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ただし、機械弓は重さや連射性に問題があるため、通常の陸上戦や海上戦では使用が難しかった。日本にも機械弓の技術が大陸から伝わっていたが、当時の日本では大量生産に向かず、また火縄銃の伝来によりその活躍はなかった。そして銃の発明により、一部の機械弓を除いて戦いの場から弓矢は消えていった。
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==== 神々と弓矢 ====
*『古事記』・神道
**応神天皇 - 『古事記』の品陀和氣命(応神天皇)の別名は、大鞆和気命とありその由来は誕生時に腕の肉が鞆のようになっていたことによるという。そのため弓矢神として現在も様々な神社で祀られている。
***八幡神 - 八幡大菩薩ともいい、応神天皇のことでもあるが、応神天皇を主神として、[[神功皇后]]、[[比売神]]を合わせて八幡三神とも捉えられている弓矢神。また慣用句として弓矢に限らず、射幸心の伴う事柄で、当ってくれと願う時に「南無八幡」と唱える語の語源となっている。
**[[山幸彦]] - 山佐知彦とも表記し、昔話としても広く知られる弓矢を用いる狩りの神。「幸(さち)」が「弓矢・釣竿と釣り針」を示したり、狩りの獲物や漁の獲物を指す「山の幸・海の幸」を表す謂れとなる物語の海幸彦と並ぶ主人公である。
**[[天若日子]] - 天雅彦とも表記し、霊力を持つ天麻迦古弓(あめのまかごゆみ)という弓と、[[天羽々矢]](あめのはばや)という矢を携えた弓矢の神。天の鹿児弓・天之波士弓(あめのはじゆみ)・天之加久矢(あめのかくや)など様々な表記名称がある。
;ヒンドゥー教
*[[シヴァ]] - 4本の腕に[[金剛杵]]と[[槍]]と弓矢と[[刀]]を持つ神。弓はピナーカといい、矢はパスパタという。
*[[ヴィシュヌ]] - サルンガという太陽の光で出来た弓と、炎と太陽の光からなり翼を持つ矢を、携えた神。
*[[インドラ]] - 風雨と雷を操り、虹を弓として使う神。
*[[カーマデーヴァ]] - 「サトウキビの弓」と「5本の花の矢」の「愛の弓矢」を持つ神。
**[[愛染明王|マーラ]] - カーマを起源とし仏教・密教においては愛染明王と言い、天上界の最高神で弓を持つ神。愛の弓矢の効能から縁結びの神としても知られる。
;ローマ神話
*[[クピードー]](キューピッド) - 矢に射られた者は恋か失恋をする。カーマデーヴァとの多くの共通点から互いに影響があったことがうかがえる<ref>[https://kotobank.jp/word/吉祥天%28きちじょうてん%29-1523356 吉祥天] コトバンク</ref>。
 
==== 呪いや祓いの力を持つ弓矢 ====
さまざまな文化において、手を触れずに、遠隔の敵ないし獲物を仕留めることのできる弓矢は、ギリシャ神話や日本で「遠矢・遠矢射」といわれる力として特別視され、「エロスの弓矢」や「[[天之返矢]]」ように呪術的な意味が与えられた。さらには見えない魔物や魔を祓う、武器や楽器のように使用するものとして、「鳴弦」や現代に伝わる「破魔矢・[[破魔弓]]」などがあり、これらは神話・[[伝説]]などに登場する、弓矢の呪力の象徴とも言える。また日本においては、原始宗教のアニミズムが色濃く残っており、弓矢は吉凶を占う道具としての側面も持っている。
 
中華文明圏において「強」「弱」という[[漢字]]に弓の字が使われているのは、それが武力の象徴であり、呪術用に特化して飾り物となった(弱の字は弓に飾りがついた姿を現している)武力を「弱」と捉えたことに注目できる。日本でも、このような弓の呪術性は、鳴弦という語に示され、平安時代に、宮中で夜間に襲来する悪霊を避けるために、武士たちによって、弓の弦をはじいて音を響かせる儀礼が行われていた。こうした用法から、世界各地で弓は[[弦楽器]]の起源の1つとなったと考えられ、儀式に用いる弓矢ではなく、本来の弓を楽器として用いる場合もあり、代表的な物として[[ハープ]]は楽器ではあるが、弓を起源としその形態を色濃く残すものでもある。
 
