7.ある時、河が大反乱を起こして洪水が起きた。気の毒な天災であって、祭祀を行っても効き目はなかった。姜王子にとっては、これはクーデターを起こす好機だった。王子は父親であった姫補佐官に酒を飲ませて殺し、母親を捕らえて「天が禍を起こすのはお前の政治が悪いからだ。お前が生け贄になれ。お前は火と太陽の女神なのだから、罪がなければ焼け死ぬことはないだろう。」と言って、母親に火をつけ焼き殺した。そして、「女性が王なので天が怒った。」と述べて、自らが王として即位した。そして、以後家というものは「男が次ぐ。女は財産を持ってはならない。」と定めた。そうすれば、自分が即位したり、母親の財産を奪ったことを正当化することができると考えたのだ。財産とは女が持っていてはならないものなのだから。そして、以後、中国では「婿というものはよくよく信用せずに、こき使えば良いもの」とされた。姫青年を信用せず、こき使っただけの姜王子の親族の行為はこれで正当化された。
8.しかし、王が両親を殺して王位を簒奪したというのは外聞が悪い。そこで、「河が反乱を起こしたので、女王と姫補佐官は河の神の怒りを収めるため、洪水を収めるために生け贄にせざるを得なかった。彼らが河と嵐の神を鎮めたのだから、今度は'''姫補佐官を河の神として祀ることとしよう'''。そして'''河の神が怒らないように生け贄を捧げよう'''。女王は太陽女神だったのだから、死後は'''月の女神'''となって人々を見守っている、と言うことにしよう。」とすることにした。姜王子は親殺しではない。人々のためにやむなく両親を犠牲にした可哀想な王、ということになった。少なくとも表向きは。最初のうちは一応姉妹の中から女王を立てて、姜王子はその補佐官である、という体裁を採っていたのだが、すぐに「両親を生け贄にした新女王は悪者だ。」と言いがかりをつけて新女王を廃し、姜王子自身が王位に就いた。「女みたいな悪者を王位に就けてはいけない。」という屁理屈である。姜王子が「自分は火の神・祝融の化身である」と述べて人身御供を行う古い祭祀を復活させたので、中国ではまた人を食べるようになった。いやだ、なんて言ったら姜王子に殺されてしまう、と誰もが知っていた。となって人々を見守っている、と言うことにしよう。」とすることにした。姜王子は親殺しではない。人々のためにやむなく両親を犠牲にした可哀想な王、ということになった。少なくとも表向きは。最初のうちは一応姉妹の中から女王を立てて、姜王子はその補佐官である、という体裁を採っていたのだが、すぐに「両親を生け贄にした新女王は悪者だ。」と言いがかりをつけて新女王を廃し、姜王子自身が王位に就いた。「女みたいな悪者を王位に就けてはいけない。」という屁理屈である。姜王子が「自分は火の神・祝融の化身である」と述べて'''人身御供を行う古い祭祀を復活させた'''ので、中国ではまた人を食べるようになった。いやだ、なんて言ったら姜王子に殺されてしまう、と誰もが知っていた。
9.でも、更に時が流れると、姜王子の子孫はやむを得ない理由があったとしても、両親を殺さなければならないような王・女王が先祖では、王室の権威を低下させてしまう、と考えるようになった。そこで今度は「河と雷神が洪水を起こしたけれども、姫補佐官と姜女王だけは生き残った。彼らが王室と人類の先祖である。」と言い出すようになった。「姫補佐官と姜女王は生け贄になったのだ。」と言い張る人々は'''舟に乗せられて沖に流され、国を追い出された'''。でも、人の口に戸は立てられないので、事実は必ずどこかで噂になって流れてしまう。そこで、更に「河と雷神が洪水を起こしたけれども、伏羲と女かだけは生き残った。彼らが王室と人類の先祖である。」と言いかえるようになった。姫補佐官は偉大な先祖だから消し去ることはできないけれども、「黄帝は水雷神だから天に昇った」とか適当に神秘的な表現をつけて神格化することにした。適当に伝承を作るので、新しい話は完全に国中に広まらず、一部では「生け贄にされた姜女王も'''水神(竜神)'''になった。」と言われるようになった。