「アグラオニケ」の版間の差分

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『結婚訓』には「テッサリアのヘゲトルの娘」とあり、『アルゴナウティカ』の古註でも「テッサリアの魔女」の記述に続けてアグラオニケが登場することから、アグラオニケはテッサリアの出身とされている。そしてこれらの記述から、アグラオニケは天文学の知識に通じ、朔望の周期を知り、月食が起きる日時を予測することができたと考えられ、しばしば歴史上最初の女性天文学者として引き合いに出される<ref group="注">「天文学者」として言及される最古の女性ではあるが、天文学に通じた女性はもっと古い時代から居たと考えられる。例えば[[サルゴン (アッカド王)|サルゴン]]の娘[[エンヘドゥアンナ]]は、神官で文学者という位置付けだが、バビロニアの高位の神官は、現在の天文学や数学の源流に近い存在であり、立場上天体の観測や暦の作成に関わっていたものと考えられる。</ref><ref name="howard98">Howard, Sethanne, 1998-06, 4,000 Years of Women in Science, Engineering and Other Altogether Creative Stuff , International Amateur-Professional Photoelectric Photometry Communication, volume72, pages1-25, bibcode=:1998IAPPP..72....1H </ref>。天文学の知識に基づいて、月食の予報をしていたのだとすると、おそらくその計算はアグラオニケの独創ではないと考えられ、アグラオニケは、月食の予報を可能としていたバビロニアの天文学者の知識がギリシアに伝わったセレウコス朝期以降の人物であり、その評判を記述したプルタルコスよりは前の時代の人物であることになる。
 
『結婚訓』には「テッサリアのヘゲトルの娘」とあり、『アルゴナウティカ』の古註でも「テッサリアの魔女」の記述に続けてアグラオニケが登場することから、アグラオニケはテッサリアの出身とされている。そしてこれらの記述から、アグラオニケは天文学の知識に通じ、朔望の周期を知り、月食が起きる日時を予測することができたと考えられ、しばしば歴史上最初の女性天文学者として引き合いに出される<ref group="注">「天文学者」として言及される最古の女性ではあるが、天文学に通じた女性はもっと古い時代から居たと考えられる。例えば[[サルゴン (アッカド王)|サルゴン]]の娘[[エンヘドゥアンナ]]は、神官で文学者という位置付けだが、バビロニアの高位の神官は、現在の天文学や数学の源流に近い存在であり、立場上天体の観測や暦の作成に関わっていたものと考えられる。</ref><ref name="howard98">Howard, Sethanne, 1998-06, 4,000 Years of Women in Science, Engineering and Other Altogether Creative Stuff , International Amateur-Professional Photoelectric Photometry Communication, volume72, pages1-25, bibcode=:1998IAPPP..72....1H </ref>。天文学の知識に基づいて、月食の予報をしていたのだとすると、おそらくその計算はアグラオニケの独創ではないと考えられ、アグラオニケは、月食の予報を可能としていたバビロニアの天文学者の知識がギリシアに伝わったセレウコス朝期以降の人物であり、その評判を記述したプルタルコスよりは前の時代の人物であることになる。
  
ただし、月食の予報と、月を引き下ろす魔術をそのまま結び付けてよいかどうかには、疑問もある。通常の皆既月食では、満月の明るさを大幅に減じ変色するが、月は依然とし[肉眼で容易にみえるからで、月を引き下ろしたと信じさせるには程遠い状況と考えられる。ただ、まれに目にはみえなくなる程暗くなる皆既月食も起こることがあり、モナシュ大学の西洋古典学者ビックネルはこの点に着目し、アグラオニケが予報した月食も同様のものだったと考え、プルタルコスやキケロ]文献から月が消える程の月食の見当を付けることで、アグラオニケの年代を紀元前2世紀から紀元前1世紀のどこかがもっともらしいとしている<ref group="注">皆既月食が非常に暗くなる原因としては、大規模な火山噴火による大気中の塵粒子の増加が知られ、例えば、1913年3月22日の月食と1913年9月15日の月食(September 1913 lunar eclipse)はカトマイ山の1912年の噴火、1963年12月30日の月食(December 1963 lunar eclipse)は同年のアグン山の噴火、1982年12月30日の月食(December 1982 lunar eclipse)は同年のエルチチョンの噴火の影響があったものと推測されている。しかし、グリーンランドで採取された氷床コアの分析から、アグラオニケの時代に世界規模の噴火が起きた証拠はみつかっていない。</ref><ref name="bicknell83">Bicknell, Peter, 1983-06, The witch Aglaonice and dark lunar eclipses in the second and first centuries BC, Journal of the British Astronomical Association, volume93 , issue4, pages160-163, bibcode:1983JBAA...93..160B</ref><ref name="le070828">https://www.nao.ac.jp/phenomena/20070828/color.html, 皆既月食中の月の色について, 2007年8月28日「皆既月食どんな色?」キャンペーン , 国立天文台, 2020-05-26</ref>
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ただし、月食の予報と、月を引き下ろす魔術をそのまま結び付けてよいかどうかには、疑問もある。通常の皆既月食では、満月の明るさを大幅に減じ変色するが、月は依然とし[肉眼で容易にみえるからで、月を引き下ろしたと信じさせるには程遠い状況と考えられる。ただ、まれに目にはみえなくなる程暗くなる皆既月食も起こることがあり、モナシュ大学の西洋古典学者ビックネルはこの点に着目し、アグラオニケが予報した月食も同様のものだったと考え、プルタルコスやキケロの文献から月が消える程の月食の見当を付けることで、アグラオニケの年代を紀元前2世紀から紀元前1世紀のどこかがもっともらしいとしている<ref group="注">皆既月食が非常に暗くなる原因としては、大規模な火山噴火による大気中の塵粒子の増加が知られ、例えば、1913年3月22日の月食と1913年9月15日の月食(September 1913 lunar eclipse)はカトマイ山の1912年の噴火、1963年12月30日の月食(December 1963 lunar eclipse)は同年のアグン山の噴火、1982年12月30日の月食(December 1982 lunar eclipse)は同年のエルチチョンの噴火の影響があったものと推測されている。しかし、グリーンランドで採取された氷床コアの分析から、アグラオニケの時代に世界規模の噴火が起きた証拠はみつかっていない。</ref><ref name="bicknell83">Bicknell, Peter, 1983-06, The witch Aglaonice and dark lunar eclipses in the second and first centuries BC, Journal of the British Astronomical Association, volume93 , issue4, pages160-163, bibcode:1983JBAA...93..160B</ref><ref name="le070828">https://www.nao.ac.jp/phenomena/20070828/color.html, 皆既月食中の月の色について, 2007年8月28日「皆既月食どんな色?」キャンペーン , 国立天文台, 2020-05-26</ref>
  
