「シェン・リング」の版間の差分

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シェン・リングとは、接線を伴う円で、それはヒエログリフでは「'''縄の輪'''」を意味している。古代エジプトでは「シェン」という言葉は単独で「囲むもの」を意味し、シェン・リングは「永遠の守護」を表現している。シェン・リングを引き延ばしたものは「カルトゥーシュ」と呼ばれ、国王の名を囲んで守護するものとされた。<ref>UCLA Encyclopedia of Egyptology online: definition cartouche(カルトゥーシュの定義)</ref>
 
シェン・リングとは、接線を伴う円で、それはヒエログリフでは「'''縄の輪'''」を意味している。古代エジプトでは「シェン」という言葉は単独で「囲むもの」を意味し、シェン・リングは「永遠の守護」を表現している。シェン・リングを引き延ばしたものは「カルトゥーシュ」と呼ばれ、国王の名を囲んで守護するものとされた。<ref>UCLA Encyclopedia of Egyptology online: definition cartouche(カルトゥーシュの定義)</ref>
  
シェン・リングは多くの場合、ハヤブサの神[[wikija:ホルス|ホルス]]の手に握られているが、ハゲワシの女神[[wikija:ネクベト|ネクベト]]が握っていることもある。このシェン・リングはジェゼル王の階段ピラミッド複合体<ref>これは[[wikija:下エジプト|下エジプト]]の[[wikija:サッカラ|サッカラ]]にある。</ref>の浮き彫りに認められ、エジプト第3王朝(紀元前2686年頃~2613年頃)という早い時期から使用されていたことが分かる。<ref>Kemp, B. 2007. Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. pp106</ref>
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シェン・リングは多くの場合、ハヤブサの神[[wikija:ホルス|ホルス]]の手に握られているが、ハゲワシの女神[[ネクベト]]が握っていることもある。このシェン・リングはジェゼル王の階段ピラミッド複合体<ref>これは下エジプトのサッカラにある。</ref>の浮き彫りに認められ、エジプト第3王朝(紀元前2686年頃~2613年頃)という早い時期から使用されていたことが分かる。<ref>Kemp, B. 2007. Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. pp106</ref>
  
 
==引き延ばした「シェン・リング」、カルトゥーシュ==
 
==引き延ばした「シェン・リング」、カルトゥーシュ==
 
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シェン・リングは他の文字を内包する際には引き延ばされて使用され、内包された文字が示すものは永遠にシェン・リングによって保護されるものとされた。また、内部にファラオの名前が刻まれる場合には特に「[[wikija:カルトゥーシュ|カルトゥーシュ]]」と呼ばれた。「シェン」という言葉は、[[wikija:古代エジプト|古代エジプト]]語で「囲い」という意味である。
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シェン・リングは他の文字を内包する際には引き延ばされて使用され、内包された文字が示すものは永遠にシェン・リングによって保護されるものとされた。また、内部にファラオの名前が刻まれる場合には特に「カルトゥーシュ」と呼ばれた。「シェン」という言葉は、古代エジプト語で「囲い」という意味である。
  
 
==図像としてのシェン・リング==
 
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シェン・リングは「シェヌ」という。
 
シェン・リングは「シェヌ」という。
 
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* [[wikija:ヘケト|ヘケト]]女神(「蛙」)は、しばしば「シェヌ」の上に座っている。
 
