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+ | * メソポタミアでその美しさ(明るさ)ゆえに[[美]]の女神[[イシュタル]](アッカド語)、[[イナンナ]](シュメール語)の名を得て以来、世界各地で金星の名前には女性名が当てられていることが多い。 | ||
+ | * 欧米では明けの明星の何にも勝る輝きをローマ神話の美と愛の女神[[ウェヌス]](ヴィーナス、[[ギリシャ]]の[[アプロディーテー]])に例え、その名で呼んでいる。 | ||
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2022年12月2日 (金) 19:45時点における版
金星(きんせい、Venus、Venus)は、太陽系で太陽に近い方から2番目の惑星。また、地球にもっとも近い公転軌道を持つ惑星である。
地球型惑星であり、太陽系内で大きさと平均密度がもっとも地球に似た惑星であるため、「地球の姉妹惑星」と表現されることがある[1]。また、太陽系の惑星の中で最も真円に近い公転軌道を持っている。地球から見ると、金星は明け方と夕方にのみ観測でき、太陽、月に次いで明るく見える星であることから、明け方に見えるものを「明けの明星」、夕方に見えるものを「宵の明星」という。
目次
人類との関連
歴史と神話
- 中国神話では九天玄女が常に太白の明星(金星)を戴いている、とされている。
- 日本でも古くから知られており、日本書紀に出てくる天津甕星(あまつみかぼし)、別名香香背男(かがせお)と言う星神は、金星を[神格化した神とされている。時代が下って、平安時代には宵の明星を「夕星(ゆうづつ / ゆうつづ)」と呼んでいた。清少納言の随筆「枕草子」第254段「星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。」にあるように、夜を彩る美しい星のひとつとしての名が残されている[私注 1]。
- メソポタミアでその美しさ(明るさ)ゆえに美の女神イシュタル(アッカド語)、イナンナ(シュメール語)の名を得て以来、世界各地で金星の名前には女性名が当てられていることが多い。
- 欧米では明けの明星の何にも勝る輝きをローマ神話の美と愛の女神ウェヌス(ヴィーナス、ギリシャのアプロディーテー)に例え、その名で呼んでいる。
キリスト教においては、ラテン語で「光をもたらす者」ひいては明けの明星(金星)を意味する言葉「ルシフェル(Lucifer)」は、他を圧倒する光と気高さから、唯一神に仕えるもっとも高位の天使(そしてのちに地獄の闇に堕とされる堕天使の総帥)の名として与えられた。
聖書の黙示録中では、イエスのことが「輝く明けの明星」と呼ばれている[2]。
仏教伝承では、釈迦は明けの明星が輝くのを見て真理を見つけたという。また弘法大師空海も明けの明星が口中に飛び込み悟りを開いたとされ、虚空蔵菩薩・明星天子は仏格化された金星の現れとされている。
アステカ神話では、ケツァルコアトルがテスカトリポカに敗れ、金星に姿を変えたとされている。
マヤ創世神話内では、金星は太陽と双子の英雄であるとされテンプレート:R、金星を「戦争の守護星」と位置づけ、特定位置に達したときに戦を仕掛けると勝てると考えられたテンプレート:R(一種の軍事占星術であり、金星の動きと戦争がつながっていた)。
近代に入ると、金星の太陽面通過に大きな関心が寄せられるようになった。太陽系の大きさを測定する過程において、金星の太陽面通過で得られるデータは重要な役割を果たすと考えられたためである。1761年と1769年の太陽面通過観測は世界中に観測隊を派遣して行われたが、中でも1768年から太平洋に派遣されたジェームズ・クックの探検隊[3]は、太平洋各地で重要な地理的発見を行った。また、1874年の金星の太陽面通過においてはすでに産業化時代に入っていたこともあり、世界各国が各地に観測隊を派遣した。この時は日本も観測可能な地域に含まれており、フランス、アメリカ、メキシコの3か国が日本に観測隊を派遣した[4]。
占星術
「金星」の名は中国で戦国時代 (中国)に起こった五行思想と関わりがある。また、中国ではかつて金星を太白とも呼んだ[5]。
西洋占星術では、金牛宮と天秤宮の支配星で、吉星である。妻・財産・愛・芸術を示し、恋愛、結婚、アクセサリーに当てはまる[6]。
