ref>
 
肉用牛には3種の区分があり、それぞれ「肉専用種(和牛)」「乳用種(乳牛から生まれた雄)」「交雑種(F1:乳牛雌に肉専用種雄を交配した種)」と呼ばれている<ref>[https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/pdf/nikugyu.pdf 農林水産省『肉用牛の種類』]</ref>。
 
繁殖農家で生まれた子牛は、250-300kgになる10か月齢から12か月齢まで育成され、「'''素牛'''(もとうし)」(6か月齢〜12か月齢の牛)市場に出荷され(2-4か月齢で出荷されるスモール牛市場もある)、肥育農家に競り落とされる。競り落とされた素牛は肥育農家まで運ばれる。長距離になると輸送の疲れで10kg以上やせてしまうこともある<ref>[http://mie.lin.gr.jp/index.htm 社団法人 三重県畜産協会 参照]</ref>。
 
その後、「'''肥育牛'''」として肥育される。飼育方法は、繋ぎ飼い方式・放牧方式などがあるが、日本では数頭ずつをまとめて牛舎に入れる(追い込み式牛舎)群飼方式が一般的である。運動不足による関節炎の予防や蹄の正常な状態を保つためには放牧又は運動場への放飼が必要であるが、国内では88%が放牧あるいや放飼を行っていない<ref name=":1" />。そのため日本の77%の農家が削蹄を行っている。削蹄は年2回が望ましいが、年に1回もしくは1回未満の農場が78%を占める<ref>http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/h21/beef/no2/b_m5.pdf, 肉用牛飼養実態アンケート調査(中間とりまとめ), 20220713</ref><ref>畜産学入門, 20120630, 2012, 文永堂出版</ref>。
 
肥育前期(7か月程度)は牛の内臓(特に胃)と骨格の成長に気をつけ、良質の粗飼料を給餌される。肥育中期から後期(8-20か月程度)にかけては高カロリーの濃厚飼料を給餌され、筋肉の中に脂肪をつけられる(筋肉の中の脂肪は「さし」とよばれ、さしの多いものを霜降り肉と言う)。
 
肉用牛は、生後2年半から3年、体重が700kg前後で出荷され、屠殺される。
 
肉牛を産むための雌牛('''繁殖用雌牛''')は、繁殖用として優れた資質・血統をもつ雌牛が選ばれる。繁殖用雌牛は、生後14か月から16か月で初めての人工授精(1950年に家畜改良増殖法が制定され、人工授精普及の基盤が確立し、今日では日本の牛の繁殖は99%が凍結精液を用いた人工授精によってなされている)<ref>[http://www.tokyo-aff.or.jp/center/toukyouto 農林綜合研究センター 参照](リンク切れ:2018-12-15)</ref>が行われ、約10か月(285日前後)で分娩する。生産効率を上げるため、1年1産を目標に、分娩後約80日程度で次の人工授精が行われる。8産以上となると、生まれた子牛の市場価格が低くなり、また繁殖用雌牛の経産牛の肉としての価格も低くなる場合があるため<ref>[http://yamagata.lin.gr.jp/ 社団法人 山形県畜産協会 参照]</ref>、標準的には6-8産で廃用となり、屠殺される。また、受胎率が悪かったり、生まれた子牛の発育が悪かったりすると、早目に廃用となる。
==外科的処置と動物福祉==
=== 断角/除角 ===
牛は、飼料の確保や社会的順位の確立等のため、他の牛に対し、角を用いて争うことがある。そのため牛舎内での高密度の群飼い(狭い時で1頭当たり5m前後<ref name=":1">http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/, 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)肉用牛の飼養実態アンケート調査報告書, 2020-4-20, 公益社団法人畜産技術協会</ref>)ではケガが発生しやすく、肉質の低下に繋がることもある。また管理者が死傷することを防止するためにも、牛の除角(牛がまだ小さいころに、焼き鏝や刃物、薬剤などで角芽を除去すること)あるいは断角(角が成長してから切断すること)は有効な手段と考えられている。
 
