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'''布洛陀'''(Buluotuoブルオトゥオ)はチワン族の始祖とされる。布洛陀祭に関する文化にはチワン民謡、銅太鼓、チワン錦、伝統的なチワン祭りなどがある(Buluotuoブルオトゥオ)は[[チワン族]]の始祖とされる。布洛陀祭に関する文化にはチワン民謡、銅太鼓、チワン錦、伝統的なチワン祭りなどがある<ref>[https://baike.baidu.com/reference/1217696/533aYdO6cr3_z3kATKHZmPvzMHnDP46kv-HaWrJzzqIP0XOpW4HmU40m-Zkv-_h3GA6Fs5dvLtUb2eb7FUlF7_EPcek0RKpxnHb_Wy7Awbzu_9wxnc8c59cf
百色布洛陀民俗文化盛宴绽放非遗魅力【查看原图】].人民日報オンライン。2016/0416 [引用日2018-08-11 ]</ref>。2006年5月20日、中華人民共和国の国家無形文化遺産第2号に認定された。
== 伝承 ==
=== 雷神とカエル ===
この世に人が増えて怒った天の雷神が「老いた者は死ぬことにする。銅鼓(雷)の音を聞いたら死者の肉を食べよ。」と命じた。若者がこれを悲しみ布洛陀に訴えた。布洛陀は「太鼓を叩いて雷神と打ち比べせよ。」と教えた。大勢で叩いたので、雷神に打ち勝つことができた。雷神は息子のカエルに、どうして地上に太鼓があるのか探らせることにした。下界に降りたカエルは人々に同情して、雷神の持っている太鼓を詳しく教えた。人々が雷神と同じ太鼓を作ると大きな音がした。雷神は太鼓を打つのをやめ、'''人も人を食う習慣をやめた'''(広西壮族自治区・壮族)<ref>百田弥栄子『中国の伝承曼荼羅』三弥井民俗選書、1999年、136頁</ref><ref>'''注''':『中国の伝承曼荼羅』では布洛陀は「女神」とされているが、総合的に考えて「男神」であろうと判断し、管理人の判断で「男神」に直して引用した。</ref>。
 
=== 天兵討伐 ===
布洛陀はチワン族の創始者である。彼は最も聡明かつ賢明で、壮族は何が起こっても常に彼に知恵を求めた。良いことも悪いことも布洛陀に相談した。
草豹は布洛陀の言ったとおりになったとのことだ<ref>姚宝瑄主编,中国各民族神话 仫佬族 壮族 京族[M],书海出版社,2014.10,第135-137页</ref>。
 
== 私的考察 ==
この神は、伝承が作られた時代によって、性質がやや異なっているように思う。「'''天兵討伐'''」は古い時代の話と見えて、布洛陀神自身が、直接天の兵と戦う。その様子も「砂や石を投げ飛ばす」といったもので、風の神、嵐の神、火山の神といった「自然現象の神」が暴れているような印象を受ける。それこそ、[[ミャオ族]]の[[アペ・コペン]]が戦ったり、日本の[[ダイダラボッチ]]が暴れているのと共通した性質である。ただし、チワン族の伝承では、開拓神は[[姆六甲]]女神が担っているので、布洛陀に開拓神の性質は乏しいようである。布洛陀の本来の性質は[[ミャオ族]]の[[アペ・コペン]]に近いものだったと考える。ただ、山の尾根から「砂や石を投げ飛ばす」姿は「火山の神」というのが、一番相応しいのではないだろうか。そして、「火山の神」であるのなら、「火の神」である[[祝融]]の原型の一つとも考えられるのではないだろうか。その一方、樹木との関連が強い姿は[[建木]]に関連の深い[[黄帝]]の姿が重なる。[[黄帝]]を植物の生育と関連とした水神とし、[[祝融]]を火山活動と関連する「火の神」とすれば、布洛陀は[[黄帝型神]]と[[祝融型神]]を習合させた折衷的な神といえるのではないだろうか。
 
時代が下るにつれて、布洛陀は[[伏羲]]に近いような「文化英雄」的な性質が強くなっていくように思う。「'''雷神とカエル'''」と「'''太陽を撃つ(射太阳)'''」では、布洛陀は自ら戦ったり、行動することがなくなり、彼自身が木であるかのように動かなくなっている、と感じる。まるで日本神話のかかしの久延毘古のようだと考える。久延毘古は蛙神の多邇具久(たにぐく)と関連が深いが、布洛陀も蛙神と関連が深いようである。この2つの伝承で、布洛陀はアドバイザーに徹しているが、「布洛陀と蛙神」「布洛陀と郎正」は、元は同じものが2つに分かれたものだと考える。布洛陀が樹木神のように扱われる傾向が強くなるにつれ、実際に動き回る行動役が必要とされるようになったので、下位の神、あるいは神々よりも下位の英雄として布洛陀から分離してしまったのだろう。
 
