一方、バロールは敵をまとめ討つ破壊力がある「魔眼」の持ち主で、孫のルーに眼を潰され、殺されてしまった。</blockquote>
ギリシア神話と比較すれば、バロールがアガメムノーン、イーピゲネイアがエスリウ、アキレウスがキアンといったとこだろうか。キアンとバロールとの間で帰属が動く雌牛は、エスリウのトーテムであると思う。バロールが「魔眼」の持ち主である、という点は、饕餮文が「目」を強調していることを連想させる。台湾の神話にもバロールに似た邪視の持ち主であるバジが登場するし、バジも殺される話が多いので、これもバロールの類話と思われる。エスリウは殺された日月乙女と思われるが、生きてこっそり子供を生んでいるので、太陽乙女の結婚で終わる天狗食日月譚と、月乙女の冥界婚で終わる話の折衷的な内容といえる。娘を殺してしまうアガムメノーンと同類のバロールは、娘が牛であることから、彼のトーテムも牛であることが示唆される。一方のキアンのトーテムは分かりやすく豚である。
=== 十人の処女たちのたとえ ===