「アペプ」の版間の差分
(→祭祀) |
(→祭祀) |
||
28行目: | 28行目: | ||
エジプトの神官たちはアペプと戦うための詳細なガイドを持っており、それは『アペプ打倒の書』(ギリシャ語ではアポフィスの書)と呼ばれていた<ref>Chapters 3-5 of I. Kousoulis, Panagiotis (1999). [https://livrepository.liverpool.ac.uk/3174997/ Magic and religion as a performative theological unity : the apotropaic 'Ritual of Overthrowing Apophis]' (phd thesis). University of Liverpool.</ref>。各章では、不名誉、切断、処分の段階的な過程が説明されており、その中には次のような内容が含まれていた。 | エジプトの神官たちはアペプと戦うための詳細なガイドを持っており、それは『アペプ打倒の書』(ギリシャ語ではアポフィスの書)と呼ばれていた<ref>Chapters 3-5 of I. Kousoulis, Panagiotis (1999). [https://livrepository.liverpool.ac.uk/3174997/ Magic and religion as a performative theological unity : the apotropaic 'Ritual of Overthrowing Apophis]' (phd thesis). University of Liverpool.</ref>。各章では、不名誉、切断、処分の段階的な過程が説明されており、その中には次のような内容が含まれていた。 | ||
− | + | #アペップに唾を吐く | |
左足でアペプを汚す | 左足でアペプを汚す | ||
槍でアペプを倒す | 槍でアペプを倒す |
2025年1月3日 (金) 17:22時点における版
アペプ(Apep)は、エジプト神話における悪の化身。古代エジプト語での名は他に、アーペプ(アアペプ、Aapep)、アペピ(Apepi)、アピペ(Apipe)、アポペ(Apope)などが挙げられる。古代エジプト語のヒエログリフは、母音を明確に記述しないため本来の発音は、はっきりしない。古典ギリシア語転記であるアポピス(Αποφις, Apophis)でもよく知られる。
概要
闇と混沌を象徴し、その姿は、主に大蛇として描かれる。蛇は、古代エジプト人にとって身近で畏怖される存在であった。太陽の運行を邪魔するのでラーの最大の敵とされる。ラーはマアトの擁護者であったため、アペプには「混沌の主」という称号が与えられた。「混沌の王」は巨大な蛇または大蛇とみなされ、ナイル川の蛇や邪悪な竜などの称号が付けられた。一部の説では、彼の体長は16ヤードで、頭は火打ち石でできていたとされている。
アポピスは、世界が誕生する前のヌンに象徴される原始の水の中から生まれた。世界の秩序が定まる前に生まれたので秩序(マアト)を破壊しようとすると考えられた。あるいは、元は太陽神としての役割を担っていたが、それをラーに奪われたため彼を非常に憎み、敵対するようになった。ここからラーの乗る太陽の船の運航を邪魔し、日食を起こすと考えられた。
冥界に捕えられており、ここを死者の魂が通ると襲う。死者の書は、アポピスから身を守る方法が描かれているとされた。またラーの乗る太陽の船が通過する時にセトが船を守りアポピスを打ち倒すため、天敵といわれている。しかし時代が下ると、その邪悪さのためにセトと同一視された。
歴史
ナカダI期(紀元前4000年頃~紀元前3550年頃)のC陶器のボウル(現在はカイロ所蔵)には、内縁に蛇が描かれており、他の砂漠や水生動物と組み合わされている。太陽神と思われる神が大きな手漕ぎ船で目に見えない形で狩りをしており、蛇は彼の敵である[1]。内縁の蛇はアペプであると考えられています。
神話におけるアペプの起源に関する記述は少ないが、通常はラーの後に、通常はラーのへその緒から生まれたとされている。アペプは太古の混沌のヌンの水の中で太古の昔から存在していたと一般に信じられている[2]。
ラーとの戦い
アペプとラーの戦いの物語は、新王国時代に詳しく語られた[3]。アペプは毎日地平線の下に横たわり、人間の王国に留まってはならないという。このことから、彼は冥界の一部とされた。いくつかの物語では、アペプは太陽が沈む西のマヌという山でラーを待ち、他の物語では、アペプは夜明け前の夜の第10の領域に潜んでいた。アペプの居場所の可能性のある範囲が広いことから、彼は世界包囲者という称号を得た。彼の恐ろしい咆哮は冥界を震撼させると考えられていた。神話では、アペプがそこに閉じ込められているのは、彼がラーに倒された前の主神であったためか、彼が邪悪であったために投獄されたためであると時々言われている。
