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== 概要 ==
 
== 概要 ==
 
フェニックスは、古代エジプトの神話に登場する、聖なる鳥[[ベンヌ]]がその原型だと考えられている<ref name="アランp46">アラン,上原訳 (2009), p. 46.</ref><ref name="松平p189">松平 (2005), p. 189.</ref>。当時のエジプト人は、太陽神ラーに従う[[ベンヌ]]はヘリオポリスのラーの神殿で燃やされている炎へ毎夜飛び込んで死に、毎朝その炎から生まれると信じていた。ベンヌはすなわち、毎夕に沈み毎朝昇る太陽を象徴していた<ref name="アランp46" />。
 
フェニックスは、古代エジプトの神話に登場する、聖なる鳥[[ベンヌ]]がその原型だと考えられている<ref name="アランp46">アラン,上原訳 (2009), p. 46.</ref><ref name="松平p189">松平 (2005), p. 189.</ref>。当時のエジプト人は、太陽神ラーに従う[[ベンヌ]]はヘリオポリスのラーの神殿で燃やされている炎へ毎夜飛び込んで死に、毎朝その炎から生まれると信じていた。ベンヌはすなわち、毎夕に沈み毎朝昇る太陽を象徴していた<ref name="アランp46" />。
この話が、古代ギリシアの歴史家[[ヘロドトス]](紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)の元に伝えられると、彼はその著作『[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]]』において、エジプトの東方に位置するアラビアに住む鳥フェニックスとして紹介した。そこでのフェニックスは、[[鷲]]に似た体型の、金色と赤で彩られた羽毛を持つ鳥で、父親の鳥が死ぬとその遺骸を雛鳥が[[没薬]]で出来た入れ物に入れてヘリオポリスに運ぶ習性があるとされた<ref name="アランp46" /><ref>[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], pp. 186-187.</ref>。
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この話が、古代ギリシアの歴史家ヘロドトス(紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)の元に伝えられると、彼はその著作『歴史]]』において、エジプトの東方に位置するアラビアに住む鳥フェニックスとして紹介した。そこでのフェニックスは、鷲に似た体型の、金色と赤で彩られた羽毛を持つ鳥で、父親の鳥が死ぬとその遺骸を雛鳥が没薬で出来た入れ物に入れてヘリオポリスに運ぶ習性があるとされた<ref name="アランp46" /><ref>松平 (2005), pp. 186-187.</ref>。
  
初期キリスト教の司教であった[[クレメンス1世 (ローマ教皇)|聖クレメンス]](? - 101年?)が記したところでは、フェニックスは寿命を迎えると、自分で[[香料]]や没薬などを集めて棺を準備してその中に入り、間もなく死ぬと、その遺骸から虫が生まれて遺骸を食べ尽くし、やがて虫に羽毛が生えて飛んでいくとされた<ref name="松平p187">[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], p. 187.</ref>。同様の記述は[[プリニウス]](22年頃 - 79年)の『[[#博物誌 (プリニウス)|博物誌]]』にもすでにみられている<ref>[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], pp. 187-188.</ref>。
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初期キリスト教の司教であった聖クレメンス(? - 101年?)が記したところでは、フェニックスは寿命を迎えると、自分で香料や没薬などを集めて棺を準備してその中に入り、間もなく死ぬと、その遺骸から虫が生まれて遺骸を食べ尽くし、やがて虫に羽毛が生えて飛んでいくとされた<ref name="松平p187">松平 (2005), p. 187.</ref>。同様の記述はプリニウス(22年頃 - 79年)の『博物誌』にもすでにみられている<ref>松平 (2005), pp. 187-188.</ref>。
  
なお、古代ローマの歴史家[[タキトゥス]](55年頃 - 120年頃)の『{{仮リンク|年代記 (タキトゥス)|en|Annals (Tacitus)|label=年代記}}』によると、34年にフェニックスが現れたという<ref name="松平p187" />。
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なお、古代ローマの歴史家タキトゥス(55年頃 - 120年頃)の『年代記 (タキトゥス)(Annals (Tacitus))』によると、34年にフェニックスが現れたという<ref name="松平p187" />。
  
フェニックスの伝承は、古代ギリシアや古代ローマの著述家によって次第に変化していった<ref name="アランp46" />。ローマの地理学者{{仮リンク|ポンポニウス・メラ|en|Pomponius Mela|label=メラ}}は[[43年]]頃に、その著作『地誌』において、フェニックスは500年たつと自分で積み上げた香料を薪として炎の中で死ぬが、その炎から再び生まれてきて、自分の遺骨をエジプトに運んで埋葬する旨を記した<ref name="松平p188">[[#松平 (2005)|松平 (2005)]], p. 188.</ref>。
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フェニックスの伝承は、古代ギリシアや古代ローマの著述家によって次第に変化していった<ref name="アランp46" />。ローマの地理学者ポンポニウス・メラ(Pomponius Mela)は43年頃に、その著作『地誌』において、フェニックスは500年たつと自分で積み上げた香料を薪として炎の中で死ぬが、その炎から再び生まれてきて、自分の遺骨をエジプトに運んで埋葬する旨を記した<ref name="松平p188">松平 (2005), p. 188.</ref>。
  
