シラカンバ
名称
和名のシラカンバは一般にシラカバともよばれ、樹皮が白いカバ(樺)がその名の由来である[3][4]。カバはカバノキの古名「かには」が転訛したものである[5]。和名はシラカンバやシラカバの他に、ガンビ[6]、シロザクラ[7]など多くの呼び名がある。
分布
北半球の温帯から亜寒帯地方に多く見られるテンプレート:Sfn。基変種であるコウアンシラカンバ テンプレート:Snamei var. テンプレート:Snamei とそれにごく近縁にオウシュウシラカンバ テンプレート:Snamei は、アジア北東部の朝鮮半島テンプレート:Sfn・中国テンプレート:Sfn、東シベリアテンプレート:Sfn・樺太テンプレート:Sfn・ヨーロッパの広い範囲に分布する。
日本では、変種の テンプレート:Snamei var. テンプレート:Snamei が、本州の福井県・岐阜県以北の中部地方テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn、関東地方北部テンプレート:Sfn、東北地方テンプレート:Sfn、北海道テンプレート:Sfnまで、高冷地の落葉広葉樹林帯と亜高山帯下部に分布する。特に北海道では多く見られるテンプレート:Sfn。高原の深山などに生えテンプレート:Sfn、日当たりのよい山地に群落を作って自生するテンプレート:Sfn。近縁種にダケカンバがあるが、シラカンバは高山には及ばず比較的低地に分布し、ダケカンバは高地に分布するテンプレート:Sfn。
生態・形態
落葉高木の広葉樹で、樹高は10 - 25メートル (m) テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。明るい場所を好む典型的な陽樹であるテンプレート:Sfn。寿命は短く大木になるものは多くなくテンプレート:Sfn、大きなものでも幹径は50センチメートル (cm) ほどであるテンプレート:Sfn。樹皮は白色で、横筋が多く薄紙のように横向きに剥がれ、枝の落ちた跡が黒く残るテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。樹皮が白色を保っているのは、樹齢20年からせいぜい30年が限度といわれているテンプレート:Sfn。ごく若い木の樹皮は暗褐色で、横長の皮目が目立つテンプレート:Sfn。若い枝は暗紫褐色で毛はなく、短枝がよく発達するテンプレート:Sfn。葉は互生しテンプレート:Sfn、長さ4 - 9 cmの三角状広卵形で鋸歯があるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。葉脈の数は6 - 8対あるテンプレート:Sfn。葉柄は長さ1.5 - 3.5 cmテンプレート:Sfn。秋になると黄葉するテンプレート:Sfn。
花期は春(4 - 5月)テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。雌雄同株で、葉の展開とともに、長さ5 - 7 cmほどの雄花序は、長枝の先から動物の尾状に数個垂れ下がるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。雌花序は短枝に4 cmほどの細長い棒状の花穂を1個つけ、最初は立ち上がっているが、やがて下を向いて果穂をつくるテンプレート:Sfnテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
果期は10月テンプレート:Sfn。果穂は長さ2 - 4 cmで垂れ下がるテンプレート:Sfn。果苞は長さ約4ミリメートル (mm) テンプレート:Sfn。自家不和合性が強く、別の個体同士で受粉し種子を付ける。種子は3 mm程度の大きさで、風を利用して散布するのに適した薄い翼を持った形状。100グラム当たり34万個と大量に散布されるが、成木まで成長するのはごく一部である[8]。
冬芽は互生し、雄花序以外は芽鱗に覆われて長楕円形テンプレート:Sfn。芽鱗は、濃褐色で4 - 6枚つき、しばしば樹脂をかぶるテンプレート:Sfn。雄花序の冬芽は円筒形の裸芽で、枝の先に数個つくテンプレート:Sfn。冬芽のわきにある葉痕は半円形や三日月形で、維管束痕が3個あるテンプレート:Sfn。
他の樹木が育ちにくい火山灰地や砂地でも育つことができるテンプレート:Sfn。明るい初期の林地に生えるいわゆるパイオニア的な樹種でテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn、山火事の跡地や崩壊地などに一斉に芽生えて生長し、純林を作るテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。不適地に散布された場合には地中で待機できる休眠性があり、山火事の熱を感知する事で休眠を解除して発芽する場合や、湿原が乾燥し陸地化した後に発芽する場合など、先駆種としての能力を持つ[8]。やがてシラカンバのまわりのミズナラやトドマツなどの陰樹が大きくなって、次第に日当たりが悪くなってくると、シラカバは次々に立ち枯れするテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。シラカンバが立ち枯れしたあと、幹には木材腐朽菌の一種ツリガネタケなどのキノコがたくさん出てくるテンプレート:Sfn。塩害や煙害には弱い性質があり、台風の影響を被って一斉に枯れてしまうこともあるテンプレート:Sfn。
