「山𤢖」の版間の差分
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山𤢖(さんそう)とは本来中国に伝わる伝説上の生物あるいは妖怪。'''山蕭'''、'''山臊'''<ref>どちらも『諾皋記』などでの表記。</ref>とも書かれる。中国の古書『神異経』には、西方の深い山の中に住んでおり、身長は約1丈余り、エビやカニを捕らえて焼いて食べ、'''爆竹などの大きな音を嫌う'''とある。また、これを害した者は病気にかかるという。食習慣や、殺めた人間が病気になるといった特徴は、同じく中国の山精(さんせい)にも見られる<ref name="和漢三才図会">=寺島良安, 島田勇雄・竹島純夫・樋口元巳訳注, 1712, 1987, 和漢三才図会, 平凡社, volume6, 東洋文庫, isbn:978-4-582-80466-9, p152-154</ref>。 | 山𤢖(さんそう)とは本来中国に伝わる伝説上の生物あるいは妖怪。'''山蕭'''、'''山臊'''<ref>どちらも『諾皋記』などでの表記。</ref>とも書かれる。中国の古書『神異経』には、西方の深い山の中に住んでおり、身長は約1丈余り、エビやカニを捕らえて焼いて食べ、'''爆竹などの大きな音を嫌う'''とある。また、これを害した者は病気にかかるという。食習慣や、殺めた人間が病気になるといった特徴は、同じく中国の山精(さんせい)にも見られる<ref name="和漢三才図会">=寺島良安, 島田勇雄・竹島純夫・樋口元巳訳注, 1712, 1987, 和漢三才図会, 平凡社, volume6, 東洋文庫, isbn:978-4-582-80466-9, p152-154</ref>。 | ||
− | + | 日本では江戸時代の百科事典『和漢三才図会』(1713年) などにおいてこの山𤢖(さんそう)に対して「やまわろ」の訓が当てられている。「やまわろ」という日本語は「山の子供」という意味で「山童」(やまわろ)と同じ意味であり、同一の存在であると見られていた<ref name="和漢三才図会" />。 | |
== 日本の山𤢖(やまわろ) == | == 日本の山𤢖(やまわろ) == | ||
− | + | 山𤢖(やまわろ)は、木曽(長野県南西部)の深い山の中に住んでいる大男で、「やまおとこ」とも呼ばれる<ref name="水木1994" />。 | |
− | + | 江戸時代の文政年間([[1818年]]–[[1830年]])初頭、木曽の山の中で1メートルほどの大きさもある[[フジ (植物)|藤]]の[[つる植物|つる]]で編んだ[[草鞋]](わらじ)が見つかり、山𤢖のものに違いないといわれたが、山𤢖を見たという[[樵|木こり]]もおらず、結局どこに住んでいるのか、存在していたのは分からなかったという<ref name="水木1994" />。また、江戸時代後期の[[随筆]]『想山著聞奇集』に記されている「山𤢖(やまおとこ)の事」によれば、同じく木曽で、ある木こりが早朝に山に入り、物を割るような音が響いたので振り返ると、真っ黒い大きな体で薄赤い顔に[[茶碗]]ほどの大きさの目が白く光るものが立っていた。木こりは山小屋へ逃げ込んだが、そのまま3日間寝込んでしまったという<ref>{{Cite book|和書|author=三好想山|editor=谷川健一他|editor-link=谷川健一|title=日本庶民生活史料集成|origyear=1851|year=1970|publisher=[[三一書房]]|volume=第16巻|isbn=978-4-380-70504-5|pages=36-37|chapter=想山著聞奇集}}</ref>。 | |
また、一般的に山𤢖(さんそう)と同一のものであると考えられて来た歴史があることから、日本にいるとされる山𤢖(やまわろ)もカニなどを食べると解説されることもある<ref name="水木1994" />。 | また、一般的に山𤢖(さんそう)と同一のものであると考えられて来た歴史があることから、日本にいるとされる山𤢖(やまわろ)もカニなどを食べると解説されることもある<ref name="水木1994" />。 |
2024年12月17日 (火) 12:52時点における版
山𤢖(やまわろ、やまおとこ)は日本の長野県に伝わる大男(山男の類)の妖怪である[1]。「𤢖」(そう)の字が常用漢字に存在しないため同音の「山操」と表記されることもある。
中国の山𤢖(さんそう)
山𤢖(さんそう)とは本来中国に伝わる伝説上の生物あるいは妖怪。山蕭、山臊[2]とも書かれる。中国の古書『神異経』には、西方の深い山の中に住んでおり、身長は約1丈余り、エビやカニを捕らえて焼いて食べ、爆竹などの大きな音を嫌うとある。また、これを害した者は病気にかかるという。食習慣や、殺めた人間が病気になるといった特徴は、同じく中国の山精(さんせい)にも見られる[3]。
日本では江戸時代の百科事典『和漢三才図会』(1713年) などにおいてこの山𤢖(さんそう)に対して「やまわろ」の訓が当てられている。「やまわろ」という日本語は「山の子供」という意味で「山童」(やまわろ)と同じ意味であり、同一の存在であると見られていた[3]。
日本の山𤢖(やまわろ)
山𤢖(やまわろ)は、木曽(長野県南西部)の深い山の中に住んでいる大男で、「やまおとこ」とも呼ばれる[1]。
江戸時代の文政年間(1818年–1830年)初頭、木曽の山の中で1メートルほどの大きさもある藤のつるで編んだ草鞋(わらじ)が見つかり、山𤢖のものに違いないといわれたが、山𤢖を見たという木こりもおらず、結局どこに住んでいるのか、存在していたのは分からなかったという[1]。また、江戸時代後期の随筆『想山著聞奇集』に記されている「山𤢖(やまおとこ)の事」によれば、同じく木曽で、ある木こりが早朝に山に入り、物を割るような音が響いたので振り返ると、真っ黒い大きな体で薄赤い顔に茶碗ほどの大きさの目が白く光るものが立っていた。木こりは山小屋へ逃げ込んだが、そのまま3日間寝込んでしまったという[4]。
また、一般的に山𤢖(さんそう)と同一のものであると考えられて来た歴史があることから、日本にいるとされる山𤢖(やまわろ)もカニなどを食べると解説されることもある[1]。
関連項目
外部リンク
- http://mizuki.sakaiminato.net/road/road_pages/yokai_near/, 山わろ, 境港市観光協会, 2022-1-26