「アリアドネー」の版間の差分

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=== クレータよりの脱出後 ===
 
=== クレータよりの脱出後 ===
クレータより脱出後、[[アポロドーロス|プセウド・アポロドーロス]]は、二人は子供もつれて[[ナクソス島]]へと至ったと記すが、これ以降のアリアドネーの運命については諸説がある。プセウド・アポロドーロスは、ナクソス島で[[ディオニューソス]]が彼女に恋し、奪って[[リムノス島|レームノス島]]へと連れて行きそこでアリアドネーと交わり子をなしたとする。この交わりによって、[[トアース]]、[[スタピュオス]]、[[オイノピオーン]]、[[ペパレートス]]が生まれたとされる<ref name=apol />(オイノピオーン、エウアンテース、スタピュロスの三人ともいわれる<ref>フェリックス・ギラン『ギリシア神話』p.217,220。</ref>)。
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クレータより脱出後、プセウド・アポロドーロスは、二人は子供もつれてナクソス島へと至ったと記すが、これ以降のアリアドネーの運命については諸説がある。プセウド・アポロドーロスは、ナクソス島で[[ディオニューソス]]が彼女に恋し、奪ってレームノス島へと連れて行きそこでアリアドネーと交わり子をなしたとする。この交わりによって、[[トアース]]、[[スタピュオス]]、[[オイノピオーン]]、[[ペパレートス]]が生まれたとされる<ref name=apol />(オイノピオーン、エウアンテース、スタピュロスの三人ともいわれる<ref>フェリックス・ギラン『ギリシア神話』p.217,220。</ref>)。
  
しかし別の説では、アリアドネーはナクソス島に至りひどい悪阻であったため、彼女が眠っているあいだにテーセウスに置き去りにされたともされる。あるいはこの後、ディオニューソスが彼女を妃としたともされる<ref name=grd30 />。[[エラトステネス]]の『星座論』や[[オウィディウス]]の『[[変身物語]]』によると、このときディオニューソスは彼女の頭の冠を空に投げて、[[かんむり座]]に変えた<ref name=PE5 /><ref>[[オウィディウス]]の『変身物語』8巻。</ref>。エラトステネスはこの冠は[[ホーラー]]たちと[[アプロディーテー]]がアリアドネーとディオニューソスの結婚式の際に贈ったものであるとし、さらに[[しし座]]の尾の部分、すなわち古代には独立した星座と考えられていなかった[[かみのけ座]]が、アリアドネーの髪の房であると述べている<ref name=PE5 />。
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しかし別の説では、アリアドネーはナクソス島に至りひどい悪阻であったため、彼女が眠っているあいだにテーセウスに置き去りにされたともされる。あるいはこの後、ディオニューソスが彼女を妃としたともされる<ref name=grd30 />。エラトステネスの『星座論』やオウィディウスの『変身物語』によると、このときディオニューソスは彼女の頭の冠を空に投げて、かんむり座に変えた<ref name=PE5 /><ref>オウィディウスの『変身物語』8巻。</ref>。エラトステネスはこの冠は[[ホーラー]]たちと[[アプロディーテー]]がアリアドネーとディオニューソスの結婚式の際に贈ったものであるとし、さらにしし座の尾の部分、すなわち古代には独立した星座と考えられていなかったかみのけ座が、アリアドネーの髪の房であると述べている<ref name=PE5 />。
  
また、[[ホメーロス]]の『[[オデュッセイア]]』においては(巻11、324-5)、一行が[[ディーア島|ディアー島]]に至ったとき、ディオニューソスの了承のもと、アリアドネーは[[アルテミス]]に射られて死んだとされる<ref>呉茂一『ギリシア神話』pp.171-172。</ref>。[[呉茂一]]はこちらが本来の神話であったろうとしている。
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また、ホメーロスの『オデュッセイア』においては(巻11、324-5)、一行がディアー島に至ったとき、ディオニューソスの了承のもと、アリアドネーは[[アルテミス]]に射られて死んだとされる<ref>呉茂一『ギリシア神話』pp.171-172。</ref>。呉茂一はこちらが本来の神話であったろうとしている。
  
 
=== 大女神としてのアリアドネー ===
 
=== 大女神としてのアリアドネー ===

2022年10月13日 (木) 22:49時点における版

アリアドネーἈριάδνη, Ariadnē)は、ギリシア神話に登場するクレータ]王ミーノースと妃パーシパエーのあいだの娘である[1]テーセウスがクレータ島の迷宮より脱出する手助けをしたことで知られる。アリアドネーという名は「とりわけて潔らかに聖い娘」を意味するので、この名からすると本来女神であったと考えられる[2][私注 1]

