語源的にインド神話の神[[インドラ]]の形容語[[インドラ|ヴリトラハン]]と共通しており<ref name="Okada"> 岡田明憲、松枝到(編)「古代イランの動物変身」『象徴図像研究:動物と象徴』 言叢社 2006 ISBN 4862090079 pp.101-114.</ref>、ウルスラグナの成立に関しては、イランでインドラが悪魔の地位に降ろされた結果、形容語だけが独立した神格として崇拝され続けたという説と、イランに存在したウルスラグナの原型となる神とインドラがヴェーダが成立する際に合体したという説がある<ref name="Okada"/>。
ゾロアスター教神学に於いては中級神[[ヤザタ]]に分類される。男性神格としてイメージされ、特に戦争の勝利を司る神で、虚偽者や邪悪なる者に罰を与え自らを崇拝するものには勝利を与えるという。に分類される。男性神格としてイメージされ、特に戦争の勝利を司る神で、'''虚偽者や邪悪なる者に罰を与え自らを崇拝するものには勝利を与える'''という。
戦う両軍の間に四枚の翼を広げてウルスラグナが降り立った時は、最初にこの神を崇めた方が勝利をおさめるといわれる。
またペルシア7曜神では火星神とされる。
== 聖典の中で ==
=== ''バフラム・ヤシュト''の中で ===
ウルスラグナへの賛美歌であるヤシュト14は、「保存状態は悪いが、非常に古風な要素を含んでいる」とされる<ref>Boyce, 1975, p63</ref>。そこでは、ウルスラグナは「最も高度な武装」(ヤシュト14.1)、「力ある最高の装備」(同13)、「発泡性の栄光」(同3)、「征服する優位性」(同64)を持ち、人間やデーモンと絶えず戦っている(同4、同62)と描写される。ヤシュトは、神性が現れる10の形態を列挙することから始まる。その内訳は、疾風(141)、「力ある最高の装備」(同13)、「発泡性の栄光」(同3)、「征服する優位性」(同64)を持ち、人間やデーモンと絶えず戦っている(同4、同62)と描写される。ヤシュトは、神性が現れる10の形態を列挙することから始まる。その内訳は、'''疾風'''(14.2-5)、武装した戦士(14.27)、15歳の青年(14.17)、残りの7つは動物であり、金の角を持つ雄牛(14. 7)、耳と口が金の白馬(14.9)、発情期のラクダ(14.11-13)、イノシシ(14.15)、猛禽類(veregna, 14.19-21) 、ラム(14.23)、野ヤギ(14.25)である。これらの化身の多くは他の神々とも共通し、例えば、若者、雄牛、馬もティシュトリヤ(Tishtrya)のものとされる。同様に、鳥、ラクダ、風は、武力的勝利を連想させるゾロアスター教のパンテオンのもう一人のメンバーであるヴァーユ・ヴァータ(Vayu-Vata)と共通している。 == 10の化身 ==『ウルスラグナ祭儀書』によれば、ウルスラグナはアワタールという変身に長け、10種の姿をとってゾロアスターの前に現れたとされる。 それによりウルスラグナは変身して戦うといわれ、特に力強い[[イノシシ]]の姿をとって戦場で[[ミスラ]]を先導する姿は、宗教画などに好んで描かれた。 また、鳳(おおとり)の時は霊力に優れ、この羽根を持てば災難除けの呪いになった。この羽根を身体に擦り付けると、悪い呪いを術者に跳ね返す事が出来るといわれる。 # 強い風# 黄金の角を持つ雄[[牛]]# 黄金の飾りをつけた[[白馬]]# 鋭い爪と長い毛を持つ俊足の[[駱駝]]# 鋭い牙をした野[[猪]]# 十五歳の輝かしい若者# 鳳(おおとり)# 美しい野生の雄[[羊]]# 鋭い角を持つ[[山羊]]# 黄金の刃のある剣を持つ人間 これは[[ヴィシュヌ]]の10の[[アヴァターラ]]に対応するという説がある<ref>『世界神話大事典』<sup>''(要ページ番号、2015-11-03)''</ref>。両者の変化する動物には猪を除いて共通するものが無いが、ゾロアスター教では善悪二元論によって善い動物・悪い動物が規定されていることと、ウルスラグナの成立にオリエント文化の影響があったことなどが背景として考えられる<ref name="Okada"/>。
=== 他のテキストでは ===
ゾロアスター教の神格構成において、バフラムは光明を司るアムシャ・スプンタのアーシャ・ヴァヒシュタ(アヴェスター語、中ペルシア語ではアルドヴァヒシュタ)を補佐する存在であり、バフラムはこのアーシャ・ヴァヒシュタを補佐する。 アケメネス朝時代後期(紀元前648〜330年)に制定されたゾロアスター教の暦では、月の20日はバフラムに捧げられている(Siroza 1.20)。
中世ペルシャの文献では、バフラムはアムシャ・スプンタの一人として特に崇められ、アンラ・マンユを追い返すのに成功したことで事実上の高位を与えられている中世ペルシャの文献では、バフラムはアムシャ・スプンタの一人として特に崇められ、'''アンラ・マンユを追い返すのに成功した'''ことで事実上の高位を与えられている<ref>de Menasce, 1948, p5-18</ref><ref>Gnoli, 1989, p513</ref>。
=== 惑星の名前として ===
セレウコス朝(前330-150)とアルサス朝(前250-226)の時代、つまりヘレニズム文化の影響を受けた帝国では、ウルスラグナはアーレースと同一視され、ヘーラークレースと結び付けられ、ギリシャ語でアルタグネス(Artagnes)と名づけられた<ref>Duchesne-Guillemin, 1984</ref>。このような習合は彫像や図像によく現れており、特にコンマゲネのアンティオコス1世テオスの碑文には、3つの名前が一緒に出てくる。
バフラムが旅人の守護神とされていたことは、ベヒストンの幹線道路にある等身大のバフラムの岩像が物語っているのかもしれない。そこでバフラムは、手にゴブレット、足元に棍棒、下にライオンの皮を敷いて寝転んでいる。バフラムが'''旅人の守護神とされていた'''ことは、ベヒストンの幹線道路にある等身大のバフラムの岩像が物語っているのかもしれない。そこでバフラムは、手にゴブレット、足元に棍棒、下にライオンの皮を敷いて寝転んでいる。