ローマの著述家{{仮リンク|ガイウス・ユリウス・ソリヌス|en|Gaius Julius Solinus|label=ソリヌス}}(3世紀)は、フェニックスが住むのはアラビアだとし、その羽毛や羽根の色合いの豪華さを記述している。またソリヌスは、エジプトでフェニックスの1羽が捕まり、クラウディウス皇帝時代のローマに運ばれて多くの人が見物した旨を記述している<ref name="松平p187" />。
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ローマの著述家ガイウス・ユリウス・ソリヌス(Gaius Julius Solinus)(3世紀)は、フェニックスが住むのはアラビアだとし、その羽毛や羽根の色合いの豪華さを記述している。またソリヌスは、エジプトでフェニックスの1羽が捕まり、クラウディウス皇帝時代のローマに運ばれて多くの人が見物した旨を記述している<ref name="松平p187" />。
  
2世紀から4世紀にかけて成立した『[[フィシオロゴス]]』でのフェニックスは<ref name="松平p188" />、500年ごとに、芳香を羽根いっぱいに持ってヘリオポリスの神官の元へ行き、祭壇の炎の中で焼死する。そして翌日その場所に生じた虫が、3日目には元のフェニックスの姿にまで育ち<ref name="アランp46" /><ref name="松平p188" />、神官に挨拶をしてから故郷へ飛んでいく、とされている。その外観は、羽根や頭部や脚に宝石や装飾具が着いているとされている<ref name="松平p188" />。
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2世紀から4世紀にかけて成立した『フィシオロゴス』でのフェニックスは<ref name="松平p188" />、500年ごとに、芳香を羽根いっぱいに持ってヘリオポリスの神官の元へ行き、祭壇の炎の中で焼死する。そして翌日その場所に生じた虫が、3日目には元のフェニックスの姿にまで育ち<ref name="アランp46" /><ref name="松平p188" />、神官に挨拶をしてから故郷へ飛んでいく、とされている。その外観は、羽根や頭部や脚に宝石や装飾具が着いているとされている<ref name="松平p188" />。
  
フェニックスの寿命については『フィシオロゴス』をはじめ多くの人が500年だとしているが、プリニウスやソリヌスは540年だとし、タキトゥスは1461年だとした<ref name="松平p188" />。タキトゥスの意見は、恒星[[シリウス]]が日の出の直前に昇る日とエジプトで新年の始まる日とが同じになる周期に基づいている<ref name="アランp46" />。
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フェニックスの寿命については『フィシオロゴス』をはじめ多くの人が500年だとしているが、プリニウスやソリヌスは540年だとし、タキトゥスは1461年だとした<ref name="松平p188" />。タキトゥスの意見は、恒星シリウスが日の出の直前に昇る日とエジプトで新年の始まる日とが同じになる周期に基づいている<ref name="アランp46" />。
  
[[ファイル:Phoenix rising from its ashes.jpg|thumb|right|200px|『{{仮リンク|アバディーン動物寓意集|en|Aberdeen Bestiary}}』の中に描かれたフェニックス<ref name="松平p188" />。]]
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自ら焼死したのちに蘇るという伝説は、エジプト神話をルーツとしながらもギリシア・ローマの著述家によって作られたものである<ref name="松平p189" />。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿がコインやモザイク画にあしらわれるようになった<ref name="ビーダーマンp362" />。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスは'''キリストの復活を象徴するもの'''となった<ref name="アランp46" /><ref name="ビーダーマンp362" />。『フィシオロゴス』では、創造主を崇めることもないこの鳥さえ死から蘇るならば神を崇める我々が復活しないはずがない、といった内容の文言が書かれた<ref name="ビーダーマンp362" />。キリスト教徒はこの鳥を再生のシンボルとみなした<ref name="松平p189" />。10世紀成立の『エクセター写本』に収録された<ref name="松平p189" />、8世紀に作られた詩<ref name="水野p56">水野知昭, 不死鳥の歌なんか聞こえない : 海のかなたの楽園と古ゲルマンの選民思想, https://hdl.handle.net/10091/667 , 人文科学論集 文化コミュニケーション学科編 , 信州大学人文学部 , 2003-03-14 , 37 , 45-70p , naid:110004625076 , ISSN:13422790 , 2022-03-20 , p.56 より</ref>「フェニックス (古英語詩)(The Phoenix (Old English poem))」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている<ref group="注釈">この古英語詩は、4世紀のローマの著述家のルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス(240年頃 - 320年頃)<!--松平 (2005) p.189の「テクタンティウス(245-315)」と同一人物か?-->による詩「不死鳥についての歌」(de Ave Phoenice) に基づいている。</ref><ref name="松平p189" /><ref name="水野p56" /><ref name="松平p189" />。こうしたこともあって、こんにちに至るまで、不死鳥=フェニックスのイメージが多くの人々に受け入れられている<ref name="松平p189" />。
[[ファイル:Phoenix detail from Aberdeen Bestiary.jpg|thumb|200px|right|同じく『アバディーン動物寓意集』でのフェニックス。]]
 