現在でも玄関や屋根に[[魔除け]]や[[お祓い]]や[[結界]]として、弓矢を飾る地方や人々をみることができるが、古くは『山城国風土記』逸文に流れてきた「丹塗りの矢」で[[玉櫛媛|玉依姫]]が身ごもり[[賀茂別雷神]]が生まれたという話があり、[[賀茂神社]]の起源説話にもなっている。丹塗りとは[[赤#丹 (light red, hematite)|赤い色]]のことだが呪術的な意味を持っていたことが指摘される。望まれて抜擢されるという意味の「白羽の矢が立つ」とは、元は「神や[[物の怪]]の[[生け贄]]となる娘の選択の明示として、その娘の家の屋根に矢が立つ(刺さる)」という、日本各地で伝承される話から来ており、本来は良い意味ではなく、[[心霊現象]]としての弓矢を現している。
 
広く庶民に知られる話としては『[[平家物語]]』の鵺退治がある。話の内容は「[[帝]](みかど)が病魔に侵されていたが、[[源義家]]が三度、弓の弦をはじいて鳴らすと[[悪霊]]は退散し帝は元に戻った。しかし[[病魔]]の元凶は死んではおらず帝を脅かし続けた。悪霊の討伐として抜擢された源三位入道頼政([[源頼政]])は、元凶である[[鵺]](ぬえ<ref>頭は[[サル]]、胴体は[[タヌキ]]、手足は[[トラ]]、尾は[[ヘビ]]。元は[[トラツグミ]]の不気味な鳴き声のみから想像したもので形は曖昧だったともいう。</ref>)という妖怪・もののけを強弓、[[弓張月]]<ref>弓張り月と表記した場合は月のこと。</ref> で退治した」というものだが、記述から弓矢には、[[楽器]]として悪霊を祓う力と武器として[[魔物]]を退治する力があると、信じられていたことが窺える。
 
{{main2|天之返矢(返し矢)|矢#『古事記』}}
 
==== 祓い清めを表す言葉 ====
[[File:Hamaya.jpg|thumb|right|220px|破魔矢]]
本来は、古くから神事に纏わる弓矢の語でもあるが、さまざまな、[[古文]]や[[句]]などで使われており、[[俳句]]の[[季語]]と同じように、間接的な[[比喩]]として穢れ・邪気・魔・厄などを、祓い清めることを表している語でもある。
; 葦の矢・桃の弓
: [[大晦日]]に[[朝廷]]で行われた追儺(ついな)の式で、[[鬼]]を祓うために使われた弓矢のことで、それぞれ葦(アシ)の茎と桃の木で出来ていた。
; 破魔矢・破魔弓
: はじまりは[[正月]]に行われたその年の吉凶占いに使う弓矢。後に、家内安全を祈願する[[幣串]]と同じように、家の鬼を祓う魔除けとして[[上棟式]]に小屋組に奉納される[[神祭具]]のことで、近年では破魔矢・破魔弓ともに神社などの厄除けの[[縁起物]]として知られる。
; 蓬矢(ほうし)・桑弓(そうきゅう)
: それぞれ、蓬の矢(よもぎのや)・桑の弓(くわのゆみ)とも言い、男の子が生まれた時に前途の[[厄]]を払うため、家の四方に向かって桑の弓で蓬の矢を射た。桑の弓は桑の木で作った弓、蓬の矢は蓬の葉で羽を矧いだ(はいだ)矢。
; 弓を鳴らす
: 鳴弦とも言い、弓の弦を引いて鳴らすことにより[[悪霊]]や[[魔]]や[[穢れ]]を祓う行為。弓鳴らし・弦打ちともいう。
; 弓を引く
: 反抗や[[謀反]](むほん)や楯突くことだが、本来は鳴弦のことで弓の弦を引いて鳴らすことにより悪霊や魔や穢れを祓う行為。
== 分類 ==
日本においては弓矢の神ではなく「弓矢神」という一つの単語になっていて、応神天皇(八幡神)のことでもある。応神天皇を祀っている八幡神社の数は、稲荷神社に次いで全国第2位で広く信仰されてきた。また弓矢や運命や確率に関わり幸運を願う時には「八幡」という語が使われてきた歴史があり、八幡は祈願と弓矢の意味が一体となす語として、射幸心という語の語源ともなった事由である。これらのことからも古くから弓矢が信仰の対象となってきたことが窺える。また八幡神は八幡大菩薩としても夙(つと)に知られ、「南無八幡」と言う慣用句からも窺い知ることができる。明治政府によって神仏分離され、八幡大菩薩は一度消滅したが庶民は八幡大菩薩も変らず信仰し、射幸心に係わる物事において、現在でも八幡大菩薩を用いて表現されることは多い。
 