 
== テッサリアの魔女 ==
 
== テッサリアの魔女 ==
アグラオニケは、月を引き下ろしたと主張したことから、テッサリアの魔女として知られる女性の一人であったとみられる。アグラオニケに触れてはいないが、テッサリアの魔女に月を引き下ろす力があるという噂は、いくつもの文献に記述されている{{R|bicknell83|ogilvie86}}。
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アグラオニケは、月を引き下ろしたと主張したことから、テッサリアの魔女として知られる女性の一人であったとみられる。アグラオニケに触れてはいないが、テッサリアの魔女に月を引き下ろす力があるという噂は、いくつもの文献に記述されている。
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アリストパネスの喜劇『雲』には、
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<blockquote>テッサリアの魔女をやとってさ、夜のうちに、お月さんをはずして、取ってしまうことにしたら、どうだろうね。(アリストパネス, 『雲』750-755(田中美知太郎訳))</blockquote>
  
[[アリストパネス]]の喜劇『[[雲 (戯曲)|雲]]』には、
 
{{Quote|テッサリアの魔女をやとってさ、夜のうちに、お月さんをはずして、取ってしまうことにしたら、どうだろうね。|アリストパネス|『雲』750-755([[田中美知太郎]]訳){{R|cloud}} }}
 
 
という記述があり、アリストパネスの時代には既に噂が広まっていたものと考えられる。
 
という記述があり、アリストパネスの時代には既に噂が広まっていたものと考えられる。
  
以後、[[プラトン]]の『[[ゴルギアス (対話篇)|ゴルギアス]]』{{Refnest|group="注"|…あの魔法によって月を引きおろす女たち、つまりテッタリアの魔女たちが、その代償としてこうむったと伝えられるような災難に… —[[プラトン]]、『[[ゴルギアス (対話篇)|ゴルギアス]]』513A([[加来彰俊]]訳)<ref name="gorgias">{{Cite book |和書 |author=プラトン |author-link=プラトン |translator=[[加来彰俊]] |date=1967-06-16 |title=[[ゴルギアス (対話篇)|ゴルギアス]] |page= |publisher=[[岩波書店]] |isbn=9784003360125 }}</ref>}}、[[ホラティウス]]の『{{仮リンク|エポディ|fr|Épodes}}』{{Refnest|group="注"|…星や月などを/かのテッサリアの呪文により/天からもたらす… —[[ホラティウス]]、『エポディ』5.45([[鈴木一郎 (西洋古典学者)|鈴木一郎]]訳)<ref name="epodi">{{Cite book |和書 |translator=[[鈴木一郎 (西洋古典学者)|鈴木一郎]] |date=2001 |title=ホラティウス全集 |page=242 |publisher=[[玉川大学]]出版部 |isbn=9784472119019 }}</ref>}}、[[ウェルギリウス]]の『[[牧歌 (ウェルギリウス)|牧歌]]』{{Refnest|group="注"|まじないは、天から月を引き下ろすことさえできる。 —[[ウェルギリウス]]、『牧歌』8.69([[小川正廣]]訳)<ref name="eclogae">{{Cite book |和書 |translator=[[小川正廣]] |date=2004-05 |title=[[牧歌 (ウェルギリウス)|牧歌]]/[[農耕詩]] |pages=58-59 |series=西洋古典叢書 |publisher=京都大学学術出版会 |isbn=9784876981519 }}</ref>}}なども、(テッサリアの)魔女が月を天上から引き下ろす、と言及している{{R|ogilvie86|bea}}。
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以後、プラトンの『ゴルギアス』<ref group="注">…あの魔法によって月を引きおろす女たち、つまりテッタリアの魔女たちが、その代償としてこうむったと伝えられるような災難に… —プラトン、『ゴルギアス』513A(加来彰俊訳)</ref><ref name="gorgias">プラトン, 加来彰俊, 1967-06-16, ゴルギアス, 岩波書店, isbn:9784003360125 </ref>、ホラティウスの『エポディ(Épodes)』<ref group="注">…星や月などを/かのテッサリアの呪文により/天からもたらす… —ホラティウス、『エポディ』5.45(鈴木一郎訳)</ref><ref name="epodi">鈴木一郎, 2001, ホラティウス全集, page242, 玉川大学出版部, isbn:9784472119019</ref>、ウェルギリウスの『牧歌』<ref group="注">まじないは、天から月を引き下ろすことさえできる。 —ウェルギリウス、『牧歌』8.69(小川正廣訳)</ref><ref name="eclogae">小川正廣, 2004-05, 牧歌/農耕詩, pages58-59, 西洋古典叢書, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981519</ref>なども、(テッサリアの)魔女が月を天上から引き下ろす、と言及している。
  