日本では肉牛の59.5%、乳牛の85.5%が断角/除角されている<ref name=":2">http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/, 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)乳用牛の飼養実態アンケート調査報告書, 20220107</ref><ref name=":1" />。断角/除角は激痛を伴い牛への負担が大きく、ショック死する例も報告されている<ref>https://www.hopeforanimals.org/cattle/528/, 畜産従業員の見た、除角による牛の死亡2017/04/24, 2020-4-21, 認定NPO法人アニマルライツセンター</ref>が、麻酔を使用する農家は肉牛で17.3%、乳牛で14%と低い<ref name=":2">http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/, 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)乳用牛の飼養実態アンケート調査報告書, 2022010}</ref><ref name=":1" />。断角/除角の方法は、腐食性軟膏や断角器、焼きごて、のこぎり、頭蓋骨から角をえぐり取る除角スプーンなどを使う<ref>ゲイリー・L・フランシオン, 動物の権利入門, 2018, 緑風出版, page66</ref>。
 
農水省が普及に努めている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」では肉牛、乳牛ともに「除角によるストレスが少ないと言われている焼きごてでの実施が可能な角が未発達な時期(遅くとも生後2ヵ月以内)に実施することが推奨される」。だが実際には、乳牛では45%、肉牛では85%が3ケ月齢以上で断角/除角されている<ref name=":2">http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/, 平成 26 年度国産畜産物安心確保等支援事業(快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業)乳用牛の飼養実態アンケート調査報告書, 20220107</ref><ref name=":1" />。
 