  
自ら焼死したのちに蘇るという伝説は、エジプト神話をルーツとしながらもギリシア・ローマの著述家によって作られたものである<ref name="松平p189" />。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿が[[硬貨|コイン]]や[[モザイク画]]にあしらわれるようになった<ref name="ビーダーマンp362" />。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスはキリストの復活を象徴するものとなった<ref name="アランp46" /><ref name="ビーダーマンp362" />。『フィシオロゴス』では、創造主を崇めることもないこの鳥さえ死から蘇るならば神を崇める我々が復活しないはずがない、といった内容の文言が書かれた<ref name="ビーダーマンp362" />。キリスト教徒はこの鳥を再生のシンボルとみなした<ref name="松平p189" />。10世紀成立の『[[エクセター本|エクセター写本]]』に収録された<ref name="松平p189" />、8世紀に作られた詩<ref name="水野p56">{{Cite journal|和書|author=[[水野知昭]] |title=不死鳥の歌なんか聞こえない : 海のかなたの楽園と古ゲルマンの選民思想 |url=https://hdl.handle.net/10091/667 |journal=人文科学論集 文化コミュニケーション学科編 |publisher=信州大学人文学部 |date=2003-03-14 |volume=37 |pages=45-70 |naid=110004625076 |ISSN=13422790 |accessdate=2022-03-20 |ref=harv }} p.56 より</ref>「{{仮リンク|フェニックス (古英語詩)|en|The Phoenix (Old English poem)|label=フェニックス}}」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている{{refnest|group="注釈"|この古英語詩は、4世紀のローマの著述家の[[ルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス|ラクタンティウス]](240年頃 - 320年頃)<!--松平 (2005) p.189の「テクタンティウス(245-315)」と同一人物か?-->による詩「不死鳥についての歌」(de Ave Phoenice) に基づいている<ref name="松平p189" /><ref name="水野p56" />。}}<ref name="松平p189" />。こうしたこともあって、こんにちに至るまで、不死鳥=フェニックスのイメージが多くの人々に受け入れられている<ref name="松平p189" />([[#現代におけるフェニックス]]も参照)。
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フェニックスは中世や近世の旅行記にもたびたび登場している<ref name="松平p189" />。ジョン・マンデヴィルによる『マンデヴィルの旅行記』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること<ref>大沼由布, 『マンデヴィルの旅行記』と「装置」としての語り手 , https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013273 , 同志社大学英語英文学研究 , 同志社大学人文学会 , 2013 , mar , 91 , 1-18 p, naid:110009614600 , doi:10.14988/pa.2017.0000013273 , issn:0286-1291, 2020-09-14 </ref>や、孔雀のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されている<ref name="松平p189" />。また中世の聖務日課祈祷書(Breviary)や『動物寓話集』でもしばしば言及された<ref name="ローズp359" />
  
フェニックスは中世や近世の旅行記にもたびたび登場している<ref name="松平p189" />。[[ジョン・マンデヴィル]]による『[[東方旅行記|マンデヴィルの旅行記]]』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること<ref>{{Cite journal|和書|author=大沼由布 |title=『マンデヴィルの旅行記』と「装置」としての語り手 |url=https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013273 |journal=同志社大学英語英文学研究 |publisher=同志社大学人文学会 |year=2013 |month=mar |issue=91 |pages=1-18 |naid=110009614600 |doi=10.14988/pa.2017.0000013273 |issn=0286-1291|accessdate=2020-09-14 }}</ref>や、[[クジャク|孔雀]]のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されている<ref name="松平p189" />。また中世の{{仮リンク|聖務日課祈祷書|en|Breviary}}や『[[動物寓意譚|動物寓話集]]』でもしばしば言及された<ref name="ローズp359" />。
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錬金術においては「賢者の石」を象徴するものだとされた<ref name="松平p189" />。すなわち、第一質料(マテリア・プリマ)が消失し賢者の石として再生される様子がフェニックスになぞらえられた<ref name="ビーダーマンp362" />。
  
[[錬金術]]においては「[[賢者の石]]」を象徴するものだとされた<ref name="松平p189" />。すなわち、[[第一質料]](マテリア・プリマ)が消失し賢者の石として再生される様子がフェニックスになぞらえられた<ref name="ビーダーマンp362" />。
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フェニックスの起源については、アジアに生息する錦鶏鳥だとする説もある<ref name="松平p189" />。
 