 
== 波及 ==
 
== 波及 ==
自らの能力を誇るアグラオニケにちなんで、[[ギリシア語]]には「月がアグラオニケに従うように」という[[俚諺]]が伝わっている{{R|bea}}。
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自らの能力を誇るアグラオニケにちなんで、ギリシア語には「月がアグラオニケに従うように」という俚諺が伝わっている。
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NASAの金星探査機マゼランによって、金星に多数の衝突クレーターが確認され、国際天文学連合(IAU) にそれらの命名が求められた<ref group="注">金星は、愛と美の女神ウェヌス(アプロディーテー)に象徴される惑星であり、それゆえ金星の地名の命名については、女性の名前という制約が課されている。</ref><ref name="magellan_guide">https://www2.jpl.nasa.gov/magellan/guide8.html, Chapter 8 What's in a Name?, The Magellan Venus Explorer's Guide , NASA /JPL, 2020-05-22</ref>。その中で、1991年のブエノスアイレス総会にIAUから提案された名前の一つが「アグラオニケ」であり、そのまま公式な名称として採用された。
  
[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の[[マゼラン (探査機)|金星探査機マゼラン]]によって、[[金星]]に多数の衝突[[クレーター]]が確認され、[[国際天文学連合]] (IAU) にそれらの命名が求められた{{Refnest|group="注"|[[金星]]は、愛と美の女神[[ウェヌス]](アプロディーテー)に象徴される[[惑星]]であり、それゆえ金星の地名の命名については、女性の名前という制約が課されている<ref name="magellan_guide">{{Cite web |url=https://www2.jpl.nasa.gov/magellan/guide8.html |title=Chapter 8 What's in a Name? |website=The Magellan Venus Explorer's Guide |publisher=NASA / [[ジェット推進研究所|JPL]] |accessdate=2020-05-22 }}</ref>。}}。その中で、1991年の[[ブエノスアイレス]]総会にIAUから提案された名前の一つが「アグラオニケ」であり、そのまま公式な名称として採用された{{R|rs93|gpn}}。
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== 私的解説 ==
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アグラオニケとはギリシアにおける伝説的な女性であり「月を天上から引き下ろす」と述べていた、とのことである。「'''月を天上から引き下ろす'''」ということは必ずしも'''「月食」'''と一致することなのか? 文字通り「引き下ろす」のであれば、風船に縄をつけるように引っ張りおろしたりすることではないのか? と疑問に感じる点はあるが、ともかく、古代ギリシアの人はこの言質を「月食のこと」と捕らえていたようである。管理人がこの点に疑問を呈すのは、ギリシア神話にはないが、近隣のヒッタイトの神話には、「月が嵐で地上に落ちてしまって、それをまた空に戻した。」という神話があるからで、月食は嵐によって起きるものではないので、架空の話とはいえ、「月が地上に落ちる」ことと、「月食」とは古代の人々の中でも「異なる事象」と考えられていたのではないか、と思うからである。ともかく、アグラニオケの伝説は「'''月が天上から落ちる'''」という神話がかつて存在し、その操作や調節を「'''女神が行う'''」とされていたのではないだろうか。しかし、天体の規則的な事象あるいは惑星の運行や日月食といった、一見すると不規則に見えるような事象は古来より人の観察の対象となり、その原因が神話というよりは科学的事象として研究の対象にされやすかったこともあって、各地でかなり統一された規格での神話として確立されにくかったのではないのか、と思う。特に日月食はときどき起きることは起きるが、すぐに通常の状態に戻るものでもあるし、古代の人々にとっては荒天が続いたりすることの方が生活への影響が大きくて問題であったのではないだろうか。
  
[[ジャン・コクトー]]が、[[ギリシア神話]]の[[オルペウス]]に取材して著した[[戯曲]]『オルフェ』、及び後に自身が監督した[[オルフェ (1950年の映画)|映画『オルフェ』]]には、名前をアグラオニケにちなんだ女性アグラオニスが登場する。アグラオニスは、戯曲『オルフェ』では月を崇拝する信仰の指導者で、主人公オルフェの妻[[エウリュディケ|ユリディス]]を[[冥界]]送りにする役回りであったが、一転して映画『オルフェ』では、ユリディスの友人として登場した{{R|strauss97|cm14|palumbo18|cocteau}}。
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そのため、アグラニオケとは太古において、「'''月の操作を行う女神'''(月神も兼ねていたかもしれない)」とされていたものが、科学的に「月の動きは何者かの意思によるものではない」と確認されていくにつれて女神としての地位を失い、「月の操作を行う」と自分で勝手に述べている魔女、のような姿に変化してしまったものではないか、と思う。アグラニオケという名前は、アリアドネーやアルテミスと同じく、語源はインド・ヨーロッパ祖語 *h₁ngʷ-ni- から派生したものではないか、と思う。
  