郎正は漢族の[[羿]]に相当する弓の名手だが「弓の名手」であることが、語られる人々によって、風神に例えられたり、火山の噴火活動に例えられたのだろう。また「三節手」と呼ばれており、手に何か特徴があった人物だと推察される。指の関節が人より多かったとか、何かそのような人物で、(現代人であればそれを「奇形」と呼ぶかもしれないが)それが弓を射るのに他の人よりも有利になる特徴だったのかもしれないと考える。台湾神話の[[バジ]]、ケルト神話のフィン・マックールも指に独特の能力があると考えられた人物である。
 
とすれば、樹木に関連した英雄的人物であるという点から、
 
布洛陀、[[アペ・コペン]]、[[黄帝]]
 
は同一のもの。射日の英雄である、という点から
 
布洛陀(郎正)、[[羿]]
 
は同一のもの。指に特徴のある英雄という点から
 
布洛陀(郎正)、[[バジ]]、フィン・マックール
 
は同一のもの、と言えるのではないだろうか。フィン・マックールは叡智を持つ英雄でもある。[[バジ]]は不吉な邪視の持ち主とされたが、東アジアでは邪視はあまり流行しなかったようである。布洛陀と[[バジ]]は、名前の子音も類似しているのではないだろうか。そして、布洛陀の性質は、古い時代には、自然現象になぞらえられるような超人的な英雄だったものが、次第に魔術師や預言者のような性質が際立つようになり、軍事的な英雄から巫術的な文化英雄へと変化していったことが分かる。
 
また、布洛陀の伝承の特徴は「天の神々」との対立である。天の神々が「人を食べたり」、あるいは葬祭として食人を人にも求めていたりしたことが「雷神と蛙」からうかがえる。おそらく、食人、そして祭に伴う食人には人身御供がつきものなので、[[チワン族]]の外部に、これらを求める支配的な強い部族や氏族集団があり、[[チワン族]]の先祖に葛藤が生じた歴史があるのではないだろうか。「支配的な強い部族」を「天の神」になぞらえ、自らの神である布洛陀を「地の神」に例えたものと思われる。五行では[[黄帝]]の属性は「地」である。またこれは、日本神話の「国津神」の思想に似る。
 
日本の「国津神」の代表格である大国主命は、国土の開拓神といわれる。天の神々から国土を譲るように、と求められ、最初は抵抗するが、結局は国を譲って隠棲したとされている。ただし、丹後(京都府)、飛鳥(奈良県)には、土地の神々が大国主命より統治権を授かった、と受け取れる伝承があり、大国主命は総合的な日本の神話の中では「単なる敗者」ではなく、統治権神授の神でもあって複雑な性質を持つ。
 
一方、台湾の[[バジ]]神と布洛陀は言語的にも起源の近い似た名前の神と考える。日本で布洛陀に近い神に、物部氏が奉祭する'''経津主神'''がいる。経津主神は、日本神話では「天つ神」として天の神であり、基本的には軍神である。武甕槌神と共に地上を平定した、と考えられている。星神とされることもある。経津主神に直接的な「知恵の神」としての性質は乏しいように思う。しかし、物部氏が奉祭する石上神宮には「'''布瑠の言'''」と呼ばれる祝詞が伝承されている。『先代旧事本紀』によると、
 
<blockquote>物部氏の祖神である'''饒速日命'''(にぎはやひのみこと)が天から地上に降りる際に、天神御祖(あまつかみみおや)から'''十種神宝'''(とくさのかんだから)(十種類の宝物)を授かった。その際に天神御祖は『汝命、この瑞宝を以ちて、豊葦原の中国に天降り坐して、御倉棚に鎮め置きて、蒼生の病疾の事あらば、この十種の瑞宝を以ちて、「一二三四五六七八九十」と唱へつつ、布瑠部由良由良と布瑠部、かく為しては死人も生反らむ』と述べた。</blockquote>
 
