'''ゼウス'''('''ΖΕΥΣ''', Ζεύς, Zeus)は、ギリシア神話の主神たる全知全能の存在<ref>Schmitz, 2016, p705</ref><ref>里中満智子・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 『マンガギリシア神話1 オリュンポスの神々』 中公文庫、2003年。</ref><ref>以下は、宗教文学研究者バーバラ・シュミッツの論文からの引用(Schmitz, 2016, p705)。<blockquote>アリステアスの議論における基礎原理は、神格〔the deity〕の機能である。アリステアスはそれを「全ての物事の創造者にして統括者」として描いている。 … 唯一神〔God〕は、ユダヤ教とギリシャ的文脈とで同じ機能を持っている。すなわち、唯一神は全ての物事の創造者にして統括者である。ただ唯一神の呼び名だけが違う。つまりギリシャ的文脈において、唯一神は「ゼウス」と呼ばれている。(Schmitz, 2016, p705)<br />(原文:Fundamental for the argumentation of Aristeas is the function of the deity, which he describes as “the overseer and creator of all things” (πάντωνἐπόπτην καὶ κτίστην). ... God has the same function in the Jewish as in the Greek context: He is the creator and overseer of all things. The only difference is God’s name: In the Greek context, God is called “Zeus”.)(Schmitz, 2016, p705)<br><br>唯一神についての二つの概念〔ユダヤ系とギリシャ系〕は共に、遍在・全知・全能という特徴を持っている。(Schmitz, 2016, p712)<br />(原文:[B]oth concepts of God share the aspects of omnipresence, omniscience and omnipotence (Arist 132 and Arist 133).(Schmitz, 2016, p712)</blockquote></ref>。ローマ神話の[[ユーピテル|ジュピター(ユーピテル)]]、中国神話の[[天帝]]、キリスト教やイスラーム等の唯一神と同様な、「至上神(supreme god)(スプリームゴッド)」の典型<ref>Britannica Japan Co., Ltd., 2020, p「至上神」</ref>。一般的に「至上神」<ref>松村, 2020, 「至上神」</ref>または「最高神」<ref>小学館, 2020, 「最高神」</ref>は、創造的能力や人格的性質を持ち、全知全能だとされている<ref>松村, 2020, 「至上神」</ref>。
ゼウスは宇宙や天候を支配する[[天空神]]であり、人類と神々双方の秩序を守護・支配する神々の王である。宇宙を破壊できるほど強力な雷を武器とし、多神教の中にあっても唯一神的な性格を帯びるほどに絶対的で強大な力を持つ<ref>呉茂一『ギリシア神話(上)』、新潮文庫、1969。</ref>。ゼウス<ref>''Oxford English Dictionary'', 1st ed. "[http://www.oed.com/view/Entry/232824 Zeus, ''n.'']" Oxford University Press (Oxford), 1921.</ref><ref>[https://www.ahdictionary.com/word/search.html?q=Zeus Zeus] in the American Heritage Dictionary</ref>(Ζεύς、British English:zju(Ζεύς、イギリス英語:zju:s、American English:zus、アメリカ英語:zu:s)は、古代ギリシアの宗教における天空神・雷神で、オリンポス山に神々の王として君臨している。彼の名前は、ローマ神話に登場するユーピテルの第一元素と同義である<ref name=Lar>''Larousse Desk Reference Encyclopedia'', The Book People, Haydock, 1995, p. 215.</ref>。その神話と能力は、ユーピテル、ペルクナス、ペールン、インドラ、ディヤウス、ゾイツといった印欧語の神々と、同一ではないにせよ、似ているところがある<ref name="Berry1996p20">Thomas Berry, Religions of India: Hinduism, Yoga, Buddhism|url=https://archive.org/details/religionsofindia00berr |url-access=registration|year=1996|publisher=Columbia University Press|isbn=978-0-231-10781-5|pages=[https://archive.org/details/religionsofindia00berr/page/20 20]–21}}</ref><ref name="auto2">T. N. Madan, The Hinduism Omnibus|url=https://books.google.com/books?id=EUsqAAAAYAAJ, 2003, Oxford University Press, isbn:978-0-19-566411-9, page81</ref><ref name="auto">Sukumari Bhattacharji, The Indian Theogony, https://books.google.com/books?id=lDc9AAAAIAAJ&pg=PA280, 2015, Cambridge University Press, pages280–281</ref><ref name="auto1">Roshen Dalal, Hinduism: An Alphabetical Guide, https://books.google.com/books?id=zrk0AwAAQBAJ, Penguin Books, 2014, isbn:9788184752779 Entry: "Dyaus"</ref><ref name=Hyllested&Joseph/>。
ゼウスはクロノスとレアーの子供で、兄弟の中で最も若く生まれたが、他の兄弟はクロノスの胃から吐き出される必要があったため、長男とされることもあった。多くの伝承では、彼はヘーラーと結婚し、ヘーラーとの間にアレース、エイレイシア、ヒビ、ヘパイストスを生んだとされている<ref name="Hamilton1942">Hamilton Edith, Mythology, Back Bay Books, New York, 1942, 1998, [https://archive.org/details/mythologytimeles00hami_1/page/467 467], isbn:978-0-316-34114-1, https://archive.org/details/mythologytimeles00hami_1/page/467</ref><ref name=":h79"/>。ドドナの神託で、彼の妃はディオーネとされ<ref>''Brill's New Pauly'', [https://referenceworks.brillonline.com/entries/brill-s-new-pauly/zeus-e12216820 s.v. Zeus].</ref>、『イーリアス』ではディオーネがアフロディテを生んだとされている<ref name="aphrodite">アフロディーテの出自については、大きく分けて2つの説がある。ヘシオドスの『神統記』では、クロノスがウラヌスを去勢した後に海の泡から生まれ、ウラヌスの娘となったとされ、ホメロスの『イーリアス』では、アフロディーテはゼウスとディオーネの娘とされる。プラトンの''Symposium''では、二人は別の人物であるとする説がある。アフロディテ・オウラニアとアフロディテ・パンデモスである。</ref><ref>Homer, ''Il.'', Book V.</ref><ref>Plato, ''Symp.'', 180e.</ref>。『神統記』によれば、ゼウスの最初の妻はメーティスで、その間にアテーナーが生まれた<ref name=":hsdm"/>。ゼウスはまた、エロティックな逃避行で悪名高い人物であった。その結果、アポローン、アルテミス、ヘルメース、ペルセポネー、ディオニューソス、ペルセウス、ヘーラクレース、トロイのヘレン、ミノス、ミューズなど、多くの神や英雄の子孫が生まれました<ref name="Hamilton1942"/>。