=== 去勢 ===
雄牛を去勢しないで肥育した場合、キメが粗くて硬く、消費者に好まれない牛肉に仕上がる。また去勢しない雄牛を牛舎内で群飼すると、牛同士の闘争が激しくなり、ケガが発生しやすく肉質の低下にもつながる。こういった理由から、肉用に飼育されるオスは一般的に去勢される<ref name=":1" />。去勢の方法は、陰嚢を切開して、精索と血管を何度か捻りながら、引いてちぎる観血去勢法、皮膚の上からバルザックやゴムリングを用いて挫滅、壊死させる無血去勢法が一般的で、特別な場合を除いて、麻酔は行われない。日本も加盟するOIEの肉用牛の動物福祉規約雄牛を去勢しないで肥育した場合、キメが粗くて硬く、消費者に好まれない牛肉に仕上がる。また去勢しない雄牛を牛舎内で群飼すると、牛同士の闘争が激しくなり、ケガが発生しやすく肉質の低下にもつながる。こういった理由から、肉用に飼育されるオスは一般的に去勢される。去勢の方法は、陰嚢を切開して、精索と血管を何度か捻りながら、引いてちぎる観血去勢法、皮膚の上からバルザックやゴムリングを用いて挫滅、壊死させる無血去勢法が一般的で、特別な場合を除いて、麻酔は行われない。日本も加盟するOIEの肉用牛の動物福祉規約<ref>https://www.oie.int/en/what-we-do/standards/codes-and-manuals/terrestrial-code-online-access/?id=169&L=0&htmfile=chapitre_aw_beef_catthe.htm, CHAPTER 7.9. ANIMAL WELFARE AND BEEF CATTLE PRODUCTION SYSTEMS, 20220107</ref>には3ヶ月齢より前に実施することが推奨されているが、日本の肉牛の90.9%は3ヵ月以上で去勢されている<ref name=":1" />。観血去勢では術中や術後の消毒不足や敷料等が傷口に入ることで化膿や肉芽腫の形成等が見られることがある9%は3ヵ月以上で去勢されている。観血去勢では術中や術後の消毒不足や敷料等が傷口に入ることで化膿や肉芽腫の形成等が見られることがある<ref>千葉 暁子, 森山 友恵, 飯野 君枝, 山岸 則夫, 2020, 観血去勢後の手術部位感染により陰嚢膿瘍を形成した黒毛和種去勢牛の3 例, 産業動物臨床医学雑誌, volume11, issue2, pages82-86, 日本家畜臨床学会, 大動物臨床研究会, doi:10.4190/jjlac.11.82</ref>。 === 鼻環(鼻ぐり) ===鼻環による痛みを利用することで、牛の移動をスムーズにさせ、調教しやすくできる。日本の肉牛農家では76.1%で鼻環の装着が行われている<ref name=":1" />(乳牛における装着率は不明)。鼻環通しで麻酔は使用されない。農水省が普及に努めている「アニマルウェルフェアの考え方に対応した肉用牛の飼養管理指針」は鼻環の装着について「牛へのストレスを極力減らし、可能な限り苦痛を生じさせないよう、素早く適切な位置に装着すること」としている。 ==ケア==;毛刈り;ブラッシング:舌や壁などに擦り付けてセルフグルーミングを行う。また人間が行うことで信頼関係が構築され<ref>https://www.izuno.ed.jp/subjects/32690, 【動物科学科】牛のブラッシングの様子です。 – 島根県立出雲農林高等学校, 2022-12-09, www.izuno.ed.jp</ref>、同時に人間にもストレス軽減効果が確認される<ref>https://www.ibaraki.ac.jp/news/2021/08/20011326.html, ウシのブラッシングによる学生のストレス軽減を生理データで確認―農・安江教授に聞く, 2022-12-09, www.ibaraki.ac.jp</ref>。カウブラシ(牛体ブラシ)という自分でブラッシングを行う装置もある<ref>https://doi.org/10.20652/jabm.58.2_66, カウブラシの利用制限による牛群への影響と欲求度の評価 , 2022-12-09, 小針 大助, 2022-06-25, 動物の行動と管理学会, doi:10.20652/jabm.58.2_66</ref><ref>https://www.nytimes.com/2018/08/08/science/cows-brush-grooming.html, Give a Cow a Brush, and Watch It Scratch That Itch, 2022-12-09, Klein JoAnna, 2018-08-08, The New York Times</ref><ref>堂腰 顕, 2007, 24. 自動牛体ブラシに対する乳牛の利用状況と効果(日本家畜管理学会・応用動物行動学会合同2007年度春季研究発表) , https://doi.org/10.20652/abm.43.1_64, 動物の行動と管理学会, doi:10.20652/abm.43.1_64</ref>。;削蹄・蹄鉄:家畜の牛は運動量が無いため人間(削蹄師)が削る作業が行われる<ref>https://www.asahi.com/articles/ASPD56QS9PBPPITB008.html?iref=ogimage_rek, 牛の爪を削る削蹄師 「ただの爪切り屋にはなるな」と親方に言われて:朝日新聞デジタル, 2022-12-09, 2021-12-05, 朝日新聞デジタル</ref>。また逆に労役を行う牛には蹄鉄が取り付けられる。;牛舎洗浄・牛床清掃:敷料やふん尿を除去して、消毒剤で洗浄する<ref>牛肉の生産衛生管理ハンドブック 著:農林水産省 消費・安全局</ref>。;牛体洗浄(鎧落とし):千葉県鴨川市では、牛洗いという行事が行われる<ref>https://www.chibanippo.co.jp/news/local/196303, 牛に感謝し豊作祈る 伝統の「牛洗い」行事 鴨川, 2022-12-09, www.chibanippo.co.jp</ref>。 == 病気 ===== 舌遊び ===舌を口の外へ長く出したり左右に動かしたり、丸めたり、さらには柵や空の飼槽などを舐める動作を持続的に行うことを指す。粗飼料の不足、繋留、単飼(1頭のみで飼育する)などの行動抑制が要因とされており、そのストレスから逃れるためにこの行動が発現する。舌遊び行動中は心拍数が低下することが認められている。また生産サイクルをあげるために、産まれてすぐに母牛から離されることも舌遊びの要因とされている。「子牛は自然哺乳の場合1時間に6000回母牛の乳頭を吸うといわれている。その半分は単なるおしゃぶりにすぎないが、子牛の精神の安定に大きな意味をもつ。子牛は母牛の乳頭に吸い付きたいという強い欲求を持っているが、それが満たされないため、子牛は乳頭に似たものに向かっていく。成牛になっても満たされなかった欲求が葛藤行動として「舌遊び」にあらわれる」<ref> 中洞正 『黒い牛乳』 幻冬舎メディアコンサルティング、2009年7月。<sup>(''要ページ番号、2018-12-15'')</sup></ref>。実態調査では、種付け用黒毛和牛の雄牛の100%、同ホルスタイン種の雄牛の6%、食肉用に肥育されている去勢黒毛和牛の雄牛の76%、黒毛和牛の雌牛の89%、ホルスタイン種の17%で舌遊び行動が認められたとある<ref>東北大学大学院農学研究科 佐藤衆介教授らによる調査。(''要ページ番号、2018-12-15'')</ref>。 === 失明 ===霜降り肉を作るためには、筋肉繊維の中へ脂肪を交雑させる、という通常ではない状態を作り出さなければならない。そのため、脂肪細胞の増殖を抑える働きのあるビタミンAの給与制限が行われる。ビタミンAが欠乏すると、牛に様々な病気を引き起こす。ビタミンA欠乏が慢性的に続くと、光の情報を視神経に伝えるロドプシンという物質が機能しなくなり、重度になると、瞳孔が開いていき、失明に至る<ref>http://www.nosai-yamanashi.or.jp/jigyo/hiiku_kyuyo.html, 肥育牛のビタミンA適正給与について, https://web.archive.org/web/20110901090228/http://www.nosai-yamanashi.or.jp/jigyo/hiiku_kyuyo.html, 2011-09-01, 2018-12-15, 山梨県農業共済組合</ref>為、ビタミンA欠乏の徴候が表れた場合カロテンを含んだ飼料やビタミン剤の投与でこれを補う必要がある。 === 中毒 ===稀なケースであるが、牧場内に広葉樹がありドングリが採餌できる環境にあると、ドングリの成分であるポリフェノールを過剰摂取してしまい中毒死することがある<ref>[http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/agriculture/1-0358378.html ドングリ食べ過ぎで牛が集団死 オホーツクで3年前] 北海道新聞どうしんweb(2017年1月16日)2017年1月24日閲覧</ref>。 == 主要品種 ===== ヨーロッパ由来品種 ===* アバディーン・アンガス種(無角牛、スコットランド原産、肉牛)* アングラー種(ドイツ原産、乳肉兼用)* ウェルシュブラック種(イギリス原産、乳肉兼用)* エアシャー種(スコットランド原産、乳牛)* ガンジー種 (イギリス領ガンジー島原産、乳牛 )* キアニーナ種(イタリア原産、役肉兼用 欧州系で最大の標準体型を持つ)* ギャロレー種(イギリス原産、肉用)* グロニンゲン種(オランダ原産、乳肉兼用)* ケリー種(アイルランド原産、乳用)* ゲルプフィー種(ドイツ原産、肉用)* サウスデボン種(イギリス原産、乳肉兼用)* ジャージー種(イギリス領ジャージー島原産、乳牛)* シャロレー種(フランス原産、肉牛)* ショートホーン種(スコットランド原産、肉牛)* シンメンタール種(スイス原産、乳肉兼用)* スウェーデンレッドアンドホワイト種(スウェーデン原産、乳用)* デキスター種(イギリス原産、乳肉兼用)* デボン種(イギリス原産、肉用)* デーリィショートホーン種(イギリス原産、乳肉兼用)* ノルウェーレッド種(ノルウェー原産、乳用)* ノルマン種(フランス原産、乳肉兼用)* ハイランド種(イギリス原産、肉用)* パイルージュフランドル種(ベルギー原産、乳肉兼用)* ピンツガウエル種(オーストリア原産、肉用)* フィンランド種(フィンランド原産、乳用)* ブラウンスイス種(スイス主産、乳肉兼用)* ヘレフォード種(イングランド原産、肉牛)* ホルスタイン種(オランダ原産、乳牛、黒と白の模様で日本でもよく知られる)* ホワイトベルテッドギャラウェイ種(スコットランド原産)* マルキジアーナ種(イタリア原産、役肉兼用)* マレーグレー種(オーストラリア原産、肉牛)* ミューズラインイーセル種(オランダ原産、乳肉兼用)* ムーザン種(フランス原産、肉用)* モンベリエール種(フランス原産、乳肉兼用)* リンカーンレッド種(イギリス原産、乳肉兼用)* レッドデーニッシュ種(アイルランド原産、乳肉兼用)* レッドポール種(イギリス原産、乳肉兼用)* ロートフィー種(ドイツ原産、肉用)* ロマニョーラ種(イタリア原産、役肉兼用) === アジア由来品種 ===* 黄牛(中国・東南アジア産、役牛)* 草原紅牛(中国原産、乳牛)* 朝鮮牛(韓牛)(朝鮮原産、役牛・肉牛)* ブラーマン種* ヒンドゥー種* カンペンセン種 === 日本由来品種 ===* 口之島牛(鹿児島県口之島に棲息、野生化牛)* 見島牛(山口県見島産、天然記念物)** 見蘭牛(見島牛の雄とホルスタインの雌の交配 (F<sub>1</sub>))* 和牛(改良和種:外国種との交配)** [褐毛和種(あかげわしゅ、熊本県・高知県主産、食肉用)** 黒毛和種(農耕用・食肉用)** 無角和種(山口県産、食肉用)** 日本短角種(東北地方・北海道主産、食肉用)<!--== ウシの仲間 ==* [[スイギュウ]](水牛):ウシ亜科アフリカスイギュウ属・アジアスイギュウ属。