* [[wikija:ヘケト|ヘケト]]女神(「蛙」)は、しばしば「シェヌ」の上に座っている。
* 「永遠」や「巡る季節(renpit)」の象徴のため、通常パピルスの茎は「シェン・リング」の上に置かれた。<ref>原文には「パピルス」と書かれているが、フフの図に描かれている植物は「ヤシ」であると思う。[[wikija:古代エジプト|古代エジプト]]の図像では「パピルス」は頭部が半円形に広がった形で描かれる。</ref>[[wikija:古代エジプト|古代エジプト]]の神フフの図の通りである。(センウセルト1世(紀元前1971年~前1926年)はこの図を描いた有名な「装飾まぐさ石」を作製させている。)
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* 「永遠」や「巡る季節(renpit)」の象徴のため、通常パピルスの茎は「シェン・リング」の上に置かれた。<ref>原文には「パピルス」と書かれているが、フフの図に描かれている植物は「ヤシ」であると思う。古代エジプトの図像では「パピルス」は頭部が半円形に広がった形で描かれる。</ref>古代エジプトの神フフの図の通りである。(センウセルト1世(紀元前1971年~前1926年)はこの図を描いた有名な「装飾まぐさ石」を作製させている。)
* 「シェン・リング」は権威、権限、権力等を示すさまざまな杖に付加され、国家権力が「永遠であること」の象徴とされた。
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* 「シェン・リング」は権威、権限、権力等を示すさまざまな杖に付加され、国家権力が「'''永遠であること'''」の象徴とされた。
 
* イシス女神とネクベト女神はしばしばひざまづいて、両手に「シェヌ」を掲げている姿で描かれた。
 
* イシス女神とネクベト女神はしばしばひざまづいて、両手に「シェヌ」を掲げている姿で描かれた。
* タカ([[wikija:ホルス|ホルス]])やハゲワシ([[wikija:ムト|ムト]]女神)は上図のように、翼を拡げて手に「シェヌ」を持った姿で描かれた。例えば、[[wikija:ルーヴル美術館|ルーヴル美術館]]に所蔵されている[[wikija:古代エジプト|古代エジプト]]の「手にシェヌを持つ翼を拡げた[[wikija:ホルス|ホルス]]」のブローチはおそらく王権の象徴とされたのであろう。
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* タカ([[wikija:ホルス|ホルス]])やハゲワシ([[wikija:ムト|ムト]]女神)は上図のように、翼を拡げて手に「シェヌ」を持った姿で描かれた。例えば、ルーヴル美術館に所蔵されている古代エジプトの「手にシェヌを持つ翼を拡げた[[wikija:ホルス|ホルス]]」のブローチはおそらく王権の象徴とされたのであろう。
  
 
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Image:Egypte louvre 052.jpg|工芸品、[[wikija:ルーヴル美術館|ルーヴル美術館]](フランス)所蔵
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Image:Egypte louvre 052.jpg|工芸品、ルーヴル美術館(フランス)所蔵
 
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File:Temple of Deir Al Bahri Hatshepsut.jpg|ハトシェプスト女王葬祭殿における大量のシェン・リング
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Image:Egypte louvre 211 stele.jpg|ルーヴル美術館の石碑
 
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File:Seshat in Luxor.jpg|ラムセス2世の王座の裏に彫られていたセシャト女神
 
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== エジプト以外のシェン・リング様紋 ==
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=== シュメール ===
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[[イナンナ]]の紋章がシェン・リング様である。「始めと終わり」を現しているように思える。
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ケルヌンノスの有するトルクと蛇は、「始めと終わり」を現しているように思える。
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== 参考文献 ==
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* [[wikipedia:Shen ring|Shen ring]](最終閲覧日:22-12-09)
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** Kemp, Barry (2007). Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. Routledge, Oxford.
  
 
== 関連項目 ==
 
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* [[wikib1:リングと太陽の鳥|リングと太陽の鳥]]
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* [[ネクベト]]
 
* [[フフ]]
 
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* [[ヘバト]]:シェン・リングとΩの関係について
 
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* [[レンピト]]
 
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* [[イナンナ]]
  
 
== 参照 ==
 
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== 参考文献 ==
 
* Kemp, Barry (2007). Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. Routledge, Oxford.
 
