「阪泉の戦い」の版間の差分
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+ | # 勝者を助けてくれる妻神あるいは類妻神が存在する場合 | ||
+ | ## 時に妻神あるいは類妻神が勝者を妨害する場合 | ||
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2022年9月25日 (日) 01:12時点における最新版
阪泉の戦い(はんせんのたたかい)は、古代中国の伝説上の戦いで、軒轅(後の黄帝)が炎帝を破った会戦である。
『史記』五帝本紀によれば、神農氏の世が衰えたとき、諸侯が互いに侵略しあって百姓を虐げた[1]。神農氏はこれを納めることができなかった。このとき軒轅は干戈を習い、帝に貢ぎ物を献上しない諸侯を征した。そこで蚩尤らを除く諸侯は神農氏に従うようになった。その後、炎帝が諸侯を侵略しようとしたので、諸侯は軒轅のもとに集まり、炎帝に対抗した。軒轅は徳を修め、兵を振るわし、五気を治め、五種を植え、万民を撫で、四方を度り、熊・羆・貔(伝説上の猛獣。貅・貙も同じ)・貅・貙・虎を調教した。それから起きたのが、阪泉の戦いである。軒轅と炎帝の両軍は阪泉の野で3回戦い、最終的に軒轅が勝利した。軒轅はこのあと蚩尤との涿鹿の戦いに勝って天子に推戴された。
黄帝を含めた五帝等の話は、もともと各地の様々な神話・伝説であったものを、戦国時代の人が時代順に並べる形式に整えて歴史にしたと考えられている[2]。学問的に実在したことが知られるのは殷(商)以降であるから、それよりはるか以前の阪泉の戦いは史実であるかは不明である。
私的解説[編集]
「阪泉の戦い」と「涿鹿の戦い」は同一の事象を2つに分けたもの、という説がある[3]。管理人もそのように思う。炎帝と蚩尤は共に「牛頭」で現される。おそらく、日本神話の概念になるが、炎帝を神の和魂(おだやかな相)とすると、蚩尤は荒魂(荒ぶる相)ということになるのではないだろうか。
牛頭の神といえば、日本では須佐之男がそのような神と同一視された。西欧ではギリシア神話のミーノータウロスのような怪物神が存在する。須佐之男は倒されることはないが、天界から地上に追放される。ミーノータウロスはテーセウスに倒される。おそらく、「炎帝蚩尤」とも言うべき、おおよそ紀元前5000年頃に倒されたであろう実在の人物は、弁髪であり、かつ「炎黄闘争」の神話は、その後の伝承で
- 倒される神、あるいは非業の死を遂げる神
- 特に簡易的に兄弟あるいは類兄弟の片方が死ぬ(殺される)もの
- 天界あるいは類天界から追放される神(部分的な追放も含む)
- ときに追い払われる神
と主に3種類の伝承に分かれ、各地に分布していったものと思われる。その場合、炎帝に相当するトーテムは、おそらくミーノータウロスのように、やはり「牛」が主だったのではないだろうか。
また、黄帝が「動物を操る」存在とされるのに対し、炎帝・蚩尤は「牛頭」として動物そのもので現されることも興味深く感じる。日本神話で言えば、大国主命が兎を助けるけれども、兎そのものではないのに対して、須佐之男が「牛頭」とされていることに似ていると考える。大国主命と須佐之男は、「子孫と先祖」あるいは「婿と舅」という形で現される。直接の近縁関係で現される場合は、兄弟とされた黄帝と炎帝の関係に似る、婿と(小)舅のパターンはテーセウスとミーノータウロスの関係に似るように思う。
種類 | 倒す神 | 倒される神 | 双方の関係 | 助けてくれる妻 |
---|---|---|---|---|
炎黄闘争(中国) | 黄帝 | 炎帝蚩尤(牛) | 兄弟 | なし |
因幡の白兎(日本) | 大国主命 | 八十神 | 兄弟(動物番) | △ |
冥界訪問譚(日本) | 大国主命 | 須佐之男(後世に牛) | 婿と舅(動物番、難題婿) | あり |
怪物退治(ギリシア) | テーセウス | ミーノータウロス(牛) | 義兄弟(婿と小舅、怪物退治) | あり |
「倒す神比較表」を見ると、炎黄闘争とその類話には「助けてくれる妻」あるいは「類助けてくれる妻」に相当する女神あるいは女神的存在がいる場合があることが分かる。すなわち
- 勝者を助けてくれる妻神あるいは類妻神が存在する場合
- 時に妻神あるいは類妻神が勝者を妨害する場合
- 勝者を助けてくれる妻神あるいは類妻神等が存在しない場合
- 勝者を助けてくれるのが妻神あるいは類妻神以外の場合
の主に3パターンに分かれることが分かる。要は「敗者の負け方」と「助けてくれる妻の有無」の組み合わせで多くの神話・伝承のパターンが生じていることが分かる。
参考文献[編集]
- Wikipedia:阪泉の戦い(最終閲覧日:22-08-25)
- 堀敏一『古代の中国』(「世界の歴史」第4巻)、講談社、1977年。
- 吉田賢抗『史記』一(本紀)(新釈漢文大系)、明治書院、1973年。
- 史記Ⅰ、司馬遷著、小竹文夫・小竹武夫訳、筑摩世界文學大系6、筑摩書房、1971
- 軍神の変容、湯浅邦弘著、島根大学教育学部紀要(人文・杜会科学一第二十六巻 一一五頁~二一二頁 平成四年十二月)