=== 魔眼のバロール・アイルランド神話 殺される天狗 ===
ギリシア神話のアガメムノーンは、最終的に復讐心に燃える妻のクリュタイムネーストラーによって殺されてしまう。中国神話における「天狗」は、彗星や流星のようなものと考えられ、これらは不定期にかついつか必ず現れるものであるので、天狗は語らずとも「'''いつか必ず現れる不死のもの'''」といえる。しかし、神話が伝播した先で語られるアガメムノーンは、あくまでも「人間」なので死ぬ運命を背負っている。
イーピゲネイアの類話と思われるのが、アイルランド神話の「魔眼のバロル」である。伝承により複数のパターンがあり、形式はかなり崩れていると感じるが、要約すると以下のようになる。
<blockquote>フォウォレ族の戦士バロールはダーナ神族のキアンからグラス・ガナウンという雌牛を盗む。バロールはドルイドから「娘の生んだ子供に殺される」と予言を受けていたため、娘のエスリウを塔に閉じ込めて育て、孫が生まれないように画策していた。キアンは雌牛を取り戻しにやってきて、塔の中のエスリウと交わりルーという息子をもうける。ルーは、海神マナナーン・マクリルが育てた、あるいは鍛冶師ゴブニュの弟子となった、といわれている。キアンは豚に化けているときに、トゥレンの子ら三兄弟に殺害されてしまった。
一方、バロールは敵をまとめ討つ破壊力がある「魔眼」の持ち主で、孫のルーに眼を潰され、殺されてしまった。</blockquote>
=== 十人の処女たちのたとえ ===