ニムロド
ニムロド(ニムロデ、ニムロッドとも。נמרוד、Nimrôd)は、「偉大なる狩人」として中央アジアから中東にかけて伝承に登場する人物。天に向かって矢を放ち、それが自らに返ってきた、という伝承を伴うことがあるようである。この名前は旧約聖書にも登場する。
旧約聖書におけるニムロド
旧約聖書では、『創世記』第10章において、クシュの息子として紹介されている。
6 ハムの子孫はクシ、ミツライム、プテ、カナンであった。
7 クシの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカであり、ラアマの子孫はシバとデダンであった。
8 クシの子はニムロデであって、このニムロデは世の権力者となった最初の人である。
9 彼は主の前に力ある狩猟者であった。これから「主の前に力ある狩猟者ニムロデのごとし」ということわざが起った。
10 彼の国は最初シナルの地にあるバベル、エレク、アカデ、カルネであった。
11 彼はその地からアッスリヤに出て、ニネベ、レホボテイリ、カラ、
12 およびニネベとカラとの間にある大いなる町レセンを建てた[1]。
反逆者としてのニムロド
「ニムロド」とはヘブライ語で「我等は反逆する」を意味している。狩人としての彼の行為もまた、凶暴かつ残虐的に描写されている。バベルの塔の建造においてはその企画発案者と見なされている。彼は巨大な塔を建て、唯一の神ではなく、偶像崇拝を始めるようになる。
ユダヤ人社会では比較的ポピュラーな個人名として通用している。
聖書学におけるニムロド
ニムロドの誕生日は12月25日の日曜日とされ、それはバビロニアの大安息日でもある。したがって、クリスマスはイエスではなく、ニムロドの生誕を祝う日とされる。「Merry Xmas」の『X』という十字に似た文字は、二ムロドのシンボルとされ、merry Xmas は『Magical or Merriment Communion with Nimrod』とされる[2]。
また、カトリック教会や、この教派で行なわれるマリア崇敬の起源を、ニムロドとセミラミスに求める多くの論が存在する[3]。ニムロドが立てた国の一つであるバベル(バビロン、バビロニア)の宗教が後にカトリック教会となり、セミラミスを神として信仰する女神崇拝がマリア崇敬とされている。
その他
天に向かって矢を放つ英雄譚は、中央アジアから中東にかけて拡がり、柔然族、オグズ族、モンゴル族、ヤクート族、トルコなどでみられる。雷に対して矢を射ることもあるし、「生命の樹」を的にしていた場合も多い[4]。
参考文献
- 創世記(口語訳)、WIKISSOURCE(最終閲覧日:22-10-28)
- 世界神話大辞典、イヴ・ボンヌフォワ編、2001、大修館書店、p1202
関連項目
- 天若日子 - ニムロド説話の類型
- 羿:天に向かって矢を放ち、それが必ずしも歓迎されなかった点がニムロドと一致している。
- 桂男:中国神話で「生命の樹」と永遠に戦う男である。
- エンキドゥ:神の意に逆らって殺された人物。