「バウボー」の版間の差分
(→関連項目) |
|||
(同じ利用者による、間の15版が非表示) | |||
27行目: | 27行目: | ||
* 裸でしゃがんで性器に手を当てている姿。 | * 裸でしゃがんで性器に手を当てている姿。 | ||
− | + | フィギュアは通常、精巧な頭飾りをつけ、杯やハープを持つものもある。また、頭部にループが形成されているものもあり、これは何らかの方法で吊り下げていた(お守りとしてだったかもしれない)ことを示しているようだ。 | |
− | + | == 私的解説 == | |
+ | バウボーはいわゆる「外陰部信仰」の女神と思われる。西欧の「外陰部信仰」はシーラ・ナ・ギグのように「境界神」としての性質があるようだが、これは当初からの性質だったのだろうか、と思う。むしろ、本来は女性の「生み出す能力」が人類、ひいては世界や宇宙を創造した、とそのような神話の女神であったと考える。女神の外陰部信仰を、男神の男根信仰に置き換えたものが[[パーン]]なので、女神の地位は低下して「娘」とされ、下品で猥雑な面が強調されたものか。 | ||
− | + | また、全てではないが、「バウボー・フィギュア」の髪型は、「兎の耳」のように上に向かって結われていたり、遼河文明の太陽女神のように「吊された」ものであることが示唆され、地位の低下した太陽女神であることが示唆される。ただし、ギリシア神話のバウボーは、「奴隷」と現されり、「地位の低いもの」の象徴とはされているが、人身御供とされるほど地位は低下しておらず、むしろ「知恵のある老女」として、沈んでいるデーメーテールを再生させる「再生の女神」としての性質が残されている。日本神話でいうところの[[天宇受賣命]]と同様の役割をバウボー([[イアムベー]])は果たしている。 | |
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | + | バウボーという名はオルペウス教での名とのことだが、子音構成から見るに、バウボーはギリシア神話のオルフェウス、スキタイのパパイオスと類似した名である。 | |
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | |||
− | == | + | == 関連項目 == |
+ | * [[バズヴ]]:ケルト神話の女神。バウボーと語源的に同じではないか、と管理人は考える。 | ||
+ | * [[ハパンタリ]]:ヒッタイトの女神。 | ||
+ | |||
+ | * 芸術における膣と外陰部 | ||
+ | * ヴィーナス小像 | ||
+ | * [[天宇受賣命]] | ||
+ | * アナシルマ | ||
+ | * ディリュカイ | ||
+ | * ラージャ・ガウリ | ||
+ | * ニンインマ | ||
+ | * シーラ・ナ・ギグ | ||
+ | * 頭なし男 | ||
+ | * [[イアムベー]]:バウボーと同じ女神とされる。 | ||
+ | ** [[エーコー]]:[[イアムベー]]の母親とされる。 | ||
+ | ** [[パーン]]:[[イアムベー]]の父親とされる。 | ||
+ | |||
+ | == 参考文献 == | ||
+ | * Wikipedia:[https://en.wikipedia.org/wiki/Baubo Baubo](最終閲覧日:23-01-17) | ||
+ | ** Women and Humor in Classical Greece, O' Higgins Laurie, 2003, Cambridge University Press, Cambridge, UK; New York | ||
+ | ** The Metamorphosis of Baubo, Lubell Winifred Milius, 1994, Vanderbilt University Press, Nashville, Tennessee | ||
+ | ** Murray Margaret, 1934, Female Fertility Figures, Journal of the Royal Anthropological Institute, volume:LXIV | ||
+ | |||
+ | 以下の書籍は、主に中世の性愛彫刻に関するものだが、バウボーに関する項目がある。 | ||
+ | ** Dr. Jørgen Andersen, ''The Witch on the Wall: Medieval Erotic Sculpture in the British Isles'', 1977. | ||
+ | ** Miriam Robbins Dexter and Victor H. Mair, ''Sacred Display: Divine and Magical Female Figures of Eurasia.'' Amherst, New York: Cambria Press, 2010. | ||
+ | ** Anthony Weir and James Jerman, ''Images of Lust: Sexual Carvings on Medieval Churches'', 1986. | ||
+ | |||
+ | == 外部リンク == | ||
* [http://www.beyond-the-pale.org.uk/zxBauboBeset.htm Examples of Baubo figurines] | * [http://www.beyond-the-pale.org.uk/zxBauboBeset.htm Examples of Baubo figurines] | ||
* [http://www.theoi.com/Text/ClementExhortation1.html Baubo in Clement of Alexandria's Exhortation to the Greeks] The story of Baubo as related by [[Clement of Alexandria]]. | * [http://www.theoi.com/Text/ClementExhortation1.html Baubo in Clement of Alexandria's Exhortation to the Greeks] The story of Baubo as related by [[Clement of Alexandria]]. | ||
62行目: | 76行目: | ||
[[Category:女性器]] | [[Category:女性器]] | ||
[[Category:類兎]] | [[Category:類兎]] | ||