 
フェニックスの起源については、アジアに生息する[[キンケイ|錦鶏鳥]]だとする説もある<ref name="松平p189" />。
 
  
 
== 悪魔としてのフェニックス ==
 
== 悪魔としてのフェニックス ==
{{出典の明記|section=1|date=2015年11月15日 (日) 12:30 (UTC)}}
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ヨーハン・ヴァイヤーの著した『悪魔の偽王国』や、作者不明のグリモワール『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」には、鳥のフェニックスのような姿で現れるというフェニックスという名の悪魔が記載されている。「ゴエティア」ではソロモン王が使役したといわれる72悪魔の一角を担う序列37番の大いなる侯爵とされる。アレイスター・クロウリーの出版した『ゴエティア』では「'''Phene(フェネクス)'''」 の綴りになっている<ref>S.L. MacGregor Mathers and Aleister Crowley , 1904 , http://www.sacred-texts.com/grim/lks/index.htm , The Lesser Key of Solomon , 英語 , 2013-08-10</ref>。不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある<sup>(要出典、15-11-15)</sup>。
[[ヨーハン・ヴァイヤー]]の著した『[[悪魔の偽王国]]』や、作者不明の[[グリモワール]]『[[レメゲトン]]』の第1部「[[ゴエティア]]」には、鳥のフェニックスのような姿で現れるというフェニックスという名の悪魔が記載されている。「ゴエティア」では[[ソロモン]]王が使役したといわれる72悪魔の一角を担う序列37番の大いなる[[侯爵]]とされる。[[アレイスター・クロウリー]]の出版した『ゴエティア』では「'''[[:en:Phenex|Phenex]](フェネクス)'''」 の綴りになっている<ref>{{Cite book |author=S.L. MacGregor Mathers and Aleister Crowley |origyear=1904 |url=http://www.sacred-texts.com/grim/lks/index.htm |title=The Lesser Key of Solomon |language=英語 |accessdate=2013-08-10}}</ref>。不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある。
 
  
 
詩作に優れており、話す言葉も自然に詩になるが、人間の姿を取った時は、耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声で喋るという。
 
詩作に優れており、話す言葉も自然に詩になるが、人間の姿を取った時は、耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声で喋るという。
 
== 現代におけるフェニックス ==
 
[[ファイル:Phoenix fire plaque, Pickering - geograph.org.uk - 1772783.jpg|thumb|200px|right|建物が火災保険に加入していることを示す標章 ([[:en:Fire insurance mark|Fire insurance mark]]) に描かれたフェニックス]]
 
[[ファイル:Phoenix Fireworks at Nagaoka Festival 2011.JPG|thumb|200px|right|復興祈願花火フェニックス(2011年8月撮影)]]
 
 
こんにちでもフェニックスの意匠は家屋の紋章、特に[[火災保険]]に関連する建物の紋章にあしらわれている<ref name="ローズp359" />。
 
 
また、大災害などからの復興事業などに、何度もよみがえる不死鳥にあやかって「フェニックス」という名称をつけることがある。以下に日本での事例を挙げる。
 
 
* 新潟県[[長岡市]]の[[市町村章|市章]]は「長」の字と不死鳥を併せたものを図案化した形となっており、市内の多数の公共施設にフェニックスの名称が取り入れられている<!--(「[[フェニックス大手]]([[長岡市役所]]の一部機能などが入所)」「[[新潟県立長岡屋内総合プール|フェニックスプール]]」「[[フェニックス大橋]]」など)--><ref>{{Cite web |url=http://www.city.nagaoka.niigata.jp/syoukai/ |title=市の紹介 |publisher=長岡市 |accessdate=2013-06-04 }}</ref>。これは、[[1868年|慶応4年]]の[[戊辰戦争]]([[北越戦争]])・[[1945年|昭和20年]]の[[第二次世界大戦]]([[長岡空襲]])の二度の戦禍から不撓不屈の精神で復興し、地方中核都市として限りなく発展するという願いを込めたものである{{要出典|date=2015年11月15日 (日) 12:30 (UTC)}}。また近年では、平成16年の一年間に3度も発生した自然災害([[新潟県中越地震]]・[[平成16年7月新潟・福島豪雨|7・13水害]]・[[豪雪]])からの復興の願いを込めた「復興祈願花火フェニックス」が毎年[[8月2日]]・[[8月3日|3日]]に開催される[[長岡まつり]]で打ち上げられている<ref>{{Cite web |url=http://phoenix-hanabi.jp/pc/ |title=新潟県長岡市 復興と感謝のシンボル【復興祈願花火フェニックス】 |publisher=長岡まつり協議会 フェニックス部会 事務局 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。この花火は、[[噴火]]による被害を受けた[[三宅島]]<ref>{{Cite news |url=http://www.47news.jp/CN/200607/CN2006073001003582.html |title=三宅島に「復興」の花火 長岡がプレゼント |newspaper=共同ニュース |publisher=47NEWS |date=2006-07-30 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>や[[東日本大震災]]の被災地である宮城県[[石巻市]]<ref>{{Cite web |url=http://www.city.nagaoka.niigata.jp/shityo/kaiken/file/20110523-1-0.pdf |title=「石巻川開き祭り」で震災復興祈願花火「フェニックス」を打ち上げ!被災地へ勇気と希望を届けます。 |work=記者会見資料 |publisher=長岡市観光課・長岡まつり協議会 |format=PDF |date=2011-05-23 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>などでも打ち上げられた。
 