日本語では長母音を省略してアリアドネとも表記される。

概説

クレータ王ミーノースは、息子アンドロゲオースアッティカで殺されたため、アテーナイを攻めた。こうしてアテーナイは、九年ごとに七人の少女と七人の少年をミーノータウロスの生贄としてクレータに差し出すことになっていた。テーセウスはこの七人の一人として、一説ではみずから志願して生贄に加わってクレータにやって来た[3]

迷宮とアリアドネーの糸

アリアドネーはテーセウスに恋をし、彼女をアテーナイへと共に連れ帰り妻とすることを条件に援助を申し出た。テーセウスはこれに同意した。アリアドネーは工人ダイダロスの助言を受けて、迷宮(ラビュリントス)に入った後、無事に脱出するための方法として糸玉を彼にわたし、迷宮の入り口扉に糸を結び、糸玉を繰りつつ迷宮へと入って行くことを教えた。テーセウスは迷宮の一番端にミーノータウロスを見つけ、これを殺した。糸玉からの糸を伝って彼は無事、迷宮から脱出することができた。アリアドネーは彼とともにクレータを脱出した[4]

異説として、エラトステネースの名で伝わる『カタステリスモイ』によると、アリアドネーの冠はヘーパイストスの作品であり、燃えるように輝く黄金とインド産の宝石をふんだんに用いて制作されていたため、非常に光り輝き、その光でテーセウスは迷宮から出ることができたという[5][私注 2]

クレータよりの脱出後

クレータより脱出後、プセウド・アポロドーロスは、二人は子供もつれてナクソス島へと至ったと記すが、これ以降のアリアドネーの運命については諸説がある。プセウド・アポロドーロスは、ナクソス島でディオニューソスが彼女に恋し、奪ってレームノス島へと連れて行きそこでアリアドネーと交わり子をなしたとする。この交わりによって、トアーススタピュオスオイノピオーンペパレートスが生まれたとされる[4](オイノピオーン、エウアンテース、スタピュロスの三人ともいわれる[6])。

しかし別の説では、アリアドネーはナクソス島に至りひどい悪阻であったため、彼女が眠っているあいだにテーセウスに置き去りにされたともされる。あるいはこの後、ディオニューソスが彼女を妃としたともされる[1]。エラトステネスの『星座論』やオウィディウスの『変身物語』によると、このときディオニューソスは彼女の頭の冠を空に投げて、かんむり座に変えた[5][7]。エラトステネスはこの冠はホーラーたちとアプロディーテーがアリアドネーとディオニューソスの結婚式の際に贈ったものであるとし、さらにしし座の尾の部分、すなわち古代には独立した星座と考えられていなかったかみのけ座が、アリアドネーの髪の房であると述べている[5]

また、ホメーロスの『オデュッセイア』においては(巻11、324-5)、一行がディアー島に至ったとき、ディオニューソスの了承のもと、アリアドネーはアルテミスに射られて死んだとされる[8]。呉茂一はこちらが本来の神話であったろうとしている。

大女神としてのアリアドネー

アリアドネーの名は、むしろ女神の名に相応しい。5世紀の辞典編纂者ヘーシュキオスの記録に従えば、クレータでは、アリアグネーと彼女は呼ばれていた。この名は「いとも尊き(女・女神)」の意味で、この名の女神はエーゲ海の多くの島で知られている。またディオニューソスの妃として結婚の祝祭が行われていた。

アルゴスでは、アプロディーテー・ウーラーニアー(「天のアプロディーテー」の意、ウーラノスより生まれた女神をこの称号で呼ぶ)の社殿の傍らにアリアドネーの墓が存在していた[9]

その他

  • 迷宮脱出の逸話より「アリアドネの糸」という言葉が生まれた。難問解決の手引き・方法の意味で使われる。
  • 欧州宇宙機関 (ESA) のロケットアリアンは彼女の名前にちなむ。

参考文献

関連項目

私的解説

  1. 「アリ」という言葉は接頭語に当たるので、この女神の名前は「アドネー」であると考える。アテーナイのアテーナーと起源を同じくする女神であると考える。
  2. これはヴイーヴルの宝玉を彷彿とさせる。

参照

  1. 1.0 1.1 『ギリシア・ローマ神話辞典』p.30。
  2. 呉茂一『ギリシア神話』p.302。
  3. 『ギリシア・ローマ神話辞典』p.161。
  4. 4.0 4.1 アポロドーロス、摘要 I, 8-9。
  5. 5.0 5.1 5.2 https://palladi.blogspot.com/2022/08/katasterismoi-2.html, 伝エラトステネス『星座論』(2) りゅう座・ヘルクレス座・かんむり座 , 2022-08-31
  6. フェリックス・ギラン『ギリシア神話』p.217,220。
  7. オウィディウスの『変身物語』8巻。
  8. 呉茂一『ギリシア神話』pp.171-172。
  9. 呉茂一『ギリシア神話』p.172。