* [[ヌー]]* [[ヤク]]* [[コブウシ]]* [[バイソン]]・[[バッファロー]](野牛)--> == 飼育数 ==世界に棲息する牛のうち、家畜として飼育されている頭数に関しては、国際連合食糧農業機関 (FAO) による毎年の調査結果が、1990年以降公表されている<ref name="GlobalNote_世界計">2019-01-08, 世界計 > 牛の飼育数 , https://www.globalnote.jp/p-cotime/?dno=10190&c_code=999&post_no=15229, グローバルノート株式会社, 公式ウェブサイト, 2019-08-05</ref>。統計には、一般的な牛のほか、[[コブウシ]]、[[ガウル]]などのアジア牛、[[ヤク]]を含む。[[スイギュウ]]や[[バイソン]]は含まない。 牛を聖なる動物と見なすヒンドゥー教の影響もあってインドが世界を圧倒する飼育頭数で知られ、長らく世界一の座を占めていた。しかし、2003年にブラジルがインドに換わって世界第1位となった<ref name="FAO_LiveCattles">http://faostat3.fao.org/home/index.html#VISUALIZE, FAO Brouse date production-Live animals-cattles, Fao.org, 2013-01-06<sup>(''リンク切れ、2018-12-15'')</sup></ref><!--※リンク切れしているので確認できないが、有効だったと推定し得るこの出典は、出典箇所が正しく示されていなかったため、全文の信用性が低くなってしまっている。一応信用したうえで、加筆しやすい時系列に構成し直した。出典の再提示が必要。-->。これは、アマゾン熱帯雨林の破壊と牧場開発が以前にも増して急速に進み、アマゾン地方の牛飼育頭数が激増してきた結果であった。 2008年には再びインドが第1位になったものの、インド・ブラジル両国の頭数はほぼ拮抗している。 牛の飼育数は新興国を中心に増え続けており2020年の推定総頭数は15億2593万9479頭である<ref name="FAOSTAT"/>。{| class="sortable wikitable" style="font-size:smaller"|+ 牛の飼育数上位国の推定頭数と推移<ref name="FAOSTAT">https://www.fao.org/faostat/en/#data, FAOSTAT, FAO, 2022-11-06</ref>!! colspan="2" |2020! colspan="2" |2010! colspan="2" |2000! colspan="2" |1990! colspan="2" |1980! colspan="2" |1970|-|世界| -|1525939479| -|1411583223| -|1319963140| -|1296612992| -|1216999022| -|1081612612|-|ブラジル|1|218150298|1|209541109|2|169875524|2|147102320|2|118971424|4|75446704|-|インド|2|194482355|2|194184992|1|191924000|1|202500000|1|186500000|1|177442000|-|アメリカ |3|93793300|3|94081200|4|98199000|4|95816000|4|111242000|2|112369008|-|''エチオピア''|4|70291776|5|53382192|7|33075330|8|30000000|9|26000000|7|26231504|-|中国|5|61128843|4|68871241|3|104553559|5|77909675|6|52496213|5|57616205|-|アルゼンチン|6|54460799|6|48949744|5|48674400|6|52845000|5|55760496|6|48439648|-|パキスタン|7|49624000|8|34285000|15|22004000|15|17677008|16|15038000|14|14584000|-|メキシコ|8|35639209|9|32642134|8|30523735|7|32054304|7|27742000|9|22798000|-|チャド|9|32237209|16|19221000|23|11460000|49|4297300|46|4360000|40|4500000|-|スーダン|10|31757266|7|41761000|6|37093000|13|21027800|14|18354416|17|12300000|-|コロンビア|12|28245262|10|27329066|12|24363700|9|24383504|10|23945488|12|20200000|-|バングラデシュ|13|24391000|12|23051000|14|22310000|10|23244000|12|21556000|8|25686000|-|オーストラリア|14|23503238|11|26733000|10|27588000|11|23162208|8|26202704|10|22162464|-|ロシア|18|18126003|13|20671328|9|28060323|3|118388000|3|115100000|3|95162000|-|日本|60|3907000|56|4376000|51|4588000|45|4760000|48|4248000|50|3622000|}
== 利用 ==
日本においてウシが公然と食されるようになるのは[[明治時代]]である。[[文明開化]]によって欧米の文化が流入する中、欧米の重要な食文化である牛肉食もまた流れ込み、[[銀座]]において[[牛鍋]]屋が人気を博すなど、次第に牛肉食も市民権を得ていった。また、乳製品の利用・製造も復活した。
 