 
* 福井県[[福井市]]は、市民憲章の名前が「不死鳥のねがい」であり<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/fukuisi/prezen/kensyou/citizen_charter.html |title=憲章・都市宣言 |publisher=福井市 |quote=''エジプトの伝説上の霊鳥フェニックスのことで、形はワシに似て赤や金の翼を持っており、死期が来ると、みずから燃える火中に入って焼かれ、その灰の中から再生すると言われています。...再び三たび立ち上がった福井市民の努力は、まさに不死鳥(フェニックス)の姿にも似て...'' |date=2015-07-09 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>、コミュニケーションマークも不死鳥をかたどっている<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/sisei/plan/sonota/p008318.html |title=コミュニケーションマーク |publisher=福井市 |date=2010-03-26 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。これは福井市が[[1945年]]([[昭和]]20年)からの3年間で3回壊滅([[福井空襲]]・[[福井地震]]・[[九頭竜川]]の[[堤防]]の[[決壊]])したがそのたびに復興したことに基づいている<ref>{{Cite web |url=http://www.city.fukui.lg.jp/kyoiku/gakusyu/skensyou/p004646.html |title=不死鳥のねがい(福井市市民憲章)の誕生 |publisher=福井市 |date=2014-02-03 |accessdate=2014-11-22 }}</ref>。
 
[[ファイル:JMSDF DDH-181 Hyuga Logo SH-60J.jpg|thumb|right|200px|海上自衛隊の[[対潜哨戒機#哨戒ヘリコプター|哨戒ヘリコプター]]・[[SH-60J (航空機)|SH-60J]]の機体に描かれたひゅうがのロゴマーク]]
 
* 1995年1月に[[阪神・淡路大震災]]で大被害を受けた兵庫県では、1995年度からの「阪神・淡路震災復興計画」に「ひょうごフェニックス計画」の愛称を冠すると同時に、主人公の「火の鳥」がフェニックスと同一視された<!--「未来編」で-->という設定の漫画『[[火の鳥 (漫画)|火の鳥]]』([[手塚治虫]]作)をシンボルマークに採用している<ref>{{Cite web |url=http://tezukaosamu.net/jp/productions/social_contribution.html |title=社会貢献 |publisher=[[手塚プロダクション]] |accessdate=2015-11-15 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.hemri21.jp/phoenix/01.pdf |title=第一章 阪神・淡路震災復興計画 |work=「翔べフェニックス」 |publisher=[[人と防災未来センター|公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構]] |page=38 |format=PDF |quote=''..,この復興計画の愛称を、フェニックス計画とし、シンボルキャラクターとして火の鳥「フェニックス」を提唱した。フェニックスとは、エジプトの神話にでてくる霊鳥。五、六百年ごとに一度、自ら香木を積み重ねて火をつけて焼死し、その灰の中から再び幼鳥となって現れる不死鳥である。...手塚治虫さんの「火の鳥」の題名で知られている作品の中の空想の鳥。'' |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。また、兵庫県の[[防災]]システムにも「フェニックス」の名が冠されている<ref>例:{{Cite web |url=http://web.pref.hyogo.jp/pa21/pa17_000000059.html |title=フェニックス防災システム |work=まちづくり・防災 |publisher=兵庫県 |date=2012-04-01 |accessdate=2015-11-15 }}</ref>。
 
 
ほか、[[海上自衛隊]]のヘリコプター搭載[[護衛艦]][[ひゅうが (護衛艦)|ひゅうが]]は、艦名の由来となった宮崎県における[[県木]][[カナリーヤシ|フェニックス(カナリーヤシ)]]にちなみ、不死鳥フェニックスをあしらった意匠を艦および搭載ヘリコプターの[[エンブレム]]として採用している<ref>{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20130622010026/http://www.mod.go.jp/msdf/ccf1/1ed/hyuga/ |work=海上自衛隊第1護衛隊群 |title=第1護衛隊【ひゅうが】 |publisher=防衛省・自衛隊 |accessdate=2016-06-19 }}</ref>。
 
  
 