+ | [[Category:吊される神]] | ||
+ | [[Category:再生の女神]] | ||
+ | [[Category:類烏]] |
2023年2月24日 (金) 18:59時点における最新版
バウボー(古代ギリシャ語:Βαυβώ、Baubo)は、ギリシア神話に登場する老婆で、特に初期オルペウス教の神話に登場する。歓楽の女神として知られ、下品で性的に自由な姿で描かれ、娘のペルセポネーを失ったデーメーテールが嘆くときに一緒に戯れたとされる。
学問的な議論[編集]
『ギリシャ神話』(1955年)の中で、ロバート・グレイヴスは、変装したデーメーテールがエレウーシスでセレウス王の客となったとき、王の足の悪い女中イアムベーについて、「この女中イアムベーが、この神話に登場する。」と書いた。
そして、老バウボーが冗談で麦酒を飲ませると、デーメーテールは苦しそうにうめき、不意にスカートからデーメーテールの息子イアッカスが現れ、母親の腕に飛び込んできてキスをした[1]。
グレイヴスは以下のように述べている。
イアムベーとバウボーは、エレウーシス神話で感情の緊張をほぐすために猥歌を歌った。イアムベー、デーメーテール、バウボーは、乙女、ニンフ、老婆というおなじみの三つ組みで擬人化されている。ギリシア神話に登場する老女は、ほとんどが女神の代わりの老婆である[2]。
以下は、アレクサンドリアのクレメンスの『ギリシャ人への勧告』から、1919年の英訳を抜粋したものである。
バウボーはデーメーテールを客として迎え、酒と食事を勧めた。デーメーテールは喪に服しているため、酒を飲みたくないと断った。バウボーは自分を軽んじられたと深く傷つき、自分の陰部を暴いて女神に見せた。デーメーテールはその光景を見て喜び、せめてもの救いの手を差し伸べた! これらは、アテネ人の秘密のミステリーだ! これらはオルフェウスの詩の主題でもある。オルフェウスの台詞を引用しよう。神秘の創始者が、その無恥さを証言してくれるかもしれない。
「彼女は衣を脱いで羞恥心をあらわにし、そこにいた子供のイアッカスが笑いながら手を彼女の胸の下に差し入れた。そして、女神は心の中で微笑み、輝く杯からその杯を飲み干した[3]。」
バウボ-・フィギュア[編集]
バウボーと呼ばれる像は、さまざまな場面で見られるが、たいていはギリシャにゆかりのあるものである。様々なスタイルで量産されたが、基本的な姿は常に何らかの形でが陰部を露出している。
- 両足を開いたふくよかな女性が、露出した外陰部を見せる仕草をしている。
- 猪の背中にハープを持った裸の開脚した人物が描かれている。
- 胴体に顔があり、顔の顎に外陰部がある全裸の首なし胴体。
- 脚の間を埋めるように外陰部が誇張された坐像。
- 裸でしゃがんで性器に手を当てている姿。
フィギュアは通常、精巧な頭飾りをつけ、杯やハープを持つものもある。また、頭部にループが形成されているものもあり、これは何らかの方法で吊り下げていた(お守りとしてだったかもしれない)ことを示しているようだ。
私的解説[編集]
バウボーはいわゆる「外陰部信仰」の女神と思われる。西欧の「外陰部信仰」はシーラ・ナ・ギグのように「境界神」としての性質があるようだが、これは当初からの性質だったのだろうか、と思う。むしろ、本来は女性の「生み出す能力」が人類、ひいては世界や宇宙を創造した、とそのような神話の女神であったと考える。女神の外陰部信仰を、男神の男根信仰に置き換えたものがパーンなので、女神の地位は低下して「娘」とされ、下品で猥雑な面が強調されたものか。
また、全てではないが、「バウボー・フィギュア」の髪型は、「兎の耳」のように上に向かって結われていたり、遼河文明の太陽女神のように「吊された」ものであることが示唆され、地位の低下した太陽女神であることが示唆される。ただし、ギリシア神話のバウボーは、「奴隷」と現されり、「地位の低いもの」の象徴とはされているが、人身御供とされるほど地位は低下しておらず、むしろ「知恵のある老女」として、沈んでいるデーメーテールを再生させる「再生の女神」としての性質が残されている。日本神話でいうところの天宇受賣命と同様の役割をバウボー(イアムベー)は果たしている。
バウボーという名はオルペウス教での名とのことだが、子音構成から見るに、バウボーはギリシア神話のオルフェウス、スキタイのパパイオスと類似した名である。
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- Wikipedia:Baubo(最終閲覧日:23-01-17)
- Women and Humor in Classical Greece, O' Higgins Laurie, 2003, Cambridge University Press, Cambridge, UK; New York
- The Metamorphosis of Baubo, Lubell Winifred Milius, 1994, Vanderbilt University Press, Nashville, Tennessee
- Murray Margaret, 1934, Female Fertility Figures, Journal of the Royal Anthropological Institute, volume:LXIV
以下の書籍は、主に中世の性愛彫刻に関するものだが、バウボーに関する項目がある。
- Dr. Jørgen Andersen, The Witch on the Wall: Medieval Erotic Sculpture in the British Isles, 1977.
- Miriam Robbins Dexter and Victor H. Mair, Sacred Display: Divine and Magical Female Figures of Eurasia. Amherst, New York: Cambria Press, 2010.
- Anthony Weir and James Jerman, Images of Lust: Sexual Carvings on Medieval Churches, 1986.
外部リンク[編集]
- Examples of Baubo figurines
- Baubo in Clement of Alexandria's Exhortation to the Greeks The story of Baubo as related by Clement of Alexandria.
- Baubo figurines from the temple of Demeter at Priene, Turkey Face-in-body Baubo figurines.