とされる。この饒速日命が天神御祖から教わった祝詞が「'''布瑠の言'''」であり、'''十種神宝'''と併せて祭祀すると、死者をも蘇生させるような効果があるとされた。石上神宮では、主祭神を'''布都御魂大神'''(ふつのみたまのおおかみ)(神体の'''布都御魂剣'''(ふつのみたまのつるぎ)に宿る神霊)、配神の一つに'''布留御魂大神'''(ふるのみたまのおおかみ)(十種神宝に宿る神霊)を祀る。死者を蘇らせるような性質と剣の霊という性質の2つ神霊に分けられているが、饒速日命とその子孫が奉祭する石上神宮全体としては、この2つの性質は「神宮の特性」として一体化しており、ケルト神話のフィン・マックールが軍事的英雄であり、かつ瀕死の者も救うような医薬神的性質を持つ者でもあったことに通じるように思う。布洛陀も本来は、軍的英雄でもあり、医薬神的性質を持つ者でもあったのではないだろうか。
 
一方、樹木神としての布洛陀は高木神とも呼ばれる'''高御産巣日神'''(たかみむすびのかみ)に現されているように思う。直接[[天照大御神]]・[[須佐之男命]]の系譜にはつながらない神だが「造化三神」といって[[天照大御神]]の上位にくる神である。物部氏系氏族の中に、そもそも太陽女神を始祖とする神話、布洛陀的な神を始祖とする神話というように複数の似ているけれども異なる系統の神話があったため、それらを正式に記紀神話として一つにまとめる際、現在のような形にしたと考える。
 
「'''ヒョウを征服する(制伏豹子)'''」の伝承では、布洛陀の医薬神的性質が窺えるように思う。布洛陀は草豹が好きではないが、草豹の苦しみと悲しみは、妊娠しても胎児が育たず、生まれても子が育たない、という点にある。布洛陀が対立するのは常に「天」である。おそらく「天」というのは古代の[[ミャオ族]]の一派のことで、草豹もそれに属するものなのだと思う。草豹の悲しみは、古代の[[ミャオ族]]の一派が純血を重要視するあまり、閉鎖的な母系社会で近親相姦を繰り返したことによるものなのではないだろうか。遺伝子の近い交合が繰り返されれば胎児は育ちにくくなり、生まれても子供は育ちにくくなる。おそらく、古代において布洛陀に相当する人物が提示したのが'''「兄妹婚(近親結婚)」の禁止'''だったのではないか。この伝承は、管理人にはミャオ族の子供である[[ダロン]]が近親結婚のタブーを破ることに対して、「天の罰」を受けるのではないか、と恐れおののくことを思い出させる。
 
このように考えていくと、布洛陀の本来の性質は軍神的な戦士であり、かつ、医薬神的な性質も含めて知恵の神だったと考える。樹木的な性質も併せもっていたため、時代が下ると自らは動かず、アドバイザー的な神、預言者的な神へと性質が変化していき、神としては伏羲のような文化英雄となり、人の社会的役割としては神官、預言者、王権者という立場に変化していったのではないだろうか。
== 参考文献 ==
* 百度百科:[https://baike.baidu.com/item/%E5%B8%83%E6%B4%9B%E9%99%80/1217696 布洛陀](最終閲覧日:255(最終閲覧日:25-01-05)* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E4%B8%8A%E7%A5%9E%E5%AE%AE 石上神宮](最終閲覧日:25-01-08)* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E7%A8%AE%E7%A5%9E%E5%AE%9D 十種神宝](最終閲覧日:25-01-08)* Wikipedia:[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E6%B4%A5%E4%B8%BB%E7%A5%9E 経津主神](最終閲覧日:25-01-08) == 関連項目 ==* [[伏羲]]:中国神話の布洛陀に相当する神。* [[姆六甲]]:現在の神話で、布洛陀との関連は不明だが、おそらく古くは対になる女神と考えられていたのではないだろうか。* [[バジ]]:台湾神話の邪視持ちの英雄である。名前から見て、布洛陀に類する神と考える。* [[アペ・コペン]]:ミャオ族の神。古い時代の布洛陀に類する神と考える。* [[高御産巣日神]]* 経津主神** 大国主命** [[天若日子]]:雷神と対峙する蛙神は天若日子そのものといえる。
== 脚注 ==
{{DEFAULTSORT:ふるおとうお}}
[[Category:中国神話]]
[[Category:チワン族壮族神話]]
[[Category:黄帝型神]]
[[Category:祝融型神]]
[[Category:文化英雄]]
[[Category:知恵の神]]
[[Category:親指]]
[[Category:風神]]
[[Category:蛙]]
[[Category:カニバリズム]]

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