== フェニックスに類似した幻獣 ==
 
== フェニックスに類似した幻獣 ==
中世アラビアでは炎の中に生きる伝説の動物[[四大精霊#サラマンダー|サラマンダー]]とフェニックスが混同され<ref name="ローズp359" />、サラマンダーが鳥となったものがフェニックスだとされていたという<ref>{{Cite book |和書 |author=ヘイズ中村 |year=2014 |title=ヴィジュアル版 天使と悪魔の事典|pages=p. 147 |publisher=[[学研パブリッシング]] |isbn=4054060188}}</ref>。
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中世アラビアでは炎の中に生きる伝説の動物サラマンダーとフェニックスが混同され<ref name="ローズp359" />、サラマンダーが鳥となったものがフェニックスだとされていたという<ref>ヘイズ中村 , 2014 , ヴィジュアル版 天使と悪魔の事典, p. 147 , 学研パブリッシング, isbn:4054060188</ref>。
  
[[中国]]の伝説にある[[鳳凰]]はフェニックスに似た存在だと考えられ<ref>[[#ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)|ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)]]</ref>、混同されることも多い([[鳳凰#フェニックスとの関係]]を参照)。なお、星座のPhoenixが[[ほうおう座]]と訳されるがこれは東西で訳語的に対応するものという意味で、誤認に基づいたものではない。
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中国の伝説にある鳳凰はフェニックスに似た存在だと考えられ<ref>ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)</ref>、混同されることも多い。なお、星座のPhoenixがほうおう座と訳されるがこれは東西で訳語的に対応するものという意味で、誤認に基づいたものではない。
  
 
== 脚注 ==
 
== 脚注 ==
 
=== 注釈 ===
 
=== 注釈 ===
 
<references group="注釈"/>
 
<references group="注釈"/>
 
=== 出典 ===
 
* Wikipedia;[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9 フェニックス]
 
  
 
== 参考文献 ==
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |last=アラン |first=トニー |others=上原ゆうこ訳 |title=世界幻想動物百科 ヴィジュアル版 |publisher=[[原書房]] |date=2009-11 |origyear=2008 |isbn=978-4-562-04530-3 |chapter=フェニックス |pages=pp. 46-47 |ref=アラン,上原訳 (2009) }}
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* Wikipedia;[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9 フェニックス](最終閲覧日:22-04-03)
* {{Cite book |和書 |last=ビーダーマン |first=ハンス |others=[[藤代幸一]]監訳、[[宮本絢子]]他訳 |title=図説世界シンボル事典 |publisher=[[八坂書房]] |date=2000-11 |isbn=978-4-89694-463-1 |chapter=フェニックス |pages=pp. 362-363 |ref=ビーダーマン,藤代ら訳 (2000) }}
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** アラン , トニー , 上原ゆうこ訳 , 世界幻想動物百科 ヴィジュアル版 , 原書房, 2009-11 , 2008 , isbn:978-4-562-04530-3 , フェニックス , pp. 46-47
* {{Cite book |和書 |author=松平俊久 |others=[[蔵持不三也]]監修 |title=図説ヨーロッパ怪物文化誌事典 |publisher=原書房 |date=2005-03 |chapter=フェニクス |pages=pp. 186-190 |isbn=978-4-562-03870-1 |ref=松平 (2005) }}
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** ビーダーマン , ハンス , 藤代幸一監訳、宮本絢子他訳 , 図説世界シンボル事典 , 八坂書房, 2000-11 , isbn:978-4-89694-463-1 , フェニックス , pp. 362-363
* {{Cite book |和書 |last=ローズ |first=キャロル |others=[[松村一男]]監訳 |title=世界の怪物・神獣事典 |publisher=原書房 |date=2004-12-07 |chapter=フェニックス |isbn=978-4-562-03850-3 |pages=pp. 358-359 |ref=ローズ,松村訳 (2004) }}
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** 松平俊久 , 蔵持不三也監修 , 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典 , 原書房 , 2005-03 , フェニクス , pp. 186-190 , isbn:978-4-562-03870-1
* [https://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/yousei/190812/20190812039.html 亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅 - フェニックス(エジプト・ギリシャ・ペルーほか) 大阪日日新聞記事(2019年8月12日掲載)]
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** ローズ , キャロル , 松村一男監訳 , 世界の怪物・神獣事典 , 原書房 , 2004-12-07 , フェニックス , isbn:978-4-562-03850-3 , pp. 358-359
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2022年4月3日 (日) 23:57時点における最新版

フェニックスまたはフェニクス(φοῖνιξ、phoînix)、(古: ポイニクス、中世: フィニクス)、ラテン語:phoenix(教会ラテン:フェニックス、英:フィーニクス))は、死んでも蘇ることで永遠の時を生きるといわれる伝説上の鳥である[1]

