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− | 叙事詩『オデュッセイアー』によると、ラダマンテュスは神々によって世界の果てにある「エーリュシオンの野」に送られ、その地に住んでいるとされる<ref name=OD4563 /> | ||
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− | == | + | == 私的考察 == |
− | + | '''ラダマンティス'''という名前は、「Rha(接頭辞)+'''d'''a'''m'''anthys」となり、北欧神話の'''ユミル'''と同起源の名前であると思う。生きている時に'''聖王'''である点はイラン神話のジャムシードと共通している。死後、'''冥界の審判者'''となる点はインド神話の'''ヤマ'''と共通している。ラダマンティスはユミルのように殺されはしないが、妬まれて追放される点に、'''不遇な生涯であった点'''が共通しているように思う。印欧語族が広く展開する以前からの神だったのではないだろうか。 | |
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
− | * [ | + | * Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%80%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%A5%E3%82%B9 ラダマンテュス](最終閲覧日:22-08-15) |
− | * | + | * アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年) |
− | * | + | * アントーニーヌス・リーベラーリス『ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫(2006年) |
− | * | + | * ウェルギリウス『アエネーイス』岡道男・高橋宏幸訳、京都大学学術出版会(2001年) |
− | * | + | * オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1981年) |
− | * | + | * 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋・岡道男訳、講談社(1982年) |
− | * | + | * ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年) |
− | * | + | * ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1994年) |
− | * | + | * パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年) |
− | * | + | * ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年) |
− | * | + | * 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年) |
− | * | + | * ホメロス『オデュッセイア(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1994年) |
+ | * 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年) | ||
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2022年8月16日 (火) 00:19時点における最新版
ラダマンテュス(Ῥαδάμανθυς, Rhadamanthys, Rhadamanthus)は、ギリシア神話に登場する人物である。ラダマンティス、ラテン語でラダマントゥスとも表記される。ミーノース[1]、アイアコスとともに冥界の審判者を務めるとされる。またエーリュシオンの長であるとも言われる[2]。ホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』では「金髪のラダマンテュス」と呼ばれている[3][4]。
ゼウスとフェニキアの王アゲーノールの娘エウローペーとの間に生まれた子で、ミーノース、サルペードーンと兄弟[5][6][7][8][9][10]。ただしホメーロスはミーノースとラダマンテュスのみエウローペーの息子としている[11]。スパルタの詩人キナイトン(Cinaethon of Sparta)によれば、ラダマンテュスはクーレースの子タロースの子ヘーパイストスの子であるという[12]。エリュトロス[13][14]、ゴルテュスの父[15]。アルクメーネーの再婚相手とされる[1][16]。
神話[編集]
誕生[編集]
あるとき、ゼウスは美しいテュロス王女エウローペーに恋した。そこで白い牡牛に変身してエウローペーに接近し、彼女が警戒を解いて背中にまたがったのを見計らい、海を渡ってクレータ島に連れ去った[5][7][8][9][10][17]。その地でゼウスはエウローペーとの間にミーノース、ラダマンテュス、サルペードーンをもうけた[5][7][8][9][10]。その後、エウローペーはクレータ島の王アステリオス(Asterion (king of Crete))と結婚し、ラダマンテュスたち兄弟はアステリオス王によって養育された[1][5][18]。
立法者[編集]
ラダマンテュスは正義の人であったと伝えられている[6][14][19]。成長するとミーノースの王権を補佐し[20]、立法者としてクレータ島の法を制定した[1][18]。一説によると正当防衛はラダマンテュスが定めた[21]。ラダマンテュスはいかなる裁判においても正しい判決を下し、盗賊や瀆神者のなどの罪人を厳しく罰したので、エーゲ海の島々や小アジアの沿岸地方の多くが、自ら進んでラダマンテュスの統治下に入った[14]。しかし、人々がラダマンテュスの正義の徳を驚きの目で見るようになると、ミーノースは嫉妬して、ラダマンテュスを政治の中心から遠ざけ、クレータ島の支配がおよぶ最も遠い場所に送った[20]。ラダマンテュスは小アジアと向かい合った島々に移り、息子エリュトロスにエリュトライ、甥にあたるオイノピオーンにキオス島の統治をゆだねた[14][22]。またトアースにレームノス島、エニューエウスにキュルノス島、スタピュロスにペパレートス島、エウアンテースにマロネイア、アルカイオスにパロス島、アニオスにデーロス島、アンドレウスにアンドロス島を与えた[19]。その後、ラダマンテュスはボイオーティア地方の都市オーカレアイに亡命し、ヘーラクレースの養父アムピトリュオーンの死後に、その妻アルクメーネーと結婚した[1][16]。