ササン朝初期には、バフラムはやはりギリシャのヘーラークレスに相当する神として表現されている。ナクス・エ・ラジャブIIIにあるアルデシール1世のレリーフでは、バフラムはアフラ・マズダと王の間の2人の小さな人物の1人として登場している<sup>''(要出典)''</sup>。そこでは、左手に獅子の皮を持ち、右手に棍棒を振りかざしている。もう一人の小さな人物 -バフラムに敬意を表しているように見える- は、後の国王バフラム1世である。
ポール・ティームはこの主要な特徴に同意したが、バフラム・ヤシュトの豊富な古語的要素は明らかにゾロアスター教以前の時代を示しているが、固有名詞の解釈は「極めて推測的」であり、「インド・アーリア的あるいは古いインド的性格に対する決定的な論拠は得られない」と明言している<ref>Thieme, 1960, p302</ref> <!-- Since "Vedic Indra must be distinguished from a presumable Proto-Aryan ''*Indra'' [of the Mittani treaties]" (302), "we may go so far as to say that the Avestan ''Vərəθraγna'' in his role as the fighting companion of ''Miθra'' is the equivalent of the Vedic Indra in his role as the helper of the ''Adityas''. This does not necessarily mean that ''Vərəθraγna'' has taken the place of Proto-Aryan ''*Indra''; it may just as well mean that Vedic Indra has replaced a Proto-Aryan ''Vərəθraγna''." (312) -->。ベンヴェニステとルヌーの「正確な言語学的・聖書学的分析」を採用したティームは、「原アーリア人の*インドラは、原アーリア人の神*ウルスラグナの機能を引き受けている」と結論付けている。Vrtrahanがインドラの名前であるのは、後のサンスクリット語のテキストだけで、リグ・ヴェーダにはないことを指摘した上で、ティームは「原アーリア語の形容詞*vrtraghanが特に*インドラや他の特定の神と関連していたと考える正当な理由はない」と付け加えている<ref>Thieme, 1960, p312-313</ref>。
== 関連項目 私的考察 ==* [[インドラ]]ウルスラグナは北欧神話のオーディンと同起源の神かと思う。死因からはフェリドゥーンに近い神でも良いかと思う。* [[ヴリトラ]]<!--ボイスは、『アヴェスタ』(イランから出土したバフラムのレリーフは蛇であふれていて、図像からはインド神話のシヴァのようにも感じる。肩から蛇を生やしていてザッハークのようにも見える。ただし、'Vendidad' 10.9)および後期ペルシア語テキスト('Bundahishn狼を鎖につなぎ、サソリや毒蛇と戦う神' 21.6など)において、「インドラ」が悪魔として具体的に名付けられていることに注目し、異なる過去から継承した要素よりも、個々の発展を見ることが好ましいと付け加えている--><!-- インドラ=悪魔は 1975:62-64 で言及されているが、「好ましい等」(ボイス、1975:283)は誤りである。 -->''として表されているのであれば、彼は「'''良き蛇神'''」であって、[[黄帝型神]]といえるのではないだろうか。
== 参考文献 ==
* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%8A ウルスラグナ](最終閲覧日:22-12-15)
** イヴ・ボンヌフォワ編, 金光仁三郎主幹、安藤俊次ほか共訳, 世界神話大事典, 大修館書店, 2001-03, isbn:978-4-469-01265-1
* Wikipedia:[https://en.wikipedia.org/wiki/Verethragna Verethragna](最終閲覧日:23-01-04)
** Vrtra et Vrθragna, Benveniste Émile, Renou Louis, 1934, Paris, Imprimerie Nationale <!-- as cited in Boyce et al. -->
** Religion of ancient Iran, Jacques Duchesne-Guillemin, 1973, Bombay, Tata Press <!--Originally published as ''La religion de l'Iran ancien'' (1962). -->
** The destiny of the warrior, Dumezil Georges, 1970, Chicago, University of Chicago Press, isbn:0-226-16970-7, https://archive.org/details/destinyofwarrior00dume
* {{citation|chapter=* Bahram in old and middle Iranian texts|last=, Gnoli|first=Gherardo|title=, Encyclopaedia Iranica|volume=3|year=, volume3, 1989|location=, New York|publisher=, Routledge & Kegan Paul|pages=510–513}}, pages510–513* {{cite encyclopedia | article = * Bahrām (Vərəθraγna) | last1 = , Gnoli |first1 = G. |last2 = , Jamzadeh |first2 = P. | author-link = | url = , http://www.iranicaonline.org/articles/bahram-1 | editor-last = | editor-first = | editor-link = | encyclopedia , = Encyclopaedia Iranica, Vol. III, Fasc. 5 | pages = 510–514 | location = | publisher = | year = , pages510–514, 1988 | isbn = }}<!