寿命を迎えると、自ら薪から燃え上がる炎に飛び込んで死ぬが、再び蘇るとされており、不死鳥、もしくは見た目または伝承から火の鳥ともいわれる。

フェニックスとはラテン語での呼び方であり、ギリシア語ではポイニクスと呼ばれる[2]。この名前は、ギリシア語の赤を意味する単語(赤はすなわち炎の色)に由来する[3]とも、同じく紫を意味する単語(フェニックスの羽の色を紫色とする説がある)に由来する[2]ともいわれている。

概要[編集]

フェニックスは、古代エジプトの神話に登場する、聖なる鳥ベンヌがその原型だと考えられている[4][5]。当時のエジプト人は、太陽神ラーに従うベンヌはヘリオポリスのラーの神殿で燃やされている炎へ毎夜飛び込んで死に、毎朝その炎から生まれると信じていた。ベンヌはすなわち、毎夕に沈み毎朝昇る太陽を象徴していた[4]。 この話が、古代ギリシアの歴史家ヘロドトス(紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)の元に伝えられると、彼はその著作『歴史]]』において、エジプトの東方に位置するアラビアに住む鳥フェニックスとして紹介した。そこでのフェニックスは、鷲に似た体型の、金色と赤で彩られた羽毛を持つ鳥で、父親の鳥が死ぬとその遺骸を雛鳥が没薬で出来た入れ物に入れてヘリオポリスに運ぶ習性があるとされた[4][6]

初期キリスト教の司教であった聖クレメンス(? - 101年?)が記したところでは、フェニックスは寿命を迎えると、自分で香料や没薬などを集めて棺を準備してその中に入り、間もなく死ぬと、その遺骸から虫が生まれて遺骸を食べ尽くし、やがて虫に羽毛が生えて飛んでいくとされた[7]。同様の記述はプリニウス(22年頃 - 79年)の『博物誌』にもすでにみられている[8]

なお、古代ローマの歴史家タキトゥス(55年頃 - 120年頃)の『年代記 (タキトゥス)(Annals (Tacitus))』によると、34年にフェニックスが現れたという[7]

フェニックスの伝承は、古代ギリシアや古代ローマの著述家によって次第に変化していった[4]。ローマの地理学者ポンポニウス・メラ(Pomponius Mela)は43年頃に、その著作『地誌』において、フェニックスは500年たつと自分で積み上げた香料を薪として炎の中で死ぬが、その炎から再び生まれてきて、自分の遺骨をエジプトに運んで埋葬する旨を記した[9]

ローマの著述家ガイウス・ユリウス・ソリヌス(Gaius Julius Solinus)(3世紀)は、フェニックスが住むのはアラビアだとし、その羽毛や羽根の色合いの豪華さを記述している。またソリヌスは、エジプトでフェニックスの1羽が捕まり、クラウディウス皇帝時代のローマに運ばれて多くの人が見物した旨を記述している[7]

2世紀から4世紀にかけて成立した『フィシオロゴス』でのフェニックスは[9]、500年ごとに、芳香を羽根いっぱいに持ってヘリオポリスの神官の元へ行き、祭壇の炎の中で焼死する。そして翌日その場所に生じた虫が、3日目には元のフェニックスの姿にまで育ち[4][9]、神官に挨拶をしてから故郷へ飛んでいく、とされている。その外観は、羽根や頭部や脚に宝石や装飾具が着いているとされている[9]

フェニックスの寿命については『フィシオロゴス』をはじめ多くの人が500年だとしているが、プリニウスやソリヌスは540年だとし、タキトゥスは1461年だとした[9]。タキトゥスの意見は、恒星シリウスが日の出の直前に昇る日とエジプトで新年の始まる日とが同じになる周期に基づいている[4]

自ら焼死したのちに蘇るという伝説は、エジプト神話をルーツとしながらもギリシア・ローマの著述家によって作られたものである[5]。しかし、ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿がコインやモザイク画にあしらわれるようになった[3]。また、キリスト教徒にとっても、死んだ後に復活するフェニックスはキリストの復活を象徴するものとなった[4][3]。『フィシオロゴス』では、創造主を崇めることもないこの鳥さえ死から蘇るならば神を崇める我々が復活しないはずがない、といった内容の文言が書かれた[3]。キリスト教徒はこの鳥を再生のシンボルとみなした[5]。10世紀成立の『エクセター写本』に収録された[5]、8世紀に作られた詩[10]「フェニックス (古英語詩)(The Phoenix (Old English poem))」の中では、フェニックスの復活とキリストの復活とが関連づけられている[注釈 1][5][10][5]。こうしたこともあって、こんにちに至るまで、不死鳥=フェニックスのイメージが多くの人々に受け入れられている[5]

フェニックスは中世や近世の旅行記にもたびたび登場している[5]。ジョン・マンデヴィルによる『マンデヴィルの旅行記』でも、自らを焼死させて3日後に蘇ること[11]や、孔雀のような鶏冠を持ち、姿を見た人に幸せをもたらすことなどが記録されている[5]。また中世の聖務日課祈祷書(Breviary)や『動物寓話集』でもしばしば言及された[2]