[[ファイル:Judy Chicago The Dinner Party.jpg|thumb|[[ジュディ・シカゴ]]『ディナー・パーティー』]]
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西欧における「'''魔女'''」とはこのように経緯の失われた女神が起源といえるのではないだろうか。アグラニオケは「魔女」の概念の起源として興味深い例と考える。
[[アメリカ]]の美術家[[ジュディ・シカゴ]]の[[インスタレーション]]作品『{{仮リンク|ディナー・パーティー|en|The Dinner Party}}』では、中央部分の[[タイル]]が敷き詰められた三角形の床に、999人の勇敢な女性の名前が描かれており、その一人としてアグラオニケの名前も含まれている{{R|eascfa|levin04|tjapan}}。
 
  
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
=== 注釈 ===
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* Mozans, H. J. |date=1913, Woman in science |pages=167-168, D. Appleton and Company, New York, https://archive.org/details/womaninscience00zahmuoft/
{{Reflist |group="注" |refs=
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* Aglaonike (c. 200 BC), Encyclopedia of Astronomy and Astrophysics, 2000-11, Murdin, Paul, id:3401, doi:10.1888/0333750888/3401, bibcode=:2000eaa..bookE3401.
}}
 
  
 
=== 出典 ===
 
=== 出典 ===
{{Reflist |2 |refs=
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** Lightman, Marjorie, Lightman, Benjamin, 2008, A to Z of Ancient Greek and Roman Women, page9, Infobase Publishing, New York, NY, isbn:9781438107943, https://books.google.co.jp/books?id=2esYJJUETiYC
<ref name="lightman2">{{Cite book |last1=Lightman |first1=Marjorie |last2=Lightman |first2=Benjamin |date=2008 |title=A to Z of Ancient Greek and Roman Women |page=9 |publisher=Infobase Publishing |place=[[ニューヨーク|New York, NY]] |isbn=9781438107943 |url=https://books.google.co.jp/books?id=2esYJJUETiYC }}</ref>
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** Saridakis, Voula, 2014, Aganice of Thessaly, Biographical Encyclopedia of Astronomers, pages29-30, Springer, New York, NY, isbn:978-1-4419-9917-7, doi:10.1007/978-1-4419-9917-7_9215
<ref name="bea">{{Citation |last=Saridakis |first=Voula |date=2014 |contribution=Aganice of Thessaly |title=Biographical Encyclopedia of Astronomers |pages=29-30 |publisher=[[シュプリンガー・サイエンス・アンド・ビジネス・メディア|Springer]] |place=New York, NY |isbn=978-1-4419-9917-7 |doi=10.1007/978-1-4419-9917-7_9215 |bibcode=2014bea..book...29S }}</ref>
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** プルタルコス, 瀬口昌久, 2001-12, モラリア 2, 西洋古典叢書, pages=192-193, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981328
<ref name="moralia2">{{Cite book |和書 |author=プルタルコス |author-link=プルタルコス |translator=瀬口昌久 |date=2001-12 |title=モラリア 2 |series=西洋古典叢書 |pages=192-193 |publisher=[[京都大学学術出版会]] |isbn=9784876981328 }}</ref>
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** プルタルコス, 丸橋裕, 2009-03, モラリア 5, 西洋古典叢書, page261, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981823
<ref name="moralia5">{{Cite book |和書 |author=プルタルコス |translator=丸橋裕 |date=2009-03 |title=モラリア 5 |series=西洋古典叢書 |page=261 |publisher=京都大学学術出版会 |isbn=9784876981823 }}</ref>
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** Ogilvie, Marilyn Bailey, 1986, Women in Science, MIT Press, Cambridge, MA, page25-26, isbn:0-262-15031-X, https://archive.org/details/womeninscience00mari
<ref name="ogilvie86">{{Cite book |last=Ogilvie |first=Marilyn Bailey |date=1986 |title=Women in Science |publisher=[[マサチューセッツ工科大学出版局|MIT Press]] |place=[[ケンブリッジ (マサチューセッツ州)|Cambridge, MA]] |page=25-26 |isbn=0-262-15031-X |url=https://archive.org/details/womeninscience00mari }}</ref>
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<ref name="hill73">{{Citation |last=Hill |first=D. E. |date=1973 |title=The Thessalian Trick |journal=Rheinisches Museum für Philologie |volume=116 |pages=221-238 |url=https://www.jstor.org/stable/41244743 }}</ref>
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** 高津春繁, 1964, アリストパネス, page108, 世界古典文学全集, 筑摩書房, https://archive.org/stream/githejomur_hu4ht/
<ref name="cloud">{{Cite book |和書 |editor=[[高津春繁]] |date=1964 |title=アリストパネス |page=108 |series=[[世界古典文学全集]] |publisher=[[筑摩書房]] |url=https://archive.org/stream/githejomur_hu4ht/ }}</ref>
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** https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet.html, Magellan Fact Sheet, Williams |first=David R., 2019-02-01, Lunar and Planetary Science, NASA Space Science Data Coordinated Archive, accessdate=2020-05-10
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** Russell, Joel F., Schaber, Gerald G. |date=1993-03, Named Venusian Craters, Abstracts of the 24th Lunar and Planetary Science Conference, 1219-1220, bibcode:1993LPI