死後[編集]
叙事詩『オデュッセイアー』によると、ラダマンテュスは神々によって世界の果てにある「エーリュシオンの野」に送られ、その地に住んでいるとされる[2]。後代の伝承によると、ラダマンテュスは生前、非常に優れた立法者、裁判官であったため、死後、ミーノースとともに冥府の裁判官となった[1][19][23]。シケリアのディオドーロスによると、冥府の裁判官としてのラダマンテュスの役割は、死者が敬虔な者であるか、それとも邪悪な者であるかを判定することであった[19]。ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』によると、ラダマンテュスはタルタロスの支配者で、ラダマンテュスが罪人たちの生前の悪企みについて問いただし、復讐の女神の1人ティーシポネーが鞭で打って罰を与えるという[24]。
アントーニーヌス・リーベラーリスの『変身物語集』では、アルクメーネーとの結婚は死後のことである。アルクメーネーが死去すると、ゼウスの命でヘルメース神はアルクメーネーの遺体を「至福者の島」に送り、ラダマンテュスに妻として与えたという[25][25]。
その他の伝承[編集]
地理学者ストラボーンによると、ミーノース以前にラダマンテュスと同じ名前の王がおり、クレータ島の人間を集めていくつかの都市を建設し、国制を定め、クレータ島を文明豊かな土地に変えたという[26]。ラダマンテュスはそれぞれの法をゼウスから授かったものとして布告することで世に広めたが、ミーノースもそれに倣って自身の法をゼウスのものとして布告した[26][27]。スパルタの立法者リュクールゴスもクレータ島を訪れた際にこの手法を学んだという[27]。
『オデュッセイアー』によると、ラダマンテュスはエウボイア島のティテュオスを訪れる際に、パイアーケス人の助けを借りたと伝えられているが、ラダマンテュスがティテュオスを訪れた理由など、伝承の詳細は不明である[28]。
パウサニアースによると息子エリュトロスはクレータ人を率いてイオーニアー地方に移住し、エリュトライを創建した[13]。またゴルテュスはクレータ島の都市ゴルテュンを創建した[15]。
私的考察[編集]
ラダマンティスという名前は、「Rha(接頭辞)+damanthys」となり、北欧神話のユミルと同起源の名前であると思う。生きている時に聖王である点はイラン神話のジャムシードと共通している。死後、冥界の審判者となる点はインド神話のヤマと共通している。ラダマンティスはユミルのように殺されはしないが、妬まれて追放される点に、不遇な生涯であった点が共通しているように思う。印欧語族が広く展開する以前からの神だったのではないだろうか。
参考文献[編集]
- Wikipedia:ラダマンテュス(最終閲覧日:22-08-15)
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- アントーニーヌス・リーベラーリス『ギリシア変身物語集』安村典子訳、講談社文芸文庫(2006年)
- ウェルギリウス『アエネーイス』岡道男・高橋宏幸訳、京都大学学術出版会(2001年)
- オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1981年)
- 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋・岡道男訳、講談社(1982年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
- ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1994年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- ホメロス『オデュッセイア(上)』松平千秋訳、岩波文庫(1994年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
関連項目[編集]
参照[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 アポロドーロス、3巻1・2。
- ↑ 2.0 2.1 『オデュッセイアー』4巻563行-568行。
- ↑ 『オデュッセイアー』4巻564行。
- ↑ 『オデュッセイアー』7巻322行。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 ヘーシオドス断片89(『イーリアス』12巻397行への古註D)。
- ↑ 6.0 6.1 ヘーシオドス断片90(オクシュリュンコス・パピュルス、1358 fr.1 col.I)。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 アポロドーロス、3巻1・1。
- ↑ 8.0 8.1 8.2 シケリアのディオドーロス、4巻60・2。
- ↑ 9.0 9.1 9.2 シケリアのディオドーロス、5巻78・1。
- ↑ 10.0 10.1 10.2 ヒュギーヌス、178話。
- ↑ 『イーリアス』14巻322行。
- ↑ パウサニアース、8巻53・5。
- ↑ 13.0 13.1 パウサニアース、7巻3・7。
- ↑ 14.0 14.1 14.2 14.3 シケリアのディオドーロス、5巻79・1。
- ↑ 15.0 15.1 パウサニアース、8巻53・4。
- ↑ 16.0 16.1 アポロドーロス、2巻4・11。
- ↑ オウィディウス『変身物語』2巻。
- ↑ 18.0 18.1 シケリアのディオドーロス、4巻60・3。
- ↑ 19.0 19.1 19.2 19.3 シケリアのディオドーロス、5巻79・2。
- ↑ 20.0 20.1 シケリアのディオドーロス、5巻84・2。
- ↑ アポロドーロス、2巻4・9。
- ↑ シケリアのディオドーロス、5巻84・3。
- ↑ 『オデュッセイアー』では冥府の裁判官として言及されているのはミーノースだけである。『オデュッセイアー』11巻568行-571行。
- ↑ ウェルギリウス『アエネーイス』6巻566行-572行。
- ↑ 25.0 25.1 アントーニーヌス・リーベラリース、33話。アントーニーヌス・リーベラーリスの注記によると、この物語はレーロスのペレキューデースに基づいている
- ↑ 26.0 26.1 ストラボーン、10巻4・8。
- ↑ 27.0 27.1 ストラボーン、10巻4・19。
- ↑ 『オデュッセイアー』7巻322行-323行。