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ネミ湖の北岸の東端から北に200m程行った所に、北側と東側が外輪山の斜面に挟まれた約200m角の平らな一角があるが、ここが[[ディアーナ]]の聖所址(Santuario di Diana)である<ref>Nemi, Imago Romae, http://www.imagoromae.com/nemi_IT.ashx, 2012-08-12</ref> | ネミ湖の北岸の東端から北に200m程行った所に、北側と東側が外輪山の斜面に挟まれた約200m角の平らな一角があるが、ここが[[ディアーナ]]の聖所址(Santuario di Diana)である<ref>Nemi, Imago Romae, http://www.imagoromae.com/nemi_IT.ashx, 2012-08-12</ref> | ||
− | ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』によると、往年のディアーナ神殿は「北と東側は山腹に食い込んで作られた擁壁で遮られ、壁には半円形の壁龕(へきがん)が穿たれ、礼拝堂となっており現在までに実に多くの奉納物が供えられた。壁龕の前には円柱が建てられている。湖の側は高さ9m、幅200m余りの巨大な壁に支えられた台地となっている<ref name="Giardino">Il Giardino di Diana, http://www.giardinodidiana.com/area_archeologica.htm, 2012-08-12</ref>。聖域の広さに比べると寺院そのものは大きくなかった。しかしその遺構からすると寺院は凝灰岩の巨材で美しく堅固に建てられ、同じ材料のドーリス式円柱で飾られていたことが分かる。大理石の精巧な天井蛇腹やテラコッタの装飾壁は建物の外観を素晴らしいものにしていて金箔を被せた青銅タイルが更に一層の光を彩添えていたようである。この中には腰から羽が生え、両肩にライオンが前足を掛けた、いわゆるアジアのアルテミスと呼ばれる特徴を備えた女神が描かれている。またこの聖所趾からは森の女神にふさわしく狩猟用の服を着用し、肩から矢筒を下げたディアーナの小象が多数見つかっている。また青銅製や鉄製の槍や、牡鹿、雌鹿など狩りと結びついた捧げもの、青銅製の三叉槍などの漁業に関係する捧げもの、さらには牛、馬、豚の像など家畜と結びつく捧げ物も見つかっている<ref name = "bough"/>。 | + | ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』によると、往年のディアーナ神殿は「北と東側は山腹に食い込んで作られた擁壁で遮られ、壁には半円形の壁龕(へきがん)が穿たれ、礼拝堂となっており現在までに実に多くの奉納物が供えられた。壁龕の前には円柱が建てられている。湖の側は高さ9m、幅200m余りの巨大な壁に支えられた台地となっている<ref name="Giardino">Il Giardino di Diana, http://www.giardinodidiana.com/area_archeologica.htm, 2012-08-12</ref>。聖域の広さに比べると寺院そのものは大きくなかった。しかしその遺構からすると寺院は凝灰岩の巨材で美しく堅固に建てられ、同じ材料のドーリス式円柱で飾られていたことが分かる。大理石の精巧な天井蛇腹やテラコッタの装飾壁は建物の外観を素晴らしいものにしていて金箔を被せた青銅タイルが更に一層の光を彩添えていたようである。この中には腰から羽が生え、両肩にライオンが前足を掛けた、いわゆるアジアのアルテミスと呼ばれる特徴を備えた女神が描かれている。またこの聖所趾からは森の女神にふさわしく狩猟用の服を着用し、肩から矢筒を下げたディアーナの小象が多数見つかっている。また青銅製や鉄製の槍や、牡鹿、雌鹿など狩りと結びついた捧げもの、青銅製の三叉槍などの漁業に関係する捧げもの、さらには牛、馬、豚の像など家畜と結びつく捧げ物も見つかっている<ref name = "bough">J. G. フレーザー, 神成利男, 金枝篇 第一巻, 2004, 国書刊行会, isbn:4-336-04492-9 </ref>。 |
現在寺院や礼拝堂は失われ、湖側の壁は土台を除いて崩れているが、聖所の北東角と北壁の西側が発掘され、円柱や壁龕の一部を見ることができる<ref name="Giardino"/>。 | 現在寺院や礼拝堂は失われ、湖側の壁は土台を除いて崩れているが、聖所の北東角と北壁の西側が発掘され、円柱や壁龕の一部を見ることができる<ref name="Giardino"/>。 |
2022年10月6日 (木) 00:52時点における最新版
ネミの森は、イタリア・ローマの南東25kmに位置するネミ湖の周辺にある。
周囲のカーヴォ山(Monte Cavo)やアルバーノ湖などと共に、コッリ・アルバーニ火山(Alban Hills)(Colli Albani)を構成する火山の火口であり、ネミ湖はマールに分類される[1]。イギリスの社会人類学者ジェームズ・フレイザーの名著『金枝篇』の発端となる、ネミの「宿り木信仰」、「祭司殺し」の舞台となる、「森の女神ディアーナ」の聖域でもある[2]。