<ref name="rs93">{{Citation |last1=Russell |first1=Joel F. |last2=Schaber |first2=Gerald G. |date=1993-03 |title=Named Venusian Craters |journal=Abstracts of the 24th Lunar and Planetary Science Conference |pages=1219-1220 |bibcode=1993LPI....24.1219R }}</ref>
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** https://planetarynames.wr.usgs.gov/Feature/85, Aglaonice on Venus, 2006-10-01, Gazetteer of Planetary Nomenclature, USGSAstrogeology Science Center, 2020-05-21
<ref name="gpn">{{Cite web |url=https://planetarynames.wr.usgs.gov/Feature/85 |title=Aglaonice on Venus |date=2006-10-01 |website=Gazetteer of Planetary Nomenclature |publisher=[[アメリカ地質調査所|USGS]] Astrogeology Science Center |accessdate=2020-05-21 }}</ref>
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** Strauss, Walter A., 1997, Jean Cocteau, the mask of Orpheus and Narcissus, Religiologiques, volume15, https://www.religiologiques.uqam.ca/no15/strauss.html
<ref name="strauss97">{{Citation |last=Strauss |first=Walter A. |date=1997 |title=Jean Cocteau, the mask of Orpheus and Narcissus |journal=Religiologiques |volume=15 |url=https://www.religiologiques.uqam.ca/no15/strauss.html }}</ref>
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** Palumbo, Valeria, 2018, L’epopea delle lunatiche: Storie di astronome ribelli, Capitolo 1 Le madri delle stelle, Ulrico Hoepli Editore, Milano (Italy), isbn:978-88-203-8607-8
<ref name="palumbo18">{{Citation |last=Palumbo |first=Valeria |date=2018 |title=L’epopea delle lunatiche: Storie di astronome ribelli |chapter=Capitolo 1 Le madri delle stelle |publisher=Ulrico Hoepli Editore |place=[[ミラノ|Milano]] ([[イタリア|Italy]]) |isbn=978-88-203-8607-8 |language=it }}</ref>
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** Cocteau, Jean, ジャン・コクトー, 1964, The Infernal Machine: &amp; Other Plays, pages106-107, New Directions Publishing, New York, isbn:9780811221634, https://books.google.co.jp/books?id=jgyw3bncfIoC
<ref name="cocteau">{{Cite book |last=Cocteau |first=Jean |author-link=ジャン・コクトー |date=1964 |title=The Infernal Machine: &amp; Other Plays |pages=106-107 |publisher=New Directions Publishing |place=New York |isbn=9780811221634 |url=https://books.google.co.jp/books?id=jgyw3bncfIoC }}</ref>
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** https://www.brooklynmuseum.org/eascfa/dinner_party/heritage_floor/aglaonice, Aglaonice, Elizabeth A. Sackler Center for Feminist Art, Brooklyn Museum, 2020-05-10
<ref name="eascfa">{{Cite web |url=https://www.brooklynmuseum.org/eascfa/dinner_party/heritage_floor/aglaonice |title=Aglaonice |website= Elizabeth A. Sackler Center for Feminist Art |publisher=[[ブルックリン美術館|Brooklyn Museum]] |accessdate=2020-05-10 }}</ref>
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** ゲイル・レヴィン, 板井由紀, コメント: 仲間裕子, 004-03, アメリカにおける女性アーティスト、画商、美術館関係者 ─フェミニスト? それとも仕事人?─ , アート・リサーチ(立命館大学アート・リサーチセンター紀要), volume4 , pages5-22
<ref name="levin04">{{Citation |和書 |author=ゲイル・レヴィン |translator=板井由紀 |others=コメント: [[仲間裕子]] |date=2004-03 |title=アメリカにおける女性アーティスト、画商、美術館関係者 ─フェミニスト? それとも仕事人?─ |journal=アート・リサーチ([[立命館大学]]アート・リサーチセンター[[紀要]]) |volume=4 |pages=5-22 }}</ref>
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** https://www.tjapan.jp/art/17194229, フェミニズムアートの闘士にして 時代の預言者、ジュディ・シカゴ &lt;前編&gt;, Weiss, Sasha, 2018-04-10, The New York Times Style Magazine: Japan, 2020-05-22
<ref name="tjapan">{{Cite web |url=https://www.tjapan.jp/art/17194229 |title=フェミニズムアートの闘士にして 時代の預言者、ジュディ・シカゴ &lt;前編&gt; |last=Weiss |first=Sasha |date=2018-04-10 |website=The New York Times Style Magazine: Japan |accessdate=2020-05-22 }}</ref>
 
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== 参考文献 ==
 
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* {{Citation |contribution=Aglaonike (c. 200 BC) |title=Encyclopedia of Astronomy and Astrophysics |date=2000-11 |editor-last=Murdin |editor-first=Paul |id=3401 |doi=10.1888/0333750888/3401 |bibcode=2000eaa..bookE3401. }}
 
  
 
== 関連文献 ==
 
== 関連文献 ==
* {{Cite book |last1=Vittachi |first1=Nury |last2=Cheung |first2=Step |date=2017 |title=Scientific Pioneers — Five Incredible Tales of People Who Helped Develop the Scientific Method |series=The Young Scientists Series |volume=5 |publisher=World Scientific |doi=10.1142/9789813221291_0005 }}
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** Vittachi, Nury, Cheung, Step, 2017, Scientific Pioneers — Five Incredible Tales of People Who Helped Develop the Scientific Method |series=The Young Scientists Series, volume5, World Scientific , doi=:10.1142/9789813221291_0005
  