花粉症
風媒花であるため花粉症の原因にもなる。シラカンバが多く自生するスカンディナヴィア半島(スカンジナビア半島)では患者数も多い[9]。
シラカンバ花粉症は、口腔アレルギー症候群 (OAS) との関連もある。シラカンバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴやモモなどバラ科の果物を食べた際に舌や咽喉にアレルギー症状を起こすことが知られている[10]。
利用
植栽樹として、庭木や街路樹に植えられるテンプレート:Sfn。痩せ地でも育ち、表層土壌が堆積すると他の樹種の影に埋もれていく性質を利用して、土壌条件が悪い新地に若木の苗を植えて、急速に生長させて早期緑化に用いることがあるテンプレート:Sfn。
樹皮は細工物に使われたりテンプレート:Sfn、油分を多く含んで容易に燃えるので松明としても使われたりテンプレート:Sfn、水を通さず長持ちするので北ヨーロッパなどでは屋根葺きの材料に使われるテンプレート:Sfn。中国大陸側では、ロール状に巻いた樹皮を浮子にして漁網につけられるテンプレート:Sfn。長野県や岩手県の一部地域では、樺皮とよばれるロール状に巻いたシラカバの樹皮を、盆の迎え火、送り火に家の前で焚くのに使うテンプレート:Sfn。アイヌ民族はシラカバ皮を巻き上げた松明をチノイエタッ(我らが巻いた樺皮)と呼び、先端を割った木に挟んで点火したものを夜間のサケ漁の照明、あるいはハレの日の照明に用いた。また、樹皮を焚いた煤は入れ墨を入れる際の染料にも用いられたテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。
材は比較的やわらかく、腐りやすい欠点をもつが、白い肌をそのまま活かして、山小屋の内外装、ベランダの手すり、デッキ、柵などに好まれるテンプレート:Sfn。意外なところでは、アイスの棒(スプーン)や、割り箸、楊枝といったものも製造されている。
春、芽吹く頃のシラカバの幹に傷を付けると、大量の樹液が吹き出すテンプレート:Sfn。アイヌ民族はこの樹液を「タッニ・ワッカ」(シラカバの水)と呼び、水場がない場所で野営する際の、炊事の水に用いてきたテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。樹液からシロップ、煮詰めて白樺糖、さらには酒が造られるテンプレート:Sfn。樹液に含まれる成分にヒトの表皮の保湿を促進する効用があることから化粧品にも利用される。
文化
フィンランドでは 山火事などの後に、最初に生え、雑木林を育てていくことから「マザーツリー」と呼ばれ、樹液や樹皮のバッグなど広く親しまれているほか、若芽の小枝を束ねたヴィヒタはサウナにおいてなくてはならないとされているテンプレート:要出典。ロウリュ参照。
ロシアでは、雪解けの頃近郊の森に出かけ樹液を飲む習慣がモスクワにも残っており、「百薬の長だと今でも信じている」と報道されているテンプレート:誰2。民間療法で、シラカンバに寄生するチャーガ(和名:カバノアナタケ)というキノコを胃腸の調子が悪い時にお茶のようにして飲む風習がある。ソルジェニーツィンの『ガン病棟』ではガンの民間薬として書かれている。
ヨーロッパでは、五月祭にシラカンバの葉や花で飾り付けたメイポール (Maypole) を広場に立て、その周りを踊りながら廻るという風習があったテンプレート:要出典。
ルーン文字のひとつにこれをあらわすものがあるテンプレート:要出典。
シラカンバの花言葉は、「光と豊富」「柔和」「あなたを待ちます」などとされているテンプレート:Sfn。盛大な結婚式のことを「華燭の典」というが、この華燭とはシラカバなどの樺の樹皮を松明にして明るくすることを指す言葉であるテンプレート:Sfn。
国の木
都道府県・市町村の木に指定する自治体
日本において、高原を代表する樹木で、長野県の県木に指定されているほか、市町村の木に指定する地方自治体もあるテンプレート:Sfn。
参考文献
関連項目
- チャーガ (カバノアナタケ/Chaga mushroom/Inonotus obliquus)
外部リンク
- 長野県林業総合センター - シラカンバ樹液の利用方法
参照
- ↑ 田中潔, 2011, p129
- ↑ 辻井達一, 1995, p85
- ↑ 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編, 2009, p159
- ↑ 亀田龍吉, 2014, p96
- ↑ 亀田龍吉, 2014, p96
- ↑ 辻井達一, 1995, p85
- ↑ 辻井達一, 1995, p85
- ↑ 8.0 8.1 渡辺一夫 『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか:樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館 2009 ISBN 9784806713937 pp.174-179.
- ↑ アレルゲンを識る(間口四郎.石狩湾耳鼻科院長)
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ フィンランドの概略(フィンランド大使館)