アポローンは主神[[ゼウス]]と[[レートー]]との息子で狩猟の女神[[アルテミス]]の'''双子の弟'''<ref group="注">ギリシア神話では姉、ローマ神話では妹とする説もある。</ref>。オリュンポス十二神に名を連ねる。古くから牧畜と予言の神、また、竪琴を手に執る音楽と詩歌文芸の神であった。'''光明神'''の性格を持つことから前5世紀には時として[[ヘーリオス]]と混同されて太陽神とされ、ローマ時代にはすっかり太陽神と化した<ref>呉茂一 『ギリシア神話(上)』 新潮社〈新潮文庫〉、昭和54年、141頁。</ref>。聖獣は[[オオカミ|狼]]および[[ヘビ|蛇]]、[[シカ|鹿]]で、聖鳥はヒュペルボレオイの国から飛来する[[ハクチョウ|白鳥]]および、[[カラス|鴉]]、[[ニワトリ|雄鶏]]、[[鷹]]、[[ハゲワシ|禿鷹]]で、[[セミ|蝉]]もアポローンの使いとされる<ref>里中満智子 『マンガ ギリシア神話2 至高神ゼウス』 中央公論新社]</ref><ref name="G">フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 青土社</ref>。聖樹は[[ゲッケイジュ|月桂樹]]、[[オリーブ]]、[[シュロ|棕櫚]]、[[ギョリュウ|御柳]]<ref name="G" />。また、[[イルカ]](デルピス)との関係も深く、イルカの姿に変身したという神話からデルピニオスとも呼ばれ、「[[デルポイ]]」という地名はここから来ているともいわれる<ref name="G" /><ref group="注">デルポイは「子宮」を意味するデルピュスが語源という説もある。</ref><ref name="jiten">マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 大修館書店</ref>。
また、あらゆる知的文化的活動の守護神とされ、詩神[[ムーサ|ムーサイ]]を主宰するとともに、[[オルペウス教]]の伝説的開祖である詩人[[オルペウス]]の父親ともされる。一方、人間に当たれば苦痛なく一瞬で即死する金の矢を武器とし、姉(妹)神アルテミスとともに「遠矢射るアポローン」として疫病神の性格を持ち、転じて医術の神としても信仰された。医神の父親ともされる。一方、'''人間に当たれば苦痛なく一瞬で即死する金の矢を武器とし'''、姉(妹)神アルテミスとともに「遠矢射るアポローン」として疫病神の性格を持ち、転じて医術の神としても信仰された。医神[[アスクレーピオス]]がアポローンの子とされるのはそのためである。このように、アポローンの性格は理性的であると同時に人間を地上に向かって放った矢から広がる疫病で虐殺したり、音楽の腕を競う賭けで[[サテュロス]]の1人[[マルシュアース]]を[[皮剥ぎの刑|生きたまま全身の皮膚を剥いで殺す]]などの冷酷さ、残忍さをも併せ持っている。腕力も強く、イーリアスではアカイア勢の築いた頑強な城壁を素手で軽々と打ち砕いて崩壊させている。ボクシングを創始した神としても知られる。
フリードリヒ・ニーチェは、理性をつかさどる神として、[[ディオニューソス]]と対照的な存在と考えた(『悲劇の誕生』)。