ディアーナ神殿[編集]
ネミ湖の北岸の東端から北に200m程行った所に、北側と東側が外輪山の斜面に挟まれた約200m角の平らな一角があるが、ここがディアーナの聖所址(Santuario di Diana)である[3]
ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』によると、往年のディアーナ神殿は「北と東側は山腹に食い込んで作られた擁壁で遮られ、壁には半円形の壁龕(へきがん)が穿たれ、礼拝堂となっており現在までに実に多くの奉納物が供えられた。壁龕の前には円柱が建てられている。湖の側は高さ9m、幅200m余りの巨大な壁に支えられた台地となっている[4]。聖域の広さに比べると寺院そのものは大きくなかった。しかしその遺構からすると寺院は凝灰岩の巨材で美しく堅固に建てられ、同じ材料のドーリス式円柱で飾られていたことが分かる。大理石の精巧な天井蛇腹やテラコッタの装飾壁は建物の外観を素晴らしいものにしていて金箔を被せた青銅タイルが更に一層の光を彩添えていたようである。この中には腰から羽が生え、両肩にライオンが前足を掛けた、いわゆるアジアのアルテミスと呼ばれる特徴を備えた女神が描かれている。またこの聖所趾からは森の女神にふさわしく狩猟用の服を着用し、肩から矢筒を下げたディアーナの小象が多数見つかっている。また青銅製や鉄製の槍や、牡鹿、雌鹿など狩りと結びついた捧げもの、青銅製の三叉槍などの漁業に関係する捧げもの、さらには牛、馬、豚の像など家畜と結びつく捧げ物も見つかっている[5]。
現在寺院や礼拝堂は失われ、湖側の壁は土台を除いて崩れているが、聖所の北東角と北壁の西側が発掘され、円柱や壁龕の一部を見ることができる[4]。
女神ディアーナについては『金枝篇』に次のように記されている。
- ネミの聖なる森における 森のディアーナ崇拝は、太古から続く非常に重要なものであった。彼女は森の女王、野生動物や家畜の女神として、また大地の収穫物の女神として崇拝され、彼女の聖火は聖域にある円形の神殿で絶えず燃やされていた。ディアーナはまた男女に子宝を授け、産婦を助けると信じられ、彼女と結びつけられた水の妖精エゲリアは、陣痛に苦しむ女性を助けていた。ディアーナは同じく豊穣と出産の女神とされるギリシャ神話のアルテミスと同一視され、そしてアルテミスと同様に男性の伴侶が必要だったのである。その伴侶が、アルテミスの夫で、父であるアテネの国王テーセウスに殺されたヒッポリュトスが後に復活し名前を変えたウィルビウスであった。彼は明らかに〈森の王〉という称号の下にディアーナに仕えた祭司達の系譜の神話的祖先でありその原型であった。そして、ネミの森にある一本の美しいブナの木をディアーナの化身として崇拝したが、ウィルビウスのように祭司達は、決まってその後継者達の剣で殺されるという悲劇的最期を迎えるのである。ネミの聖域で発見された双頭の半身像は恐らく〈森の王〉と彼を殺した後継者が一体化された像である。[5]。
イタリアのネミの村には、ネミの湖と呼ばれる聖なる湖と、切り立った崖の真下にあるアリキアの木立とよばれる聖なる木立があり、木立には聖なる樹(ヤドリギ)が生えていた。この樹の枝(金枝)は誰も折ってはならないとされていたが、例外的に逃亡奴隷だけは折る事が許されていた。
ディアナ・ネモレンシス(森のディアナ)神をたたえたこれらの聖所には、「森の王(レックス・ネモレンシス)」と呼ばれる祭司がいた。逃亡奴隷だけがこの職につく事ができるが、「森の王」になるには二つの条件を満たさねばならなかった。第一の条件は金枝を持ってくる事であり、第二の条件は現在の「森の王」を殺す事である。
参考資料[編集]
- Wikipedia:ネミ湖(最終閲覧日:22-10-05)
- Wikipedia:金枝篇(最終閲覧日:22-10-05)
- Le Navi di Nemi (1940, 2nd ed. 1950) by Guido Ucelli. /ネミのローマ船発掘記録
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
参照[編集]
- ↑ Colli Albani - Smithsonian Institution: Global Volcanism Program、2017年6月閲覧
- ↑ J・G・フレイザー, 1966, 金枝篇(一), 岩波文庫, pagesP.37
- ↑ Nemi, Imago Romae, http://www.imagoromae.com/nemi_IT.ashx, 2012-08-12
- ↑ 4.0 4.1 Il Giardino di Diana, http://www.giardinodidiana.com/area_archeologica.htm, 2012-08-12
- ↑ 5.0 5.1 J. G. フレーザー, 神成利男, 金枝篇 第一巻, 2004, 国書刊行会, isbn:4-336-04492-9