コフィン・テキストは、アペプが魔法の視線を使ってラーとその取り巻きを圧倒したことを示唆している[4]。ラーは、セトやおそらくラーの目を含む、彼と一緒に旅した多くの守備兵の助けを受けた[5]。アペプの動きは地震を引き起こすと考えられており、セトとの戦いは雷雨の起源を説明することを意図していた可能性がある[6]。ある物語では、ラー自身が猫の姿でアペプを倒している。
コフィン・テキスト
コフィン・テキスト(Coffin Texts)また棺柩文(かんきゅうぶん)は、古代エジプトにおいて第1中間期(紀元前22世紀頃)以降に作られた、棺(コフィン)に刻まれた葬礼文書のこと[7]テンプレート:Sfn。前代における王族のための葬礼文書である「ピラミッド・テキスト」から発展したものだが、王族に限らず、棺を買うことができた富裕層の間でも広く用いられた。
祭祀
ラーの勝利は、エジプトの 神官や寺院の信者の祈りによって毎晩確実になると考えられていた。エジプト人は、アペプを追い払い、ラーが天空を渡る旅を続けるのを助けると考えられていた多くの儀式や迷信を実践した[8]。
アペプ打倒の儀式と呼ばれる毎年の儀式では、司祭たちはエジプトのすべての悪と闇を封じ込めると考えられていたアペプの像を作り、それを燃やして、もう一年間アペプの悪からすべての人々を守るとされていた。
エジプトの神官たちはアペプと戦うための詳細なガイドを持っており、それは『アペプ打倒の書』(ギリシャ語ではアポフィスの書)と呼ばれていた[9]。各章では、不名誉、切断、処分の段階的な過程が説明されており、その中には次のような内容が含まれていた。
- アペップに唾を吐く
左足でアペプを汚す 槍でアペプを倒す 足かせアペップ ナイフを手にアペップを倒す アペップに火をつける
このガイドには、ラーの勝利の物語に加えて、蛇の蝋人形や小さな絵を作る指示が書かれていた。その蝋人形に唾をかけ、切り刻み、燃やしながら、ラーがアペプを殺すのに役立つ呪文を唱えるのだった。アペプの像でさえ悪魔に力を与える恐れがあるため、どんな描写にも必ず、怪物を鎮圧する別の神が描かれていた。
アペプは冥界に住んでいると考えられていたため、魂を食らう神とみなされることもあった。死者も保護を必要としていたため、アペプを滅ぼす呪文をかけて埋葬されることもあった。『死者の書』には、ラーがアペプと呼ばれる混沌の蛇を倒した場面があまり描かれていない。 『死者の書』の呪文7と39だけがそのように説明できる。[ 14 ] ギャラリー
参考文献
画像集
関連項目
- アポフィス (小惑星) - 命名の由来となった
脚注
- ↑ C. Wolterman, in Jaarbericht van Ex Oriente Lux, Leiden Nr.37 (2002).
- ↑ The Complete Gods And Goddesses Of Ancient Egypt
- ↑ J. Assmann, Egyptian Solar Religion in the New Kingdom, transl. by A. Alcock (London, 1995), 49-57.
- ↑ Borghouts, JF (1973). 「アポピスの邪眼」. エジプト考古学ジャーナル59. 114–115.
- ↑ Borghouts, J. F. (1973). "The Evil Eye of Apopis". The Journal of Egyptian Archaeology 59. 116.
- ↑ ピンチ、ジェラルディン(2004年)。エジプト神話:古代エジプトの神々、女神、伝統ガイド。オックスフォード大学出版局。107ページ。ISBN 978-0-19-517024-5
- ↑ 10 Oldest Religious Texts in the World.28 November 2017 - via {{{via}}}.
- ↑ 「古代エジプトの信仰における神ラーと不滅のアポフィスの終わりなき戦い - Ancient Pages」。www.ancientpages.com。2021年5月20日。 2024年3月19日閲覧。
- ↑ Chapters 3-5 of I. Kousoulis, Panagiotis (1999). Magic and religion as a performative theological unity : the apotropaic 'Ritual of Overthrowing Apophis' (phd thesis). University of Liverpool.