==== 神々と弓矢 ====
*『[[古事記]]』・神道
**[[応神天皇]] - 『古事記』の品陀和氣命(応神天皇)の別名は、大鞆和気命とありその由来は誕生時に腕の肉が[[鞆]]のようになっていたことによるという。そのため弓矢神として現在も様々な神社で祀られている。
***[[八幡神]] - 八幡大菩薩ともいい、応神天皇のことでもあるが、応神天皇を主神として、[[神功皇后]]、[[比売神]]を合わせて八幡三神とも捉えられている弓矢神。また慣用句として弓矢に限らず、射幸心の伴う事柄で、当ってくれと願う時に「南無八幡」と唱える語の語源となっている。
**[[山幸彦]] - 山佐知彦とも表記し、昔話としても広く知られる弓矢を用いる狩りの神。「幸(さち)」が「弓矢・釣竿と釣り針」を示したり、狩りの獲物や漁の獲物を指す「山の幸・海の幸」を表す謂れとなる物語の海幸彦と並ぶ主人公である。
**[[天若日子]] - 天雅彦とも表記し、霊力を持つ天麻迦古弓(あめのまかごゆみ)という弓と、天羽々矢(あめのはばや)という矢を携えた弓矢の神。天の鹿児弓・天之波士弓(あめのはじゆみ)・天之加久矢(あめのかくや)など様々な表記名称がある。
[[ファイル:EmpressJinguInKorea.jpg|left|540px|thumb|[[月岡芳年|大蘇芳年]]画<br />『大日本史略図会 第十五代 神功皇后』 矢を携え、手に弓を持つ神功皇后]]
[[File:Garuda Vishnu Laxmi.jpg|thumb|right|182px|ガルーダに跨る<br />弓矢を持ったヴィシュヌ<ref>Rajasthan, Bundi作画,1730年:[[W:LACMA|ロサンジェルス州立美術館]] 所蔵。</ref>]]
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{{-}}
;ヒンドゥー教
*[[シヴァ]] - 4本の腕に[[金剛杵]]と[[槍]]と弓矢と[[刀]]を持つ神。弓はピナーカといい、矢はパスパタという。
*[[ヴィシュヌ]] - サルンガという太陽の光で出来た弓と、炎と太陽の光からなり翼を持つ矢を、携えた神。
*[[インドラ]] - 風雨と雷を操り、虹を弓として使う神。
*[[カーマデーヴァ]] - 「サトウキビの弓」と「5本の花の矢」の「愛の弓矢」を持つ神。
**[[愛染明王|マーラ]] - カーマを起源とし仏教・密教においては愛染明王と言い、天上界の最高神で弓を持つ神。愛の弓矢の効能から縁結びの神としても知られる。
;ローマ神話
*[[クピードー]](キューピッド) - 矢に射られた者は恋か失恋をする。カーマデーヴァとの多くの共通点から互いに影響があったことがうかがえる<ref>[https://kotobank.jp/word/吉祥天%28きちじょうてん%29-1523356 吉祥天] コトバンク</ref>。
 
==== 呪いや祓いの力を持つ弓矢 ====
さまざまな文化において、手を触れずに、遠隔の敵ないし獲物を仕留めることのできる弓矢は、ギリシャ神話や日本で「遠矢・遠矢射」といわれる力として特別視され、「エロスの弓矢」や「[[天之返矢]]」ように呪術的な意味が与えられた。さらには見えない魔物や魔を祓う、武器や楽器のように使用するものとして、「鳴弦」や現代に伝わる「破魔矢・[[破魔弓]]」などがあり、これらは神話・[[伝説]]などに登場する、弓矢の呪力の象徴とも言える。また日本においては、原始宗教のアニミズムが色濃く残っており、弓矢は吉凶を占う道具としての側面も持っている。
 