物理学的性質
大気と温度
金星には二酸化炭素(CO2)を主成分とし、わずかに窒素を含む大気が存在する。気圧は非常に高く、地表で約92気圧(atm)ある(地球での水深920メートルに相当)。地表での気温は約730K(約460℃)に達するテンプレート:R。高温となっている金星地表から雲層(高度45-70km)までの下層大気の温度勾配は、雲層の上端で有効温度になるような乾燥断熱温度勾配にほぼ従っておりテンプレート:Rテンプレート:Sfn、高度50km付近では1気圧で約350K(75℃)、55km付近では0.5気圧で約300K(27℃)と、地球よりやや高い程度である。
金星の自転は非常にゆっくりなものである(#自転を参照)が、熱による対流と大気の熱慣性のため、昼でも夜でも地表の温度にそれほどの差はない。大気上層部の「スーパーローテーション」と呼ばれる4日で金星を一周する高速風が、金星全体へ熱を分散するのをさらに助けている。
高度45kmから70kmに硫酸(H2SO4)の雲が存在するテンプレート:R。このH2SO4の粒は下層で分解して再び雲層に戻るため、地表に届くことはないテンプレート:R。雲の最上部では350km/hもの速度で風が吹いているが、地表では時速数kmの風が吹く程度である。しかし金星の大気圧が非常に高いため、地表の構造物に対して強力に風化作用が働く。
2011年、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナス・エクスプレス」が大気の上層からオゾン層を発見した[7]。2012年、ビーナス・エクスプレスの5年分のデータを解析した結果、上空125kmのところに、気温が-175℃の極低温の場所があることがわかった。この低温層は、2つの高温の層に挟まっており、夜の大気が優勢な部分が低温になっていると考えられている。この極低温から、二酸化炭素の氷が生じているとも考えられている[8]。
2020年9月、カーディフ大学の研究者を中心とするイギリス・アメリカ・日本の研究者から成る研究チームがチリのアルマ望遠鏡とハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡を用いて行った観測から、金星での環境下における地質学的条件や化学的条件のもとでは発生しないと考えられていたホスフィン(リン化水素)が金星の大気上層から検出されたという研究結果をネイチャーアストロノミーにて発表した。ホスフィンの生成要因として、研究チームは太陽光からの光化学反応や火山活動によって供給された可能性も検討されたが、検出されたホスフィンの量はそれらの要因では説明できなかった。まだ人類が知りえない未知の化学プロセスによって生成されている可能性が高いとされているが、地球上ではホスフィンは一部の嫌気性微生物から生成される事が知られているため、金星大気に生命が存在している痕跡である可能性も示されている[9][10][11]。アメリカ航空宇宙局(NASA)の長官テンプレート:仮リンクはこれまでの地球外生命探査において「最大」の発見であるという見解を示している[12][13]。ただしこのホスフィンの検出報告については、別の複数の研究者グループから疑義が呈されている[14]。同じ観測データを異なるグループが独立して再解析したところホスフィンの特徴は統計的に有意な水準では検出されず、先の報告は誤検出の可能性が高いとの指摘がなされている[15][16]。 テンプレート:Clearleft
二酸化炭素による温室効果
金星の地表は太陽により近い水星の表面温度(平均442 K(169 ℃)テンプレート:Sfn)よりも高いテンプレート:Efn2。金星の地表の気温が高いのは、大気の主成分である CO2による温室効果のためである。
金星の厚い雲は太陽光の80%を宇宙空間へと反射するため、金星大気への実質的なエネルギー供給は、太陽から遠い地球よりも少ないテンプレート:R。このエネルギー収支から予測される金星の放射平衡有効温度は227K(-46℃) [17]と、実際の金星の地表温度に比べて約500Kテンプレート:Rも低温の氷点下となるテンプレート:Sfn。それが実際にそうならないのは、膨大な量のCO2によって大気中で温室効果が生じるためで、高密度のCO2による温室効果が510K分の温度上昇をもたらしている[17]。