 
== 関連項目 ==
 
== 関連項目 ==
* [[女性科学者に関する年表]]
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* [[アリアドネー]]
* [[ヒュパティア]]
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* [[アルテミス]]
* [[メーデイア]]
 
* [[金星のクレーター一覧]]
 
* [[ジュリエット・グレコ]]
 
  
 
== 外部リンク ==
 
== 外部リンク ==
{{Commonscat|Aglaonike}}
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* https://referenceworks.brillonline.com/entries/brill-s-new-pauly/aglaonice-e108240, Aglaonice, Graf, Fritz, Brill’s New Pauly, Brill, 2020-05-22
* {{Cite web |url=https://referenceworks.brillonline.com/entries/brill-s-new-pauly/aglaonice-e108240 |title=Aglaonice |last=Graf |first=Fritz |website=Brill’s New Pauly |publisher=[[ブリル (出版社)|Brill]] |accessdate=2020-05-22 }}
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* https://4kyws.ua.edu/AGLAONIKE.html, Aglaonike, 4000 Years of Women in Science, University of Alabama, 2020-05-23
* {{Cite web |url=https://4kyws.ua.edu/AGLAONIKE.html |title=Aglaonike |website=4000 Years of Women in Science |publisher=[[アラバマ大学|University of Alabama]] |accessdate=2020-05-23 }}
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* https://upstagestiger.weebly.com/aglaonikes-history.html, About Aglaonike or Aglaonice, Aglaonike's Tiger, 020-05-22
* {{Cite web |url=https://upstagestiger.weebly.com/aglaonikes-history.html |title=About Aglaonike or Aglaonice |website=Aglaonike's Tiger |accessdate=2020-05-22 }}
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* https://www.lpi.usra.edu/resources/vc/vcinfo/?refnum=37, Aglaonice, Venus Crater Database, Lunar and Planetary Institute, 2020-05-20
* {{Cite web |url=https://www.lpi.usra.edu/resources/vc/vcinfo/?refnum=37 |title=Aglaonice |website=Venus Crater Database |publisher=Lunar and Planetary Institute |accessdate=2020-05-20 }}
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== 参照 ==
 
== 参照 ==

2022年10月24日 (月) 18:35時点における最新版

アグラオニケ(Ἀγλαονίκη、Aglaoníkē)あるいはテッサリアのアガニケは、古代ギリシアのテッサリア出身の女性で、天文学者として認識される歴史上最初の女性でもある。月食の発生を予報し、月を天上から引き下ろした魔女とも言われていた。

記録[編集]

アグラオニケに関する伝記的な資料はほとんど存在しないが、2つの著作の合わせて3ヶ所に、短い記述があることは確認されている。著作の一つは、古代ローマの著述家プルタルコスの随想集『倫理論集(モラリア)』、もう一つは、ヘレニズムの詩人ロドスのアポローニオスの叙事詩『アルゴナウティカ』の古註である。

『モラリア』の中では、『結婚訓』と『神託の衰微について』の2篇にアグラオニケについての記述がある。

アグラオニケが経験から月食の起こる満月の周期を知って月が大地の影に占められる時を予測し、彼女が月を引き降ろしたと女たちを欺き信じさせた(プルタルコス, 『結婚訓』48 145c(瀬口昌久訳))

ヘゲトルの娘で天文学に長けたアグラオニケは、月蝕のさいにいつも呪文をかけて月を引きずり下ろすふりをしていた(プルタルコス, 『神託の衰微について』13 417a(丸橋裕訳))

また、『アルゴナウティカ』の古註には、以下のような記述がある。

ヘゲモンの娘アグラオニケは、天文学に通じ、月食の何たるかと、それがいつ起きるかを知っており、女神を引き下ろし、そしてただちに家人の一人を失う不幸に見舞われた、といわれたものである。(『アルゴナウティカ』古註 4巻 59-61)

『結婚訓』には「テッサリアのヘゲトルの娘」とあり、『アルゴナウティカ』の古註でも「テッサリアの魔女」の記述に続けてアグラオニケが登場することから、アグラオニケはテッサリアの出身とされている。そしてこれらの記述から、アグラオニケは天文学の知識に通じ、朔望の周期を知り、月食が起きる日時を予測することができたと考えられ、しばしば歴史上最初の女性天文学者として引き合いに出される[注 1][1]。天文学の知識に基づいて、月食の予報をしていたのだとすると、おそらくその計算はアグラオニケの独創ではないと考えられ、アグラオニケは、月食の予報を可能としていたバビロニアの天文学者の知識がギリシアに伝わったセレウコス朝期以降の人物であり、その評判を記述したプルタルコスよりは前の時代の人物であることになる。

ただし、月食の予報と、月を引き下ろす魔術をそのまま結び付けてよいかどうかには、疑問もある。通常の皆既月食では、満月の明るさを大幅に減じ変色するが、月は依然とし[肉眼で容易にみえるからで、月を引き下ろしたと信じさせるには程遠い状況と考えられる。ただ、まれに目にはみえなくなる程暗くなる皆既月食も起こることがあり、モナシュ大学の西洋古典学者ビックネルはこの点に着目し、アグラオニケが予報した月食も同様のものだったと考え、プルタルコスやキケロの文献から月が消える程の月食の見当を付けることで、アグラオニケの年代を紀元前2世紀から紀元前1世紀のどこかがもっともらしいとしている[注 2][2][3]

テッサリアの魔女[編集]