中華文明圏において「強」「弱」という[[漢字]]に弓の字が使われているのは、それが武力の象徴であり、呪術用に特化して飾り物となった(弱の字は弓に飾りがついた姿を現している)武力を「弱」と捉えたことに注目できる。日本でも、このような弓の呪術性は、鳴弦という語に示され、平安時代に、宮中で夜間に襲来する悪霊を避けるために、武士たちによって、弓の弦をはじいて音を響かせる儀礼が行われていた。こうした用法から、世界各地で弓は[[弦楽器]]の起源の1つとなったと考えられ、儀式に用いる弓矢ではなく、本来の弓を楽器として用いる場合もあり、代表的な物として[[ハープ]]は楽器ではあるが、弓を起源としその形態を色濃く残すものでもある。
 
現在でも玄関や屋根に[[魔除け]]や[[お祓い]]や[[結界]]として、弓矢を飾る地方や人々をみることができるが、古くは『山城国風土記』逸文に流れてきた「丹塗りの矢」で[[玉櫛媛|玉依姫]]が身ごもり[[賀茂別雷神]]が生まれたという話があり、[[賀茂神社]]の起源説話にもなっている。丹塗りとは[[赤#丹 (light red, hematite)|赤い色]]のことだが呪術的な意味を持っていたことが指摘される。望まれて抜擢されるという意味の「白羽の矢が立つ」とは、元は「神や[[物の怪]]の[[生け贄]]となる娘の選択の明示として、その娘の家の屋根に矢が立つ(刺さる)」という、日本各地で伝承される話から来ており、本来は良い意味ではなく、[[心霊現象]]としての弓矢を現している。
 
広く庶民に知られる話としては『[[平家物語]]』の鵺退治がある。話の内容は「[[帝]](みかど)が病魔に侵されていたが、[[源義家]]が三度、弓の弦をはじいて鳴らすと[[悪霊]]は退散し帝は元に戻った。しかし[[病魔]]の元凶は死んではおらず帝を脅かし続けた。悪霊の討伐として抜擢された源三位入道頼政([[源頼政]])は、元凶である[[鵺]](ぬえ<ref>頭は[[サル]]、胴体は[[タヌキ]]、手足は[[トラ]]、尾は[[ヘビ]]。元は[[トラツグミ]]の不気味な鳴き声のみから想像したもので形は曖昧だったともいう。</ref>)という妖怪・もののけを強弓、[[弓張月]]<ref>弓張り月と表記した場合は月のこと。</ref> で退治した」というものだが、記述から弓矢には、[[楽器]]として悪霊を祓う力と武器として[[魔物]]を退治する力があると、信じられていたことが窺える。
 
{{main2|天之返矢(返し矢)|矢#『古事記』}}
 
==== 祓い清めを表す言葉 ====
[[File:Hamaya.jpg|thumb|right|220px|破魔矢]]
本来は、古くから神事に纏わる弓矢の語でもあるが、さまざまな、[[古文]]や[[句]]などで使われており、[[俳句]]の[[季語]]と同じように、間接的な[[比喩]]として穢れ・邪気・魔・厄などを、祓い清めることを表している語でもある。
; 葦の矢・桃の弓
: [[大晦日]]に[[朝廷]]で行われた追儺(ついな)の式で、[[鬼]]を祓うために使われた弓矢のことで、それぞれ葦(アシ)の茎と桃の木で出来ていた。
; 破魔矢・破魔弓
: はじまりは[[正月]]に行われたその年の吉凶占いに使う弓矢。後に、家内安全を祈願する[[幣串]]と同じように、家の鬼を祓う魔除けとして[[上棟式]]に小屋組に奉納される[[神祭具]]のことで、近年では破魔矢・破魔弓ともに神社などの厄除けの[[縁起物]]として知られる。
; 蓬矢(ほうし)・桑弓(そうきゅう)
: それぞれ、蓬の矢(よもぎのや)・桑の弓(くわのゆみ)とも言い、男の子が生まれた時に前途の[[厄]]を払うため、家の四方に向かって桑の弓で蓬の矢を射た。桑の弓は桑の木で作った弓、蓬の矢は蓬の葉で羽を矧いだ(はいだ)矢。
; 弓を鳴らす
: 鳴弦とも言い、弓の弦を引いて鳴らすことにより[[悪霊]]や[[魔]]や[[穢れ]]を祓う行為。弓鳴らし・弦打ちともいう。
; 弓を引く
: 反抗や[[謀反]](むほん)や楯突くことだが、本来は鳴弦のことで弓の弦を引いて鳴らすことにより悪霊や魔や穢れを祓う行為。
=== 弓矢に纏わる語 ===

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