錬金術においては「賢者の石」を象徴するものだとされた[5]。すなわち、第一質料(マテリア・プリマ)が消失し賢者の石として再生される様子がフェニックスになぞらえられた[3]

フェニックスの起源については、アジアに生息する錦鶏鳥だとする説もある[5]

悪魔としてのフェニックス[編集]

ヨーハン・ヴァイヤーの著した『悪魔の偽王国』や、作者不明のグリモワール『レメゲトン』の第1部「ゴエティア」には、鳥のフェニックスのような姿で現れるというフェニックスという名の悪魔が記載されている。「ゴエティア」ではソロモン王が使役したといわれる72悪魔の一角を担う序列37番の大いなる侯爵とされる。アレイスター・クロウリーの出版した『ゴエティア』では「Phene(フェネクス)」 の綴りになっている[12]。不死鳥のフェニックスと区別して悪魔のフェニックスを「フェネクス」と呼ぶ場合もある(要出典、15-11-15)

詩作に優れており、話す言葉も自然に詩になるが、人間の姿を取った時は、耳を塞ぎたくなるほど聞き苦しい声で喋るという。

フェニックスに類似した幻獣[編集]

中世アラビアでは炎の中に生きる伝説の動物サラマンダーとフェニックスが混同され[2]、サラマンダーが鳥となったものがフェニックスだとされていたという[13]

中国の伝説にある鳳凰はフェニックスに似た存在だと考えられ[14]、混同されることも多い。なお、星座のPhoenixがほうおう座と訳されるがこれは東西で訳語的に対応するものという意味で、誤認に基づいたものではない。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. この古英語詩は、4世紀のローマの著述家のルキウス・カエキリウス・フィルミアヌス・ラクタンティウス(240年頃 - 320年頃)による詩「不死鳥についての歌」(de Ave Phoenice) に基づいている。

参考文献[編集]

  • Wikipedia;フェニックス(最終閲覧日:22-04-03)
    • アラン , トニー , 上原ゆうこ訳 , 世界幻想動物百科 ヴィジュアル版 , 原書房, 2009-11 , 2008 , isbn:978-4-562-04530-3 , フェニックス , pp. 46-47
    • ビーダーマン , ハンス , 藤代幸一監訳、宮本絢子他訳 , 図説世界シンボル事典 , 八坂書房, 2000-11 , isbn:978-4-89694-463-1 , フェニックス , pp. 362-363
    • 松平俊久 , 蔵持不三也監修 , 図説ヨーロッパ怪物文化誌事典 , 原書房 , 2005-03 , フェニクス , pp. 186-190 , isbn:978-4-562-03870-1
    • ローズ , キャロル , 松村一男監訳 , 世界の怪物・神獣事典 , 原書房 , 2004-12-07 , フェニックス , isbn:978-4-562-03850-3 , pp. 358-359
    • 亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅 - フェニックス(エジプト・ギリシャ・ペルーほか) 大阪日日新聞記事(2019年8月12日掲載)(リンク切れ:22-04-03)

関連項目[編集]

参照[編集]

  1. フェニックス , デジタル大辞泉 , 2022-02-05
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 ローズ,松村訳 (2004), p. 359.
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 ビーダーマン,藤代ら訳 (2000), p. 362.
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 アラン,上原訳 (2009), p. 46.
  5. 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 松平 (2005), p. 189.
  6. 松平 (2005), pp. 186-187.
  7. 7.0 7.1 7.2 松平 (2005), p. 187.
  8. 松平 (2005), pp. 187-188.
  9. 9.0 9.1 9.2 9.3 9.4 松平 (2005), p. 188.
  10. 10.0 10.1 水野知昭, 不死鳥の歌なんか聞こえない : 海のかなたの楽園と古ゲルマンの選民思想, https://hdl.handle.net/10091/667 , 人文科学論集 文化コミュニケーション学科編 , 信州大学人文学部 , 2003-03-14 , 37 , 45-70p , naid:110004625076 , ISSN:13422790 , 2022-03-20 , p.56 より
  11. 大沼由布, 『マンデヴィルの旅行記』と「装置」としての語り手 , https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013273 , 同志社大学英語英文学研究 , 同志社大学人文学会 , 2013 , mar , 91 , 1-18 p, naid:110009614600 , doi:10.14988/pa.2017.0000013273 , issn:0286-1291, 2020-09-14
  12. S.L. MacGregor Mathers and Aleister Crowley , 1904 , http://www.sacred-texts.com/grim/lks/index.htm , The Lesser Key of Solomon , 英語 , 2013-08-10
  13. ヘイズ中村 , 2014 , ヴィジュアル版 天使と悪魔の事典, p. 147 , 学研パブリッシング, isbn:4054060188
  14. ビーダーマン,藤代ら訳 (2000)