== 文化 ==
== 環境問題 ==
ウシは反芻動物であり、反芻を繰り返すことにより、飼料を微生物が分解しメタンガスが発生する。これは地球温暖化の深刻な一因と言われており<ref>https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202111080000142.html, 世界に15億頭…牛のげっぷは地球温暖化の促進要因、世界が行う対策とは, 日刊スポーツ, 2021-11-08, 2021-11-08</ref>、アメリカではメタンの総発生量の26パーセントが牛のげっぷによるものである<ref name="geppu">http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/080600217/, 3NOPが牛のげっぷ中のメタンを3割減らす, ナショナルジオグラフィック, 2015-08-10</ref>。3-ニトロオキシプロパノール(3NOP)と呼ばれる成分を餌に混ぜるなどしてげっぷを少なくする研究が進んでいる。
== 参考文献 ==
** ブリュノ・ロリウー, 2003-10, 中世ヨーロッパ食の生活史, 吉田春美, 原書房
** 市川健夫, 市川健夫先生著作集刊行会, 牛馬と人の文化誌, 日本列島の風土と文化:市川健夫著作選集, volume3, 第一企画, 2010, isbn:978-4-90-267615-0
**: 初出は『地理』第20巻第11号、1975年11月、「文化地理の指標としての家畜」。
** 品種改良の世界史 家畜編, 正田陽一, 悠書館, 2010-11, 松川正, isbn:978-4-90-348740-3
* [http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ushi/ 牛の博物館]
* http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000023.html, 丑のはなし - 神社本庁, 2014-02-26, https://web.archive.org/web/20140226091944/http://www.jinjahoncho.or.jp/column/000023.html
 
== 注釈 ==
<references group="注釈"/>
== 参照 ==
{{デフォルトソート:うし}}
[[Category:牛|*]]
[[Category:ケルト神話]]
[[Category:中国神話]]
[[Category:日本神話]]
[[Category:東欧神話]]
[[Category:動物]]
[[Category:炎帝型神]]
[[Category:祝融型神]]

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