 
== 原文 ==
 
* [[wikipedia:Shen ring|Shen ring]]
 
  
 
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2022年12月15日 (木) 06:19時点における最新版

手にシェン・リングを握っているホルス
(ルーヴル美術館)
ジェゼル王のピラミッド複合体
(サッカラ)

シェン・リングとは、接線を伴う円で、それはヒエログリフでは「縄の輪」を意味している。古代エジプトでは「シェン」という言葉は単独で「囲むもの」を意味し、シェン・リングは「永遠の守護」を表現している。シェン・リングを引き延ばしたものは「カルトゥーシュ」と呼ばれ、国王の名を囲んで守護するものとされた。[1]

シェン・リングは多くの場合、ハヤブサの神ホルスの手に握られているが、ハゲワシの女神ネクベトが握っていることもある。このシェン・リングはジェゼル王の階段ピラミッド複合体[2]の浮き彫りに認められ、エジプト第3王朝(紀元前2686年頃~2613年頃)という早い時期から使用されていたことが分かる。[3]

引き延ばした「シェン・リング」、カルトゥーシュ[編集]

左:シェン・リング
右:カルトゥーシュ

シェン・リングは他の文字を内包する際には引き延ばされて使用され、内包された文字が示すものは永遠にシェン・リングによって保護されるものとされた。また、内部にファラオの名前が刻まれる場合には特に「カルトゥーシュ」と呼ばれた。「シェン」という言葉は、古代エジプト語で「囲い」という意味である。

図像としてのシェン・リング[編集]

シェン・リングは「シェヌ」という。

シェン・リング付きの杖を持つネクベト女神(コム・オンボ神殿)
  • ヘケト女神(「蛙」)は、しばしば「シェヌ」の上に座っている。
  • 「永遠」や「巡る季節(renpit)」の象徴のため、通常パピルスの茎は「シェン・リング」の上に置かれた。[4]古代エジプトの神フフの図の通りである。(センウセルト1世(紀元前1971年~前1926年)はこの図を描いた有名な「装飾まぐさ石」を作製させている。)
  • 「シェン・リング」は権威、権限、権力等を示すさまざまな杖に付加され、国家権力が「永遠であること」の象徴とされた。
  • イシス女神とネクベト女神はしばしばひざまづいて、両手に「シェヌ」を掲げている姿で描かれた。
  • タカ(ホルス)やハゲワシ(ムト女神)は上図のように、翼を拡げて手に「シェヌ」を持った姿で描かれた。例えば、ルーヴル美術館に所蔵されている古代エジプトの「手にシェヌを持つ翼を拡げたホルス」のブローチはおそらく王権の象徴とされたのであろう。

エジプト以外のシェン・リング様紋[編集]

シュメール[編集]

女神イナンナの紋章、紀元前3000年頃[5]。ワルカの花瓶(Warka Vase)。

イナンナの紋章がシェン・リング様である。「始めと終わり」を現しているように思える。

ガリア[編集]

コペンハーゲンのデンマーク国立博物館に展示されているグンデストルップの大釜(Gundestrup Cauldron)のケルヌンノス型角神像。

ケルヌンノスの有するトルクと蛇は、「始めと終わり」を現しているように思える。

参考文献[編集]

  • Shen ring(最終閲覧日:22-12-09)
    • Kemp, Barry (2007). Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. Routledge, Oxford.

関連項目[編集]

参照[編集]

  1. UCLA Encyclopedia of Egyptology online: definition cartouche(カルトゥーシュの定義)
  2. これは下エジプトのサッカラにある。
  3. Kemp, B. 2007. Ancient Egypt. Anatomy of a Civilisation. pp106
  4. 原文には「パピルス」と書かれているが、フフの図に描かれている植物は「ヤシ」であると思う。古代エジプトの図像では「パピルス」は頭部が半円形に広がった形で描かれる。
  5. Site officiel du musée du Louvre, http://cartelfr.louvre.fr/cartelfr/visite?srv=car_not_frame&idNotice=9643 , cartelfr.louvre.fr