パーンが[[テューポーン]]に襲われた際に上半身が山羊、下半身が魚の姿になって逃げたエピソードは有名であるが、この姿は低きは海底から高きは山の頂上まで(山羊は高山動物であるため)世界のあらゆるところに到達できるとされ、「全て」を意味する接頭語 Pan(汎)の語源となったともいわれている。
恐らく、言語上の誤解は[[ホメーロス風讃歌|ホメーロス風諸神賛歌]]のなかの『パーン賛歌』(第19編)から始まったのだろう。『賛歌』によれば、パーンは恐らく、言語上の誤解はホメーロス風諸神賛歌のなかの『パーン賛歌』(第19編)から始まったのだろう。『賛歌』によれば、パーンは[[ドリュオプス]]の娘、あるいはニュムペーとヘルメースの間に生まれたが、山羊の脚、頭に二本の角を生やすという奇妙な姿をしていたため、母親は幼いパーンを置き去りにして逃げた。ヘルメースはパーンを野兎の皮でくるんで神々のもとへ運ぶと神々はみな喜んだ。しかし、なかでも特に喜んだのはの娘、あるいはニュムペーとヘルメースの間に生まれたが、山羊の脚、頭に二本の角を生やすという奇妙な姿をしていたため、母親は幼いパーンを置き去りにして逃げた。ヘルメースはパーンを'''野兎'''の皮でくるんで神々のもとへ運ぶと神々はみな喜んだ。しかし、なかでも特に喜んだのは[[ディオニューソス]]だった。そして「'''全ての'''神々を喜ばす」として、そこから名前を得たのだという。
パーンには、少なくとも原[[インド・ヨーロッパ語族]]時代においてはもう一つの名前があり、ローマ神話でのファウヌス(下記)であると考えられる。あるいは印欧比較神話学的な観点からはインドの牧羊神パーンには、少なくとも原インド・ヨーロッパ語族時代においてはもう一つの名前があり、ローマ神話でのファウヌス(下記)であると考えられる。あるいは印欧比較神話学的な観点からはインドの牧羊神[[プーシャン]](Pūṣán)と語源が共通しているという説もある。どちらにしても、パーンの血統をめぐる説がいくつもあることから、太古の神話的時代に遡る神であるに違いない。パーンが[[アルテミス]]に猟犬を与え、[[アポローン]]に予言の秘密を教えたというのが本当なら、他の自然の精霊と同じく、パーンは[[オリュンポス十二神]]よりも古いものにみえる。パーンはもともと[[アルカディア]]の神であって、パーンの主な崇拝者もアルカディア人だった。アルカディアはギリシア人の居住地であったが、この地のギリシア人は[[ポリス]]を形成せず、より古い時代の[[村落共同体]]的な牧民の生活を送っていたので、オリュンポスの神域がパーンのパトロンになった時に予言の秘密を教えたというのが本当なら、他の自然の精霊と同じく、パーンはオリュンポス十二神よりも古いものにみえる。パーンはもともとアルカディアの神であって、パーンの主な崇拝者もアルカディア人だった。アルカディアはギリシア人の居住地であったが、この地のギリシア人はポリスを形成せず、より古い時代の村落共同体的な牧民の生活を送っていたので、オリュンポスの神域がパーンのパトロンになった時<!-- どういう意味か? -->、ポリス生活を送る先進地帯のギリシア人は彼らのことを蔑視していた。アルカディアの猟師たちは狩りに失敗した時、パーンの像を鞭打ったものである([[テオクリトス]] 、ポリス生活を送る先進地帯のギリシア人は彼らのことを蔑視していた。アルカディアの猟師たちは狩りに失敗した時、パーンの像を鞭打ったものである(テオクリトス vii. 107)。
パーンは人気のない所で、突然、混乱と恐怖をもたらすことがあった(「[[パニック]](Panic)」)(''panikon deima'')。
[[Category:サテュロス]]
[[Category:山羊]]
[[Category:兎]]