観測
目視
公転軌道が地球より内側にある金星は、天球上では太陽の近くに位置することが多い。地球から見た金星は、月のような満ち欠けが観測できる。これは内惑星共通の性質で、水星も同じである。内合のときに「新金星」、外合のときに「満金星」となる。なお、合とその前後は天球上で太陽に近すぎるため、太陽の強い光に紛れて肉眼で確認することはきわめて困難である。
地球と金星の会合周期は583.92日(約1年7か月)であり、内合から外合までの約9か月半は日の出より早く金星が東の空に昇るため「明けの明星」となり、外合を過ぎると日没より遅く金星が西の空に沈むため「宵の明星」となる。その神秘的な明るい輝きは、古代より人々の心に強い印象を残していたようで、それぞれの民族における神話の中で象徴的な存在の名が与えられていることが多い。また地域によっては早くから、明けの明星と宵の明星が(金星という)同一の星であることも認識されていた。
地球から見ると、外合から東方最大離角を経て最大光度までは、徐々に明るくなり、最大光度から内合にかけては暗くなり、内合から最大光度までは明るくなり、最大光度から西方最大離角を経て外合までは徐々に暗くなっていくテンプレート:R。外合のときに視直径はもっとも小さく、内合のときにもっとも大きいテンプレート:R。外合のときは満月、最大離角のときは半月、内合のときは新月、最大光度のときは三日月のような形に見えるテンプレート:R。
西方最大離角のときには日の出前にもっとも早く昇り、東方最大離角のときには日没後にもっとも遅く沈む。
明けの明星の見かけ上の明るさがもっとも明るくなるのは内合から約5週間後テンプレート:Rである。そのときの離角は約40度、光度は-4.87等で、1等星の約220倍の明るさになり、明るくなりかけた空にあってもひときわ明るく輝いて見える。内合から約10週間後テンプレート:Rに西方最大離角(約47度)となる。
内合のときに完全に太陽と同じ方向に見える場合、金星の太陽面通過と呼ばれる現象がまれに起こる。
影
金星がもっとも明るく輝く時期には、金星の光による影ができることがある。オーストラリアの砂漠では地面に映る自分の影が見えたり[18]、日本でも白い紙の上に手をかざすと影ができたりするテンプレート:R。なお、過去には SN 1006 のような超新星が地球上の物体に影を生じさせた記録も残っているが、現在観測できるそれほど明るい天体は太陽、月、金星、天の川のみテンプレート:Rである。
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
- 理科ねっとわーく 太陽系図鑑(金星)
- 国立科学博物館 宇宙の質問箱(水星・金星)
- ザ・ナインプラネッツ 日本語版(金星)
- The Nine Planets Venus Facts - ザ・ナインプラネッツ 原語版(金星)テンプレート:Ref-en
- テンプレート:Kotobank
参照
- ↑ ng20140620
- ↑ ヨハネの黙示録(口語訳)#22:16
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:PDFlink 大阪市立科学館
- ↑ 「宙ノ名前」p.68 林完次 光琳社出版 平成7年8月1日初版発行
- ↑ 石川源晃『【実習】占星学入門』 ISBN 4-89203-153-4
- ↑ AstroArts ビーナス・エクスプレス、金星大気にオゾン層を発見
- ↑ A curious cold layer in the atmosphere of Venus ESA
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ 金星にリン化水素分子を検出―生命の指標となる分子の研究に新たな一歩.2020-09-15 - via {{{via}}}.
- ↑ Is there life floating in the clouds of Venus?.2020-09-14 - via {{{via}}}.
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ テンプレート:Cite news
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