アグラオニケは、月を引き下ろしたと主張したことから、テッサリアの魔女として知られる女性の一人であったとみられる。アグラオニケに触れてはいないが、テッサリアの魔女に月を引き下ろす力があるという噂は、いくつもの文献に記述されている。

アリストパネスの喜劇『雲』には、

テッサリアの魔女をやとってさ、夜のうちに、お月さんをはずして、取ってしまうことにしたら、どうだろうね。(アリストパネス, 『雲』750-755(田中美知太郎訳))

という記述があり、アリストパネスの時代には既に噂が広まっていたものと考えられる。

以後、プラトンの『ゴルギアス』[注 3][4]、ホラティウスの『エポディ(Épodes)』[注 4][5]、ウェルギリウスの『牧歌』[注 5][6]なども、(テッサリアの)魔女が月を天上から引き下ろす、と言及している。

波及[編集]

自らの能力を誇るアグラオニケにちなんで、ギリシア語には「月がアグラオニケに従うように」という俚諺が伝わっている。

NASAの金星探査機マゼランによって、金星に多数の衝突クレーターが確認され、国際天文学連合(IAU) にそれらの命名が求められた[注 6][7]。その中で、1991年のブエノスアイレス総会にIAUから提案された名前の一つが「アグラオニケ」であり、そのまま公式な名称として採用された。

私的解説[編集]

アグラオニケとはギリシアにおける伝説的な女性であり「月を天上から引き下ろす」と述べていた、とのことである。「月を天上から引き下ろす」ということは必ずしも「月食」と一致することなのか? 文字通り「引き下ろす」のであれば、風船に縄をつけるように引っ張りおろしたりすることではないのか? と疑問に感じる点はあるが、ともかく、古代ギリシアの人はこの言質を「月食のこと」と捕らえていたようである。管理人がこの点に疑問を呈すのは、ギリシア神話にはないが、近隣のヒッタイトの神話には、「月が嵐で地上に落ちてしまって、それをまた空に戻した。」という神話があるからで、月食は嵐によって起きるものではないので、架空の話とはいえ、「月が地上に落ちる」ことと、「月食」とは古代の人々の中でも「異なる事象」と考えられていたのではないか、と思うからである。ともかく、アグラニオケの伝説は「月が天上から落ちる」という神話がかつて存在し、その操作や調節を「女神が行う」とされていたのではないだろうか。しかし、天体の規則的な事象あるいは惑星の運行や日月食といった、一見すると不規則に見えるような事象は古来より人の観察の対象となり、その原因が神話というよりは科学的事象として研究の対象にされやすかったこともあって、各地でかなり統一された規格での神話として確立されにくかったのではないのか、と思う。特に日月食はときどき起きることは起きるが、すぐに通常の状態に戻るものでもあるし、古代の人々にとっては荒天が続いたりすることの方が生活への影響が大きくて問題であったのではないだろうか。

そのため、アグラニオケとは太古において、「月の操作を行う女神(月神も兼ねていたかもしれない)」とされていたものが、科学的に「月の動きは何者かの意思によるものではない」と確認されていくにつれて女神としての地位を失い、「月の操作を行う」と自分で勝手に述べている魔女、のような姿に変化してしまったものではないか、と思う。アグラニオケという名前は、アリアドネーやアルテミスと同じく、語源はインド・ヨーロッパ祖語 *h₁ngʷ-ni- から派生したものではないか、と思う。

西欧における「魔女」とはこのように経緯の失われた女神が起源といえるのではないだろうか。アグラニオケは「魔女」の概念の起源として興味深い例と考える。

参考文献[編集]

  • Mozans, H. J. |date=1913, Woman in science |pages=167-168, D. Appleton and Company, New York, https://archive.org/details/womaninscience00zahmuoft/
  • Aglaonike (c. 200 BC), Encyclopedia of Astronomy and Astrophysics, 2000-11, Murdin, Paul, id:3401, doi:10.1888/0333750888/3401, bibcode=:2000eaa..bookE3401.

出典[編集]