-- * {{cite book|last=Puhvel|first=Jaan|title=, Comparative Mythology|year=, 1989|location=, Baltimore|, isbn=:0-8018-3938-6|publisher=, Johns Hopkins University Press}} -->* {{citation|last=* Lommel|first=Herman|title=, Der arische Kriegsgott|year=, 1939|location=, Frankfurt/Main|publisher=, Klostermann}}* {{citation|title=* The 'Aryan' Gods of the Mitanni Treaties|last=, Thieme|first=Paul|journal=, Journal of the American Oriental Society|volume=80|issue=4|year=, volume80, issue4, <!--Oct-Dec-->1960|pages=301–317|, pages301–317, doi=:10.2307/595878|, jstor=:595878}}* {{cite book|last=* West|first=Edward William|author-link=Edward William West|chapter=, Marvels of Zoroastrianism: The Bahman Yasht|year=, 1880|editor-last=Müller|editor-first=, Mülle Friedrich Max|editor-link=Max Müller|title=[[Sacred Books of the East|, SBE]] |volume=5|publisher=, volume5, OUP|location=Oxford}}, xford* {{citation|last=* Zaehner|first=, Richard Charles|title=, Zurvan, a Zoroastrian dilemma|year=, 1955|publisher=, Clarendon|location=, Oxford|, isbn=:0-8196-0280-9}} == 10の化身 ==『ウルスラグナ祭儀書』によれば、ウルスラグナはアワタールという変身に長け、10種の姿をとってゾロアスターの前に現れたとされる。 それによりウルスラグナは変身して戦うといわれ、特に力強い[[イノシシ]]の姿をとって戦場で[[ミスラ]]を先導する姿は、宗教画などに好んで描かれた。 また、鳳(おおとり)の時は霊力に優れ、この羽根を持てば災難除けの呪いになった。この羽根を身体に擦り付けると、悪い呪いを術者に跳ね返す事が出来るといわれる。 # 強い風# 黄金の角を持つ雄[[牛]]# 黄金の飾りをつけた[[白馬]]# 鋭い爪と長い毛を持つ俊足の[[駱駝]]# 鋭い牙をした野[[猪]]# 十五歳の輝かしい若者# 鳳(おおとり)# 美しい野生の雄[[羊]]# 鋭い角を持つ[[山羊]]# 黄金の刃のある剣を持つ人間 これは[[ヴィシュヌ]]の10の[[アヴァターラ]]に対応するという説がある<ref>『世界神話大事典』<sup>''(要ページ番号、2015-11-03)''</ref>。両者の変化する動物には猪を除いて共通するものが無いが、ゾロアスター教では善悪二元論によって善い動物・悪い動物が規定されていることと、ウルスラグナの成立にオリエント文化の影響があったことなどが背景として考えられる<ref name="Okada"/>。 == 私的考察 ==ウスラグナは北欧神話のヴァルハラと関連するのではないか。また子音構成からいってオーディンと同起源の神かと思う。 == 参考文献 ==* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%8A ウルスラグナ](最終閲覧日:22-12-15)** イヴ・ボンヌフォワ編, 金光仁三郎主幹、安藤俊次ほか共訳, 世界神話大事典, 大修館書店, 2001-03, isbn:978-4-469-01265-1
== 関連項目 ==
* [[アレース(スキタイ)]]
* [[執金剛神|ヴァジュラバーニ]]
* [[インドラ]]
* [[ヴリトラ]]
<!--ボイスは、『アヴェスタ』('Vendidad' 10.9)および後期ペルシア語テキスト('Bundahishn' 21.6など)において、「インドラ」が悪魔として具体的に名付けられていることに注目し、異なる過去から継承した要素よりも、個々の発展を見ることが好ましいと付け加えている--><!-- インドラ=悪魔は 1975:62-64 で言及されているが、「好ましい等」(ボイス、1975:283)は誤りである。 -->
== 参照 ==
[[Category:ヤザタ]]
[[Category:軍神]]
[[Category:火星]]
[[Category:猪]]
[[Category:鳳]]
[[Category:雄牛]][[Category:白馬牛]]
[[Category:馬]]
[[Category:駱駝]]
[[Category:山羊]]
[[Category:道祖神]]
[[Category:陽]]