「嫦娥」の版間の差分

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2022年9月30日 (金) 05:32時点における版

嫦娥(じょうが、こうが)は、中国神話に登場する人物。后羿の妻。古くは姮娥(こうが)と表記された。

伝説

『淮南子』覧冥訓によれば、もとは仙女だったが地上に下りた際に不死でなくなったため、夫の后羿が西王母からもらい受けた不死の薬を盗んで飲み、月(月宮殿)に逃げ、蟾蜍(ヒキガエル)[1]になったと伝えられる(嫦娥奔月)。

別の話では、后羿が離れ離れになった嫦娥をより近くで見るために月に向かって供え物をしたのが、月見の由来だとも伝えている。

『淮南子外八篇』によると、后羿が狩りの最中に月桂樹の下で嫦娥と出会ったという。

『楚辞』天問では虹を切り開き衣服と為したとされる。

道教では、嫦娥を月神とみなし、「太陰星君」さらに「月宮黄華素曜元精聖后太陰元君」「月宮太陰皇君孝道明王」と呼び、中秋節に祀っている。

「姮娥」が本来の表記であったが、前漢の文帝の名が「恒」であるため、字形のよく似た「姮」を避諱して「嫦」を用いるようになった。のちに旁の「常」の影響を受けて読みも「じょうが」(に対応する中国語での発音)に変化した。

嫦娥奔月

后羿の妻である嫦娥(姮娥)が、后羿が西王母から貰った不老不死の霊薬(または天上界へ行ける霊薬)を飲み1人月へ昇り月宮(広寒宮)で寂しく暮らすことになったという中秋節の故事である。嫦娥奔月とは「嫦娥、月に奔る」の意味。『淮南子』6巻の覧冥訓12節には嫦娥の物語として「譬若羿請不死之藥於西王母、姮娥竊以奔月、悵然有喪、無以續之。何則? 不知不死之藥所由生也。是故乞火不若取燧、寄汲不若鑿井」との記載がある。

民間伝承

海南島などでは、8月15日(中秋節)の晩に少女たちが水をはった器の中に針を入れて嫦娥(月娘)に自分の運命の吉凶を示してもらう、という習俗があった。針がすっかり沈んでしまって少しも浮かばないと運命は凶であるという[2]

関連項目

派生した神話・伝承

参照

  1. 蟾蜍(せんじょ)あるいは月中蟾蜍と書かれる。蟾蜍は漢語でヒキガエルを意味する。仙女(せんじょ、これもこのように発音される)や月の兎のように、月面に目視される模様からの発想であるとも考えられている。
  2. 香坂順一 『南支那民俗誌 海南島篇』 台湾総督府外事部 1944年 74頁