    • Lightman, Marjorie, Lightman, Benjamin, 2008, A to Z of Ancient Greek and Roman Women, page9, Infobase Publishing, New York, NY, isbn:9781438107943, https://books.google.co.jp/books?id=2esYJJUETiYC
    • Saridakis, Voula, 2014, Aganice of Thessaly, Biographical Encyclopedia of Astronomers, pages29-30, Springer, New York, NY, isbn:978-1-4419-9917-7, doi:10.1007/978-1-4419-9917-7_9215
    • プルタルコス, 瀬口昌久, 2001-12, モラリア 2, 西洋古典叢書, pages=192-193, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981328
    • プルタルコス, 丸橋裕, 2009-03, モラリア 5, 西洋古典叢書, page261, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981823
    • Ogilvie, Marilyn Bailey, 1986, Women in Science, MIT Press, Cambridge, MA, page25-26, isbn:0-262-15031-X, https://archive.org/details/womeninscience00mari
    • Hill, D. E., 1973, The Thessalian Trick, Rheinisches Museum für Philologie, volume116, pages221-238, https://www.jstor.org/stable/41244743
    • 高津春繁, 1964, アリストパネス, page108, 世界古典文学全集, 筑摩書房, https://archive.org/stream/githejomur_hu4ht/
    • https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet.html, Magellan Fact Sheet, Williams |first=David R., 2019-02-01, Lunar and Planetary Science, NASA Space Science Data Coordinated Archive, accessdate=2020-05-10
    • Russell, Joel F., Schaber, Gerald G. |date=1993-03, Named Venusian Craters, Abstracts of the 24th Lunar and Planetary Science Conference, 1219-1220, bibcode:1993LPI
    • https://planetarynames.wr.usgs.gov/Feature/85, Aglaonice on Venus, 2006-10-01, Gazetteer of Planetary Nomenclature, USGS, Astrogeology Science Center, 2020-05-21
    • Strauss, Walter A., 1997, Jean Cocteau, the mask of Orpheus and Narcissus, Religiologiques, volume15, https://www.religiologiques.uqam.ca/no15/strauss.html
    • Collard, Christophe, Michiels, Laura, 2014, Complicity Across the Atlantic: A Literary Liaison between Two Androgynous Artists, Rivista di Studi Americani, volume25, pages59-84
    • Palumbo, Valeria, 2018, L’epopea delle lunatiche: Storie di astronome ribelli, Capitolo 1 Le madri delle stelle, Ulrico Hoepli Editore, Milano (Italy), isbn:978-88-203-8607-8
    • Cocteau, Jean, ジャン・コクトー, 1964, The Infernal Machine: & Other Plays, pages106-107, New Directions Publishing, New York, isbn:9780811221634, https://books.google.co.jp/books?id=jgyw3bncfIoC
    • https://www.brooklynmuseum.org/eascfa/dinner_party/heritage_floor/aglaonice, Aglaonice, Elizabeth A. Sackler Center for Feminist Art, Brooklyn Museum, 2020-05-10
    • ゲイル・レヴィン, 板井由紀, コメント: 仲間裕子, 004-03, アメリカにおける女性アーティスト、画商、美術館関係者 ─フェミニスト? それとも仕事人?─ , アート・リサーチ(立命館大学アート・リサーチセンター紀要), volume4 , pages5-22
    • https://www.tjapan.jp/art/17194229, フェミニズムアートの闘士にして 時代の預言者、ジュディ・シカゴ <前編>, Weiss, Sasha, 2018-04-10, The New York Times Style Magazine: Japan, 2020-05-22

関連文献[編集]

    • Vittachi, Nury, Cheung, Step, 2017, Scientific Pioneers — Five Incredible Tales of People Who Helped Develop the Scientific Method |series=The Young Scientists Series, volume5, World Scientific , doi=:10.1142/9789813221291_0005

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

注釈[編集]

  1. 「天文学者」として言及される最古の女性ではあるが、天文学に通じた女性はもっと古い時代から居たと考えられる。例えばサルゴンの娘エンヘドゥアンナは、神官で文学者という位置付けだが、バビロニアの高位の神官は、現在の天文学や数学の源流に近い存在であり、立場上天体の観測や暦の作成に関わっていたものと考えられる。
  2. 皆既月食が非常に暗くなる原因としては、大規模な火山噴火による大気中の塵粒子の増加が知られ、例えば、1913年3月22日の月食と1913年9月15日の月食(September 1913 lunar eclipse)はカトマイ山の1912年の噴火、1963年12月30日の月食(December 1963 lunar eclipse)は同年のアグン山の噴火、1982年12月30日の月食(December 1982 lunar eclipse)は同年のエルチチョンの噴火の影響があったものと推測されている。しかし、グリーンランドで採取された氷床コアの分析から、アグラオニケの時代に世界規模の噴火が起きた証拠はみつかっていない。
  3. …あの魔法によって月を引きおろす女たち、つまりテッタリアの魔女たちが、その代償としてこうむったと伝えられるような災難に… —プラトン、『ゴルギアス』513A(加来彰俊訳)
  4. …星や月などを/かのテッサリアの呪文により/天からもたらす… —ホラティウス、『エポディ』5.45(鈴木一郎訳)
  5. まじないは、天から月を引き下ろすことさえできる。 —ウェルギリウス、『牧歌』8.69(小川正廣訳)
  6. 金星は、愛と美の女神ウェヌス(アプロディーテー)に象徴される惑星であり、それゆえ金星の地名の命名については、女性の名前という制約が課されている。

参照[編集]

  1. Howard, Sethanne, 1998-06, 4,000 Years of Women in Science, Engineering and Other Altogether Creative Stuff , International Amateur-Professional Photoelectric Photometry Communication, volume72, pages1-25, bibcode=:1998IAPPP..72....1H
  2. Bicknell, Peter, 1983-06, The witch Aglaonice and dark lunar eclipses in the second and first centuries BC, Journal of the British Astronomical Association, volume93 , issue4, pages160-163, bibcode:1983JBAA...93..160B
  3. https://www.nao.ac.jp/phenomena/20070828/color.html, 皆既月食中の月の色について, 2007年8月28日「皆既月食どんな色?」キャンペーン , 国立天文台, 2020-05-26
  4. プラトン, 加来彰俊, 1967-06-16, ゴルギアス, 岩波書店, isbn:9784003360125
  5. 鈴木一郎, 2001, ホラティウス全集, page242, 玉川大学出版部, isbn:9784472119019
  6. 小川正廣, 2004-05, 牧歌/農耕詩, pages58-59, 西洋古典叢書, 京都大学学術出版会, isbn:9784876981519
  7. https://www2.jpl.nasa.gov/magellan/guide8.html, Chapter 8 What's in a Name?, The Magellan Venus Explorer's Guide , NASA /JPL, 2020-05-22